りんごの街の救急医

救急科専門医によるERで学んだことのまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。Twitterでも医療系のつぶやきをしています@MasayukiToc

救急医のEvidenceブックマーク Weekly #6(20251227-20260102)

2026年もよろしくお願いします!

 

今年こそ本の執筆すすめなくては…!!!

 

さて、今年最初の「救急医のEvidenceブックマーク」です。

日常診療を反映した各論(PRES、pneumothorax ex vacuo、血管性浮腫)と、

積読していたショックと人工呼吸器管理の論文をちょっとずつ消化していきます。

 

 

総目次(これまでに紹介した総説たちへのリンク)はコチラ👇

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神経

PRES

Posterior reversible encephalopathy syndrome: evolving insights in diagnosis, management, and outcomes

PRESの診断・治療・予後に関する最新の総説。

PRESはMRI普及とともに認知が広がった症候群であり、臨床症状は非特異的だが、特徴的な画像パターンを伴うことで診断される。典型的には、両側対称性の皮質下白質に血管原性浮腫を認め、とくに後頭葉頭頂葉が好発部位であるが、前頭葉・側頭葉・基底核など非典型部位も頻繁に侵される。小児から高齢まであらゆる年齢で起こり、急性高血圧、妊娠関連疾患、自己免疫疾患、腎不全、造血・固形臓器移植、細胞傷害性・免疫調整薬など多様な病態の「共通の最終表現型」として出現する。新規免疫療法(チロシンキナーゼ阻害薬やCAR-Tなど)の導入により、PRESのリスク因子と臨床スペクトラムは拡大している。

一般入院患者データベース解析では、年齢・性別調整発症率は2.7/10万人年で、女性の方が男性より2倍以上高い。黒人患者での発症率は、非ヒスパニック白人やヒスパニックと比べて高いと報告されている。特定リスク集団では発症率が大きく増加し、例えば子癇・重症妊娠高血圧・HELLP症候群患者の約半数がPRESを生じうるとされる。小児入院患者では約0.04%にPRESが認められ、思春期(13–20歳)でピークとなる。

リスク因子:

・高血圧・高血圧性脳症:約80%のPRES患者は急性高血圧を呈し、血圧の絶対値だけでなく、ベースラインからの乖離や変動が重要とされる。以前「高血圧性脳症」と呼ばれていた症例の多くが、現在ではMRIによりPRESとして分類されている。著者らは高血圧性脳症をPRESスペクトラム上の一表現とみなしている。

・腎障害・自己免疫疾患・妊娠関連:腎不全はPRESとしばしば共存するが、独立したリスク因子か、体液過剰・高血圧・自己免疫背景などを介した二次的因子かは不明である。全PRES患者のほぼ半数に自己免疫疾患を認める報告もあり、SLE、TTP、自己免疫性溶血性貧血、炎症性腸疾患、Sjögren、原発性硬化性胆管炎などが挙げられる。自己免疫疾患ではサイトカインや自己抗体を介した内皮障害・血液脳関門破綻が推定される。妊娠・産褥期、とくに子癇・重症妊娠高血圧・HELLPではPRESのリスクが高く、急性高血圧・炎症・内皮障害の組み合わせが病態と考えられる。

・薬剤・毒物・ドラッグ:カルシニューリン阻害薬(タクロリムス、シクロスポリン)、抗VEGF薬(ベバシズマブ)、多くのチロシンキナーゼ阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬、各種化学療法薬など、多様な薬剤がPRESと関連する。CAR-T療法ではサイトカイン放出症候群に伴う血液脳関門破綻からPRESやびまん性脳浮腫が生じうる。後者は治療戦略が異なるため注意が必要である。コカイン、アンフェタミン、合成カンナビノイドなどのレクリエーショナルドラッグも、急性高血圧・内皮障害・直接毒性を介してPRESを惹起しうるとされる。

発症は通常、急性~亜急性(数時間~数日)。主な症状は、意識障害・せん妄様状態(軽度混乱から昏睡まで)、全般強直間代発作(報告例で30–75%)、頭痛(約半数)、悪心・嘔吐、視覚症状(皮質盲、視力低下、幻視、複視など;25–40%)、巣症状(失語・片麻痺など;5–15%)。重度高血圧例では、頭痛・悪心・嘔吐から始まり、進行するとけいれん・意識レベル低下に至る。眼底検査では高血圧性網膜症を認めうる。雷鳴頭痛(thunderclap headache)を主症状とする場合は、PRES単独よりもRCVSを疑うべきであり、両者は一部でオーバーラップする。

CTは軽度の浮腫には感度が低いが、出血・水頭症の検出には有用である。MRI(FLAIR・T2)が最も感度が高く、両側性・主に皮質下白質の血管原性浮腫が典型。後頭葉頭頂葉の巻き込みが最多だが、前頭葉(とくに上前頭回)、側頭葉、視床基底核、脳幹、小脳などもしばしば侵される。完全片側性PRESはきわめてまれ。

3つの画像パターンをとることが知られている。

holohemispheric watershed:前・中・後大脳動脈境界域が帯状に侵される。

前大脳動脈(ACA)と中大脳動脈(MCA)の境界領域(ボーダーゾーン)に沿って広範な T2/FLAIR 高信号を示す。両大脳半球の広い範囲にわたり、皮質下白質を中心に浮腫が分布する。血行力学的に境界域となる部位が特に脆弱であることを反映している。

 

superior frontal sulcus pattern:前頭極は保たれつつ、上前頭溝に沿った限局性病変。

上前頭溝周囲の限局した T2 高信号を認めるパターン。特徴として、前頭極(frontal poles)の病変は欠如しており、上前頭溝に沿った帯状の浮腫が目立つ。PRES の中でも前頭葉優位型の一つであり、「後方優位」という名称に反する分布を示す。

 

dominant parieto-occipital:古典的な後頭葉頭頂葉優位の病変。

最も典型とされるパターンで、後頭葉頭頂葉後方に限局する対称性の皮質下浮腫。横溝周囲から後頭葉白質を中心に、皮質下に T2/FLAIR 高信号が分布する。

 

皮質病変、造影増強、拡散強調での一部拡散制限など、かつて「非典型」とされた所見も現在ではしばしばみられる。脊髄PRESでは、頸髄中心部に連続性のT2高信号を呈し、しばしば高血圧に関連する。症候性でない例があり、脊髄画像があまり撮られていないため過小評価されている可能性がある。

※脊髄PRES:PRES は脊髄を侵すこともあり、症例報告や小規模症例シリーズで記載されている。ほとんどの報告はコントロール不良の高血圧を持つ患者であり、通常は頸髄が侵され、複数椎体レベルにわたる、中心部の連続性膨隆性T2高信号を示す。脊髄病変は無症候性でありうるし、PRES で脊髄画像がほとんど撮られていないことから、実際より過小評価されている可能性がある。PRESを疑う症例で、四肢の感覚障害・運動障害・脊髄レベルの症状を伴う場合には、頭部のみならず頸髄MRIも検討すべき

出血性合併症:メタ解析ではPRES患者の約16%に頭蓋内出血を認め、うち約10%が脳内出血、7%がくも膜下出血である。微小出血は14–58%と高頻度だが、FLAIR異常が消失した後も残存する。

血管撮影:MRA/CTAなどは約30–50%で行われ、そのうち15–70%に可逆性の血管攣縮を認める。とくに後大脳動脈領域に多い。

経頭蓋ドップラーや灌流CT/MRIでは症例により高灌流と低灌流が混在して報告されており、発症から撮像までの時間や病態差で説明される可能性がある。

典型的症例では、以下が揃えば追加検査は不要とされる。

・急性~亜急性の神経症状(意識障害、頭痛、視覚障害、けいれん)

・既知のリスク因子・誘因(慢性腎疾患、自己免疫疾患、免疫療法/化学療法、急性腎不全、子癇、敗血症、急性高血圧など)

・両側性血管原性浮腫や典型的PRESパターン

・他疾患の否定

 

診断のアルゴリズムは以下。

ステップ1:急性〜亜急性の神経症状;Encephalopathy, confusion, headache, visual disturbances, or seizures(意識障害、混乱、頭痛、視覚異常、けいれん)

ステップ2:Risk factors(リスク因子);慢性腎疾患、自己免疫疾患、免疫療法・化学療法など

ステップ3:Precipitating events(誘因イベント);急性腎不全、子癇・子癇前症、敗血症、重症高血圧、血圧変動など

ステップ4:Brain imaging(画像所見);両側性の vasogenic edema、PRES パターンを伴う cytotoxic edema、典型的/非典型的だが PRES に整合する画像所見

ステップ5:No alternative diagnosis(他疾患の除外);感染症や炎症性中枢神経疾患が疑われる場合には、腰椎穿刺を考慮(特に免疫抑制状態の患者)。

管理戦略:血圧を下げる・変動を最小化する、基礎疾患・誘因の治療や原因薬剤の中止、けいれん・意識変動を繰り返す患者では EEG を考慮

 

