りんごの街の救急医

青森県弘前市の救急科専門医による日々の学習のまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。Twitterでも医療系のつぶやきをしています@MasayukiToc

COPD急性増悪への初期対応(J Emerg Med. 2020 Nov;59(5):643-659.)

寒くなってきました。

 

それに伴ってCOPD急性増悪の患者さんも増えてきました。

 

以下のレビューを読んで自分の対応を振り返ってみました。

外来での吸入薬の調整や吸入の指導などについては考えさせられました。

 

Sorge R, DeBlieux P. Acute Exacerbations of Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Primer for Emergency Physicians.

J Emerg Med. 2020 Nov;59(5):643-659.

PMID: 32917442.

 

 

疫学、臨床症状、重症度

COPD急性増悪は、気道の慢性炎症の増悪を反映し、病状の進行/ウイルスや細菌感染症/環境中の刺激物への曝露/周囲の温度の変化などに起因する
 
重度の気流閉塞を特徴とし、呼吸仕事量の増加/ガス交換の異常/低酸素血症(高二酸化炭素血症はあることもないことも)を引き起こす
 ◦呼吸不全時の高二酸化炭素血症の存在は死亡リスクを高める
 
急性増悪の頻度は肺機能低下率と相関している
 ◦単回の増悪であっても肺機能の悪化に寄与する可能性がある
 ◦症状持続期間が長引くと予後不良となる
  ‣改善までに時間がかかるとQOL低下する
  →筋力低下/身体活動の低下が起き、最終的には死亡率増加
 ◦30日以内の再入院があると死亡率はさらに高まる
 
・急性増悪はクラスター発生することがあり、初回の増悪から最初の2か月以内で再増悪のリスクが一番高くなる
 
35歳以上で、喫煙歴や長期の職業曝露などの危険因子の病歴がある患者ではCOPDの可能性を考える
 ◦料理人/タクシーやトラックの運転手/工場勤務や建設業など、定期的に排気ガスや煙にさらされる職業はリスク
 
・急性増悪の主な臨床症状は以下
 ◦息切れ/呼吸困難
 ◦咳嗽
 ◦喘鳴
 ◦喀痰の増加、喀痰の膿性化
 

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重症度は3段階に分類される
 ◦軽症…短時間作用型気管支拡張薬で治療可能
 ◦中等症…短時間作用型気管支拡張薬と抗菌薬やcorticosteroidsにより治療可能
 ◦重症…入院やER受診を要する
 
重症度
呼吸回数
呼吸補助筋使用
酸素投与(FiO2)
PaCO2
pH
軽症
20-30
なし
なし
28-35%
基準値内
基準値内
中等症
30回以上
あり
なし
24-40%
50-60mmHg
基準値内
重症
30回以上
あり
あり
40%以上
60mmHg以上
≦7.25

 

鑑別診断

COPD患者の多くは、心血管疾患/糖尿病/気管支拡張症/悪性腫瘍などの併存疾患がある
 
COPD急性増悪の診断には幅広い鑑別診断を行い、適切な評価を行うことが重要
 ◦不適切な評価により予後を著しく悪化させる
 
・実は、肺塞栓やACSという可能性も考慮しておく
(以下の項目で検査について説明します)
 

標準的な評価

・病歴聴取と身体所見に加えて、以下の検査を行うこと
 ◦血液検査(血液ガスも)…貧血や電解質異常の同定、高二酸化炭素血症の有無
 ◦胸部単純レントゲン気胸/肺線維症/気管支拡張症/肺炎/肺水腫などの検索
  ‣COPDの特徴は、横隔膜平坦化を伴う過膨張した肺野/透過性亢進/滴状心など
 ◦心電図不整脈の有無
 ◦肺超音波呼吸困難の原因検索に寄与する手段
  ‣例えば肺炎でconsolidation、肺水腫を示唆するB lineなど
 
