成人CPAへのACLSについて、
2019 AHA guideline updateが出ましたので紹介します。
結局、あんま変わっていないような…。
( Circulation. 2019 Dec 10;140(24):e881-e894. )
気道管理
推奨のまとめ
・院内外における成人CPAに対するBMVまたはadavanced airway strategyは考慮されるべきである(Class 2b; Level of Evidence B-R)
・advanced airwayを使用する場合には、OHCAにおいては気管挿管の成功率が低いと考えられる場合/トレーニングが十分ではない場合には、SGAの使用を考慮する(Class 2a; Level of Evidence B-R)
・advanced airwayを使用する場合には、OHCAにおいては気管挿管の成功率が高いと考えられる場合/トレーニングが十分にある場合には、SGAまたは気管挿管のいずれを選択してもよい (Class 2a; Level of Evidence B-R)
・院内心停止においては、処置に慣れた医療者がいる場合にはSGAまたは気管挿管のいずれを選択してもよい(Class 2a; Level of Evidence B-R)
BMV vs ETI
・OHCA2043人に対するBMV vs ETIを比較したRCT
◦28日生存率…RR1.02, 95% CI 0.71-1.47
◦28日時点での良好な神経学的予後…RR 1.03, 95% CI 0.68-1.55
(JAMA. 2018 Feb 27;319(8):779-787.)
・BMV vs ETIに関するsystematic review
◦ETIは予後不良と関連性があることが示唆された
◦ただし、ETIはより重症患者に選択される傾向にあるためselection biasや適応の交絡があった可能性を指摘
SGA
・SGA(i-gel) vs ETIを比較したRCT(9296人)
◦生存率…RR 0.95, 95% CI 0.82-1.10
◦退院時点での良好な神経学的機能…RR 0.92, 95% CI 0.77-1.09
(JAMA. 2018 Aug 28;320(8):779-791.)
・SGA(laryngeal tube) vs ETIを比較したRCT(3004人)
◦laryngeal tube使用により有意に予後良好
◦生存退院率…RR 1.34, 95% CI 1.07-1.68
◦生存かつ良好な神経学的機能での退院…RR 1.42, 95% CI 1.07-1.89
(JAMA. 2018 Aug 28;320(8):769-778.)
※(JAMA. 2018 Feb 27;319(8):779-787.)の文献ではETI成功率は98%!(JAMA. 2018 Aug 28;320(8):779-791.)では69%、(JAMA. 2018 Aug 28;320(8):769-778.)では52%であった。
気管挿管成功率の定義がこれらの研究間で異なっていたため、後者の文献たちはETIの効果が正確に反映されていない可能性あり。
結局、どうすりゃいいの?
・患者特性と医療者特性を考慮してケースバイケースに対応する
昇圧薬の使用
推奨のまとめ
・epinephrine使用を推奨する(Class 1; Level of Evidence B-R)
・epinephrine投与量は1mgを3-5分毎にするとよい(Class 2a; Level of Evidence C-LD)
・高用量epinephrineのルーチン投与は推奨されない (Class 3: No Benefit; Level of Evidence B-R)
・Vasopressinは心停止の際に考慮されてもよいが、epinephrinの代替としての利点はない(Class 2b; Level of Evidence C-LD)
・Vasopressin+epinephrineは心停止の際に考慮されてもよいが、epinephrine単剤の代替としての利点はない(Class 2b; Level of Evidence C-LD)
・nonshockable rhythmの場合には、できるだけ早くepinephrine投与を行う(Class 2a; Level of Evidence C-LD)
・shockable rhythmの場合には、初回除細動が失敗に終わったときにepinnephrine投与を行う(Class 2b; Level of Evidence C-LD)
epinephrineの効果
・OHCAへのepinephrineの効果を調べたsystematic review
◦epinephrine1mg 3-5分毎に最大10回投与 vs placeboで比較したRCT2つを含む
◦生存率退院率…RR 1.44, 95% CI 1.11-1.86
◦生存入院率…RR 2.88, 95%CI 2.57-3.22
◦ROSC…RR 3.09, 95% CI 2.82-3.39
◦ただし、良好な神経学的機能での退院率には有意差は出なかった
(Resuscitation. 2011 Sep;82(9):1138-43./N Engl J Med. 2018 Aug 23;379(8):711-721./Resuscitation. 2019 Jun;139:106-121.)
