なんだか多いインフルエンザ+細菌性肺炎の患者。
またか~と思いながら診療していましたが、なぞにプレドニン40mgも内服していました。いつから内服しているか不明ですが、少なくとも月の単位で内服しているようです。。。
これってステロイドカバーの適応じゃなかったっけ?ということで振り返ってみます。
病態生理的な話
健常者がストレスにさらされた場合
ステロイド長期使用者の場合
・外因性ステロイドによりHPA系にネガティブフィードバックがかかり抑制される
→CRHやACTHが低下し副腎への刺激が低下
→副腎萎縮する
・結果として手術や感染などのストレスに対して本来認められる適切なコルチゾール分泌が低下
…副腎不全やショックや死亡例も報告あり
⇒ステロイドカバーが必要になる
(N Engl J Med. 2003 Feb 20;348(8):727-34.)
ステロイドカバーの適応
ステロイドカバー必須な患者群
・3週間より長期かつPSL≧7.5mg/日のステロイド内服患者
・クッシング症候群の患者
◦満月様顔貌、中心性肥満、バッファローハンプ、皮膚の菲薄化、腹部の皮膚線状など
ステロイドカバー不要な患者群
・投与期間によらずPSL≺5mg
◦生理的なコルチゾール分泌(PSL換算で5mg/日)より少ない場合にはHPA系は抑制されない
・投与量によらずPSL投与が短期間の患者
◦一般的には3週間以内であればHPA系の抑制は少ない
ステロイドカバーをすることには議論が残る患者群
・5mg≦PSL<7.5mg/日かつ3週間より長期投与の患者
◦この患者群はHPA系が正常に機能するか不明でグレーゾーン
◦やっておいても損はないのでは…
(N Engl J Med. 2003 Feb 20;348(8):727-34./Ann Surg. 1994 Apr;219(4):416-25./JAMA. 2002 Jan 9;287(2):236-40.)
「PSL≧7.5mg、3週間以上」が適応として覚えておくべき項目です。
PSL≺5mgであれば不要だし、3週間以内であれば不要です。
グレーゾーンもありますが、困ったときには入れてしまうことが吉なのでは…と個人的には思います。
実際の投与方法
medical or surgical stress
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corticosteroid dosage
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Minor
・鼠径ヘルニア手術
・大腸内視鏡検査
・軽症発熱性疾患
・軽度~中等度の嘔気/嘔吐
・胃腸炎
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hydrocortisone 25mg IV
or
methylpredonisolone 5mg IV
上記を処置当日のみ投与
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Moderate
・開腹胆嚢摘出術
・半結腸切除術
・重度発熱性疾患
・肺炎
・重症の胃腸炎
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hydrocortisone 50-75mg IV
or
methylpredonisolone 10-15mg IV
上記を処置当日に投与し、1-2日かけて即座に減量し、維持量に戻す
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Severe
・心臓胸部手術
・膵頭十二指腸切除術
・肝切除術
・膵炎
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hydrocortisone 100-150mg IV
or
methylpredonisolone 20-30mg IV
上記を処置当日に投与し、1-2日かけて即座に減量し、維持量に戻す
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Critically ill
・敗血症や敗血症性ショック
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hydrocortisone 50-100mg q6hr IV
ショック離脱まで投与(※)
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維持量に加えて上記用量を投与すること。
※SSCG2016 H.CORTICOSTEROIDSの項目には「十分な輸液と昇圧薬に反応がない敗血症性ショックに対しては最大hydrocortisone 200mg/日まで投与を考慮してもよい」と推奨あり
(JAMA. 2002 Jan 9;287(2):236-40.)
ということで今回の患者さんは、インフルエンザ+肺炎だったのでstressはModerateとしてhydrocortisone 50mgを維持量に加えて投与すればよさそうです。