りんごの街の救急医

救急科専門医によるERで学んだことのまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。Twitterでも医療系のつぶやきをしています@MasayukiToc

神経ブロック

前回から引き続いて、痛みへのマネジメントです。

 

今回は、ERにおいて役立つ神経ブロックをまとめておきます。

 

強い疼痛を除痛するため、処置をするときの鎮痛などで役立つこと間違いなしです。

 

 

大後頭神経ブロック

患者には下図のような姿勢をとってもらいます。

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大後頭神経は、外後頭隆起から2cm外側/2cm尾側より出ています。

近くに後頭動脈が通っているのでそれを触知できればそのすぐ内側です。

わからなければこの付近を押してみて特に痛むところが大後頭神経が出ているところと考えてもよいです。

 

上記をメルクマールにして0.5-1%キシロカイン2-3mlほどを注入します。

 

片頭痛をはじめとした1次性頭痛への鎮痛として有効で、特に片頭痛に関しては最大で6か月の頭痛予防効果があるとされています。

大後頭神経痛の診断的治療としても有効です。

 

指神経ブロック

指に対する処置として行うことは多いのではないでしょうか。

 

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手の背側の指の付け根部分から針を刺入して、浅め+深めに麻酔薬を注入します。

なるべくなら背側を刺した方が痛みはましみたいです。

これを橈側と尺側の2カ所で行います。

 

2カ所でやらなければならないのが少しネックですが効果はバツグンです。

 

1か所を刺すだけでできる麻酔もあるので紹介します。

 

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手掌側の指の付け根の皮を持ち上げてそこに麻酔薬を3-5mlほど注入します。

指がパンパンになるくらいまで注入すると10-15分後には麻酔できています。

 

開放骨折などの手技の際に、どうしてもうまく処置時の鎮痛ができないときには

両方のやり方を組み合わせるととてもよく鎮痛できることを経験します。

 

後脛骨神経ブロック

これだけは超音波を使ってやっています。

メルクマール法でもできるみたいですが自信ありません。

 

後脛骨神経は足関節内果とアキレス腱の間、脛骨動脈より背側を通過します。

足底全体(あまり内側すぎる、外側すぎる場所はだめです)をブロックできます。

ガラスを踏んでしまった患者の処置などによく役立ちます。

 

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神経はやや高エコー域になっている部分で脛骨動静脈の背側にあります。

ここにキシロカイン5mlほど注入して麻酔します。

※神経自体に刺入するのではなく付近に注射

 

骨膜上神経ブロック

単歯の麻酔としてとても有効です。特に上歯>下歯で有効です。

口唇をめくって歯の中心線上の歯茎に注射をするだけです。

齲歯による疼痛のためERを受診する人がいますが、すぐに歯科に紹介できない状況で試してみるとよいです。

 

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下歯槽神経ブロック

同側の下顎、下口唇付近まで麻酔可能です。
よって、多発性の下顎歯外傷や感染、下顎骨骨折、歯槽堤骨折などで有効です。
 

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下顎切痕を母指で触れながら確認します。
→反対側の第1~2小臼歯付近から下顎切痕に向かってシリンジを進めます。
→1cmほど刺入し麻酔します。
下顎骨にカツッと当てて少し引いてそこに十分に麻酔薬を注入します。
 

眼窩下神経ブロック

同側の顔面中部~上口唇までの麻酔が可能となります。
上口唇の裂創によい適応があります。
vermilion borderを縫合するときには局所麻酔では創面がずれてしまいますので。
 

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眼窩下神経窩は通常瞳孔と同じ線上にあります。
上顎の第2小臼歯あたりから水平に2.5cmほど針を進めて麻酔します。

 

オトガイ神経ブロック

下口唇や顎部分の外傷(特に裂創)に対してよい適応があります。
これもvermilion borderを縫合するときにとても有効です。
 

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オトガイ窩からオトガイ神経が出てきますが、
通常は正面を向いた時の瞳孔と同じ線上(第2小臼歯)にあります。
口腔内から45度の角度で刺入してオトガイ窩に麻酔薬を浸透させます。
 

眼窩上神経ブロック/滑車上神経ブロック

それぞれの神経の支配領域は以下のようになります。

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眼窩上神経はちょうど瞳孔と同じ線上から出ていますので、ここに対してやや内側に針を向けて刺入します。ついでの滑車上神経ブロックもしてしまうことが多いです。
滑車上神経ブロックの狙いはおおよそ眼窩下神経より1.5cmほど内側です。
 

眉毛の部分の縫合の際に有効ですし、帯状疱疹後神経痛なんかにも効きます。

 

耳介ブロック

耳介の裂創処置などの際に有効です。

 

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上図の2(右側)の方法でよくやります。

注意点は側頭動脈穿刺をしないように、耳を取り囲むように麻酔薬を入れます。

 

 

今回はERでよく使う神経ブロックについてまとめました。

これらができるようになるとERでの処置の幅が広がってきますのでお勧めです。