・より最近の大規模RCT…PARAMEDIC 2
◦epinephrineにより30日時点の生存率改善…RR 1.40, 95%CI 1.07-1.84
◦神経学的機能不良な生存者は増えた
(N Engl J Med. 2018 Aug 23;379(8):711-721.)
epinephrineと心停止リズムの関係
・PARAMEDIC 2において、nonshockable rhythmに対するepinephrine使用で3か月時点の神経学的機能良好な生存が増えた
◦RR 3.03, 95% CI 0.98-9.38
◦shockable rhythmではその傾向はなかった
(Resuscitation. 2019 Jul;140:55-63.)
・systematic reviewにおいてもnonshockable rhythmに対するepinephrine投与で生存退院率改善を認めた
◦RR 2.56, 95% CI 1.37-4.80
◦同様にshockable rhythmでは有意差なし
(Resuscitation. 2019 Jun;139:106-121./Resuscitation. 2018 Oct;131:91-100.)
・2つのRCTでも、epinephrineはROSC率を改善させることが報告
◦nonshockable rhythm…RR 4.45, 95% CI 3.91-5.08
◦shockable rhythm…RR 1.68, 95% CI 1.48-1.92
(Resuscitation. 2011 Sep;82(9):1138-43./N Engl J Med. 2018 Aug 23;379(8):711-721.)
epinephrine高用量投与
・高用量epinephrineは0.1mg-0.2mg/kgと定義される
・高用量はepinephrineは有益性がないとされている
◦神経学的機能良好な生存を増やさない
◦生存退院率を増やさない
◦生存入院率をふやさない
◦ROSCに関しては増やすという報告もある
(JAMA. 1992 Nov 18;268(19):2667-72./N Engl J Med. 1998 Nov 26;339(22):1595-601./N Engl J Med. 1992 Oct 8;327(15):1045-50./N Engl J Med. 1992 Oct 8;327(15):1051-5./Pharmacotherapy. 1997 Mar-Apr;17(2):242-7./Resuscitation. 1995 Feb;29(1):3-9.)
vasopressin
・心停止に対する昇圧薬のsystematic review
◦vasopressinとepinephrineにおいては各群間で有意差がみとめられなかった
◦同様に、vasopressin+epinephrineの効果も証明されなかった
(Resuscitation. 2019 Jun;139:106-121.)
epinephrine投与のタイミング
・epinephrine投与のタイミングについて直接的に調査したRCTはない
・この分野に関しては16の観察研究があるがそのうちの大半はOHCAに関してであり、重大なbiasの可能性があることを指摘されている
◦10の研究において早期投与と晩期投与を比較し、早期投与はROSC率増加効果が認められた
◦4の研究では、初回epinephrine投与までの時間を連続変数としてとらえ、投与が1分遅れる毎にROSC率が徐々に減少することを示した
結局、どうすりゃいいの?
・nonshockable rhythmではepinephrineの有益性はより高いため投与すべし
・epinephrine投与量は1mgを3-5分毎
・nonshockable rhythmでは早期に、shockable rhythmでは初回除細動によりROSCしなかった場合にepinephrine投与する
ECPR
推奨のまとめ
・ECPRを推奨するには十分なエビデンスの集積がない
・従来のCPRが失敗した場合に、rescue therapyとして限られた患者に対してECPRが考慮されてもよい(Class 2b; Level of Evidence C-LD)
OHCAに対するECPR
・OHCAに対するECPRのRCTは存在しない
・10の観察研究があり、合計3398人が含まれた
◦5つの研究では目撃ありのCPA患者のみを調査
◦多くの研究では最大年齢を75歳に制限されていた
◦バイアスが大きく、研究デザインにも不均一性が高く、outcomeも大きく異なっていた
→メタ分析は行われていない
◦いろいろlimitationはあるが、大部分の研究にてECPRは神経学的機能良好な生存との関連性があることが示唆されたがエビデンスとまでは言えない
IHCAに対するECPR
・IHCAに対するECPRのRCTは存在しない
・7つの観察研究があり、合計705人が含まれた
◦これもinclusionがまちまちで、outcomeもまちまちであった
→メタ分析は行われていない
結局、どうすりゃいいの?
・ECPRの有効性を報告する研究は多いが、研究によりinclusionやsettingが異なり、単一施設での研究が多い。交絡因子によるバイアスが大きい。
・inclusionを明確に区別できないが、併存疾患がなく弱便者であることが多い