画像が陰性でも臨床的に高血圧性脳症/PRESスペクトラムと考えられる症例が存在し、画像陰性PRESの概念も示唆されている。免疫抑制状態や悪性腫瘍例で非典型像の場合は腰椎穿刺を考慮し、蛋白上昇+細胞数正常所見はPRESに矛盾しない。鑑別診断として、後方循環系梗塞、RCVS単独、感染性・中毒性脳症、ミトコンドリア病白質脳症、腫瘍、自己免疫性/傍腫瘍性脳炎、血管炎などが挙げられる。

マネジメントの根幹は「誘因の除去+血圧の適切かつ安定した低下」である。重度高血圧ではICU収容、動脈ラインによる連続血圧モニタリング、持続静注降圧薬を用いる。専門家コンセンサスとして、最初の数時間で平均血圧を20–25%低下させるが、それ以上の急激な低下は脳・腎灌流低下を招くため避ける。出血性合併例で、収縮期血圧を130 mmHg未満に急激に下げる、あるいは初期血圧が220 mmHg超の場合の過度降圧は、神経学的悪化と急性腎障害リスク増大と関連するため注意。

けいれんには標準的な抗てんかん薬を使用する。非けいれん性てんかん重積が16%程度に報告されており、意識変動が急速に出没する例やけいれん後に回復しない例では持続脳波モニタが推奨される。起因と考えられる免疫抑制薬・抗がん薬は通常一時中止し、可能ならリスクの低い代替薬(例:タクロリムス→シロリムス)に切り替える。一部のがん患者シリーズでは、原因と考えられた化学療法を再開しても再発を認めなかった例が報告されており、血圧厳格管理下での慎重な再投与が必ずしも禁忌ではないことが示唆される。

子癇合併PRESでは、根本治療は胎児と胎盤の娩出+マグネシウムによるけいれん予防/治療である。敗血症、TTPなどは各疾患標準治療に従う。抗浮腫療法についての前向き試験はなく、ほとんどの症例では誘因是正のみで数日以内に血管原性浮腫が自然軽快するため、ルーチン使用は推奨されない。ただし、悪性PRESで脳ヘルニアが懸念される場合はマンニトールや高張食塩水、外減圧(後頭蓋窩減圧・半球切除開頭)、外ドレナージなどが検討される。昏睡例では気管挿管と呼吸管理が必要である。

※悪性PRES(malignant PRES):PRES は、患者が昏睡状態(GCS < 8)であり、頭蓋内圧亢進に対する治療にもかかわらず臨床的悪化を続ける場合、悪性とみなされる。画像的特徴としては、著明な小脳浮腫とそれに伴う質量効果(例:脳室や脳槽の消失)、水頭症、脳幹圧迫、頭蓋内出血、あるいは重度のテント上浮腫が挙げられる。悪性PRESは、死亡や重篤な後遺症を来しやすいサブタイプであり、短期機能転帰(機能障害)が悪い患者が多いとされる

典型例では、原因治療により数日~数週で症状と画像所見がほぼ完全に可逆的であり、多くの患者が完全回復する。一方、脳内出血・梗塞・広範な拡散制限を伴う例では不可逆的脳損傷を残しうる。ICU入室を要する重症70例の検討では、誘因制御までの時間の遅れと高血糖が90日転帰不良の独立予測因子であった。「悪性PRES」は、昏睡(GCS<8)、治療に反応しない脳圧亢進、脳幹圧迫、水頭症、大量出血などを特徴とする病型であり、死亡率・後遺症率が高い。

後方視研究では、無誘発発作・てんかん発症率は概ね1–5%と比較的低く、構造的脳傷害がなければ長期の抗てんかん薬内服は必須ではないとされることが多い(1–3か月で中止など)。大規模請求データの解析では、PRES後の発作発現率は9.5/100人年と、従来報告よりやや高いが、なお長期薬物治療を全例に必要とするほどではない。再発は約5–12%にみられ、コントロール不良の高血圧が重要な予測因子とされる。90日以内再入院の約6%が再度PRES、約5%がけいれんで再入院していた。

PRES既往患者では、脳卒中発症率は6.1/100人年と一過性脳虚血発作(TIA)よりやや低いレベルである。特に出血性脳卒中リスクが高く、持続する内皮機能障害、自己調節障害、血液脳関門障害、さらに高血圧・腎障害・免疫抑制などの共通リスクが関与している可能性がある。

 

Posterior Reversible Encephalopathy Syndrome

老舗NEJMのPRES総説。

PRESは、頭痛・意識障害・けいれん・視覚障害を主症状とする急性~亜急性脳症候群である。1996年の Hinchey らによる報告では、15例の急性神経症状が2週間以内に改善した症例シリーズとして「reversible posterior leukoencephalopathy syndrome」が記載された。その後、症状の持続、死亡例、非典型画像、前方病変などが数多く報告され、「posterior」「reversible」「leukoencephalopathy」という名称が必ずしも実態を反映しないことが指摘されるようになった歴史的背景がある。

疫学:一般集団での正確な発症率は不明だが、特定集団では以下の頻度が報告されている:末期腎不全:0.8%、SLE:0.7%、固形臓器移植後:0.5%、子癇前症・子癇:20〜98%(報告により幅が大きい)、小児の選択集団では0.04%と見積もられている。年齢はあらゆる層に発症しうるが、若年~中年成人で多く、女性に多い。大規模入院サンプルの解析では、平均年齢57歳、女性72%、白人68%と報告されている。

臨床症状:意識障害・脳症が最も頻度が高く(最大94%)、軽度の錯乱から昏睡まで幅広い。頭痛は約半数の症例でみられ、多くは鈍いびまん性頭痛だが、ときに雷鳴様頭痛として発症する。全経過の中でけいれんは約3/4に発生し、初発症状であることもあるが必須ではない。最大18%でてんかん重積状態にまで進展する。視覚症状が20–39%にみられ、視力低下、視野障害、視覚性無視、幻視、皮質盲など多彩である。その他、片麻痺、協調運動障害、腱反射亢進、脊髄症状などが少数ながら報告される。635例の後ろ向きシリーズでは、初発症状としてけいれんが約半数、視力障害または言語障害が約1/5であった。

画像所見:

典型的所見:PRES診断の中心はMRIである。非造影CTでも後頭葉を中心とした低吸収域として浮腫を認めうるが、感度はMRIに劣る。MRIでは、T2/FLAIRで両側後頭葉白質(しばしば隣接頭頂葉も)の高信号=血管原性浮腫が典型像となる。

両側後頭葉の皮質および皮質下白質に高信号域を認める(矢印)。DWIはこの部位では正常であり、拡散制限を伴わない血管原性浮腫であることを示唆している。DWIが正常=梗塞ではなく可逆性の浮腫である可能性が高い。

 

非典型例:後頭・頭頂以外にも、複数のシリーズで病変分布が示されており、頭頂後頭:65–99%、前頭:54–88%、側頭:68%、視床:30%、小脳:34–53%、脳幹:18–27%、大脳基底核:12–34%など。画像パターンとして、後頭・頭頂優位型、両側大脳半球の分水嶺領域型(holohemispheric watershed)、上前頭回優位型、これらの混合型などが報告されている。小脳半球主体など、さらに非典型なパターンもあり、「posterior」に限定されないことがわかっている。

両側大脳半球の分水嶺領域(大血管の終末灌流域)に沿って白質高信号を認める。PRESでは、典型的な後頭葉優位パターンだけでなく、両側分水嶺領域に沿う広範な白質浮腫というパターンもありうる。

A) 右前頭葉白質にごく微妙な信号変化のみを認める(矢印)。

B) 2日後のMRI FLAIR:新たに後頭葉および内側頭頂葉に高信号域が出現し、病変が明らかに増悪・拡大している(矢印)。

PRESの病変は時間経過とともに変化しうる。軽微な前頭葉白質高信号を見逃すとPRESの早期診断機会を逸する可能性がある。また、病変分布が前頭・頭頂・後頭など複数葉にまたがる「multilobar pattern」があり、必ずしも後頭葉に限定されない。

A(FLAIR):小脳半球にびまん性かつ癒合性の高信号を認める(矢印)。大脳ではなく小脳優位の病変分布である。

B(DWI):同じ小脳領域に非対称な信号変化がある。

C(ADC):ADCでは同部位に変化を認めず、拡散制限がない=組織梗塞ではないことがわかる。

PRESは「posterior」とはいえ、必ずしも大脳後頭葉に限局しない。小脳半球が主体となる非典型分布もありうる。DWIとADCを組み合わせることで、高信号だがADC正常=血管原性浮腫(PRESに典型)、高信号かつADC低下=細胞毒性浮腫(梗塞など)を鑑別できる。

 

合併症:重症例では、大量の脳浮腫によりmass effect やテント切痕ヘルニアを来す場合もある。一部では、小出血、拡散制限(細胞毒性浮腫)、造影効果などが病変部にみられる。追跡画像(数週〜数か月)では、約2/3でMRI異常が完全に消失するが、残りでは部分的残存がある。

