病歴/身体所見
・95歳女性、施設入所中
・CPAのためERへ搬入
・関節リウマチ既往あり
・初期波形はPEAであったが搬入時にはROSCしていた
◦HR160bpm, BP116/57mmHg
・頚静脈怒張を認めた
・経胸壁心エコーにて、右室拡大と右心房内血栓を認めた
・造影CTにより巨大な両側肺動脈内血栓と右心房に蛇様の造影欠損を認めた
診断
肺塞栓/右房内血栓
・外科治療に耐えられない状態と判断し、血栓溶解療法を行った
・受診から5時間後に再度CPAに陥り、最終的に死亡した
◦蘇生中に右心房内血栓が消失しており、これが肺動脈を閉塞させたと考えられた
・右心可動性血栓(Mobile right heart thrombi:MRHT)は肺塞栓の比較的まれな合併症
◦症例の3-23%ほどに見られる
◦死亡率は21.3%にものぼる
(Am J Emerg Med. 2018 Jun;36(6):911-915./Proc (Bayl Univ Med Cent). 2017 Jan;30(1):54-56.)
・MRHTの適切なマネジメント法は不明瞭なところがあるが、血行動態不安定なPEを伴う場合には血栓溶解療法が推奨される
◦全身血栓溶解療法は抗凝固療法に比較して総死亡率が低い
‣OR, 0.53; 95% CI, 0.32–0.88; 2.17% vs 3.89%; NNT: 59
(Chest. 2016 Feb;149(2):315-352./Eur Heart J. 2020 Jan 21;41(4):543-603./JAMA. 2014 Jun 18;311(23):2414-21.)
・CPRにおいても血栓溶解療法が推奨
◦ROSC率上昇/24時間生存率上昇/生存退院率上昇/長期神経学的予後良好と関連
(Resuscitation. 2006 Jul;70(1):31-6.)
・血行動態不安定な場合にはECMOも考慮すべし
(Am J Emerg Med. 2018 Jun;36(6):911-915./Proc (Bayl Univ Med Cent). 2017 Jan;30(1):54-56./Eur Heart J. 2020 Jan 21;41(4):543-603.)
日本からの報告らしく超高齢者です。
私の地域では報告されている割合より比較的よくみるような病態な気がします。
まとめ
・右心可動性血栓(Mobile right heart thrombi:MRHT)は肺塞栓の比較的まれな合併症であり、死亡率が高い
・現時点では血栓溶解療法を行うことが推奨される