疾患
評価
肺炎
胸部レントゲン/CRPやprocalcitonin
胸部レントゲン/超音波
胸水
胸部レントゲン/超音波
肺塞栓
D-dimer/下肢静脈超音波/造影CT
肺水腫(心疾患由来)
心電図/心臓超音波/心筋逸脱酵素
不整脈(AF/AFL)
心電図

 

 

肺超音波については以下のまとめを参照してください。

呼吸困難の鑑別のためのBLUE protocolなど紹介しています。

appleqq.hatenablog.com

 

 

troponin, BNP, D-dimer, ウイルス検査, PEFR, capnography, ABGを必要に応じて使い分けること
 
心血管疾患の併存が多いため、COPD急性増悪を疑ったときにはtroponinを検査する閾値を低くしておくこと
 
BNPのルーチンでの評価は推奨されない
 ◦うっ血性心不全の既往があったり、身体所見からうっ血の証拠が得られる場合にはBNPが有用かも
 
D-dimerのルーチンでの測定は推奨されない
 ◦上昇していても肺塞栓に特異的とは言えない
 ◦疑いのレベルに応じてD-dimerを使い分け、必要に応じてCTAを行うこと
 
 
D-dimerの使い方や肺塞栓については以下を参照してください。
 
 
インフルエンザシーズンにはウイルス検査を考慮する
※COVID-19の検索も状況に応じて行うこと
 
PEFRCOPD急性増悪の評価に有用
 ◦増悪の頻度を特定するための代替マーカーとして使用可能
 ◦ただし、単独で使用した場合には特異性が弱いため信頼できる診断ツールではない
 
capnographyはETCO2を検出でき、COPD急性増悪患者のモニタリングに有用である可能性がある
 ◦気道閉塞があるためETCO2波形はshark-fin型になる
 ◦ETCO2の増加は、一回換気量に対する死腔容積の比率と関連
 ◦PaCO2の代替としての使用には議論の余地がある

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多くの場合、血液ガスはVBGでよい
 ◦PCO2を測定すると、治療への反応性を評価できる
 ◦ただし、これだけをNIVや挿管の必要性を評価する指標とはしないこと
 ◦人工呼吸器装着を要する呼吸不全やARDS患者ではABGの方が良いかもしれない
 
ABGとVBGには、pH/PCO2/HCO3-については相関がある
 ◦VBGでPCO2 45mmHgであれば高二酸化炭素血症があると判断してよい
  ‣感度100%
 ◦実際、ABGは結構痛いのでVBGで十分なことが多い
 
・パルスオキシメーターは常に監視すること
 ◦SpO2 88-92%程度で維持すること
 

治療

・GOLD2020によれば、急性増悪治療の目標は以下の2点
 ①現在の急性増悪による悪影響を最小限に抑える
 ②その後のイベント発生率を減らす
 
・マネジメントは、重症度と基礎疾患に依存している
・多くの患者(80%以上)は薬物療法により外来治療が行われる
※個人的な印象では、こんなに多くは外来マネジメントされないような…
 

気管支拡張薬

SABA±SAMAは急性期において処方される薬剤ではある
 ◦ただし、そのエビデンスレベルは高くない
 ◦投与方法(ネブライザーまたは加圧式定量吸入器)は治療の効果に影響を与えない
 
・β2作動薬については、短時間よりも長時間作用型(LABA)の方が推奨されている
 
COPD急性増悪の治療の早期にLABA+吸入ステロイド(ICS)を10日間倍量投与することで、発症から30日以内のステロイド使用を75%以上減らすことができる
 
長時間作用型抗コリン薬(LAMA)/LABA±ICSを処方するかどうかは好酸球を含む多因子により決定される
(Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2017 Jun 23;12:1877-1882.)
 
