りんごの街の救急医

青森県弘前市の救急科専門医による日々の学習のまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。

造影剤投与時の注意点 American College of Radiology Manual on Contrast Mediaより 前投薬、血管外漏出した場合の対応

造影剤投与時の注意点について②です。

アレルギー対応で前投薬は意味あるのか?やるならどのように投与するか?

細い血管に頑張ってルート確保したけど血管外漏出してしまったらどうする?

 

これらの疑問について前回と同様ACRのmanual on contrast mediaでどのような推奨があるか調べてみました。

https://www.acr.org/Clinical-Resources/Contrast-Manual

 

 

造影剤投与前の検査や前投薬

・造影剤の皮内テストを行うことはリスク減少に関与しない

 

corticosteroid投与のbenefit

・high osmolality iodinated contrast mediumに関してはcorticosteroid投与により副作用を減らすことがRCTで報告あり
 ◦しかし、現代ではこの造影剤は使用されていない
 
low osmolality iodinated contrast medium投与前にcorticosteroid投与により軽度の副作用は減少させる報告あり
 ◦しかし、中等症~重症の副作用については評価不十分
 
・大した予防効果はないが多くの専門家は投与を推奨している
 ◦重度の反応を抑えるためのNNT…569-50000
  ‣mildなものを含めるとNNT69
 
・結論…軽症アレルギー反応を減らすことはできるかもしれないが中等症~重症に関してはあまり効果がなさそう

corticosteroid投与のrisk

・前投薬のリスクはあまり大したことない
 ◦一過性白血球上昇
 ◦一過性高血糖(24-48時間程度)
  ‣非糖尿病…+20-80mg/dL
  ‣糖尿病…+100-150mg/dL
 ◦感染症リスクになるかどうかは疑わしくわかっていない
 
・特に問題となるのは診断の遅れが出てしまいがちなこと
 ◦病院滞在時間延長
 ◦院内感染症発症率増加
 ◦CT撮影までの時間延長
 ◦費用増大
 
ジフェンヒドラミンは眠気が出やすい
 ◦自動車運転をする人には投与しないこと
 
・結論…目くじら立てるほどのリスクはない
 

Breakthrough Contrast Reaction 

・前投薬では全ての造影剤関連反応を防ぐことはできない
 
・前投薬後に発症する造影剤関連アレルギー反応を「Breakthrough Contrast Reaction」という
 
造影剤アレルギー既往のために前投薬された患者のbreakthrough contrast reaction発症率は2.1%
 ◦健康集団の約3-4倍ほどの発症率
 ◦アレルギー反応以外のためにpremedicationされた患者群では0%であった
 
・多くの患者(最大81%)ではbreakthrough contrast reactionの重症度はそれまでの反応と同等 
 ◦重症の反応発症率は1%未満
 
・多くの患者(最大88%)ではbreakthrough contrast reactionを起こした患者では繰り返すことはない
 ◦もし発症した場合にはその重症度はほぼ変わりなし
 

前投薬の戦略

・多くの場合には経口的前投薬が推奨される
 ◦費用が安い
 ◦投与しやすい
 ◦文献的エビデンスが高い
 
・経口的前投薬ではmethylprednisoloneが使用される
 ◦投与必用期間ははっきりしていない
 ◦造影剤使用12時間前/2時間前に32mg投与は効果的であった
 ◦造影剤使用2時間前に32mg投与はあまり効果的ではない
 
・非選択的抗ヒスタミン薬投与…造影剤使用1時間前に投与
 ◦蕁麻疹、血管浮腫、呼吸器症状の発症を減少させる効果あり
 ◦選択的抗ヒスタミン薬についてはよくわかっていない