鑑別診断:鑑別として挙げられるのは、脳梗塞(特に後方循環・分水嶺梗塞)、中枢神経感染症脱髄疾患、脳腫瘍、硬膜静脈洞血栓症、中枢神経血管炎、中毒性脳症、ミトコンドリア病など。特にRCVSは、血管攣縮の画像所見・急性頭痛などが重なり、PRESとのオーバーラップが指摘される。病歴(急激な高血圧・薬剤歴・妊娠歴など)、血液・尿検査、髄液検査、血管画像とMRIを総合して鑑別する。

疾患・病態の種類 具体的な疾患・処置
全身性疾患(Systemic disorders) 急性・慢性腎不全、原発性アルドステロン症、敗血症およびショック、褐色細胞腫
妊娠関連病態(Pregnancy-related conditions) 子癇前症(preeclampsia)、子癇(eclampsia)、HELLP 症候群(溶血〔hemolysis〕・肝酵素上昇〔elevated liver-enzyme levels〕・血小板減少〔low platelet count〕)
自己免疫/膠原病(Autoimmune or connective-tissue disorders) 全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)、強皮症/硬化症(scleroderma/systemic sclerosis)、シェーグレン症候群(Sjögren’s syndrome)、血管炎(vasculitis)、クリオグロブリン血症(cryoglobulinemia)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:クローン病潰瘍性大腸炎)、橋本甲状腺炎(Hashimoto’s thyroiditis)、原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis)、抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody syndrome)、肉芽腫性多発血管炎(granulomatosis polyangiitis, 旧Wegener肉芽腫症)、巨細胞性動脈炎(giant-cell arteritis)、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa)、ANCA関連血管炎(antineutrophil cytoplasmic antibody–associated vasculitis)
処置・手術後の状態(Postprocedure conditions) 固形臓器移植(solid-organ transplantation)、造血幹細胞移植(stem-cell transplantation)、免疫グロブリン投与(immune globulin transfusion)、体外膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation)、骨髄移植(bone marrow transplantation)、輸血(blood transfusion)、脊椎手術(spine surgery)、誘発高血圧(破裂脳動脈瘤くも膜下出血に対する induced hypertension)、頚動脈手術(carotid surgery)、心臓手術(cardiac surgery)
血液疾患(Hematologic disorders) 鎌状赤血球症(sickle cell disease)、溶血性尿毒症症候群(hemolytic–uremic syndrome)、血栓性血小板減少性紫斑病(thrombocytopenic purpura)、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)、急性リンパ性白血病(acute lymphocytic leukemia)、非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin’s lymphoma)
代謝性疾患(Metabolic disorders) ポルフィリン症(porphyria;特に急性間欠性ポルフィリン症 acute intermittent porphyria)、原発副甲状腺機能亢進症(primary hyperparathyroidism)
神経疾患(Neurologic disorders) 視神経脊髄炎スペクトラム障害(neuromyelitis optica spectrum disorder)、頚動脈解離(carotid dissection)、亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis)、もやもや病(moyamoya disease)、頭蓋咽頭腫(craniopharyngioma)

 

薬剤クラス/曝露 具体的な薬剤・毒性物質
抗がん薬(Chemotherapeutic drugs) ベバシズマブ(bevacizumab)、チロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitors)、ボルテゾミブ(bortezomib)、シタラビン(cytarabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、L-アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、メトトレキサート(methotrexate)、ビンクリスチン(vincristine)、シスプラチン(cisplatin:プラチナ製剤)
免疫修飾薬(Immune-modifying drugs) タクロリムス(tacrolimus)、シロリムス(sirolimus)、シクロスポリンA(cyclosporine A)、リツキシマブ(rituximab)、インターロイキン製剤(interleukin)、腫瘍壊死因子阻害薬(tumor necrosis factor antagonist)、インターフェロンα(interferon alfa)
その他の薬剤(Pharmacologic agents) エリスロポエチン(erythropoietin)、顆粒球コロニー刺激因子 G-CSF(granulocyte colony-stimulating factor)、ボリコナゾール(voriconazole)、ブタルビタール・アセトアミノフェン・カフェイン配合療法(butalbital–acetaminophen–caffeine therapy)、プソイドエフェドリン(pseudoephedrine)、ヒト免疫不全ウイルス感染に対する抗レトロウイルス療法(antiretroviral therapy for HIV infection)
中毒・環境曝露(Intoxications and exposures) アルコール中毒(alcohol intoxication)、薬物過量(drug overdose:例 リチウム lithium、デキストロアンフェタミン dextroamphetamine、アセトアミノフェン acetaminophen、エフェドリン ephedrine、フェニルプロパノールアミン phenylpropanolamine、ジギトキシン digitoxin、ビスマス bismuth)、化学物質(chemical substance:例 有機リン organophosphates)、違法薬物(illicit drugs:例 コカイン cocaine、アンフェタミン amphetamine、メフェドロン mephedrone、クラトム kratom、リセルグ酸アミド amide of lysergic acid)、自然毒(natural toxins:例 ヘビ咬傷・サソリ刺傷・スズメバチ刺傷による毒、キノコ毒、甘草 licorice)

 

マネジメント:治療の柱は、高血圧の制御、けいれん管理、脳浮腫・意識障害への支持療法、誘因薬剤や基礎疾患への対応(中止・減量・治療)である。約70%の患者は、重度高血圧・意識低下・けいれんのためICU入室となる。

・高血圧の治療:高血圧緊急症では、ガイドラインに従ってICUでの連続的血圧モニタリングと静注降圧薬を用いる。PRESにおいて最適な血圧目標値は確立していないが、初期1時間で収縮期血圧を最大25%程度までの範囲で低下→その後24–48時間かけて慎重に正常化という一般的戦略が採用される急性高血圧の影響は、絶対値のみならずその人の通常値からの変動幅・スピードに関連するとされる。急性高血圧がない症例でも、血圧変動の振れ幅が病態に関与する可能性が示唆されている。降圧薬としては、速効性・用量調節が容易な静注薬(ニカルジピン、クリべジピン、ラベタロールなど)が好まれる。併存しうる疾患(大動脈解離、褐色細胞腫、子癇、冠動脈疾患、腎疾患など)も考慮して選択する。

・高血圧以外の誘因・基礎疾患の治療:高血圧を伴わないPRESでは、基礎疾患や誘因薬剤の特定と対応が重要となる。多彩な関連病態(腎不全、敗血症、妊娠高血圧関連疾患、膠原病、移植後、血液疾患、代謝疾患、各種手術後、神経疾患など)があるため、それらを原疾患として治療することになる。また、化学療法薬・免疫抑制薬・その他薬物や毒物など、PRESに関連する薬剤・毒性物質もあるため注意。薬剤の中止や変更が行われることもあるが、その効果はシリーズによって一貫しない。例として、タクロリムス関連PRES(造血幹細胞移植後)のシリーズでは、中止、中止後再開、類似薬に変更のいずれの戦略でも転帰は大きく変わらなかった。抗がん化学療法やホルモン療法開始1か月以内にPRESを発症した癌患者では、同じ薬剤の再導入をしてもPRESが再発しない例が多いことも報告されている。

・妊娠関連PRES・子癇:妊娠中・産褥期のPRESは、多くが子癇前症・子癇・HELLP症候群と関連する。診断は、典型的臨床像(高血圧、蛋白尿、けいれんなど)とMRIの特徴的所見による。鑑別には、脳静脈血栓症やRCVSなども含まれる。母児の安全を考慮し、MgSO4静注が高血圧・けいれん治療の第一選択とされており、重度高血圧にはヒドララジンやラベタロール、けいれんにはジアゼパムやフェニトインなどが追加されうる。

・けいれんの治療:PRESに伴うけいれんには特異的なパターンはなく、一般的なけいれん管理を行う。可能ならEEGで発作を確認、ベンゾジアゼピンで急性期コントロール、長時間作用性抗てんかん薬を追加という標準的ステップ。EEGが利用できない場合でも、臨床的けいれんには同様の対応をとる。PRES以外のけいれん原因(低Naなど)も併存しうるため、その是正も重要である。84例のPRES+けいれん症例の長期予後では、約3か月の抗てんかん薬治療後の3年フォローで、遅発再発けいれんは3%、てんかん診断に至ったのは1%と、長期てんかん化のリスクは比較的低かった。

予後:初期報告ではほぼ全例が2週間以内に神経症状から回復していたが、その後の報告では死亡例や後遺症例も含まれることが示されている。63例の後ろ向きコホートでは、院内死亡率は2.2%であった。メタ解析では、脳内出血、細胞毒性浮腫(拡散制限)が不良予後と関連し、子癇前症・子癇に伴うPRESは予後良好と関連した。一方、がん患者で昏睡・けいれん・広範な脳浮腫を伴う「悪性PRES」であっても、積極的な治療により良好な機能予後が得られた症例シリーズもあり、「悪性=絶望的」ではないことが示唆されている。

