病歴/身体所見
・24歳女性
・外でランニングをした後に手が変色したとしてER受診
・-19度の気温の中で90分間ランニングしてから、手指に掻痒感と青みがかった変色が出現したという
・手指を温めてみたが変色が悪化しているという
・両側手指のDIPおよびPIP関節に疼痛を伴わない変色を認めた
◦手指は触ると冷たかった
◦運動、感覚には問題なく、CRT正常、Allen's test陰性
検査
・血液検査を行ったが炎症反応や抗体検査は陰性
診断
原発性acrocyanosis(肢端チアノーゼ)
・リウマチ科にコンサルトされ、原発性acrocyanosisと診断された
・寒冷環境での運動を制限するようアドバイスされ外来フォローとなった
・寒冷地では重症低体温症からRaynaud現象などの緊急性の低い疾患まで、さまざまな環境曝露による病態によりER受診がされる
・原発性acrocyanosisは、寒冷環境への曝露による慢性的な皮膚小動脈の血管攣縮とそれに伴う毛細血管拡張が原因でチアノーゼを起こす機能性末梢性血管障害である
(Vasc Med. 2011 Aug;16(4):288-301./Indian J Dermatol. 2013 Nov;58(6):417-20.)
・原発性acrocyanosisはまれな疾患であるため正確な有病率は知られていないが、寒冷地の若年女性に報告が多い疾患
(Vasc Med. 2011 Aug;16(4):288-301.)
・寒冷刺激により引き起こされうる四肢遠位の対称性かつ無痛性の変色が特徴的
・原発性acrocyanosisは末梢性チアノーゼの原因であるが、二次性acrocyanosisとの鑑別をしなければならない
◦Raynaud現象やCOVID-19など
‣Raynaud現象…皮膚色変化が比較的短時間、症状が非対称性、発作性の蒼白
‣COVID-19…疼痛を伴う、nifedipineにより症状が改善する
(Vasc Med. 2011 Aug;16(4):288-301./J Am Acad Dermatol. 2020 Aug;83(2):486-492./CMAJ. 2020 Jul 13;192(28):E804.)
そういえばCOVID toesなんてありましたね。
・それ以外の二次性acrocyanosisの除外を行うこと
◦結合組織病、低酸素血症、薬物への曝露など
(Vasc Med. 2011 Aug;16(4):288-301./J Am Acad Dermatol. 2001 Dec;45(6 Suppl):S207-8./J Am Acad Dermatol. 2020 Aug;83(2):486-492.)
・診断確定されたら禁煙を含むライフスタイルの変更、寒冷刺激からの回避などについてカウンセリングを受ける必要がある
(Vasc Med. 2011 Aug;16(4):288-301.)
写真を見ると大した変化じゃなさそうだし、治らなかったら皮膚科行ってね~で終わらせてしまいそうですが、それなりに鑑別があるんですね。
最初は内科に見てもらった方がよいでしょうか。
まとめ
・寒冷曝露後の四肢末梢の無痛性対称性変色では原発性acrocyanosisを疑う
・鑑別すべき疾患としてRaynaud現象、COVID-19、結合組織病、低酸素血症、薬物への曝露などをあげて除外する必要がある