りんごの街の救急医

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症例64:右前腕の疼痛を伴う皮疹で受診した71歳女性(Ann Emerg Med. 2020 Dec;76(6):805-818.)

病歴/身体所見

・71歳女性
右前腕の疼痛を伴う皮疹のためER受診
・高血圧の既往がある
皮疹は4か月前から徐々に進行していた
 ◦前腕中央部掌側に疼痛を伴う丘疹が2つあった
 ◦そこから手関節部と前腕近位部まで拡大していった
・5週間前に別の施設で0.1% fluocinonide軟膏を処方されたが効果はなかった
・手関節掌側~前腕近位部に、苔癬化した癒合する局面と、ピンク~色素沈着を伴う丘疹結節を認めた

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診断

菌状息肉症(腫瘍期)

・皮膚生検により診断が確定された

 
 
・皮膚リンパ腫はB細胞由来とT細胞由来に分類される
 
・T細胞性リンパ腫はよりcommonで、菌状息肉症(CD4細胞起源)が最多
 ◦米国では毎年1500例ほど新規報告があり、発症率のピークは50-60歳代
(Semin Oncol. 2007 Dec;34(6 Suppl 5):S21-8.)
 
・診断には皮膚生検を要する
 
・菌状息肉症の臨床診断は難しい
 
・皮膚の紅斑/局面/皮膚以外の腫瘍として症状が出現する
 ◦紅斑期(初期)…皮膚表面の紅斑のみ出現
  ‣皮膚糸状菌症/乾癬/湿疹などと鑑別を要する
 ◦局面期(中期)…円形/楕円形/その他の形状のやや膨隆した局面を形成する
  ‣乾癬と類似する
 ◦腫瘍期(後期)…潰瘍化を伴う結節や腫瘤が出現し、リンパ節腫脹を伴いうる
(Chin Clin Oncol. 2019 Feb;8(1):11./Clin Dermatol. May-Jun 2019;37(3):255-267.)
 
 
菌状息肉症は、great imitatorとして有名だそうです。
これから紹介する画像は、他の疾患のように思ってしまいそうです。
 
(以下、 Clin Dermatol. May-Jun 2019;37(3):255-267. より)
 

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(A)初期段階の菌状息肉症。脱毛症を伴う。扁平苔癬と似ている
(B)濾胞性角質増殖性丘疹
 
f:id:AppleQQ:20210111141234p:plain菌状息肉症。白色粃糠疹と類似 
f:id:AppleQQ:20210111141307p:plain菌状息肉症。接触皮膚炎や扁平苔癬と類似 
f:id:AppleQQ:20210111141343p:plain菌状息肉症。色素沈着に見える 
f:id:AppleQQ:20210111141419p:plain菌状息肉症。重度乾癬に類似した裂傷を伴う角質増殖性局面。 
f:id:AppleQQ:20210111141500p:plain菌状息肉症。潰瘍と痂皮を伴うことが重要。尋常性乾癬と類似。 
f:id:AppleQQ:20210111141534p:plainこれは色素性紫斑。菌状息肉症と鑑別を要する 
f:id:AppleQQ:20210111141613p:plain菌状息肉症。病変の内側境界部に鱗屑を伴う。環状紅斑と類似。 
f:id:AppleQQ:20210111141646p:plain菌状息肉症。環状肉芽腫症や強皮症などが鑑別。 
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16歳の菌状息肉症。アトピー性皮膚炎と類似だが掻痒感を伴わなかった。
 

まとめ

・菌状息肉症の臨床診断は難しく、病期によりさまざまな形態の皮膚所見を認める

・確定診断は皮膚生検

・great imitatorであるため、あらゆる皮疹で診断を想定すること