病歴/身体所見
・健康な女性から40週5日で吸引分娩により生まれた3140gの男児
・Apgar scoreは3-7-7だった
・蘇生は酸素投与のみで改善
・当初身体所見からは特に異常が指摘できなかった
・生後30時間で右半身の斑状出血と臍上部に青色斑が出現した
検査所見
・患児のHbは16.7→14.5g/dLに減少していたが凝固機能は正常、肝逸脱酵素は軽度上昇のみ
・腹部単純レントゲンは異常なし
・超音波検査にて少量の腹水と陰嚢水腫を認めた
陰嚢の超音波検査
・8mmほどの水腫(矢印)、正常な精巣(☆:捻転なし)、腹膜鞘状突起(矢頭)
診断
腹腔内出血
・保存的加療が行われ、7日後に退院となった
(APSP J Case Rep. 2013 Dec 1;4(3):53./N Engl J Med. 2011 Nov 10;365(19):1824.)
・右陰嚢の暗青色への変色…Bryant's sign(矢印)
・臍上部の緑青色への変色…Cullen's sign(矢頭)
また、別の症例ですが鼠径部に出血斑を認めることもあります。
(N Engl J Med. 2011 Nov 10;365(19):1824.)
・肝臓/副腎/脾臓など由来の周産期腹腔内出血は分娩時処置/仮死/蘇生などにより発症することはめったにない
(APSP J Case Rep. 2013 Dec 1;4(3):53./N Engl J Med. 2011 Nov 10;365(19):1824./Semin Fetal Neonatal Med. 2019 Dec;24(6):101047./Pediatr Clin North Am. 2004 Aug;51(4):1169-86, xii.)
(Semin Fetal Neonatal Med. 2019 Dec;24(6):101047./Pediatr Clin North Am. 2004 Aug;51(4):1169-86, xii.)
・多くは保存的加療となるが、不安定な場合には手術を要することもある
小児科研修で教わった「全身を脱がして観察すること」はとても重要ですね。
あとはこれを蒙古斑と考えてしまわないかどうか(笑)
まとめ
・小児の診察は全身を脱がせて観察せよ
・腹部や陰嚢の青色斑は腹腔内出血を示唆する
・上記所見は晩期症状であることに注意を要する