 

The Spectrum of Posterior Reversible Encephalopathy Syndrome

PRESの病態と臨床スペクトラムに関する総説。

PRESは、1990年代初頭のHincheyらによる15例の報告で「posterior leukoencephalopathy syndrome」として記載され、その後2000年頃に現在の名称「PRES」が広まった。ただし「高血圧性脳症」としての概念は1920年代から既に知られており、PRESは古くから知られる病態を近代的な画像・臨床枠組みで再定義した疾患概念と言える。典型的には重度高血圧緊急症に合併するが、血圧の大きな変動のみでも起こりうる。さらに、腎不全・敗血症・子癇・悪性腫瘍・免疫抑制剤・細胞障害性薬剤・自己免疫疾患など、多彩な背景疾患が関連する「症候群」である。

一般的には数時間〜数日で進行する急〜亜急性発症。数週間続く経過の報告もあるがまれ。

意識障害(30〜90%):軽い混迷から激越せん妄、昏睡まで幅広い。

てんかん発作(60〜75%):焦点性・全般性のいずれもあり、てんかん重積も起こりうる。後頭葉両側にてんかん性異常を認める場合、PRESを示唆しうる。

頭痛:拡散性で徐々に増悪することが多く、約半数の症例。

視覚症状:皮質盲、視野障害、視力低下、幻視などが約40%。

局所神経徴候:失語・片麻痺などは5〜15%程度。

これらの症状は脳卒中脳炎代謝性脳症など多くの疾患と重複するため、臨床像と画像所見を総合してPRESと判断する必要がある。典型画像がなくても、症状と背景が強くPRESを示唆し、他の原因が否定的であれば「画像陰性PRES」もありうるとされる。逆に、悪性高血圧患者の16%で、神経症状が全くないにもかかわらずPRES様の脳MRI異常が認められたという報告もあり、「画像陽性・症状陰性」のPRESスペクトラムも存在する。

PRESは純粋な「画像診断名」ではなく、臨床文脈が重要ではあるものの、代表的なMRI所見は、両側性・多くは非対称の頭頂後頭葉皮質下T2/FLAIR高信号(血管原性浮腫)・CTでも低吸収域として見えるが、感度はMRIが高い。3つの代表的パターン(文献的に最大70%で認める):頭頂後頭葉優位型(parieto-occipital pattern)、全半球watershed型(holohemispheric watershed pattern)、上前頭回溝優位型(superior frontal sulcus pattern)があり、診断には必須でないが見られればPRESを支持する所見となる。浮腫の範囲と臨床症状の重症度には一貫した相関はなく、「画像が広い=必ずしも重症」というわけではない。

すべてFLAIR MRIの画像で、いずれもT2高信号=血管原性浮腫を示している。

(A) 両側小脳半球と小脳脚の高信号。

(B) 典型的な頭頂後頭葉(parieto-occipital)の高信号に加え、視床基底核という「非典型部位」の浮腫もある。

(C) 前頭葉のwatershed領域に沿った高信号。

 

頭頂後頭葉以外にも、前頭葉・側頭葉:70〜75%、小脳:〜50%、脳幹:〜25%、基底核:12〜34%に血管原性浮腫が及びうる。視交叉や脊髄に病変を認める症例も少数報告されており、PRESは中枢神経全体に及びうる広いスペクトラムと理解される。

拡散制限(restricted diffusion):報告では20〜30%の症例で認められる。一部研究で予後不良と関連するが、小規模研究では可逆性の例もあり、必ずしも不可逆虚血とは限らない。一般に、拡散制限は基礎の血管原性浮腫の範囲よりずっと小さいパッチ状・点状の病変である。造影増強効果:約20〜25%で認められるとされるが、撮像タイミングと頻度との関係は体系的には検討されていない。

 

同一患者のFLAIR画像と拡散強調像(DWI)/ADCマップを並べた図。

(A, C) 両大脳半球に広く分布する典型的なT2高信号(血管原性浮腫)。

(B) 皮質に散在する多巣性の拡散制限(restricted diffusion)。

(D) 矢印で示された点状(punctate)の拡散制限。

PRESにおけるrestricted diffusionは「PRESらしくない所見」ではなく、PRESの一部として認められることがある。さらに、拡散制限があっても領域は小さく斑状で、広範な「虚血性梗塞」とはパターンが異なること、必ずしも不可逆ではないことに注意。つまり、「DWI高信号=必ず梗塞・不可逆」と短絡しないことが臨床的なポイントになる。

 

頭蓋内出血合併:PRESの15〜20%で認める。主には実質内出血で、次いで溝状くも膜下出血、あるいは両者併存もある。出血は通常、血管原性浮腫の内側または隣接部に位置する。抗血栓薬内服や凝固異常、造血幹細胞移植などでリスクが高い。大きな出血やmass effectを伴う場合、予後不良と関連する。

血管造影を行うと、RCVSに特徴的な多発性血管攣縮をPRESで認めることがあり、文献報告ではRCVS症例の9〜38%がPRESを合併しているとされる。両者が同一スペクトラム上の疾患である可能性が議論されている。

マネジメント:高血圧・血圧変動が関与する場合、「滑らかかつ持続的な降圧」が最重要。具体的には「最初の数時間で約25%の血圧低下、その後24〜48時間で慎重に正常域へ」という方針が推奨される。発作を呈する患者では通常の抗てんかん薬治療を行う。特に免疫抑制薬(タクロリムスなど)や化学療法薬など、PRESと関連が強い薬剤は一時中止が望ましい。中止しない、あるいはすぐ再開するとPRESの遷延や再燃のリスクがあるとの報告もある。ただし、「中止後に同じ薬剤を再開してもPRES再発を認めなかった」という後ろ向き研究もあり、最適な再開戦略は未確立。敗血症、子癇、自己免疫疾患などは、それぞれの標準的治療に従う。

一般的な予後として、「可逆的」という名称の通り、多くの患者は数日〜1週間で臨床的に回復し、画像も改善する。ただし、研究によりPRESの定義が異なり、「回復を確認できた症例のみをPRESと定義」する研究、「回復を条件としない研究」が混在するため、報告される回復率に幅がある。reversibilityを必須としない研究では、75〜90%が完全回復している。予後不良に関連する臨床因子として、末期腎不全、悪性腫瘍、心不全脳卒中合併、原因因子の是正に要した時間などが挙げられている。

悪性PRES(malignant PRES):一部の症例では、後頭蓋窩浮腫+水頭症・脳幹圧迫、巨大な頭蓋内出血、びまん性重度浮腫による頭蓋内圧亢進などを来し、昏睡・脳ヘルニアに至る重篤な経過をたどる。明確な統一定義はないが、ある報告ではPRES様画像所見、GCS < 8、通常の頭蓋内圧管理にもかかわらず悪化を「悪性PRES」としている。悪性PRESに対し、挿管・鎮静、高浸透圧療法、減圧開頭/後頭蓋窩開頭、血腫除去などの積極的集中治療・外科的介入を行った小シリーズでは、90日時点で死亡0%・重度障害なしという良好な結果も報告されている。一方で、出血を伴わない重度浮腫に対し、外科的減圧なしで自然に回復した昏睡例も少数あるため、「誰にいつ減圧術を行うか」という点は今後の検討課題である。

PRES再発率は小規模シリーズで約4〜5%。長期にわたり高血圧・腎不全・鎌状赤血球クリーゼなどの危険因子を持つ患者で高い。大規模データベースでは、PRES入院患者の31%が90日以内に再入院、再入院理由のトップは感染症(20%)、高血圧(12%)、腎/電解質異常(9%)、消化器(7%)、PRES(6%)と報告されている。長期の自発性てんかん発症リスクは低く、ほとんどの患者で長期抗てんかん薬投与は不要とされる。

 

呼吸器

気胸(と鑑別を要するもの)

Thoracic Ultrasound for Pre-Procedural Dynamic Assessment of Non-Expandable Lung: A Non-Invasive, Real-Time and Multifaceted Diagnostic Tool

pneumothorax ex vacuoは肺エコーで事前に特定可能とする総説。

「pneumothorax ex vacuo」は、非拡張性肺(NEL, Non-Expandable Lung)において見られる病態の一つであり、空気や胸水の排出後に肺が拡張せず、胸腔内に陰圧が強く残ることで空気が流入し、気胸様の所見を呈する現象である。

通常の気胸と異なり、肺損傷による空気漏出ではなく、排液による胸腔内陰圧の増大に伴って空気が流入するという病態機序である。したがって、積極的な胸腔ドレナージは原則不要であり、観察管理が基本方針となる。

レントゲン(CXR):排液後に胸水貯留部位と一致した領域に、基底部気胸(basilar pneumothorax)を認める。しばしば胸膜肥厚を伴う。この所見は、trapped lung や lung entrapment のいずれでも起こりうる。

