病歴/身体所見
・81歳女性
・2日前からの軽度上腹部痛と腹部膨満感に続く食欲低下/嘔気/嘔吐のためER受診
・腹部視診で膨満を認めた
・metoclopramide 10mg筋注が行われたが腹痛は持続し改善がなかった
検査
・腹部単純レントゲンでは非特異的な腸管ガスと糞便の貯留を認めた
・血液検査…WBC12400/mcL, CRP0.27mg/dL, amylase801U/L, lipase867U/L
・CTにて胃と十二指腸の著明な拡張と胆道気腫を認めた
A)胃と十二指腸拡張(白矢印)、胆道気腫(黒矢印)
B)圧迫されている十二指腸(黒矢印)
診断
胆道気腫と膵炎を合併した上腸間膜動脈症候群
・経鼻胃管による減圧を行なったところ、症状は著明に改善
・膵炎に対してはgabexate mesylate300mgが投与された
・3日間の減圧後、経口摂取を開始して7日後に退院した
・SMA症候群は、十二指腸水平脚がSMAと腹部大動脈の間に挟まれて、近位小腸が閉塞する状態のことを指す
・SMA-腹部大動脈角は通常38-65度ほど
・重症では十二指腸の完全閉塞が起きるため、小腸閉塞と同様の症状を呈する
◦特に急性発症では嘔気/嘔吐、上腹部痛、吃逆などが起きる
(Int J Surg Case Rep. 2017;34:84-86.)
・十二指腸の部分的閉塞により胃と十二指腸に粥状消化物が蓄積
→胃拡張により大動脈-SMA角による圧迫が増悪
→十二指腸拡張によりOddi括約筋が弛緩
→腸管ガスが胆道に入り、胆道気腫を発症する可能性がある
…同時に閉塞による膵炎を発症することがある
胆道気腫と膵炎の原因としてのSMA症候群でした。
SMA症候群は以前にも扱いました。
まとめ
・SMA症候群により胆道気腫や膵炎などを発症することがある