今回は、NEJMのCLINICAL PROBLEM-SOLVINGより、
重要ポイントだけを抽出してお伝えします。
(N Engl J Med. 2019 Jan 3;380(1):81-87.)
当院救急科では、毎週クイズ形式でこれをネタに勉強しています。
自分の思考回路を整理するのにとても有効だと思います(^.^)
以下の症例のそれぞれの段落毎に鑑別を考えたりすると面白いです。
症例
71歳女性。局所再発と遠隔転移がある乳がんで放射線治療歴がある。
先週から自覚している進行性の労作時呼吸困難で受診。活動性は急激に低下しており、歯磨き程度の軽度の労作でも息切れが生じる。立ち上がると頭部不快感を自覚するが、失神/頭痛/視覚異常/胸痛/動悸/咳嗽/発熱/悪心/嘔吐/下腿浮腫なし。
☆Learning Point☆①
患者は右小葉性乳頭腺癌と15年前に診断。右乳がん腫瘍摘出術と全乳房放射線療法、シクロフォスファミド、メトトレキセート、フルオロウラシルによる補助療法を施行、続けてアナストロゾールを5年間投与。1年前に右乳房皮膚と右腋窩リンパ節に再発性乳頭腺癌が判明、骨シンチ、CT、超音波検査では転移性腫瘍や心室異常は認めなかった。シクロフォスファミド、ドキソルビシン、パクリタキセルによる化学療法を実施し、右乳房とリンパ節切除を実施。しかし、乳房にはがん残存があり、特に脈管内と皮膚リンパ組織に見られ、6か所の切除腋窩リンパ節すべてに遠隔転移を認めた。続けて、シスプラチン+右胸壁放射線照射を併用、CTによる心筋被曝減量処置も実施。放射線療法は受診1カ月前まで実施され、来院時にはカペシタビンによる治療を開始したところであった。
☆Learning Point☆②
患者は発熱しておらず、HR100, BP121/81, RR15, SpO2 92%(2LN)。
頸静脈は胸骨切痕の上、9cmまで拡張。聴診で心音整、吸気で増強する胸骨左縁で最強の3/6の汎収縮期雑音聴取。
血液検査 Cre0.82, NT-pro-BNP 5841, TnT0.09, WBC6420, Ht30%, Hb10.8, Plt69000.
胸部レントゲン わずかな心拡大あり、浸潤影や胸水、すりガラス影などなし
心電図 洞調律、低電位、不完全右脚ブロック、V2-3で陰性T波
造影CTで、左心室前壁に5-6cmの低吸収性腫瘤を認め、右室流出路を妨害している。右室/左室比≧1。肺塞栓や肺炎、肺臓炎の所見なし。7カ月前の画像ではなかった多発性低吸収性結節が両肺で認められた。
超音波では、EF50%、血栓のように見える等エコー腫瘤が右室に存在する。
心臓MRIでは、5cm*5cmほどの腫瘤が右室内にあり、肺動脈弁までの右室流出路をかん全に巻き込んでいる。ガドリニウム造影にて異質性(heterogenous)造影効果を認めた。
☆Learning Point☆③
診断:放射線関連肉腫
☆Learning Point☆④
個人的には、心臓腫瘍がありそう…というところまでは詰められそうですが、「血栓 vs 腫瘍」で悩んでしまうと思います。
こんな時には心臓MRIの出番なんですね!