 
好酸球を用いた治療アルゴリズムを孫引きしてみました。
(Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2017 Jun 23;12:1877-1882.)を参照してください。
 
●新規に診断されたCOPD
症候性COPDで中等症~重症LAMA/LABAを第一選択薬として導入
急性増悪発症時…好酸球を参考に治療を考える
 ◦好酸球<300/μL…低用量ICS
  ‣beclomethasone 100µg/puff, 1日2回2プッシュ
 ◦好酸球>300/μL…LAMA/LABAで治療開始し、長期間抗菌薬投与を考慮
  ‣azithromycin 250mgを週3回またはdoxycycline 100 mgを1日1回
 ◦気管支拡張症合併の場合にはcarbocisteineなどの追加投与を考慮
 
●ICS/LABAを使用中の患者
急性増悪発症時…好酸球を参考に治療を考える
 ◦好酸球<300/μL…ICS/LABAを離脱し、LAMA/LABAを開始
  ‣増悪が続けば、長期間抗菌薬投与を考慮
 ◦好酸球>300/μL…ICS/LABAを継続し、LAMAを加える
非急性増悪時…ICS/LABAを離脱し、LAMA/LABAを開始
  ‣徐々に、慎重にモニタリングをしながらICS離脱をすること
 
上記アセスメントをして、救急外来でも処方を変えなくてはならないようです。
日本のように医療へのアクセスがよくて、かかりつけ医受診も翌日可能ならば救急医が吸入薬変更まではしなくてもよいかもしれません。
 
 

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当院で処方するとしたら、以下のような薬剤が選択肢になりそうです。
・LAMA/LABA…スピオルト
・ICS…キュバール、フルタイド、パルミコート
・LAMA…スピリーバ
各施設で使える薬剤を検討しておくと良いと思います。
 

ステロイド

ステロイド全身投与は、肺機能と酸素化の改善/改善までの時間短縮/病院滞在日数の短縮/早期増悪と治療失敗率の低下に関連する
 
・できるならば、経口投与でよい
 ◦そもそものバイオアベイラビリティ―がよい
 ◦静注と比較して同等の効果があり、コストが安い
 
最適なステロイド投与量については議論がある分野
 ◦一般的には、prednisone換算で40-60mg/日を5日間投与することは許容される
 
好酸球が低い患者(<100cells/ml)では効果が低い可能性がある
 

抗菌薬

・実は、投与について議論の残る分野である
 
・抗菌薬は以下の3つの症状がある場合には処方される
 ◦呼吸困難
 ◦喀痰の増加
 ◦膿性痰
 
・一般的には、軽症ならば抗菌薬なしでも管理可能であることがある
 ◦筆者の意見としては、入院を要するほどであれば抗菌薬投与は良い適応と考えている
 ◦高齢者(65歳以上)/中等症~重症/心疾患の併発/1年間に3回以上の増悪がある患者では、抗菌薬の恩恵があるかも
 
CRPは抗菌薬投与による利益があるかを決める補助手段として使用してもよいかも
 ◦軽症~中等症において、4mg/dL未満であれば抗菌薬の効果は乏しいかもしれない
 
・抗菌薬の選択については、地域のアンチバイオグラムや最近の抗菌薬使用歴があるかどうかに基づく
 ◦過去3か月以内に抗菌薬投与歴あり…耐性菌の可能性があるため、別のクラスの抗菌薬治療を考慮
  ‣ただし、過去の投与で良好な反応があった場合には同じ薬剤でも許容される
 
インフルエンザ感染を疑えば、oseltamivirなどを投与
 

酸素療法

・低酸素血症を呈する患者に対する酸素療法は必須であり、SpO2 88-92%を目標に調整
 ◦最近開発されたデバイスは、SpO2をモニタリングして自動で酸素流量を変更してくれるようなものもある
 
CO2ナルコーシスが心配だから、低酸素血症を許容します…というのは良くないです。
低酸素血症は避けるようにしましょう(SpO2 88-92%の範囲で調整)
 
