研修医に質問されました。
「溶連菌に対してはルーチンで抗菌薬出してますけど、ほんとに意味あるんですか?」
「リスク低い人のタミフル的な効果しかないんじゃないすか?」
…なるほど、確かにまじめに調べたことはありませんでした。
ということで、今回は溶連菌治療を行なう意義について考えてみたいと思います。
以下の3点に集約されます。
①症状の軽減
②化膿性合併症の発症率低下
③リウマチ熱予防
症状の軽減
・ぶっちゃけ、抗菌薬なしでも3-5日で改善する
→抗菌薬投与で12-16時間の有症状期間軽減あり
(Clinical Mimics: An Emergency Medicine-Focused Review of Streptococcal Pharyngitis Mimics./Clin Microbiol Infect. 2012 Apr;18 Suppl 1:1-28./Cochrane Database Syst Rev. 2006 Oct 18;(4):CD000023.)
なんかタ〇フルみたいな感じですね。。。
化膿性合併症発症率低下
・NNTに関してはかなり幅がある
◦扁桃周囲膿瘍…NNT 55-225
◦中耳炎…NNT 25-200
‣Cochrane reviewでは抗菌薬投与で二次性中耳炎減少の効果ありと報告
…3%(1975年)→0.7%(2013年)
(Clinical Mimics: An Emergency Medicine-Focused Review of Streptococcal Pharyngitis Mimics./Ann Emerg Med. 2005 Jan;45(1):82-4./Am Fam Physician. 2014 Jul 1;90(1):23-4.)
・抗菌薬投与による減少はないとの報告もある
(BMJ. 2013 Nov 25;347:f6867.)
う~ん、ないよりましって感じでしょうか?
非化膿性合併症発症率減少(リウマチ熱)
・先進国では抗菌薬投与によりリウマチ熱は非常にまれな疾患となった
◦成人100万人に1人程度
◦現在のデータではNNT1430000(!)
(Clinical Mimics: An Emergency Medicine-Focused Review of Streptococcal Pharyngitis Mimics./Ann Emerg Med. 2005 Jan;45(1):82-4./BMJ. 2000 Jan 15;320(7228):150-4.)
・糸球体腎炎の合併を防ぐことはできない
(Clinical Mimics: An Emergency Medicine-Focused Review of Streptococcal Pharyngitis Mimics./Cochrane Database Syst Rev. 2006 Oct 18;(4):CD000023.)
でも、抗菌薬出さないでのちのち問題になると困るし、やっぱり処方する!ということにはなりそうです。
ちなみに、痛みが強くて食事もできなくて頻回受診なんて人もたまにいます。
咽頭痛に対するステロイド投与
(BMJ. 2017 Sep 20;358:j3887.)
・1426人が対象
◦24時間後、48時間後の疼痛緩和は得られやすかった(complete resolusion)
‣24時間後…22.4% vs 10%(RR2.24)/ NNT8
‣48時間後…60.8% vs 42.5%(RR1.48)/NNT5.5
◦発症から緩和までの平均時間…4.8時間短縮
◦発症から完全寛解までの平均時間…11.1時間短縮
◦副作用に関しては両群とも左右差なし
あまりに強い疼痛に対してはステロイド考慮です。