病歴/身体所見
・6週女児
・片側陰唇腫大のためER受診
・特記すべき既往はない
・左大陰唇に2cmほどの押しても縮小しない腫瘤を認めた
・バイタルサインに異常はなし
検査
・陰唇の超音波検査が実施された
1.5cmほどの構造物(卵巣)と水腫を認める
卵巣の血流は正常であることを確認
診断
Nuck管より生じた卵巣ヘルニア
・整復とヘルニア修復術を受けた
・腹膜鞘状突起は発生の過程で壁側腹膜が膨出することで形成されるが、妊娠8か月で通常は消失する
(Radiol Case Rep. 2018 Mar 6;13(3):534-536./Pediatr Radiol. 2017 Jul;47(8):893-898.)
・腹膜鞘状突起が開存したままになっている場合
◦女性…Nuck管
◦男性…腹膜鞘状突起開存と呼ばれる
・開存していると、子宮円索の前方から鼠径管を通じて大陰唇へのび、骨盤内臓器の脱出を起こす
◦小腸/脂肪組織/卵巣/子宮など
・卵巣ヘルニアは捻転のリスクが高い
・片側性大陰唇腫脹の鑑別は、膿瘍/水腫/嚢胞/鼠径ヘルニア/悪性腫瘍/Nuck管を通じたヘルニアなど
(Radiol Case Rep. 2018 Mar 6;13(3):534-536.)
・超音波検査は水腫や腸管/卵巣ヘルニアなどの評価として有用
(Pediatr Radiol. 2017 Jul;47(8):893-898.)
発生学の知識を使うことはあまりなかったので良い勉強になりました。
このNuck管は成人になっても開存したままになっていて鼠径ヘルニアとの鑑別になることがあります。
まとめ
・腹膜鞘状突起は発生の過程で壁側腹膜が膨出することで形成されるが、妊娠8か月で通常は消失する
・開存したままになっていると女性ではNuck管、男性では腹膜鞘状突起開存と呼ばれる
・片側性大陰唇腫脹の鑑別は、膿瘍/水腫/嚢胞/鼠径ヘルニア/悪性腫瘍/Nuck管を通じたヘルニアなどがある