りんごの街の救急医

青森県弘前市の救急科専門医による日々の学習のまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。

Clostridioides (Clostridium) difficile 腸炎

抗菌薬を無駄に出されている高齢者は、この弘前地域でもとても多い印象です。

抗菌薬による弊害として困るものの一つとしてCD腸炎があります。

 

救急分野では死ぬ病気として有名です。

えっ、そんなことになっちゃうの⁉と思った人は読んでみてください!

自験例では2人ほど急性期に亡くなられた人を見たことがあります。急激に悪化します。

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IDSAからガイドラインを中心にみていきましょう。これまで積読にしていました…。

個人的にはNEJM2015にreviewとして出ていたものからそれほどupdateできていませんでした。ガイドラインでは分類が簡略化されていて以前よりわかりやくす感じました。 

あとどうでもいいですが、ちょっと名前が変わったらしいです。浸透しなそう。

 

 

疫学

・Clostridioides difficile…嫌気性、グラム陽性、芽胞形成性、毒素産生桿菌。
 ◦細菌自体は無毒だが毒素が悪さをする。
 ◦BI/NAP1/027型はニューキノロンに高度耐性を持ち、劇症型CDIになりうる
  …死亡率は3倍に達する
  ‣NAP1 strainは北米のCDIの28.4%を占める
(Clin Infect Dis. 2014 May;58(10):1394-400.)
・感染は芽胞を介して生じ、酸・熱・抗菌薬に耐性を示す
・健常人では1-4%が常在菌として存在
 ◦腸内細菌叢がCD Colonizationを阻害しており、Toxin産生も抑制している
 ◦入院患者では15-35%でColonizationあり
(Lancet Infect Dis. 2005 Sep;5(9):549-57./Lancet Infect Dis. 2009 Apr;9(4):237-44.)
市中感染も見られてきており、約1/3が市中感染になってきている。
 ◦市中感染は若年者で抗菌薬使用歴がはっきりしないことが多い
 ◦死亡率は低い傾向にある
 ◦幼児期にコロナイゼーションが起こると免疫系が刺激され人生後半に感染から防御するような作用がある
  ‣幼児期のコロナイゼーションでは感染は生じない(毒素に対するレセプターが腸管に出現していない)
・高齢はリスクファクターとなり、重症度も上がる傾向にある。

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(N Engl J Med. 2015 Apr 16;372(16):1539-48.)
感染関連死亡率…5%、全死亡率…20%
 →結構重症化して致死的になりうる疾患ということを知っておく必要がある
・再発率
 ◦初感染…20%
 ◦過去に複数回感染歴あり…60%
(N Engl J Med. 2015 Apr 16;372(16):1539-48.)
虫垂切除術後では劇症型CDIの際に結腸切除を要する可能性が上昇する
 ◦OR 2.3, 95%CI 1.1-4.7
(Am J Surg. 2015 Mar;209(3):532-5.)
 
重症になるようなCDの型が増えてきているようだし、虫垂切除後の人も注意が必要そうです。
 

リスクファクター

・抗菌薬は知っての通り、リスク。薬剤によりそのリスクの度合いが変わる。

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(N Engl J Med. 2015 Apr 16;372(16):1539-48.)
・そのほかのリスクファクターとしては以下がある
 ◦炎症性腸疾患、過敏性腸症候群
 ◦臓器移植
 ◦化学療法
 ◦CKD
 ◦免疫抑制
 ◦幼児、高齢
 ◦患者との接触
 ◦大腸内視鏡での前処置
 ◦H2 blocker/PPI
 ◦2年以内の入院歴
(N Engl J Med. 2015 Apr 16;372(16):1539-48./JAMA. 2009 Mar 4;301(9):954-62./Mayo Clin Proc. 2012 Nov;87(11):1046-53./CMAJ. 2006 Sep 26;175(7):745-8./CMAJ. 2008 Oct 7;179(8):767-72.)
・抗生剤使用後から急速にリスクは上昇し、20日以内で最多
 ◦特に、6日目以降
 ◦その後、リスクは減少するが2-3ヶ月はリスク上昇が持続
 
処方される頻度が多いからかセフェム系(特にいわゆるDU薬)でのCD腸炎が多い印象があります。NEJMでもvery commonに認定されてます。
 

診断

みなさんはどのような手段を使用して確定診断/除外診断にたどり着きますか?

