病歴/身体所見
・71歳女性
・右前腕の疼痛を伴う皮疹のためER受診
・高血圧の既往がある
・皮疹は4か月前から徐々に進行していた
◦前腕中央部掌側に疼痛を伴う丘疹が2つあった
◦そこから手関節部と前腕近位部まで拡大していった
・5週間前に別の施設で0.1% fluocinonide軟膏を処方されたが効果はなかった
・手関節掌側~前腕近位部に、苔癬化した癒合する局面と、ピンク~色素沈着を伴う丘疹結節を認めた
診断
菌状息肉症(腫瘍期)
・皮膚生検により診断が確定された
・皮膚リンパ腫はB細胞由来とT細胞由来に分類される
・T細胞性リンパ腫はよりcommonで、菌状息肉症(CD4細胞起源)が最多
◦米国では毎年1500例ほど新規報告があり、発症率のピークは50-60歳代
(Semin Oncol. 2007 Dec;34(6 Suppl 5):S21-8.)
・診断には皮膚生検を要する
・菌状息肉症の臨床診断は難しい
・皮膚の紅斑/局面/皮膚以外の腫瘍として症状が出現する
◦紅斑期(初期)…皮膚表面の紅斑のみ出現
‣皮膚糸状菌症/乾癬/湿疹などと鑑別を要する
◦局面期(中期)…円形/楕円形/その他の形状のやや膨隆した局面を形成する
‣乾癬と類似する
◦腫瘍期(後期)…潰瘍化を伴う結節や腫瘤が出現し、リンパ節腫脹を伴いうる
(Chin Clin Oncol. 2019 Feb;8(1):11./Clin Dermatol. May-Jun 2019;37(3):255-267.)
菌状息肉症は、great imitatorとして有名だそうです。
これから紹介する画像は、他の疾患のように思ってしまいそうです。
(以下、 Clin Dermatol. May-Jun 2019;37(3):255-267. より)
(A)初期段階の菌状息肉症。脱毛症を伴う。扁平苔癬と似ている
(B)濾胞性角質増殖性丘疹
菌状息肉症。白色粃糠疹と類似
菌状息肉症。接触皮膚炎や扁平苔癬と類似
菌状息肉症。色素沈着に見える
菌状息肉症。重度乾癬に類似した裂傷を伴う角質増殖性局面。
菌状息肉症。潰瘍と痂皮を伴うことが重要。尋常性乾癬と類似。
これは色素性紫斑。菌状息肉症と鑑別を要する
菌状息肉症。病変の内側境界部に鱗屑を伴う。環状紅斑と類似。
菌状息肉症。環状肉芽腫症や強皮症などが鑑別。
菌状息肉症。接触皮膚炎や扁平苔癬と類似
菌状息肉症。色素沈着に見える
菌状息肉症。重度乾癬に類似した裂傷を伴う角質増殖性局面。
菌状息肉症。潰瘍と痂皮を伴うことが重要。尋常性乾癬と類似。
これは色素性紫斑。菌状息肉症と鑑別を要する
菌状息肉症。病変の内側境界部に鱗屑を伴う。環状紅斑と類似。
菌状息肉症。環状肉芽腫症や強皮症などが鑑別。
16歳の菌状息肉症。アトピー性皮膚炎と類似だが掻痒感を伴わなかった。
まとめ
・菌状息肉症の臨床診断は難しく、病期によりさまざまな形態の皮膚所見を認める
・確定診断は皮膚生検
・great imitatorであるため、あらゆる皮疹で診断を想定すること