りんごの街の救急医

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症例91:スキューバダイビング中にけいれんした27歳男性(Ann Emerg Med. 2021 Jan;77(1):124-137.)

病歴/身体所見

・27歳男性
・特に既往歴はない
キューバダイビング中、深度60mで痙攣を発症した
・normoxic trimix (18/40 lt)を使用しており、減圧時には100%酸素投与可能ではあったが、制御不能な上昇をしてしまった(これに関しては特別な情報はなし)
 
・痙攣しているところを仲間に発見され、ボートに乗せられた
・救急医により酸素100%投与され、点滴が実施された
 
・覚知から2時間後にヘリ搬送され病着した
・ER搬入時、HR110bpm, BP130/80mmHg, SpO2 96%(O2 60% face mask),  GCS14
・他覚的には神経学的異常はないが、びまん性の知覚異常を訴えていた
 

検査

血液検査…Hb21.6g/dL
 
・腹部超音波…門脈内が高輝度に変化していた

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・腹部CT…門脈内ガスを認めた

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・頭部CT… 硬膜静脈洞が高吸収域に変化していた

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診断

減圧症 

・高圧酸素療法がおこなわれ、24時間後に神経学的異常なく退院となった

 

 

減圧症は、ダイビングによりより高い圧力がかかることによる組織への窒素蓄積により生じる
 ◦水中から上昇する際に、ガスが組織から放出されて気泡を形成し、さまざまな臓器や血管の機能に影響を及ぼす
BMJ Case Rep. 2014 Jun 4;2014:bcr2014203975.)
 
超音波検査は血管内気泡形成を早期に検出するための簡潔かつ信頼できる方法である
 ◦臨床的重症度とマネジメントに影響を及ぼす
Eur J Appl Physiol. 2018 Jun;118(6):1255-1264.)
 
 
 

減圧症でも門脈内ガスを呈する場合があるんですね。

とはいえ、腸管壊死を伴わないかは必ずチェックです!

昨日の症例で出てきたばっかりですね。

 

減圧症については以前も取り扱いましたのでまとめを貼付しておきます。

appleqq.hatenablog.com

 

まとめ

・減圧症は、より高い圧力がかかることによる組織への窒素蓄積の結果として生じ、水中から上昇する際にガスが組織から放出されて気泡を形成し、さまざまな臓器や血管の機能に影響を及ぼす

・減圧症では門脈内ガスが発生することがあるが、腸管壊死などの致命的な疾患の検索も忘れずに行うこと