病歴/身体所見
・全身倦怠感のためER受診
・5か月前の経胸壁心エコーではEF38%
・受診時バイタルサイン:BP89/63mmHg, HR129bpm, RR22bpm, SpO2 96%
・頸静脈怒張なし、心雑音なし、呼吸音異常なし
・パルスオキシメトリでは以下の所見を認めた
考えられることは?
交互脈
・心電図…narrow QRS regular tachycardia
・adenosine投与により心房粗動と判断され、cardioversionされた
→HR102bpmのsinusに復帰、交互脈も消失した
・cardioversion後の心機能は以前と変わりがないことが確認された
・交互脈は重症心不全の徴候のひとつ
(Circulation. 1966 Dec;34(6):948-61./Crit Care Nurse. 2003 Jun;23(3):51-4.)
・左心不全による1回拍出量の減少で拡張末期容積が増加
→次の心拍ではFrank-Starlingの法則に則り一回拍出量が増加
…これが交互脈の機序
(Circulation. 1966 Dec;34(6):948-61.)
・触診における交互脈の覚知は、その圧に20mmHg以上の差がないと難しい
(Circulation. 1966 Dec;34(6):948-61.)
・交互脈は動脈圧波形だけでなくパルスオキシメーターを使用した波形からも判断することができる
◦感度と特異度はまだわかっていない
(Crit Care Nurse. 2003 Jun;23(3):51-4.)
・心房粗動のような頻脈発作は上記プロセスを増悪させる
◦一回拍出量が低下すればするほど拡張末期容積が増加し、より次の1回拍出量が増加し、交互脈を呈することがある
・本症例でcardioversion後に交互脈が消失したことは、1回拍出量の増加により次の心拍での拍出量が不変となったためと考えられる
パルスオキシメーターの波形はあまり注目していませんでした。
これを機に注目してみようと思います。
まとめ
・交互脈は重症心不全の徴候のひとつ
・交互脈はパルスオキシメーターの波形からも判断することができる