Lancetから衝撃の内容の論文が出ましたので紹介します。
でも、個人的にはこの研究ちょっとヤバいんじゃないかと思います。
最後に私見を記載したいと思います。
Lancet. 2019 Dec 12. pii: S0140-6736(19)32982-4. doi: 10.1016/S0140-6736(19)32982-4. [Epub ahead of print]
Oseltamivir plus usual care versus usual care for influenza-like illness in primary care: an open-label, pragmatic, randomised controlled trial.
研究の概要
インフルエンザ様症状がある患者に抗ウイルス薬oseltamivirを投与することで回復までの時間が短縮されるか？を検証しています。
15のヨーロッパの病院で2016年1月～2018年4月までのインフルエンザ流行期の患者が対象のopen-label, pragmatic, adaptive, randomised controlled trialです。
対象は、1歳以上の"influenza-like illness"の患者で、以下の条件をみたす人です。
・発症から72時間以内の発熱+1つ以上の呼吸器症状+1つ以上の全身症状
◦呼吸器症状…咳嗽、咽頭痛、鼻汁
◦全身症状…頭痛、筋肉痛、発汗、悪寒、倦怠感
除外項目が結構あります。
慢性腎疾患、免疫低下患者、抗ウイルス薬を使用する必要があると判断された患者、入院が必要と判断された患者、薬剤へのアレルギー、2週間以内に待機的手術を予定されている、余命6ヶ月以内、重度肝不全、妊婦、授乳婦です。
ここに突っ込みどころがあるんですが、後ほど。
最終的にusual care群1533人/oseltamivir群1526人が対象となりました。
このうち、1590人（52％）がPCRでインフルエンザの確定診断となっています。
primary outcomeは、発熱や全身症状がなくなり日常生活が送れるようになるまでの時間であり、oseltamivir群で1·02日(95% BCrI 0·74-1·31) 有意に短縮しました。
（HR 1·29, 95% BCrI 1·20-1·39）
私見
よし、これならインフルエンザ迅速検査なんてする意味ないじゃん！
なにも考えずにタミフル出しちゃえばいいんじゃない？と思う一方で、
懸念があります。
健康な成人にはタミフル使用はせずに体を休めて栄養をとることが最大の治療ですと
外来でよく患者に話しています。
でも、今回の除外項目を見ると、タミフルを必要とする人に限って除外されています。
嘔気などの副作用も出てしまいますし…。
結論としては、この研究意味あるん？と思ってしまいました。