・高二酸化炭素血症やアシドーシス把握については静脈血液ガス(VBG)でよい
 
NIVは死亡率や挿管必要率を低下させ、病院/ICU滞在日数を削減し、合併症を少なくする効果がある
 ◦NIV導入により80-85%の症例で酸素化と呼吸性アシドーシスの改善が見込める
 
HFNCはNIVの一種で、COPD急性増悪により低酸素血症を呈している患者に使用可能
 ◦酸素化と呼気終末肺気量を増加させ、呼吸仕事量を減少させる
CPAPやBiPAPも使用可能
 ◦CPAPはガス交換異常の補正に関してBiPAPに劣る
 
侵襲的人工呼吸器は、以下の場合に考慮される
 ◦NIV治療に失敗
 ◦呼吸停止/心停止
 ◦治療しているにもかかわらず呼吸困難が進行
 

ERでの外来治療失敗に関連する因子

・ERでの治療に反応して帰宅になったものの、治療失敗して2週間以内に再受診する患者は20%ほど
 
・リスク因子を適切に評価して、それぞれに応じた対応が必要がある
 
ER受診に関連する因子
・年齢:55-74歳
・男性
・非ヒスパニック系白人または黒色人種
・保険の状態
・社会的経済的地位
・併存症…うっ血性心不全/糖尿病/うつ病など
 
気管挿管と関連する因子
・NIPPVに耐えられない
・呼吸補助筋を使用せざるを得ない重度の呼吸困難
・呼吸回数>35回/分
・生命を脅かすほどの重度の低酸素血症
・重度のアシドーシスまたは高二酸化炭素血症
・合併症がある…敗血症、肺炎、うっ血性心不全など
 
早期再入院率に関連する因子
・男性
・喫煙の継続
・症状の増悪や活動性の低下など
・PaCO2上昇
・呼吸筋を含む筋力低下
・併存症…うっ血性心不全/肺癌/不安神経症/うつ病/骨粗鬆症/認知症/急性呼吸不全
・ERでの不適切または不十分な治療
・入院期間…<2日または>5日
・複数回の入院歴
・フォローアップの欠如
・30日以内の経口ステロイドおよび抗菌薬の使用

 

入院適応

・ERを受診したCOPD急性増悪患者のうち、40-50%は入院を要する
 
・特に、以下の因子がある場合には入院可能性が高くなる
 ◦高齢
 ◦女性
 ◦heavy smoker
 ◦最近のICS導入
 ◦24時間以内に日常生活に制限が出る
 ◦ER受診時の呼吸回数が多い
 ◦肺炎の合併
 ◦過去2年間で2回以上、COPD急性増悪による入院歴がある
 ◦ステロイド内服治療をされている
 ◦ERでしばしば治療されている
 
・以下の患者に対しては入院治療を考慮する
 ◦重度の症状がある…安静時呼吸困難、RR≧30、SpO2<90%、意識障害
 ◦治療に対する反応性が不十分
 ◦持続/悪化する低酸素血症
 ◦合併症がある…肺炎、心不全不整脈など
 
入院基準
・年齢≧72歳
・女性
・喫煙者または喫煙歴があるもの
・過去2年間に入院歴がある
・ER受診2週間前に、活動制限のある日数が増加
・初期治療に反応性が乏しい
・過去24時間以内にLABA使用の増加
・受診時の重度の症状…頻呼吸/気道狭窄
・心機能の低下
・肺炎や心不全などのリスクが高い併存症がある
・酸素需要の増加
・外来治療のリソース不足
 
ICU入室は以下の患者で考慮
 ◦急性呼吸不全
 ◦呼吸性アシドーシス
 ◦循環動態不良
 ◦人工呼吸器装着を要する
 
ICU入室と関連する因子
・高齢者
・肺炎などの合併
・ショック
・呼吸不全
・臓器不全のマーカー

 

