病歴/身体所見
・39歳女性
・既往歴なし
・3日間で急速に進行する顔面のびまん性膿疱性発疹、口唇びらん、羞明感が出現し入院となった
・入院して2日後、体表面の70%以上に及ぶ粘膜皮膚に水疱形成を認めた
・この時点で、頻脈/尿閉/嚥下困難が出現していた
・さらに、熱傷に似た表皮壊死を広範囲に発症した
診断
中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis: TEN)
・sertralineを15日間内服していたことが判明
・SCORTEN scoreは3点
・治療はsertraline中止と支持療法がおこなわれた
・27日後、皮膚病変改善し退院となった
・TENは生命を脅かす皮膚粘膜の水疱性疾患
◦広範囲な皮膚壊死と全層性表皮剥離が特徴的
◦弛緩性水疱/湿った葉巻紙のような表皮の剥離/広範囲なびらん/粘膜病変が主要徴候
(J Am Acad Dermatol. 2013 Aug;69(2):173.e1-13)
・急速かつ予測不能な発症をして、多くは薬剤により誘発される
◦薬剤摂取後、7日間~8週間で通常は発症しうる
‣平均6日間~2週間
(J Am Acad Dermatol. 2013 Aug;69(2):173.e1-13/An Bras Dermatol. Sep-Oct 2017;92(5):661-667.)
・SSRIは誘因となりうる…fluoxetine, sertralineなど
◦sertralineは光毒性/日光アレルギー/斑状丘疹状発疹/Stevens-Johnson syndrome/剥奪性皮膚炎/acute generalized exanthematous pustulosis(AGEP)などの原因となることが報告されている
◦ただし、TENにまで至ることは多くない
(Acta Derm Venereol. 1999 Sep;79(5):401./Postepy Dermatol Alergol. 2014 May;31(2):92-7./Orphanet J Rare Dis. 2010 Dec 16;5:39./J Clin Psychopharmacol. 2009 Feb;29(1):95-6.)
・SCORTEN scoreは、TEN患者の予後予測に有効なスコアリング
(J Pain Symptom Manage. 2019 Jan;57(1):e8-e9.)
(Roberts and Hedges’ Clinical Procedures in Emergency Medicine and Acute Careより抜粋)
・予後改善のためには、早期の原因薬物の中止と支持療法が必須
インパクトのある症例でした。
広範囲な皮疹と粘膜病変がある場合に疑われます。
確かにセルトラリンでSJS/TENを発症することは少ないのかもしれないですが、いかなる薬剤でも先行投与があって、広範囲な皮疹+粘膜疹では疑わなければなりません。
原因として多いのは"SATAN"で覚えます。
・Sulfa
・Allopurinol
・Tetracyclines
・Anticonvulsants
◦carbamazepine, lamictal, phenobarb, phenytoin
・NSAIDs
よく使う薬剤が目白押しです。
SCORTEN scoreは初めて聞きました。
とにかく死亡率が高い疾患であるという認識でよいでしょう。
まとめ
・TENは死亡率が高い、全身の皮膚粘膜の水疱性疾患
・多くは薬剤により誘発され、平均6日間~2週間程度で発症
◦ただし、最大8週間程度まで発症しうることに注意
・原因薬物として"SATAN"を覚えておく
・SSRIでの発症はあまり多くないが、いかなる薬剤でも発症しうると認識しておく
・治療は早期に診断し原因薬物を中止することと支持療法が中心