悪性胸膜中皮腫患者で胸水排液後に生じた水気胸(hydropneumothorax)。この像は排液後の肺の再膨張不全(NEL)を示しており、pneumothorax ex vacuoの典型的な放射線学的所見となる。気胸部分は元の胸水貯留の位置や形状を保ったまま空気に置き換わっていることが特徴的。

POCUSを用いることで高精度でpneumothorax ex vacuoを含むNELの診断が可能となる。

(a) sinusoid sign あり:肺が呼吸相に応じて前後に動いていることを示す。超音波M-mode上では、規則的な波形(sinusoidal movement)が記録される。自由に動く肺=再拡張が可能 → 非NELの可能性が高い。

(b) sinusoid sign なし:肺が動かない(=呼吸による前後移動がない)ため、波形が平坦。これは、肺が線維性胸膜により拘束されている状態を示す。trapped lungまたはlung entrapmentの可能性が高く、再拡張しない=NELである可能性が高い。この状態で排液を行うと、pneumothorax ex vacuoのリスクが高くなる。

 

胸痛を伴わない場合や無症状の場合、多くは経過観察で自然軽快する。胸腔ドレナージによって悪化する可能性があるため注意が必要である。

 

Managing complications of pleural procedures

非外科的な胸膜手技に関する合併症の総説。

医原性気胸に似た合併症の一つとして pneumothorax ex vacuo を挙げている。

「non-expandable lung(肺が膨らまない状態) で胸水を除去したときに、陰圧の空間が残ることで生じる気胸」と定義される。

典型的には良性であり、普遍的に“合併症”とはみなされず、non-expandable lung の生理的な帰結と捉えられる。

胸腔ドレーン挿入で利益を得るとは考えにくい病態である。

単純X線だけで気胸のタイプを見分けるのは難しいが、ex vacuo では同側胸郭容量の減少として現れやすい。患側の横隔膜挙上、肋間腔の狭小化、縦隔が手技側(患側)へ偏位などが特徴的。これに対し、肺損傷による通常の気胸では、deep sulcus sign、肋間の拡大、縦隔が健側へ偏位といったパターンになる。

A:pneumothorax ex vacuo。non-expandable lung に対する胸水排液後の ex vacuo。特徴として「ipsilateral volume loss(同側胸郭の容量低下)」がある。

B:typical pneumothorax(通常の気胸)。いわゆる自発気胸/肺損傷由来の気胸の典型像。deep sulcus signを示す典型例。

「ipsilateral hemi-thoracic volume loss」 がキーワード。

X線上のポイントとして、以下が挙げられる。

横隔膜挙上:患側の横隔膜ドームが高く持ち上がって見える。

肋間腔の狭小化:肋骨の間隔が詰まっている。

縦隔が患側へ偏位(ipsilateral hemi-thoracic volume loss):心陰影や縦隔が、手技をした側(ex vacuo 側)へ引き寄せられる。

これは、「肺が十分に膨らめずにしぼんだまま→胸郭全体がその方向に引き寄せられている」状態を反映している。non-expandable lung に対して胸水を抜くと肺が拡がらない→胸腔内に陰圧空間が残る→そこに空気が入って「気体+虚脱肺」の像になる。しかしこの時、肺自体が引き寄せているので、胸郭も内側に引き込まれたような配置になる(volume loss pattern)。

 

人工呼吸器管理

Imaging and pulmonary function techniques in ARDS diagnosis and management: current insights and challenges

ARDSにおいて初期評価でCTにより形態・recruitabilityを把握し、その後はLUSとEITでベッドサイドの経時変化を追い、画像と肺機能指標を統合してPEEP・体位・MPを調整する「多層統合フレームワーク」 の提案。

ARDSは、急性発症の呼吸不全、両側浸潤影、低酸素血症、肺コンプライアンス低下などを特徴とするが、その原因(肺炎、敗血症、誤嚥、外傷、輸血、ショックなど)や肺病変の分布は多様である。従来はPaO₂/FiO₂比など単純な酸素化指標や静的コンプライアンスをもとにARDS重症度分類と換気戦略が議論されてきたが、同じPaO₂/FiO₂でも肺重量やリクルータビリティが大きく異なり、「同じラベルの患者に異なる肺」が隠れていることが問題視される。

ARDSは「Berlin定義」などで形式的には一つの症候群として扱われるが、実際には形態・病因・重症度・炎症状態の異なるサブグループが存在する。

・形態・画像に基づくサブフェノタイプ:CTやEITを用いると、以下のようなサブフェノタイプが報告されている。

focal vs. non-focal:背側・尾側の限局したコンソリデーション(focal)か、びまん性に広がる浸潤影(non-focal)か。

recruitable vs. non-recruitable:標準化リクルートメント手技やPEEP上昇で、非含気領域がどの程度再含気されるか。

dry / wet / fibrotic type(ECMO患者のCT分類):dry;すりガラス〜混在パターン主体で線維化所見を欠く。wet;コンソリデーション優位で胸水を伴うが線維化所見なし。fibrotic;網状陰影や牽引性気管支拡張など線維増生を伴う。

胸部X線ベースの重症分類:浸潤影の肺野占拠範囲(1〜4 quadrants)と酸素化、炎症表現型(hyper/hypoinflammatory)を組み合わせたクラス分け。

これらのサブタイプは、PEEPや腹臥位、リクルートメント手技の反応性、ECMO期の死亡率に違いがあることが報告されているが、結果は一貫せず、LIVE試験のように誤分類により有害な結果となった例もある。

・病因に基づくサブフェノタイプ:肺性(pneumonia, aspirationなど) vs. 肺外性(敗血症、膵炎など)、または敗血症あり/なしで分けると、敗血症を伴うARDSでは肺性の方が肺外性より死亡率が高い。敗血症がない場合にはこの関係が逆転する、などの観察研究がある。

・力学・リクルータビリティに基づくサブフェノタイプ:PEEPを上げた際、コンプライアンス改善+ΔP低下+非含気領域減少(CT)が見られる群は、リクルータビリティがあり高PEEPやリクルートメントから利益を得やすい。一方、Crs低下+ΔP上昇+過膨張増加を示す群では、高PEEPはVILIリスクを増やす。LIVE試験では、CTでfocalと判定された患者には高VT低PEEP+腹臥位、non-focalには標準VT高PEEP+リクルートメントを割り付けたが、約20%の形態誤分類があり、「形態と合わない戦略」を受けた患者で死亡率が高くなったと報告されている。

画像と肺力学を統合した臨床応用:

・Ventilation intensity(MP, ΔP, RR)と画像:MPはVT、ΔP、RRなどを組み合わせた「換気の強さ」であり死亡率と関連するが、画像上の局所過負荷がない高MPは必ずしもVILIを意味しない。ΔPは有力な予後予測因子だが、病勢進展の予測力には限界があり、ΔPLや肺エラスタンスから導いたPPLATなど、より肺特異的な指標は60日アウトカムとより強く関連するとの報告がある。CTやEITのP–V解析により、globalなΔPやCrsでは見落とす局所の過膨張やタイダルリクルートメントが明らかになり、より低い閾値でMPを制限すべき患者群を見出せる可能性がある。

・ガス交換(PaCO₂・dead spaceVR)と画像:死腔増加はmicrothrombosisや過膨張、ventilated non-perfused lungなどと関連し、予後不良と結びつく。Ventilatory ratio(VR)は簡便な死腔 surrogateであり、VR高値の原因が「過膨張」なのか「低換気/無気肺」なのかは画像がなければ分からない。CTやEITを組み合わせることで、VR上昇の病態背景を分解し、PEEP/VT/RR調整に反映できる。

・PEEP titrationとdiscordant findingsの解釈:PEEP上昇でPaO₂/FiO₂が改善する一方、Crsが低下・ΔPが増えるという「不一致」がしばしば観察される。これは真のrecruitmentではなく、V’/Q’マッチング改善のみを反映している可能性が高いとし、単に酸素化が良くなったからといって高PEEPを維持すべきではない。CTやEITでnon-focal ARDSと判断された症例では、PEEPを15 cmH₂Oまで上げるとΔPとエラスタンスが改善する一方、focalではそのような利益が乏しいとする研究がある。

