病歴/身体所見
・59歳男性
・既往歴は特になし
・39.7度の発熱、咳嗽、脱力感のためER受診
・身体所見は特記すべき異常は指摘できず
・上記エピソードの3日後、嘔吐と軽度の腹痛を主訴に再受診
・臍周囲に圧痛を認め、腸蠕動音低下があった
◦腹膜刺激徴候はなし
検査
・CT… 門脈内ガス(白矢印)と上腸間膜静脈内ガス(黄矢印)を認めた
診断
門脈内ガス(hepatic portal venous gas)/腸管壁在気腫
・腹痛は増悪傾向であったため開腹術が行われたが、穿孔や腸管虚血はなく切除の必要はなかった
・患者は何事もなく改善した
・2週間後にCT再検をしたところガス像はなくなっていた
・門脈内ガスは腸管虚血/自己免疫性疾患/炎症性腸疾患/肺疾患などの疾患や内視鏡/人工呼吸器などの処置が原因となりうる
・消化管合併症の中で最も診断が難しい病態のひとつであり、治療は基礎疾患による
(Arch Surg. 2003 Dec;138(12):1367-70.)
・消化管の細胞はこの受容体を発現しているため、おそらく炎症を媒介し、大腸炎のリスク増大に関連していると考えられた
(Gastroenterology. 2020 May;158(6):1831-1833.e3.)
・正確な病態生理は解明されていないが、消化管内のウイルス増大により門脈内や腸管壁のガス産生に関与している可能性があると憶測された
肝内にガス像がある場合、
門脈内ガスと胆道気腫が鑑別になります。
その他にも良性疾患でもなりうるため難しいですね。
まとめ
・肝内にガス像がある場合、門脈内ガスと胆道気腫を鑑別すること
・門脈内ガスを認めた場合には腸管虚血がないか確認を要するが、良性疾患であっても門脈内ガスを呈することがある