・ER受診時点での予後因子については以下。

 ◦これも参照しつつ外来治療か入院治療かを考える

 
短期間死亡
・年齢>75歳
・男性
・普段からの呼吸困難
・FEV1などにの指標で重症度が高いと判定
・奇異性呼吸
・併存症…低体重/心不全/糖尿病/意識障害
・長期間の酸素療法/NIMV
・下腿浮腫
・アシデミア
・ER受診時のPaCO2>55mmHg
・前年にCOPD急性増悪による入院歴がある
長期死亡
・年齢>75歳
・併存症…虚血性心疾患/悪性腫瘍/心不全
・FEV1などにの指標で重症度が高いと判定
・長期間の酸素療法
院内死亡
・年齢≧70歳
・重症化の徴候
…チアノーゼ/意識障害/下腿浮腫/asterixis/呼吸補助筋使用
・severity index 1 to ≥3
・Dyspnea grade 2-5
・低体重(BMI<20kg/m2)

※severity indexやdyspnea gradeはよくわかりませんでした

 

ERからの帰宅基準/その際に考えておくこと

・以下の患者では入院適応にならず、ERから直接帰宅可能かもしれない
 ◦軽度の症状…労作時呼吸困難、RR<30、SpO2>90%
 ◦初期治療への反応性が良好
 ◦症状が許容できる
 ◦循環動態が安定している
 ◦急性増悪発症前と同等の日常生活を送ることができる
 ◦4時間以内に短時間作用型β刺激薬使用をしなくて済む
 ※一律な基準ではなく、個々の患者で判断すること
 
ERから直接帰宅可能かもしれない患者群
・軽度の症状…労作時呼吸困難、RR<30、SpO2>90%
・循環動態が安定している
・初期治療への反応性が良好
・急性増悪発症前と同等の日常生活を送ることができる
・4時間以内に短時間作用型β刺激薬使用をしなくても済む
 
 
・ERから帰宅させても再受診が見込まれる患者群は以下
 ◦すでにHOT導入されている
 ◦気管挿管の既往があり
 ◦過去1年でER受診が増えてきている
 
運動耐容能は疾患の重症度と死亡リスクの強い指標になる
 ◦外来では、6分間歩行試験などによりHOT適応の恩恵を受ける患者を見極めること
 ◦ただし、患者がベースラインの状態にあるときのみ実施
 
ERでの簡単な歩行試験は入院適応を考えるのに有効かもしれない
 ◦文献的な証拠はないが、軽度の労作で低酸素血症になったり呼吸状態が悪化するような状態で帰宅させても自宅での生活は困難
 ◦軽度の労作により呼吸回数増加/SpO2低下/呼吸困難の増悪があれば入院を考慮するのがよいかもしれない
 
自宅で薬物使用が適切にできるか、在宅支援、肺炎やインフルエンザワクチンを受けているか、かかりつけ医があるかを検討すること
 
・筆者の意見としては以下のようにすることを推奨
 ◦軽症~中等症なら…
  ‣1週間以内のかかりつけ医受診指示  
  ‣禁煙カウンセリングの推奨
  ‣肺炎球菌ワクチン接種
 
・観察研究によれば、COPD急性増悪患者の吸入維持療法をERでは変更していないことがわかった
 ◦GOLDでは、個々の症状やリスクによって維持療法を変更することを推奨している
 
耳が痛い話です。全く吸入薬変更はERではしていませんでした。
前述のようにかかりつけ医受診は簡単にアクセスできるのでお任せがいいような気はしますが、あまり病院受診をしてくれないような患者の場合には救急外来で対応しておいたほうがよいのでしょう。
 
 
維持療法にLAMAを加えておく(LABAに比較して増悪とそれによる入院を減少させる)
 ◦LAMA+LABAの組み合わせは、それぞれの単剤やLABA+ICSに比較して効果的で安全性が高い
・ICSをベースにした治療は慎重に考えること
 ◦長期使用により肺炎/骨粗鬆症/糖尿病などのリスクを増やす
 ◦経済的負担が大きい
 
