前回に引き続き、動物咬傷のreviewです!
今回はmanagementに必要な病歴聴取、身体所見、検査についてです。
以下の文献からまとめています。
(Trauma Reports 2018;19(3):1-12.)
(Emerg Med Pract. 2016 Apr;18(4):1-20.)
病歴聴取
・病歴聴取で大事なポイントは3点
①咬傷に関する情報…いつ?複数回咬まれた?野生動物か?
②何に咬まれたか?
③受傷した患者の状態は?
・動物咬傷ではおおむね24時間以内に感染が成立しうる
◦ネコ咬傷ではさらに短時間であり、平均12時間程度
◦ヒト咬傷の場合には、受傷から24時間以内に受診する割合は50%未満と低い
◦野生の場合には考慮すべし
※日本では2006年の輸入症例以来観察されていない
・患者情報について収集すべし
◦患者の免疫状態はどうか?
◦破傷風ワクチン接種歴はあるか?
身体所見
・いつもそうだがまずはバイタルサインの安定化から!
◦低血圧、頻脈→出血や敗血症性ショックを考慮
◦発熱→感染発症の可能性
・咬傷の部位、大きさ、深さについてアセスメントせよ
◦関節上にある咬傷(特に手で問題になる)については感染要注意
‣MP関節上にある創は(患者は認めないことが多いがClosed-fist bitesと考え)関節包に及んでいると考えて専門科対応がよい
◦腱断裂/損傷はしていないか?
‣いかなる小さな損傷でも外科的修復の適応
‣伸筋腱損傷はElson testで確認せよ
※机の端とPIP関節が重なるように置き、指を90度屈曲状態から検者の負荷に耐えて伸展できるか検査
◦神経血管損傷はないか?
‣創の末梢の血流や感覚について評価
・できれば上記については無血野を作って観察すべし
◦近位に駆血帯を巻くなどの方法をとればよい
‣駆血時間は20-30分以内とする
・感染徴候はないか?
◦受傷後12-24時間以上経過後に受診した場合には特に注意を要する
◦蜂窩織炎、リンパ節炎、膿瘍形成などないか検索
‣さらに悪いと骨髄炎や腱炎、化膿性関節炎など考慮
…受傷から24時間後、さらに7日以上経過している場合には考慮する
・特にMCP関節や伸筋腱は血流が乏しいため感染率が高い
◦手掌側に感染が及び屈曲筋腱炎に発展しうるため注意…Kanavel's signに注意
・指のびまん性腫張
・指関節の軽度屈曲位での拘縮
・受動伸展時の激痛
・屈筋腱の走行に沿った圧痛
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(Clin Orthop Relat Res. 1987 Jul;(220):237-40./Clin Orthop Relat Res. 2016 Jan;474(1):280-4.)
・3cmを超える創や刺創はその他の創の形態と比較して感染率3倍
検査
画像検査
レントゲン
・異物の混入や骨折が疑われるときには撮影すべき
◦歯牙破損、関節内air(関節内に達する咬傷)なども観察可能
・初期には情報がなくとも、骨髄炎に発展した際のbaselineとして有用である可能性あり
老犬とかの場合には特に要注意かな?
超音波
・膿瘍形成や異物の検出に使用可能
CT
・血管損傷が疑われる場合には造影CTの適応がある
培養検査
・創培養は一般的に推奨されていない
◦常在菌を培養するのみで治療方針決定に寄与しない
・免疫不全や敗血症の徴候があれば血液培養は有用である可能性がある
血液検査
・大量出血の場合には血液検査を実施しておくとよい
・骨髄炎を疑う場合…赤沈とCRP
・ヒト咬傷の場合には、患者と加害者のHIV/肝炎ウイルススクリーニングは有用なことがある
結構、屈曲筋腱炎などはよく見かけます。
よくよく注意が必要になりますね。
今回はこのへんで!次回はmanagement編です。
どんな微生物が原因になるの?それぞれの動物咬傷の特徴は?