CTの特徴 EELV/肺重量の変化 肺力学的反応(Crs・ΔP・MPなど) 臨床的解釈・推奨行動
びまん性の依存部(下側)虚脱 EELV低下/肺浮腫+コンソリデーションで肺重量増加 リクルートメントや腹臥位で コンプライアンス↑・ΔP↓・MP↓ リクルータビリティ高い → 高めのPEEPや腹臥位を検討し、肺容量を回復させつつストレイン軽減を目指す
限局性の後下葉コンソリデーション 肺重量は正常〜軽度増加/EELVは保たれていることが多い コンプライアンス改善は乏しい/攻めた換気で ΔP・MPが上昇しやすい リクルータビリティ低い → 低PEEP中心の肺保護戦略、積極的RMは避ける
ΔCTで示されるリクルート可能肺 リクルート後にEELV増加/肺重量は中等度増加 適切なPEEPで虚脱部が開くと コンプライアンス↑・ΔP↓・MP↓ リクルータビリティはあるが 確実とは言えない → PEEPを段階的にtitrationし、力学・ガス交換で反応を確認
持続する非含気領域 肺重量は著明に増加/EELV変化はごくわずか PEEPを上げても コンプライアンス↓・ΔP↑または変化なし・MPも改善しない 線維化 or 強固なコンソリデーションが示唆される → 高PEEPは避け、保守的換気(低VT・低PEEP)を優先
高PEEP時の過膨張 EELV増加(過膨張)/肺重量は正常〜むしろ減少 コンプライアンス↓・ΔP↑・MP↑ PEEPあるいはVT過多のサイン → VTやPEEPを下げ、機械的負荷を減らしVILIリスクを最小化
モザイク状(不均一)な含気 EELVは部位によりバラバラ/肺重量・換気分布の不均一を反映 領域ごとのコンプライアンスがばらつき、ΔPの反応も予測困難 混在したリクルータビリティ → 個々の症例ごとに戦略を調整し、局所過膨張に注意して慎重に管理
動的CTでみるタイダルストレイン領域 呼気終末量が揺らぎ、特定領域で高ストレイン・サイクリックな負荷 ΔPは正常でも、サイクリック過膨張で MP↑ となりうる 潜在的な過膨張の可能性 → VTや呼吸回数を下げ、EITや力学指標(利用可能なら)でモニターしながら調整

 

臨床ステップ EITが提供する情報 LUSが提供する情報 肺力学の反応と解釈
ベースライン評価 換気の不均一性や 無換気(silent)領域 を同定 コンソリデーション、Bライン、胸膜の肥厚などの異常を検出 コンプライアンス↓・ΔP↑・MP↑ は、含気不良と機械的負荷増大の初期サイン
PEEP titration リクルートメント vs 過膨張を可視化し、PEEPやRMへの 有益な反応/有害な反応 を区別 Bライン減少やlung sliding改善などから肺の再含気を評価

Recruitable:Crs↑・ΔP↓・MP↓

Overdistension:Crs↓・ΔP↑・MP↑

リクルートメント手技 新たに換気が入る領域や、換気分布改善をリアルタイムに描出 コンソリデーションやBラインの減少(再エアレーションスコア改善)を追跡

成功:ΔP↓・Crs↑・MP↓

無効:MP↑またはほとんど変化なし

体位変換(例:腹臥位) 仰臥位→腹臥位での 背腹方向の換気再分布 をモニター 特に後側肺ゾーンでの含気増加を確認(腹臥位・リクルート後など)

腹臥位が有効なら Crs↑・ΔP↓・MP↓

変化乏しければ体位調整の効果は限定的

悪化の早期警告 新たな虚脱域や過膨張域を検出し、病態悪化・換気設定の問題を早期に示唆 気胸、肺水腫増悪、新規無気肺などの合併症を検出 悪化時は Crs↓・ΔP↑・MP↑ → 肺力学悪化とVILIリスク上昇を示唆
離脱評価(weaning時) 最小限のサポート条件で、換気分布が均一かどうかを評価 全肺野でエアレーションが安定しているかをフォロー 離脱に耐えうる状態:Crsが安定または改善・ΔP低値・MP低下 → サポート減量や自発呼吸への移行に耐えうる可能性が高い

※うちにはEITないので、現実的にはPEEPを変えてみてCrsやΔP、MPを測定しながら、肺エコーを用いて多角的に評価するくらいが現実的になりそう。

 

 

蘇生

ショック

Point of View: A Holistic Four-Interface Conceptual Model for Personalizing Shock Resuscitation

ショック蘇生を4つのinterfaceから個別化して評価する概念モデルを示した総説。perfusion without congestionを目指すための個別化した蘇生が必要と提案。

ショックの診断と管理は依然として難題であり、従来20年ほどのガイドラインはMAP目標(例:65 mmHg以上)+体重あたりの定型的輸液負荷+足りなければ血管収縮薬や強心薬の追加という画一的アプローチを採用してきた。近年は、「輸液反応性がない=輸液終了」という考え方が取り入れられたが、それでも静脈うっ血(CVP上昇)や臓器レベルのfluid toleranceを評価しないまま止めていることが問題とされる。一方で、エコーを用いてforward flowを評価するアルゴリズムや、CRTをターゲットにした蘇生戦略(ANDROMEDA-SHOCK試験など)が登場し、多変量な灌流アセスメント(CRT、ScvO₂、Pv-aCO₂など)を組み込む方向に進化している。しかし、静脈側(CVP、静脈うっ血、右心不全)の視点は長らく過小評価されてきたため、それを組み込んだより包括的なモデルの必要性があると考えられている。

著者らの臨床経験では、熟練した「resuscitationist」は各界面をそれとなく評価して蘇生を行っているが、明示的で体系立ったフレームとして教えられていないことが問題であるとしている。そこで、4つのインターフェースに分けて考える統合的なメンタルモデルを提示することで、学習者への教育・研究デザイン(個別化蘇生を組み込んだ試験設計)を支援することを目的としている。

Personalizing Resuscitation to Patient Pathophysiology:乳酸など限られた指標とMAPやSVだけに頼る蘇生は不十分であり、「どのインターフェースがどの程度壊れているか」を同定することが重要。ただし、この概念モデルを使って蘇生を最適化しようとする前に、心タンポナーデ、巨大肺塞栓、大量心筋梗塞心室破裂、緊張性気胸、腹腔コンパートメント症候群など、機械的・介入で治療可能な原因を必ず除外/治療しておくことが前提となる。このモデルの適用範囲は、「介入可能な原因がない(またはコントロールされつつある)ショック患者の循環の微調整」であると位置づけられていることに注意。

Circulatory Couplingのキソ:couplingとは、エネルギーがやり取りされる二つの構造(ポンプと血管床など)の関係であり、最小のエネルギーで最大の効率を得られる状態が「良好なカップリング」である。歴史的には、心室エラスタンスEesと動脈エラスタンスEaの比(Ea/Ees)によってV-A coupling(VAC)が定量化されてきた。敗血症性ショックといったdistributive shockでは、見かけ上のLVEFは正常でもEaが非常に低く、後負荷が低いために収縮障害がマスクされていることがある。血管収縮薬投与によりEaが正常化されるとLVEF低下が顕在化し、強心薬が必要になることが経験上知られている。

Mean Systemic Filling Pressure(MSFP)とVascular Waterfall:循環を止めると動脈系と静脈系の圧は平衡に向かい、その時の全身平均圧がMSFP(通常7–10 mmHg)である。これは「血管を張らせている“stressed volume”と静脈コンプライアンス(静脈トーン)の関数」で決まる。一方、血流が流れている状態では、局所の血管緊張が動脈内圧を上回ると血管が潰れ、critical closing pressure(Pcc)となり、その点より末梢は“滝(waterfall)”の下のように挙動するという「vascular waterfall」の概念がある。これより、実際に組織灌流を規定するのは単純なMAPではなく、MAP−Pcc=TPP(tissue perfusion pressure)であるとし、Pccが高すぎる状況(過度な血管収縮など)では、MAPが正常でもTPPは低くなりえる。

※Pccとは、動脈の外向きの圧(血管内圧)よりも血管の緊張(平滑筋トーン)や外圧の方が大きくなって、血管がつぶれるときの血管内と説明されている。これは実質的に「動脈側の血流に対する下流側のバックプレッシャー」であると考えられる。したがって MAP − Pcc が組織灌流圧(TPP)を表す。

※流れがゼロになった時でも、動脈側と静脈側の圧には差が残り、この“ゼロ流量時の圧格差”が vascular waterfall と呼ばれる。これはStarling resistor様のメカニズムで説明される。イメージとしては、高いところから川が滝になって落ちる場面を想像するとよい。上(滝の上)の水位 = 動脈圧側、滝の崖の縁 = Pcc の位置、下(滝つぼの水位 = 静脈圧)と想定したとき、崖の高さ(Pcc)より上の水位差が流量を決める、滝つぼの水位(静脈圧)が多少上下しても、滝の落ちる量はあまり変わらない。これが、「Pccより先(毛細血管より先)は、ある程度、上流のPccによって支配される」という考えとなる。

 

※このあたりの小難しい話は以下の総説が理解に役立つやも。

救急医のEvidenceブックマーク Weekly #3(20251206-1212) - りんごの街の救急医

 

著者らが提案する4つの「インターフェース」

 LV → 全身動脈(左心室–動脈カップリング:Interface I)

 細動脈 → 毛細血管(動脈側マクロ → ミクロ:Interface II)

 毛細血管 → 細静脈(ミクロ → 静脈側:Interface III)

 右室 → 肺動脈(RV–PAカップリング:Interface IV)
を、循環全体の中に系列配置した模式図。

ショックは「低血圧そのもの」ではなく、どこかのインターフェースで「カップリングが崩れる(uncoupling)」ことで起こるという考えが視覚化されている。

 

