造影CTを撮りたい!
でも、
甲状腺機能亢進症や気管支喘息の既往を患者から申告されたら…?
メトホルミン飲んでたら…?
などなど気になることはたくさんあります。
上記の質問にはっきり答えられなければ一読をオススメします!
American College of RadiologyのManual on Contrast Mediaから
救急医療の分野で特に重要な部分を抜粋しました。
https://www.acr.org/Clinical-Resources/Contrast-Manual
造影剤使用時のアレルギーに関して
造影剤アレルギーの既往
・ヨード/ガドリニウム造影剤によるAllergic-like reactionはそれほど多くはない
◦ヨード…0.6%:重症は0.04%
◦ガドリニウム…0.01-0.22%:0.008%
・リスクファクターが存在する場合には、アレルギー反応が出る可能性が上昇する
◦造影剤アレルギー既往…同様の造影剤使用により発症リスクは5倍
‣アレルギーがでたものと同様の造影剤を使用することは最大のアレルギー発症リスク
◦貝類やポビドンヨードへのアレルギーはリスクにはならない
◦異なる種類の造影剤(ヨード、ガドリニウム)では交差反応はない
気管支喘息
・喘息既往は造影剤アレルギーリスクを増大させる
◦気管支攣縮が起こりうる
心疾患
・以下の重度の心疾患を持つ患者では、アレルギー反応がおきるとその後の心血管イベント発症率を増加させる可能性あり
◦うっ血性心不全
◦重度AS
◦不整脈
◦原発性肺高血圧症
◦心筋症
不安
・造影剤投与後の合併症発症率は不安を感じる患者で有意に多い
・軽度の合併症については、投与前に安心させることで減少させることができるかもしれない
年齢/性別
・新生児、乳児、小児、高齢者ではそれ以外の患者に比較してアレルギー反応はみられにくい
・男性は女性に比較してアレルギーが見られにくい
β-blocker
・βblockerの使用は以下の事象と関連がある可能性が指摘されている
◦アレルギー反応出現の閾値を低下させる
◦アレルギー反応の重症度を上げる
◦アドレナリン治療への反応性を低下させる
・造影剤検査前に投薬を中止する必要はない
鎌状赤血球症
・造影剤投与によりacute sickle crisisのリスクが増加するかもしれない
◦これについてはエビデンスはない
褐色細胞腫
・造影剤投与による高血圧緊急症発症リスクが増加するというエビデンスはない
重症筋無力症
・造影剤使用と重症筋無力症増悪について関連性ははっきりしていない
◦関連がないという報告もあれば関連するという報告もある
‣造影剤使用から45日間の観察で6%が増悪(非使用群では1%)
・禁忌かどうか議論がある分野である
甲状腺機能異常
◦しかしながら、これが起きることは非常にまれな事象
・よって、甲状腺機能亢進症患者への造影剤使用を制限することや前投薬などは推奨されない
・ただし、以下の場合には注意を要する
◦甲状腺クリーゼを来している場合には造影剤への曝露によりその悪化が見られうるため避けるべき
‣前投薬は効果的ではない
◦放射性ヨウ素治療を検討/実施している患者では、造影剤投与がそれらに影響を及ぼす可能性あり
‣wash out期間を設けること
メトホルミン
・メトホルミン関連乳酸アシドーシスが最大の副作用
◦0.084例/1000人/年
◦死亡率は50%と高い
◦ほぼすべての症例で、1つ以上の使用に際する禁忌が見過ごされているために発生している
‣腎機能障害、心血管疾患など
◦投与が適切になされた場合の乳酸アシドーシス発生率ははっきりしていない
・メトホルミン内服自体が乳酸アシドーシスの独立したリスク因子ではない
◦ただし、造影剤腎症発症の際には問題になりうるかも
・造影剤使用の際にはメトホルミンは一時的に中止するようFDAからの勧告あり
・造影剤腎症を発症した場合にはメトホルミン蓄積がおこり、結果として乳酸アシドーシスを引き起こしうる
メトホルミン内服患者への造影剤投与~実際の対応~
・メトホルミン内服患者ではそれ以外の患者と比較して造影剤腎症発症率が高いわけではない
・造影剤はCKD患者に対しては腎障害を助長する可能性を秘めている
・適切にメトホルミンが投与されている患者に関しては造影剤投与後の乳酸アシドーシス発症の報告はない
・メトホルミン内服患者はeGFRにより2つに分類される
◦Category1:AKIなし、eGFR≧30
→メトホルミン中止の必要なし、腎機能フォローなどの必要なし
◦Category2:AKIあり、stage 4-5のCKD(eGFR<30)
→造影剤投与前に一時的に中止して、投与後48時間以上経過して腎機能の悪化がない場合に再開
・ガドリニウムの場合にはメトホルミン中止の必要はない
まとめ
・造影剤アレルギー既往があれば造影剤投与によるアレルギー反応発症リスクは5倍(あたりまえ)
・異なる種類の造影剤(ヨード、ガドリニウム)では交差反応なし
・喘息既往も造影剤アレルギーリスク増大させる
・β-blockerはアレルギー反応出現の閾値低下/重症化/アドレナリン治療への反応性低下と関連
・褐色細胞腫や重症筋無力症への造影剤投与と症状の増悪についての関連性ははっきりしていない
・甲状腺機能亢進症患者への造影剤使用制限や前投薬は推奨されない
◦甲状腺クリーゼを来している場合には悪化の可能性があり避けるべき
・メトホルミン内服患者ではそれ以外の患者と比較して造影剤投与後腎症発症率が高いわけではない
・適切にメトホルミンが投与されている患者に関しては造影剤投与後の乳酸アシドーシス発症の報告はない
→eGFR≧30ではメトホルミン中止の必要なし
・eGFR<30なのにメトホルミン投与されている患者では造影剤投与後48時間以上経過して腎機能の悪化がなければ再開(別の糖尿病治療薬への変更が好ましいと思うが…)
以下の記事もどうぞ!
造影剤使用時の注意点②~前投薬、血管外漏出した場合の対応~
https://appleqq.hatenablog.com/entry/2019/06/06/070000
腎機能障害がある患者への造影剤使用