医原性に起こり得る事態です!
こんなときに慌てずに済むよう(いや、慌てはしますけど)、
症例を見ておきましょう!
病歴
・78歳男性
・胸部圧迫感を訴えてCT室からERへ搬入された
・HR62bpm, BP197/101mmHg, SpO2 100%(O2 15L/min), RR20/min
・CT…右心室内に空気を認めた
診断
・酸素投与およびTrendelenburg+左側臥位で待機し、緊急高圧酸素療法を受けるために搬送された
・1時間29分後には空気塞栓症の著明な消退を認めた
・空気塞栓症は重篤で致命的になる可能性のある状態であり、医原性が多い
(Crit Care Med. 1999 Oct;27(10):2113-7./N Engl J Med. 2000 Feb 17;342(7):476-82.)
・成人では200-300mlほどの空気により致命的な流出閉塞を起こす可能性があることが示唆されている
(Anesthesiology. 2001 Feb;94(2):360-1. )
・超音波とCTが診断には有用で、高い感度を持つ
(Reg Anesth. Mar-Apr 1995;20(2):152-5.)
・高圧酸素療法は治療選択肢
◦高拡散勾配により空気の溶解を増加させることで、既存の空気を圧縮する働きがある
(Intensive Care Med. 2002 May;28(5):559-63.)
点滴切り替えの際にちょっと紛れ込んだ空気に「アレは大丈夫だったのだろうか…」と一晩中どぎまぎしていた研修医時代が懐かしいです。
上記の通り、200-300mlほど空気が流れないと塞栓症による死亡は起こらないようです。ちょろっと紛れ込んだくらいなら大丈夫ですね(とはいえ、なるべくairは抜くこと!)
こんな事態に陥ったらできることは以下の手段でしょうか。
・酸素投与する
・Trendelenburg+左側臥位をとってもらう(右室で止まるように)
・緊急高圧酸素療法ができる施設への搬送
高圧酸素療法によって1時間30分程度で空気がなくなっちゃうんですね。これだけの治療効果があるなんて、サイコー!治療効果も見ることができる症例でした。
まとめ
・空気塞栓症はまれだが致命的になりうる疾患で、医原性が多い
・空気が200-300mlほど流入することで致命的になる
・空気塞栓を認めた場合には、酸素投与/Trendelenburg+左側臥位をとらせて、高圧酸素療法を急げ