当院では基本的にはtoxin検査しかやっていないような…。

 

世間的にはmuitistep algorithmが有用とされています。

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(JAMA. 2015 Jan 27;313(4):398-408.)

・multistep algorithmは以下の通り
 ◦GDH+/ toxin+であれば確定診断としてよい
 ◦GDH-/ toxin-であれば診断は除外
 ◦それ以外の場合にはPCRを要する
GDH…CD抗原検査

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(Clin Infect Dis. 2018 Mar 19;66(7):e1-e48.)ガイドラインでの各種検査のサマリ
よく使うCD toxinは感度があまり高くない可能性あり
※toxigenic culture(毒素産生性検査培養)…検体中に毒素産生能力があるCDが存在するか検査
※cell culture cytotoxicity neutralization assay(細胞毒性試験)…検体濾過液などによる培養細胞への毒性がCD毒素に反応する抗体で中和されるかを指標に、検体中のCD毒素の有無を調べる

以下にIDSAガイドラインの推奨について記載しておきます。

・multistep algorithmの一部として便毒素試験を使用することを推奨
 ◦核酸増幅検査(NAAT)単独は推奨されない
(weak recommendation, low quality of evidence)
※multistep algorithm…GDH+toxinやNAAT+toxin検査のこと
診断感度を高めるためにはNAAT alone or multistep algorithmを使うことを推奨
 ◦toxin test単独は推奨されない
(weak recommendation, low quality of evidence)
下痢に対するCD検査を繰り返すこと(特に7日間程度)や無症状の患者への検査は推奨されない
(strong recommendation, moderate quality of evidence)
・糞便中lactoferrinやそのほかの生物学的マーカーでの診断については現時点ではエビデンス不十分
(no recommendation)
 
CD toxin検査は、特異度はそれなりに高いようですが感度がいまいちみたいです。
なので、multistep algorithmで診断するようにした方がよいということになっています。
でも小さな市中病院ではPCRまではなかなかやれないと思います。患者の背景などからどれだけ疑う病歴かどうかも加味して決めるべきなんだと思います。無症状なのに検査をするというようなことも避けたいところです。
 

治療

まずは大前提として以下が勧められます。
原因と考えられる薬物は即座に中止する
(strong recommendation, moderate quality of evidence)
CDIに対する抗菌薬治療はempiricに開始すべき、特に重症CDIを疑う場合には推奨
(weak recommendation, low quality of evidence)
 
今回ご紹介するガイドラインでの抗菌薬治療に関する以下の通りでした。

抗菌薬治療の推奨まとめ

●初回、非重症例(WBC<15000、Cre≺1.5)
・first line
 ◦バンコマイシン  125mg PO QID 10日間
 ◦Fidaxomicin 200mg PO BID 10日間
・second line
 ◦メトロニダゾール 500mg TID PO 10日間
●初回、重症例(WBC>15000、Cre>1.5)
 ◦バンコマイシン  125mg PO QID 10日間
 ◦Fidaxomicin 200mg PO BID 10日間
●初回、最重症例(低血圧/ショック、イレウス、中毒性巨大結腸症)
バンコマイシン 500mg QID PO
 +メトロニダゾール 500mg 8時間ごと 点摘静注
イレウスの場合にはバンコマイシン直腸注を要する
●再発例
・初回例でメトロニダゾールを使用した場合
 →バンコマイシン  125mg PO QID 10日間
・初回にバンコマイシンを使用した場合
 →バンコマイシン  125mg PO QID 10-14日間
 →バンコマイシン  125mg PO BID 7日間
 →バンコマイシン  125mg PO 1回 7日間
 →上記を2-3日ごとに2-8週間で減量して終了
 ◦またはFidaxomicin 200mg BID 10日間
 
