RDW、MPV、NRBCって気にしていますか?
救急の現場で気にしたことは一度もありませんでした…。
調べてみると、鑑別のほかに予後判定にも使える可能性もあるようです。
鑑別/予後判定の2つの側面から見てみようと思います!
(Cleve Clin J Med. 2019 Mar;86(3):167-172.)
- RDW(red blood cell distribution width:赤血球容積分布幅)
- MPV(mean platelet volume)
- NRBCs(nucleated red blood cell:有核赤血球)
- まとめ
RDW(red blood cell distribution width:赤血球容積分布幅)
鑑別
・赤血球の大きさの変動を示している
・貧血の鑑別に使用することもできる
・normal RDW…赤血球の大きさがほぼ同じ
◦11-16%が基準値
◦小球性貧血ではサラセミアを示唆
◦数か月~数年以上持続する鉄欠乏性貧血では全ての血球が小型赤血球に置き換わるためnormal RDWになりうる
・high RDW…赤血球の大きさが異なる
◦出血や溶血でも高値になる
‣急性出血により網赤血球の産生が増加することによる
◦この場合には、末梢血スメアを評価すべし
‣網状赤血球、小型球状赤血球、その他の異常赤血球がないか調べよ
・low RDW…血液疾患とは無関係
予後判定
・RDWが1%上昇するごとに23%ずつ死亡率が上昇
・心疾患の既往/心筋梗塞患者におけるRDW高値は合併症発症率と死亡率の予測因子であった
・上記のような変化が起きるのはコレステロール含有率の変化がおきて細胞膜に変化が起きることが原因?
MPV(mean platelet volume)
鑑別
・血小板の大きさの平均値(fL)
◦基準値…8-12fL
・血小板減少症の鑑別診断に使用可能
・末梢での破壊が原因の血小板減少症ではMPV高値
◦ITP、免疫性血小板減少症、DIC、TTP、HUSなど
◦血小板が失われるとthrombopoietin産生が増加、巨核球から新しく大きな血小板が放出されるため
・巨核球の低形成などではMPV低値
◦形成不全では産生される血小板が小さくなるため
・脾腫(血小板分布異常)の場合には区別が不明瞭となり、おおむね低値~基準値内となる
・先天性血小板減少症の鑑別にも使用可能
◦高値…gray platelet syndrome, BernardSoulier syndrome
◦低値…Wiskott-Aldrich syndrome
予後判定
・non-STEMI患者では致死的冠動脈血管イベント発症率がMPV高値で4.18倍になる
・頸動脈形成術/ステント留置後患者ではMPV高値だとステント内再狭窄率が3倍
NRBCs(nucleated red blood cell:有核赤血球)
鑑別
・成人の正常循環血液中には存在しない幼若赤血球前駆細胞
◦骨髄前駆細胞は最初に前赤芽球に分化
→前赤芽球の核に含まれるchromatinが正染性赤芽球(有核赤血球)になるまでに徐々に濃縮される
→核が放出されると網状赤血球となり、最終的に成熟赤血球になる
◦健康な新生児にも出生後数週以内には認められるが、その後急速に消失することがしられる
・NRBCが検出されるのは以下の状況
◦活動性の溶血や急速な出血
◦骨髄へのストレスや損傷
‣CML…100%
‣急性白血病…62%
‣MDS…45%
◦化学療法中
予後判定
・critically illでは、NRBCsが致命的状態を示唆
・ICU入室患者でNRBCsあり患者は、なし患者に比較して院内死亡率が高かった(42% vs 5.9%)
◦NRBCsがより高値でより長期間出現している例では死亡率がさらに高くなる
・ARDS患者ではNRBCs>220cells/mclであると死亡率3倍
・術後ICU入室し死亡した患者では、死亡する平均9日前にNRBCsが出現
・NRBCs>200cells/mclでは退院後90日以内の死亡率が21.9%と高値
◦30日以内の予期せぬ入院率も高率になった
白赤芽球症
・NRBCs+幼若白血球(骨髄球、後骨髄球など)では白赤芽球症と呼ばれる
・骨髄内の造血細胞が線維/腫瘍などの置換されるような骨髄癆性貧血で認められる
◦critical illnessなどの急性骨髄ストレスによっても引き起こされる
◦その他、鎌状赤血球症、脂肪塞栓による骨髄壊死(白赤芽球症が唯一の症状のことがあり見落とし注意)
まとめ
・RDWは貧血の原因鑑別に有用であることがある
・心疾患におけるRDW高値は予後不良と関連
・MPVは血小板減少症の鑑別に使えることがある
・NRBCは血液疾患をはじめとした致死的疾患と関連、隠れた脂肪塞栓症に注意