Interface I:LV–動脈(Ea/Ees, VAC)

インターフェースIでは、Ea/Ees比(VAC)が最適な範囲にあるかどうか+十分なSV/COが得られているかが焦点となる。ショックでは、低前負荷(低容量)、LV収縮不全、過度の後負荷(高血圧・血管収縮薬過量)等により、このインターフェースが破綻しうる。hypovolemic shockではEes, Eaともに交感神経活性で上昇し、Ea/Eesは保たれていてもSVが低い=「技術的にはカップリングしているが、前負荷不足によるインターフェースIの機能不全」と考えられる。

ベッドサイド評価:実際には侵襲的な左室PVループは使えないので、

・LVEF:本来はVACの反映であり、単独では収縮能の絶対値ではない

・LVOT-VTI(>18 cm程度が概ね「十分なSV」の目安)

・脈圧(PP):SVの粗いサロゲートだが、後負荷や大動脈コンプライアンスに影響される

・頸動脈のcCFT:駆出時間とSVの相関を利用する指標
などを利用して考えることになる。

介入としては、hypovolemiaが原因なら輸液/MSFPを上げるための血管収縮薬、RV拡大によるLV前負荷障害ならRVへのサポート、Ea/Eesのアンバランスなら血管収縮薬と強心薬の組み合わせ調整など、原因に応じた対応を行う。

Interface II:細動脈→毛細血管(macro→micro)

インターフェースIIは、細動脈レベルでのPccと毛細血管床の関係を扱う。過度の血管収縮は、MAPが正常〜高値でもPccを押し上げて毛細血管が閉鎖し、微小循環灌流を低下させることにつながる。また、DBPや心拍数もPccとの関係に重要で、大動脈コンプライアンス低下+末梢抵抗増大 → DBP上昇、頻脈 → 拡張期の時間短縮 → DBP高値となり、DBPが過度に高い場合、Pccも高くなりうる。したがって、「MAP 70 mmHg」といっても、COが低くSVRが高い「悪い70」と、COが十分でSVR適正な「良い70」があり、同じMAPでも組織灌流はまったく異なる。

※細動脈レベルで過度な血管収縮(高SVR、ノルアド過量など)が起きると、Pccが上がる→ 毛細血管が閉じてしまい、MAPが正常〜高値でも毛細血管血流が落ちると考えられる。「MAPは70mmHgだけど、その内訳が “CO低い+SVR超高い+Pcc高い”」だとTPP = MAP − Pcc は小さくなり、結果として組織レベルではショック状態になりうる。

 

ベッドサイド評価:直接の微小循環イメージング(舌下ビデオ顕微鏡)は研究レベルに限られるため、臨床ではCRTと皮膚モットリングスコアが重要な実用指標となる。

ANDROMEDA-SHOCKなどにより、CRTは唯一RCTで検証された実用的な組織灌流サロゲートとされ、輸液やMAPチャレンジ後のCRT改善(25%以上短縮または1秒以上の短縮)があれば「Hemodynamic coherenceが保たれている」可能性が高いと解釈する。

Hemodynamic coherence とは、マクロとミクロの循環が coupling している状態を指す。MAPやCOなどマクロ循環を操作すると、微小循環血流や組織灌流が改善する状態が“coherence”。逆に、マクロ指標が改善しているのに微小循環が改善しない状態を“hemodynamic incoherence”という。incoherenceの例として、晶質液でMAPは上がるがCVPも上昇してTPP(≒MAP−CVP)が下がる、ノルアド増量でMAPは上がったがPccも上がって毛細血管が閉じる、Afterloadを上げすぎてLVが十分駆出できなくなりCOが下がるが挙げられており、こうした蘇生は見かけのMAPだけを追いかけていて危険だという認識がなされている。「MAP 65を目標に」と言われているので、ノルアドで一生懸命MAPだけを上げた結果、、、

SVR↑ → 細動脈トーン↑ → Pcc↑

DBPも高くなりがち → さらにPcc↑

毛細血管が閉じやすくなり、TPP = MAP − Pcc がむしろ低くなるという現象が起きえる。

 

Interface III:毛細血管末端→細静脈(組織静脈側)

ここでは血管圧がMSFP付近の低いレベルであり、組織から静脈への流出を決めるのはMSFP−CVPの勾配である。そのため、CVPが上昇すると組織からの排血が滞り、うっ血・浮腫・capillary rarefactionを起こして真の灌流圧が低下する。高CVP(>10–12 mmHg)は、低いmicrovascular flow indexと関連し、静脈うっ血の重要性を支持するエビデンスがある。その程度を定量化するツールとして、VExUSスコア(IVC+肝・門脈・腎静脈ドプラ)やRVSIが臓器障害と相関する。CVPは「組織の後負荷」として理解すべきであり、高CVPを引き起こすあらゆる蘇生手段(過度輸液、RV-PA uncouplingなど)は、マクロ循環が改善しても組織灌流を悪化させうる。

ベッドサイド評価:頸静脈圧、頸静脈ドプラ波形、CVPトレーシング、FVD、VExUSなどが、インターフェースIII評価の実用ツールとされる。例えばFVDでは「拍動性」「逆流速度>10 cm/s」「逆流が順行の1/3以上」などがうっ血の所見となる。

Interface IV:右心室→肺動脈(RV–PA

インターフェースIVでは、RV-PA couplingはEes/Ea(およそ1.5〜2が最適)で表され、慢性肺高血圧ではEa増加に対しRVが時間をかけてEesを増加させて適応するが、急性肺高血圧では未条件付けのRVが急激なEa上昇に対応できず、RV-PA uncoupling→CVP上昇→インターフェースIII破綻へ直結する。

ベッドサイド評価:gold standardはPACやコンダクタンスカテーテルを用いたEa, Ees測定だが、現実的ではない。実臨床では、

・TAPSE/PASP比<0.31:RV-PA uncouplingの特異的カットオフ

・TAPSE、S’、FAC:RV EFのサロゲート

・RVOTドプラ波形(AT、notching、PRedvなど)
を組み合わせて評価することが推奨される。

 

4つのインターフェース(I〜IV)ごとに、ベーシックな評価手段(ベッドサイドで誰でもできるレベル)とアドバンスな評価手段(エコー・PAC・NIRSなど)を一覧にした図。

 

Integrating the Circuit & Forrester–Kenny Diagram

X軸:前方血流(forward flow)/SVの指標

 例:LVOT VTI、CI、あるいは臨床的な「warm vs cold」評価

Y軸:うっ血(venous congestion)の指標

 例:VExUS、JVP、肺うっ血所見など

この2軸で、以下の4象限に分類したダイアグラム。

 Quadrant 1:Warm & Dry(前方血流良好+うっ血なし)

 Quadrant 2:Warm & Wet(前方血流良好だがうっ血あり)

 Quadrant 3:Cold & Dry(前方血流低下だがうっ血なし)

 Quadrant 4:Cold & Wet(前方血流低下+うっ血あり)

この図を使って、ショック患者を初期評価の時点でざっくりどのフェノタイプかに当てはめる。

 

4インターフェースの評価結果を統合する上で、X軸:forward flow(LVOT-VTIなど)、Y軸:うっ血(VExUSなど)をとったForrester–Kenny図を用いることが提案されている。これは元々AMI後のCIとPCWPで分類したForrester分類を、現代のPOCUS評価に合わせて再構成したものである。

・Step 1:初期位置づけ

ショック初期数分で、利用可能な指標を用いて患者を「warm/cold × dry/wet」の4象限のいずれかに置く。

 warm & wet(高CO+うっ血)なら輸液は最小限、血管収縮薬で後負荷を上げる

 cold & dry(低CO+非うっ血)なら輸液+強心薬、過度の血管収縮薬は避ける
といった大まかな方針を立てる。

Step 2:インターフェース評価

その後にきちんと4インターフェースを評価し、どこが最も弱いリンクかを同定してピンポイントに介入し、再評価する。

Step 3:経過追跡

治療が進むたびに患者を再度Forrester–Kenny図上にプロットし、目標である「warm & dry(良好灌流+非うっ血)」に近づいているか、少なくとも悪化させてはいないかを確認する。

 

アナフィラキシー・血管浮腫

Managing Angioedema

血管性浮腫に関する救急外来でのマネジメントの総説。

血管性浮腫は、ブラジキニンヒスタミンなどの血管作動性物質の蓄積により、深在性皮膚・粘膜に一過性の非圧痕性浮腫を生じる状態と定義される。顔面、頚部、口唇、口腔・咽頭、四肢、外陰部、消化管など多彩な部位に出現しうる。原因は大きく、遺伝性(hereditary):主にブラジキニン媒介、後天性(acquired):ヒスタミン媒介型・ブラジキニン媒介型に分かれ、これが症状の出方と治療方針に直結する。頻度としては、最も多いのがヒスタミン媒介型(アレルギー・アナフィラキシー関連など)、次いで薬剤誘発型(ACE阻害薬が代表):生涯発症率は0.7%未満、遺伝性血管性浮腫(HAE):有病率は約 1/50,000とされる。HAEでは多くが4〜26歳で初回発作を経験する。既知のHAEやACEI内服中であれば原因推定が容易だが、多くの救急外来では原因が即座に判明しないケースも多い。喉頭浮腫を伴う場合には窒息リスクが極めて高く、HAE患者の死因の約3割が喉頭浮腫に関連する。

