ACEP(米国救急医学会)が提唱するClinical Policyを紹介します!
(Ann Emerg Med. 2017 Jan;69(1):98-107.e6.)
やっぱり、HBOはやれる環境ならやっといた方がよいのでしょう。。。
★ACEP Clinical Policy 2017①
・CO中毒を疑う患者において、pulse CO oximetryで診断をしてもよいか?
…急性CO中毒を疑う患者に対して診断目的でpulse CO oximetryを使用してはならない
(Level B recommendations)
・急性CO中毒診断においてその閾値は喫煙の有無により異なる
◦非喫煙者…3%、喫煙者…10%
・2005年にFDAはCOパルスオキシメーターを承認した
◦血液ガスに比較して迅速/非侵襲的/持続的に測定でき、安価であるという利点があった
→迅速な治療が予後を改善させるため感度の低い検査は有用でなくなった
(Respir Care. 2013 Oct;58(10):1614-20.)
(Ann Emerg Med. 2010 Oct;56(4):382-8.)
・CO中毒を疑う患者120人に対して血液ガスとpulse CO-oximeterを実施
◦血液ガスでは23人がCO中毒(COHb≧15%)と診断
◦それぞれの検査の差異は1.4%(95% CI 0.2%-2.6%)
‣33.3%の患者でCOHb濃度の差異が±5%を超えていた
⇒pulse CO-oximeter(COHb≧15%)の感度48%/特異度99%/+LR 48/-LR0.5
当院にはパルスオキシメーターで調べることはできません。
だからあまり関係ないな~
★ACEP Clinical Policy②
・急性CO中毒と診断された患者に対してHBOにより治療することは通常の酸素投与に比較して長期的神経学的予後を改善するか?
…救急医はHBOまたは高流量酸素を使用すべきである。ただし、HBOが高流量酸素に対して優位性があるかは不明である
(Level B recommendations )
(Cochrane Database Syst Rev. 2011 Apr 13;(4):CD002041.)
・Cochrane Datebase meta-analysis
・HBO vs 標準的酸素投与での神経学的予後を評価
◦OR 0.78 (95% CI 0.54 to 1.12)
(Toxicol Rev. 2005;24(2):75-92.)
・meta-analysis、1479人
・OR 0.77 (95% CI 0.51 to 1.14)
これまでに行われている2つのsystematic reviewではHBOの標準的酸素療法に対する優位性は見いだせていないです。
それでも予後を良好にさせられる可能性があるのであれば使用したほうがよいでしょう。
当院にはありませんので、適応を判断して適格に3次施設に搬送したいと思います。
★ACEP Clinical Policy③
・急性CO中毒患者に心臓系検査を行うことで合併症発症や死亡率を予測できるか?
…中等度~重度の急性CO中毒においては、心電図や心筋逸脱酵素により急性心筋障害を特定でき、予後推定に使用できるため実施することを推奨する
(Level B recommendations)
・組織低酸素血症による直接的障害だけでなく細胞レベルでも損傷がみられる
◦心筋障害は37-53%に認められる
◦CK上昇/Tn陽性、心電図における虚血性変化など
(JAMA. 2006 Jan 25;295(4):398-402./J Am Coll Cardiol. 2005 May 3;45(9):1513-6./J Med Sci 2015;35(3):105-110.)
(JAMA. 2006 Jan 25;295(4):398-402.)
・曝露時に急性心筋障害を認めた急性CO中毒患者の長期的予後
◦230人の中等症~重症のCO中毒患者が7.6年間follow-upされた
‣全例でHBO実施。
◦baselineは平均47歳、既存症がある割合は高くなかった
◦院内死亡…5%、follow-up期間での死亡…24%
⇒非曝露患者の3倍の死亡率であった
◦心筋障害があった場合にはfollow-up期間での死亡率38%
‣心筋障害がなかった場合には15%
‣心臓イベントによる死亡も44% vs 18%と有意に増えた
◦多変量解析によればadjusted HR 1.90(95% CI 1.02-3.37)
(J Med Sci 2015;35(3):105-110.)
・148人の急性呼吸不全を呈しHBOを行なった急性CO中毒148人
◦急性心筋障害は独立した予後不良因子であった
‣OR 2.8(95% CI 1.2-6.5)
一酸化炭素中毒で予後を規定するのは、脳と心臓!
予後推定に使えるため、必ず心臓のスクリーニングは実施しましょう!