病歴/身体所見
・12歳女性
・喘息の既往あり
・両上腕~手にかけて、疼痛を伴う水疱が出現しER受診
・初期には掻痒感があり、hydrocortisoneクリームを塗ったが効果がなかった
・その後、水泡が形成された
・両上肢~手背にかけて緊満した水疱を認めた
診断
接触皮膚炎
重度の接触皮膚炎と診断された
2週間のprednisolone内服とmupirocin軟膏塗布による治療が行われた
2週間後のフォローアップでは、水疱は完全に消失し炎症後の色素沈着のみ認められた
染毛剤や特定の医療関連染料との接触を避けるよう指導された
・ヘナ(henna)はLawsonia inermisという植物由来の染料
◦歴史的には一般的な疾病に対して使用されていた
◦実は、ヘナ自体の使用による接触皮膚炎(アレルギー反応)はめったに起こらない
(Clin Dermatol. Jul-Aug 2007;25(4):383-7./Contact Dermatitis. 2013 Jul;69(1):1-25.)
・染料の製造工程で、ヘナにPPD(p-phenylenediamine)が混入される
◦PPDは、ヘナの黒色効果とその速度を高めることができる
(Contact Dermatitis. 2013 Jul;69(1):1-25./J Asthma Allergy. 2017 Jan 18;10:9-15.)
・北米での疫学調査では、PPDへのアレルギー陽性者は6.2%と報告されている
◦人種によって異なる可能性はある
(J Asthma Allergy. 2017 Jan 18;10:9-15.)
・PPDアレルギーの臨床症状は、典型的には遅延型過敏性反応による
◦掻痒感を伴う境界明瞭な湿疹または水疱が出現
◦重症になると、より巨大な水疱が出現する
(J Asthma Allergy. 2017 Jan 18;10:9-15.)
・PPDアレルギーが疑われる場合には、パッチテストにより診断が確定される
◦ただし、本症例のように重症型の皮疹がでるような患者ではパッチテストを行わないことがある
・celecoxibやsulfa剤、麻酔薬との交差反応があることに注意
Henna Tattooってなんだ?と思ったら染料のヘナのことだったんですね。
ヘナ自体ではあまりアレルギーは起こらず、染料として含まれていたPPDによる接触皮膚炎の症例でした。
染料でアレルギーを起こしたことがある人は、鎮痛薬や抗菌薬などでのアレルギー反応が起きる可能性があるので注意です。
まとめ
・染料で接触皮膚炎を起こすことはよくあるが、ヘナによるものではなく製造工程で混入されるPPDによるものであることが多い
・PPDはcelecoxibやsulfa剤、麻酔薬との交差反応がある