最近若年者の失神を良く経験しています。そんな折に読んだのが以下の論文。
はぁ~、そういうこともあるんだな~と勉強になりました。
WPW症候群で失神したら…アレしかないっしょとおもって読んでいきましたが…
症例提示
・脂質異常症既往のある60歳代男性
・前駆症状のない失神に続く顔面打撲のため救急外来受診
・受診時にはバイタルサインの異常なし、症状なし
・受診時の心電図は以下の通り
所見はどうでしょう?
PR短縮とDelta wave→WPW症候群疑いです!
ということで、入院して電気生理学的検査、アブレーション予定となりました。
ここまでは、まあそうだよな~という経過です。
入院後経過
・モニタリングして入院、検査待ちの際に看護師の前で失神、頭部を地面に打撲した
・モニター波形は以下のようであった
これは…待ちに待ったpseudo VTじゃないか!
とおもいきや、頭部打撲の振動によるアーチファクト波形だったようです。
(矢頭…本来の心拍、*…アーチファクト)
失神の際にはそれが起きる前の波形が重要です。
それは以下のような波形でした。
なんと、5秒弱の洞停止が起きていました!
失神の原因はこれだったようです。
・WPW症候群に対してアブレーションを施行
・上記洞停止はVVRと考えられましたが、2度の頭部打撲を伴う失神で生活に悪影響を及ぼすことが予想されたためペースメーカー挿入された
VVRはペースメーカー適応かと言われると自信はありませんが、AHAガイドライン2018によれば「 洞結節機能不全(Sinus node dysfunction)で不可逆的かつ症状がある場合 」にはペースメーカー適応があるとされています。
sinus pause>3秒、洞停止で、複数の頭部外傷を伴う場合には考えてもよいのでしょう
(2018 ACC/AHA/HRS Guideline on the Evaluation and Management of Patients With Bradycardia and Cardiac Conduction Delay: Executive Summary: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines, and the Heart Rhythm Society. )
Learning Point
・WPW症候群+失神をみたらpseudo VTを考えよ。でもモニターでwide QRS波形をみても早合点せずアーチファクトも鑑別に入れること。
・VVRは多くの場合、ペースメーカー適応ではないが、頻回の頭部外傷を伴う場合には考慮されてもよい。