病歴/身体所見
・9歳女児
・これまでに特に既往はない
・2週間前から続く息切れと嘔吐を主訴にER受診
◦息切れは増悪傾向にある
◦嘔吐は受診2日前から出現した
・発熱なし、咳嗽なし、胸痛なし、動悸なし、チアノーゼなし、浮腫なし、めまいなし、体重減少なし
・最近のウイルス性疾患罹患歴なし
・心臓病の家族歴なし
・バイタルは頻脈/頻呼吸/血圧異常なし/酸素飽和度異常なし
・心尖部領域に全収縮期雑音とS3を聴取、肝腫大あり
検査
・血液検査…BNP3438pg/ml, cTn0.01ng/ml
・ECGでは、左室肥大、下壁および前胸部誘導にT波の異常を認めた
・CXRとベッドサイド超音波が行われた
心拡大
左室拡大、左室収縮能の著明な低下(EF19%)
診断
拡張型心筋症
CCU入室し、心移植が行われた
遺伝子検査により家族性拡張型心筋症の原因として知られる遺伝子異常が特定された
2か月後のフォローアップで、制限付きではあるが日常生活に戻ることができていた
・小児期に拡張型心筋症を発症することはまれ
◦特に6歳以下では予後不良としてしられる
(Heart Fail Clin. 2010 Oct;6(4):401-13, vii.)
・原因として多いのは以下の疾患
◦特発性
◦急性心筋炎後
◦神経筋疾患
◦家族性心筋症
◦先天性代謝異常症
◦奇形症候群
(N Engl J Med. 2003 Apr 24;348(17):1647-55.)
・心移植が唯一の根治治療
(J Heart Lung Transplant. 2011 Jul;30(7):755-60.)
小児の呼吸困難というと、今の時期だと特に喘息発作が多いと思います。
喘息発作でしょう~とか考えてβ刺激薬吸入をさせたけどあまりに改善に乏しくて、肺炎合併かと考えてレントゲン撮ったら今回の症例のような心拡大と肺うっ血があって慌てふためいたことがあります。
忘れたころにやってくるので、頻度は低いですが生来健康と言われている子供でも心疾患は必ず考えておくようにしたいです。
まとめ
・小児の呼吸困難では心疾患を鑑別に挙げる
・小児期の拡張型心筋症の頻度は低いが、特に若年では予後不良の疾患
・根治治療は心移植のみ