病歴/身体所見
・4か月男児
・6週間にわたり増悪する皮疹のためクリニックを受診
・患児は完全母乳栄養
・腹部/四肢/会陰部/顔面に境界明瞭でわずかに盛り上がった紅色局面を広範囲に認めた
検査
・皮膚生検にて亜鉛欠乏症を示唆する所見を認めた
診断
亜鉛欠乏症による皮膚炎
・本症例における原因は不明であった
◦母親の血清亜鉛濃度は正常範囲内であった
・亜鉛製剤が処方され、5日以内に完全に皮疹が消失した
・亜鉛欠乏症は診断さえつけば容易に治療可能な病態
・難治性アトピー性皮膚炎/膿痂疹やその他の湿疹性疾患との鑑別を要する
亜鉛欠乏症の診療指針2018も読んでみました。
診断基準
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1.下記の症状/検査所見のうち、1項目以上を満たす 1)臨床症状/所見 皮膚炎/口内炎/脱毛症/褥瘡/食欲低下/発育不全 性腺機能不全/易感染性/味覚障害/貧血/不妊症 2)検査所見 血清ALP低値 2.上記症状の原因となる他の疾患が否定される 3.血清亜鉛値 3-1…60mcg/dL未満:亜鉛欠乏症 3-2…60-80mcg/dL:潜在性亜鉛欠乏 ※血清亜鉛は、早朝空腹時に測定することが望ましい 4.亜鉛を補充することにより症状が改善する |
確定診断:上記項目の1.2.3-1.4.を全て満たす場合に亜鉛欠乏症と判断
※3-2を満たす場合には潜在性亜鉛欠乏症と診断
・亜鉛補充中は銅や鉄を定期的に検査すること
◦亜鉛投与により銅欠乏/鉄欠乏をきたしうる
◦亜鉛の長期大量経口投与は銅や鉄の腸管での吸収を阻害する
◦銅欠乏では白血球減少も生じる
まとめ
・亜鉛欠乏症により皮膚炎を呈することがあり、小児では難治性アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚疾患との鑑別を要する
・血中ALP低下が診断のヒントになる可能性がある
・亜鉛投与により容易に改善する疾患ではあるが、長期投与により銅欠乏/鉄欠乏を発症しうるため定期的なモニタリングを要する