りんごの街の救急医

青森県弘前市の救急科専門医による日々の学習のまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。

動物咬傷① 疫学、原因微生物など

救急外来では創処置、特に動物咬傷がらみはたくさん診療の機会があると思います!

でも、対応については意外と整然としたものがなくて医師によって異なったりして実際のところどうなんだろうと悩むことも多々あると思います。

これを機に動物咬傷マスターになりましょう!

 

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(Emerg Med Pract. 2016 Apr;18(4):1-20.)

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(Trauma Reports 2018;19(3):1-12.)

今回は上記2雑誌のreviewをまとめています。

 

 

 

症例

どの患者に抗菌薬投与が必要ですか?狂犬病予防は?入院は必要ですか?
考えてみてください!
 
 
①25歳女性
・右手および前腕の発赤が認められる
・1日前に野良ネコに手を咬まれた
 
 
②45歳男性
・犯罪現場から逃げ出したため警察犬に下肢を複数回咬まれた
・4cm-14cmほどの裂創が認められる
 
③8歳男児
・先週、飼っていたモルモットに咬まれたという
・患児は特に何の症状もないというが、母親が「なんか病気」をもらっているのではないかと不安を訴える
 

 

このブログを読み進めることで上記には自信をもって答えることができるようになります!

 

疫学

イヌ咬傷

・成人や年長の子供ではほとんどの咬傷が上肢に発生(45.3%)
 ◦下肢…25.8%、頭頚部…22.8%
・年少の子供では頭頚部に受傷することが多い(41.5%-73%)
 ◦頭蓋骨陥没骨折、脳脊髄液漏出を伴う硬膜外傷、外傷性脳損傷感染症髄膜炎、脳膿瘍など)に注意
・イヌの方がネコよりも顎の力が強いため、初期の創損傷は派手になることがおおい
 ◦イヌはネコに比較して歯の先端が丸いため挫滅創が多くなる

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・イヌ咬傷による創はpolymicrobialであることが一般的
 ◦混合好気性や嫌気性菌による感染が48%に見られる
 ◦1回の咬傷につき平均5種類ほどの細菌が検出される
Pasteurellaが最も多く検出される
 ◦特にPasteurella canisが多い
 ◦Streptococcus, Staphylococcus, Neisseria speciesなども問題になる
 ◦嫌気性菌ではFusobacterium, Bacteroides, Prevotella, Propionibacteriumが問題

 ネコ咬傷

・上肢に多い(特に手指)
・傷が小さいため過小評価されがちではあるがそんなことない!
 ◦刺創になるため深部組織を損傷してしまう

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・イヌ咬傷と比較して感染発症率は2倍
 ◦即座に治療を開始しないと軽症に見えても外科的な処置を必要としたり永続的な障害を起こすことがある
 ◦最短3時間で感染は成立してしまう
イヌ咬傷よりさらにpolymicrobial
 ◦混合好気性や嫌気性菌による感染が63%に見られる
 ◦Pasteurella multocidaが最多、Pasteurella septicaが続く
 ◦Streptococcus, Staphylococcus, Neisseria, Moraxella
 ◦嫌気性菌ではFusobacterium, Propionibacterium, Prevotella

ヒト咬傷

・男性により多く、10代後半~20代に多い
 ◦ケンカが原因の多くを占める(66.5%)
 ◦あまり原因を話したがらないことがあるためヒト咬傷とわからないこともあり注意
※自験例で「転んだ」とうそをつかれたことあり。
・受傷部位…手や指(50.3%)、四肢(23.5%)、頭頚部(17.8%)
・occlusion bitesとclosed-fist bitesを区別して診療すべし
 ◦多くはocclusion bites:歯が直接的に皮膚を損傷する(噛みつくということか)
  ‣男性よりも女性で多くみられる
  ‣受傷部位(女)…乳房、陰部、上肢、下肢
  ‣受傷部位(男)…肩、上肢、手
 ◦Closed-fist bites:拳で他人の歯を殴ったときに発症(ヒト咬傷の8%ほど)
  ‣より感染を起こしやすい
  ‣2/3の症例で歯が関節包や腱を損傷する
   →hitした拳が戻る際に汚染された腱が関節に引き込まれ、感染に適した環境を作ってしまう
  ‣損傷した腱自体の感染ももちろんある
・原因菌はこれまた多種にわたり、1回の培養で平均4種類検出
 ◦Streptococcus…84%
  ‣Streptococcus anginosusが最多
 ◦Staphylococcus…52%
  ‣Staphylococcus aureus
 ◦Eikenella corrodens…30%
 ◦56%に嫌気性菌感染を伴う
  ‣Fusobacterium, Prevotella species

その他の哺乳類による咬傷

・イヌ、ネコ以外のペットが増えてきており、それらによる咬傷も増えている
ネズミ咬傷…ペットとしても害獣としても増えている
 ◦アメリカでは年間3000人ほどのER受診があるよう
 ◦ネズミは夜行性のため寝ている間にかじられることもありよくわからないことがある
コウモリ咬傷
 ◦見逃されてしまうことが多い
  ‣歯が非常に鋭く隣の歯と歯の距離が非常に狭い
   →pinpoint puncture woundになり、拡大してのみ見つかることがある

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 ◦1980年代からペットとして人気が出てきている
 ◦幼児を獲物とみなすことが多い
  →数時間で数百の咬傷を受傷することもある(rapid-fire bite attacks
 
 

今回は疫学だけで微生物名もだいぶ出てきているためボリュームが多く感じます。

それぞれの動物咬傷の特徴を押さえて診療しましょう!

 

一旦このへんで。