 前投薬の適応

・前投薬により全ての反応を防ぐことができるわけではない
 ◦特に中等症~重症の反応/死亡を防ぐことに関してあまり効果が証明されていない
 →riskとbenefitを考えて対応することが必要
以下の状況では、12時間前の前投薬を考慮する
 ◦同種類の造影剤に対するアレルギー様反応が以前に出た外来患者
 ◦同種類の造影剤に対するアレルギー様反応が以前にでたER/入院患者で、前投薬による治療の遅れが許容できる場合
経静脈的前投薬が考慮される患者
 ◦同種類の造影剤に対するアレルギー様反応が以前に出た外来患者かつ前投薬がされておらず、これによる予定変更が難しい場合
 ◦同種類の造影剤に対するアレルギー様反応が以前にでたER/入院患者で、前投薬による治療の遅れが許容できない場合
・緊急的な状況では前投薬もできない場合がある
 ◦この場合には造影剤投与中は蘇生チームが待機して対応すること
・基本的には重度の反応が出た場合には次回からは相対的禁忌となる
以下の患者群に対するルーチンの前投薬/必要な造影剤投与の回避は推奨されない
 ◦魚介類や別の種類の造影剤へのアレルギー既往
 ◦喘息
 ◦季節性アレルギー
 ◦食物や薬物へのアレルギー

具体的な投与方法~時間的猶予がある場合~

①造影剤投与13時間/7時間/1時間前にpredonisone 50mg PO
 +diphenhydramine 50mg 1時間前に投与
 
②造影剤投与12時間/時間前にMethylprednisolone 32mg PO
 +diphenhydramine 50mg 1時間前に投与
 
③①のレジメンをhydrocortisone 200mg IVに変更して投与 
※経口投与できない場合
※diphenhydramineへのアレルギーがある患者では投与しなくてよい
・どちらのレジメンが優れているかのtrialはないが同等の効果とされている

具体的な投与方法~時間的猶予があまりない場合~ 

①Methylprednisolone 40mg or hydrocortisone 200mgを即座に投与し、造影剤投与まで4時間毎に投与
 +diphenhydramine 50mg 1時間前に投与
※およそ4-5時間はかかるレジメン
 
②Dexamethasone 7.5mgを即座に投与し、造影剤投与まで4時間毎に投与
 +diphenhydramine 50mg 1時間前に投与
※Methylprednisoloneにアレルギーがある患者で有用、およそ4-5時間はかかるレジメン
 
③Methylprednisolone 40mg or hydrocortisone 200mg +diphenhydramine 50mgを造影剤投与前1時間ごとに投与
※4-5時間以内に完了できるレジメンだが効果についてエビデンスはない

前投薬の時間が確保できない場合

・前投薬を逃してしまうことがしばしば経験される
 →これに関してはエビデンスがない分野なので対応は個別化
・一般的には、最低でも造影剤投与4-5時間前にcorticosteroid投与が行われ、4-8時間毎に繰り返す必要がある
・diphenhydramineはオプション

効果的なのは同クラスの中で製剤を変更すること!

・造影剤への副作用が出たことがある患者では、同クラスの中で種類を変更することはreasonableかもしれない
 ◦前投薬と組み合わせることで最大効果が得られる
 

造影剤の血管外漏出

・効果的な治療法は知られていない
 
加熱 vs 冷却
 ◦どちらが優れているというエビデンスはない
 ◦多くの外科医は冷却を推奨しているという現状
 ◦冷却派…除痛、潰瘍サイズを減少させられる
 ◦加熱派…血流を改善させ造影剤吸収を促進させる
 
投与した留置針から吸引することは効果的だという証拠もない
 
corticosteroidの局所注射についてもエビデンスなし
 
・Hyaluronidase使用も数例報告があるが効果は乏しい
 
・以下の場合には追加の治療が必要になる可能性がある
 ◦疼痛や腫脹の増悪
 ◦感覚鈍麻の出現
 ◦関節可動域制限
 ◦皮膚潰瘍
 ◦神経学的所見/皮膚循環の異常
 
緊急で外科的介入を要するのは以下の場合
 ◦進行する腫脹や疼痛
 ◦CRT遅延などの皮膚循環の低下
 ◦関節の可動域制限
 ◦皮膚潰瘍、水疱形成
 ◦感覚鈍麻…compartment症候群の初期症状
 

まとめ

・前投薬により軽症のアレルギー反応は抑えることができるかも

・でも、中等症~重症ではあまり意味なし

・もしも前投薬する場合には効果が出るまでには最低4-5時間は欲しい

・前投薬に加えて、以前にアレルギー反応が起きた製剤とは別の製剤を使用することでその効果が最大になる

・造影剤が血管外漏出したら冷やしたり温めたり。局所ステロイドは効果なし。

・造影剤の血管外漏出時にはcompartment症候群発症に注意

 

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