(Lancet Neurol. 2018 Feb;17(2):174-182.)
一般的にはmetoclopramideやNSAIDs、sumatriptan(serotonin receptor agonists)などが使用されていますが、さらなる代替療法としてketamine, propofol, magnesiumが注目されています。
(Ann Emerg Med. 2017 Feb;69(2):202-207.)
(Ann Emerg Med. 2001 Dec;38(6):621-7.)
これまでにはmagnesiumは片頭痛治療薬としてplacebo, metoclopramide, prochlorperazineなどと比較検討されており、いずれの研究でも安全性と有効性が示唆されており、診療ガイドラインでも推奨があります。
(Ann Emerg Med. 2001 Dec;38(6):621-7./J Emerg Med. 2000 Apr;18(3):311-5./Headache. 2001 Feb;41(2):171-7./Cephalalgia. 2002 Jun;22(5):345-53./Cephalalgia. 2005 Mar;25(3):199-204./J Emerg Med. 2015 Jan;48(1):69-76./Headache. 2015 Jan;55(1):3-20./Headache. 2012 Jun;52(6):930-45.)
Metoclopramideは第一選択薬としてよく用いられていると思いますが、prochlorperazine, magnesiumとともに同じ母集団の中でこれら3剤を比較検討した研究はありませんでした。
それを検討したのがこのMAGraine trialです。
Kandil M, et al. MAGraine: Magnesium compared to conventional therapy for treatment of migraines.
Am J Emerg Med. 2021 Jan;39:28-33.
PMID: 33041146
・single-center, prospective, double-blinded, randomized-controlled, three-armed trial
・2019年8月~2020年3月、アメリカの単施設での研究
・対象…18歳以上、片頭痛または頭痛を主訴にERを受診
※二次性頭痛がないか救急医により検索された
・除外…妊娠、腎不全、薬剤へのアレルギー
・患者は以下の3剤のうちいずれかを無作為に割り付けられ投与された
◦magnesium sulfate 2g
◦metoclopramide 10mg
◦prochlorperazine 10mg
◦いずれの薬剤もD5W50mlに溶解され20分かけて点滴静注された
・primary outcome…30分後の疼痛の変化(NRSによる評価)
・COVID-19流行の影響で、最終的に157人だけが対象となった
・患者のbaselineに差はなし、患者の1/3が前兆ありのタイプ
・患者の半数がER受診前に鎮痛薬を内服していた
◦acetaminophen, NSAIDsが中心であった
・baselineの疼痛中央値はわずかにprochlorperazineが高い傾向にあったが有意差なし
・30分、60分、120分でのNRSの変化は、治療群間で有意差なし
・事後非劣性分析により、magnesiumは他の治療法と非劣性と判断された
・ER滞在時間/追加鎮痛薬投与/副作用でも統計学的有意差なし
◦統計学的には有意ではないが以下は多い傾向にあった
‣prochlorperazine…めまい、アカシジア、不安など
‣magnesium…追加鎮痛薬投与
・Limitationとして以下が指摘
◦研究のpower不足…COVID19の影響もあり、早期に終了したことが影響
◦治療前後に複数の薬剤が投与されている
片頭痛に対してはmetoclopramideをはじめとした複数の薬剤を投与してしまうことが多いですが、特にmetoclopramideは前回投与された際に錐体外路症状などが出たとかで投与を嫌がる人もいます。鎮痛薬にアレルギーがあってなかなか使いづらい患者もいると思います。
そんなときにmagnesium投与は選択肢の一つになりそうですね!
今回の患者群もすでに鎮痛薬が投与済みである患者が多かったので、日常診療へ応用しやすいかと思いました。
大した副作用もないため、一般的な鎮痛薬に効果がない患者に使ってみるというような治療選択肢の一つとして持っておくとよいのではないでしょうか?