初回なのか、再発なのか、重症度はどうなのかでクリアカットに対応が異なります。
当院にはFidaxomicinやメトロニダゾール静注薬はまだございませんでした…。

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(Clin Infect Dis. 2018 Mar 19;66(7):e1-e48.)
 
今回のガイドラインで嬉しかったところは重症度分類が他覚的にわかりやすくなっているところでした。WBCとCreで重症度を分けて、低血圧/イレウスなどがあれば劇症型(以前はsevere, complicatedと称されていました)に分類されるといった具合です。
 
細かいところもしっかり記載されているガイドラインでしたが、今回の記事では重症(特に劇症型)を見逃さないでほしいというメッセージを込めたいので、劇症型CDIについての推奨を載せておきます。

劇症型CDIへの推奨

※劇症型CDI(fulminant)…以前はsevere, compricated CDIと称されていた。低血圧/ショック、イレウス、中毒性巨大結腸症を伴うのが特徴的。
・劇症型CDIに対してはvancomycin経口投与が推奨
 ◦vancomycin 500mg orally 4 times per day
(strong recommendation, moderate quality of evidence)
・劇症型CDIで、イレウスを伴う場合には注腸投与も考慮
 ◦vancomycin 500mgを生食100mlに溶解して6時間ごとに投与
(weak recommendation, low quality of evidence)
・劇症型CDIで特にイレウスを伴う場合にはmetronidazole静注も併用することを推奨
 ◦metronidazole 500mg intravenously every 8 hours
(strong recommendation, moderate quality of evidence)
・重症度が高い場合には直腸以外の大腸亜全摘が考慮される
(strong recommendation, moderate quality of evidence)
・vancomycinによる結腸洗浄は予後を改善しうる代替アプローチである
(weak recommendation, low quality of evidence)

外科治療

・重症度が高い場合には直腸以外の大腸亜全摘が考慮される
(strong recommendation, moderate quality of evidence)
(Clin Infect Dis. 2018 Mar 19;66(7):e1-e48.)
 
・以下の場合には外科コンサルト、手術適応を検討する
 ◦これらの所見があれば超重症と考えること
・中毒性巨大結腸症
・腸管穿孔
・敗血症性ショック
・臓器不全
・薬剤投与によってもCT所見が悪化
・腹膜炎
・薬剤投与後24-72時間以内に反応なし
WBC≧50000
・乳酸≧45mg/dl
Am J Geriatr Pharmacother. 2012 Feb;10(1):14-24.)
 
WBC>15000、低アルブミン血症、AKIは外科的結腸切除と死亡の独立した予測因子
(N Engl J Med. 2015 Apr 16;372(16):1539-48.)
 
重症型を見逃さない!ちまちまバンコマイシン投与しているだけではダメな時もあります!要注意!

 プロバイオティクス

・プロバイオティクスに関しては感染を防ぐという明確なエビデンスはないためルーチンでの使用は避ける
(N Engl J Med. 2015 Apr 16;372(16):1539-48.)
 
でも使いますよね。そんな高価なものでもないし。

 便注入療法

・再発性感染に対して安全で有効と考えられている
・再発患者の90%に有効
・経口または経直腸的に投与する
(N Engl J Med. 2015 Apr 16;372(16):1539-48.)
 
 
 
CDIは超重症化して致死的になりうる疾患です。
低血圧、イレウス、中毒性巨大結腸症は特に要注意です。
あとはWBC高値、アルブミン低値、腎機能障害あたりは重症化/死亡率高値の指標としてチェックが必要です。