ERからの不適切な外来フォロー決定により、ER再受診率が増える
 ◦ERから帰された患者の35%が30日以内に再受診する
 
 
COPD患者では薬剤へのアドヒアランス良好な患者は40-60%程度しかいない
 ◦不適切な吸入をしている患者は許容出来ないほどに高く、この傾向は過去40年間に変化がない
 
COPD治療へのアドヒアランスを高めることで以下の効果が見込まれる
 ◦病院受診を2.5%減少させる
 ◦ER受診を1.8%減少させる
 
ERからの退院バンドルにより治療計画の一貫性を改善し、再入院率と死亡率を低下させるため重要性が高い
 
教育
・維持療法とその治療法への理解を確かめる
・治療へのアドヒアランスを確かめる
・禁煙とワクチン接種を指導する
治療の最適化
・急性期治療(ステロイドや抗菌薬)の終了方法について明確にしておく
・吸入器の使い方について指導する
・併存疾患の評価と管理
・酸素療法の継続必要性について評価する
・併存疾患への管理計画を提供する
・全ての臨床的な異常項目の原因が特定されていることを確認する
患者とのコンタクトを取り続ける
・なるべく早期のフォローアップ計画を立てる
・患者のコンプライアンスやアクセス制限の両面から対応を考える
・社会的支援が不十分でないか検討する
 
・ERからの帰宅バンドルについては課題がある
 ◦スタッフ配置とその負担増加
 ◦患者の協力を得なければならない
  
症状増悪時の適切なER再受診時指示をすること
 
 

まとめ

COPDは35歳以上かつ喫煙歴や長期の職業曝露などの危険因子がある人では常に考えること(喫煙歴だけではない!)
COPD急性増悪の重症度は3段階に分類され、それにより治療方針がある程度決定する
COPD患者の多くは心血管疾患/糖尿病/気管支拡張症/悪性腫瘍などの併存疾患を持つことを意識すること
COPD急性増悪の鑑別診断として、肺炎/気胸/胸水貯留/肺塞栓/肺水腫/不整脈などは外せない
 ◦それらを鑑別するための検査を提出すること(troponin, BNP, D-dimer, ウイルス検査, PEFR, capnography, ABGなど)
・血液ガス分析は必要だが、VBGで十分!pH/PCO2/HCO3-についてはABGと相関がある
COPD急性増悪のマネジメントでは気管支拡張薬/ステロイド/抗菌薬/酸素療法について考えること
COPD急性増悪の際に選択する気管支拡張薬は好酸球を参考に投与を考えるアプローチが有効である可能性がある
 ◦維持療法にLAMAがなければ加えておくこと
ステロイド投与は経口でも静注でもよく、prednisone換算で40-60mg/日で5日間投与するとよい
COPD急性増悪に対する抗菌薬投与は呼吸困難/喀痰の増加/膿性痰が揃う場合、中等症~重症例、高齢者や他の併存症がある患者、CRP高値の患者などで考慮する
・酸素投与の目標はSpO2 88-92%ほどでよい
・NIVは死亡率や挿管必要性を低下させ、病院滞在日数を削減し、合併症発症率を低下させる
 ◦HFNCやBiPAPなどを適応を見極めて使用する
・上記に反応しない場合には気管挿管を考慮する
・ERでの外来治療に失敗する可能性が高い因子については特定されている
・入院適応は一律なものがないが、重度の症状がある/治療反応性に乏しい/低酸素血症の持続/肺炎等を合併している場合には考慮される
・ERで軽労作をさせてみてbaselineと同様な様子でなければ入院が好ましいかもしれない
・ERから帰宅させる際には患者教育と治療計画立案を行うこと
 ◦禁煙とワクチン接種の指導
 ◦吸入薬の使用についての指導
 ◦かかりつけ医への早期受診支持
 ◦社会的支援は十分にあるか→なければ介入依頼など
 

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(Emerg Med Pract. 2017 Oct;19(10):1-24.)