Circulation. 2018 Nov 13;138(20):2289-2292.より、心電図クイズです。
実際の現場で遭遇したら診断できる自信が…(-_-;)
・25歳女性、失神
◦線維筋痛症、偽性けいれん、側弯症の既往あり
◦pregabalin, oxycodone, lamotrigineが処方されている
・BP50/40mmHg。
・Cre1.6, Na141, K4.8, Mg2.2, Ca9.0。
・受診時心電図は以下のようでした。カリウム高くないのか~。。。
さて、なんでしょう???
受診時の心電図は…HR80、wide QRS、LBBBとRBBBが交互に出現
血圧も低いし、どのように対応したらよいでしょうか?
自分ならカテコラミンいれつつ経皮ペーシング開始するかも…
この症例では以下のように対応しました。
・isoproterenol 0.02γ、重炭酸Na投与が開始された
脈を速くして、何らかの中毒も疑って対応しているということでしょうか。
数日後にnarrow QRSになったがPR延長とQT延長は改善せず
・薬物検査スクリーニングは陰性
◦barbiturates, methadone, phenytoin, lamotrigine, pregabalin, tricyclics, carbamazepin
eslicarbazepine, bupropion
→いずれも処方されたことのある薬剤だったが薬物検査で陰性
症例の結論は、オピオイド離脱症候群に対して市販のLoperamideを内服していたことが発覚し、これによる中毒と判明しました!
答え:ロペラミド中毒
以下にロペラミド中毒についてまとめておきます。
- 薬理学的作用
・μ-opioid receptorを介して作用する
◦human cardiac sodium channel Nav1.5+ human ether-a-go-go-related gene (hERG) potassium channelの高親和性用量依存性阻害
‣QT延長…hERG channel阻害により発症
‣wide QRS…sodium channel阻害により発症
(Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol. 2016 Oct;389(10):1133-7.)
・opioid receptor antagonismとしてnaloxone投与に効果があるかもしれない
- 臨床所見
下記理由から中枢神経系への中毒症状は出にくい
・バイオアベイラビリティが低い(0.3%)
・中枢神経系への移行が悪い
⇔治療域を超えると神経系への影響が出現
…オピオイド症状、心臓への影響(Naチャネル/Caチャネル/Kチャネル阻害)
・多幸感
・呼吸抑制、縮瞳
・QRS延長
・QT延長
(Drug Alcohol Depend. 2013 Jun 1;130(1-3):241-4./Clin Toxicol (Phila). 2014 Nov;52(9):952-7./25935922/Am J Med. 2015 Oct;128(10):1083-6./Pharmacotherapy. 2015 Feb;35(2):234-8.)
(Ann Emerg Med. 2017 Aug;70(2):245-252.)
- 治療
・呼吸抑制/停止→ナロキソン使用はreasonable
(J Toxicol Clin Toxicol. 1997;35(1):11-9./Clin Pharmacol Ther. 1980 Dec;28(6):812-9.)
・QT延長→イソプロテレノール、ペーシング
(Clin Toxicol (Phila). 2014 Nov;52(9):952-7./Am J Med. 2015 Oct;128(10):1083-6./Pharmacotherapy. 2015 Feb;35(2):234-8./Clin Toxicol (Phila). 2015 Jun;53(5):495-6.)
今回の症例のような不安定な状況では、オーバードライブペーシングを試みても良かったかもしれません。
中毒の領域では炭酸水素ナトリウムがやたら流行っているような。
三環系抗うつ薬に対する拮抗薬として有名ですが最近ではいろいろな薬物に対する拮抗薬として使われているようです。
やっぱりよくわからない異様な心電図(Bizarre pattern)の場合には「DIE」を意識して対応するとよいと思います。
・D…Drug
・I…Ischemia
・E…Electrolyte abnormality