サブタイプ 病型 原因 特徴
Mast-cell / histamine mediated(肥満細胞/ヒスタミン媒介) アレルギー/アナフィラキシー IgE を介したヒスタミン放出 アレルゲン曝露後に急性発症。蕁麻疹がよくみられる。腫脹、気道症状、悪心・嘔吐を伴い得る。
Mast-cell / histamine mediated 薬剤誘発 IgE を介しプロスタグランジン増加 アスピリンやNSAIDsへの既往曝露を伴うことが多い。血管性浮腫と気管支収縮を来し、蕁麻疹もよくみられる。
Bradykinin mediated(ブラジキニン媒介) 薬剤関連 ブラジキニン過剰産生または分解障害 ACE阻害薬(より一般的)またはARB使用中の急性または遅発性血管性浮腫。黒人で頻度が高い。約50%は治療開始1週以内に、残り50%は数か月〜数年後に発症。まれにDPP-4阻害薬、NEP阻害薬、血栓溶解薬、シロリムス、タクロリムス、エベロリムスでも起こる。
Bradykinin mediated

HAE type I

(1型)

C1-INH産生低下 小児期発症。常染色体優性遺伝。浮腫と腹痛で発症。
Bradykinin mediated HAE type II(2型) 機能不全C1-INH 小児期発症。常染色体優性遺伝。
Bradykinin mediated HAE type III(3型) C1-INH活性は正常だが他の変異。しばしばエストロゲン依存性 成人以降の女性に多い。常染色体優性だが浸透率は低い。
Bradykinin mediated 後天性C1-INH欠損 type I 免疫複合体によるC1-INH消費 40歳以上で発症。蕁麻疹を伴わない血管性浮腫。背景にリンパ網内系疾患あり。
Bradykinin mediated 後天性C1-INH欠損 type II C1-INH自己抗体 40歳以上で発症。蕁麻疹を伴わない血管性浮腫。背景にリンパ網内系疾患あり。
Bradykinin mediated 慢性特発性 不明 除外診断。稀であり、1年に3回超の発作をきたす。
Bradykinin mediated Gleich症候群 不明 皮膚の血管性浮腫と蕁麻疹。好酸球IgM上昇を伴う。

 

特徴 ブラジキニン媒介型 ヒスタミン媒介型
発症 時間単位(Hours)で徐々に発症 分単位(Minutes)で急速に発症
持続時間 48〜72時間 12〜24時間
分布 非対称・局所的。しばしば舌を主座とする 対称的でびまん性。唇と眼周囲に多い
皮膚所見 非典型的。遺伝性血管性浮腫では erythema marginatum(輪状紅斑)を呈しうる 約50%で蕁麻疹・掻痒・紅潮を認める
喉頭浮腫 起こり得て、しばしば重篤 頻度は低いが起こり得る
ほかの臓器病変 腸管を侵すことがある(腹痛、悪心、嘔吐、下痢)が、通常は他臓器病変は少ない アナフィラキシーの一部として、低血圧、喘鳴、悪心、嘔吐、下痢など多臓器症状を伴い得る
腹痛 しばしば認める 比較的少ない
エピネフリン・抗ヒスタミンステロイドへの反応 最小限〜ほぼ反応なし(反応は<10%) 有効(>90%)

 

初期評価:

・ABCと症状・既往の聴取:初期対応ではまず気道・循環・意識(ABCs)の評価を行う。血管性浮腫患者の最大の死因は窒息であり、全体の約15%で気道閉塞を経験しうる。重点的に評価すべき症状は以下である。

口唇・舌の腫脹

声の変化(嗄声ストライダー)

よだれ、嚥下困難

呼吸困難、臥位不能

めまい感

掻痒感、皮疹(蕁麻疹)

消化器症状(腹痛、嘔吐、下痢)

既往歴では、過去の血管性浮腫発作とその治療、服薬歴:ACE阻害薬、ARB、ホルモン療法、経口避妊薬オピオイドなど、家族歴(HAEを示唆)、誘因:ストレス、医療処置、外傷、感染などを確認する。HAE患者では、疲労感や発疹などの前駆症状が出現しうる。

・身体所見とred flag:最も多い身体所見は顔面・口唇の腫脹であり、ACEI誘発例の後ろ向き研究では、口唇腫脹87.5%、舌腫脹43.6%と報告されている。気道緊急にかかわる危険なサインとして重要なのは、

舌、口底、軟口蓋の腫脹

声の変化、嚥下困難、呼吸困難、流延

症状発現から4時間以内の早期受診

前舌部の腫脹、6時間以内の急速な増悪
などで、これらは挿管必要性と関連することが複数研究で示されている。

皮膚所見では、ヒスタミン型:蕁麻疹・掻痒・紅潮が約半数にみられる、ブラジキニン型(HAEなど):紅斑輪状疹(erythema marginatum)はありうるが、蕁麻疹と掻痒は稀という違いがあり、鑑別に有用である。消化管浮腫を伴うと、腹部激痛や腹膜刺激症状を呈することがあり、特にブラジキニン型で多い。ヒスタミン型では、アナフィラキシーの一環としての低血圧、喘鳴、嘔吐など他臓器症状を伴うことが多い。

・補助検査:EDでの一般的な採血や画像検査は、孤立した血管性浮腫に対する急性管理方針には不要。柔軟内視鏡(ファイバー)では、舌・口底・軟口蓋に浮腫がある場合には推奨され、喉頭の浮腫の程度を視覚的に評価できる。必要に応じてそのまま意識下挿管に移行可能。X線・CT:気道腫脹の描出は可能だが、緊急の気道評価には推奨されない。ベッドサイド超音波:高周波リニアプローブを用いて顎下から頚部前面へ走査し、気道周囲の浮腫を描出する方法が報告されているが、まだエビデンスは限られる。

気道管理(Airway):気道閉塞の徴候(ストライダー、流涎、呼吸困難、著明な喉頭浮腫)がある場合、決断の遅れは致死的になりうるため、早期に確実な気道確保を行うべき。外見上、顔面・口唇のみの浮腫にとどまる症例では、気道介入が必要となることは稀と報告されている。気道確保が必要な場合、意識下挿管+柔軟内視鏡が第一選択と推奨され、これが困難な場合はビデオ喉頭鏡での挿管を行う。挿管時は、侵襲的な操作が更なる浮腫悪化を引き起こしうるため、「丁寧で最小限の操作」が強調されている。複数の報告から、緊急気道介入を要した血管性浮腫症例のうち最大50%で輪状甲状靱帯切開(cricothyrotomy)あるいは気管切開が必要になったとされ、著者らは以下の「ダブル・セットアップ」を推奨する→挿管器具の準備と同時に皮膚上で輪状甲状間をマーキング、外科的気道確保用器具をすぐ使える状態にしておく、可能であれば第二の気道管理者も配置。非侵襲的陽圧換気(NIPPV)は、一時的な酸素化改善やプレオキシジェネーションに用いうるが、気道確保の代替にはならず、挿管を遅らせてはならない。喉頭上デバイス(LMA等)は、腫脹の進行に伴い位置ずれや閉塞を起こしやすく、むしろ浮腫を悪化させる可能性もあるため推奨されない。

薬物治療:

ヒスタミン媒介型あるいは原因不明の場合:原因が不明、あるいはヒスタミン媒介型が疑われる血管性浮腫では、アナフィラキシーと同様の治療を行う。アドレナリン(IM投与を基本)、抗ヒスタミン薬、コルチコステロイドが選択される。ただし、ブラジキニン媒介型ではこれら薬剤の効果は乏しく、ガイドラインでも「確定したブラジキニン型では routine use は推奨しない」とされている。無効だが有害性は特に報告されていないため、「原因がはっきりするまでは投与してよい」という立場である。

・ブラジキニン媒介型(特にHAE):ブラジキニンの産生あるいは作用を抑制する特異的薬剤が複数存在する。C1-INH製剤(Berinert, Cinryze, Ruconest)は、カリクレインや補体を抑制し、ブラジキニン産生を低下させる作用がある。2歳以上の患者に対する第一選択治療とされるが、供給とコストが制約となる。再発を繰り返す患者では、時間とともに必要量が増大しうる。カリクレイン阻害薬 ecallantide(Kalbitor)もブラジキニン産生を抑え、12歳以上で使用可。ブラジキニンB2受容体拮抗薬 icatibant(Firazyr)は、B2受容体への結合を阻害し、浮腫の症状を改善することが期待される。皮下注で自己注射が可能。これら薬剤は症状発現から6時間以内の早期投与で転帰改善が示唆されており、HAEと確定もしくは強く疑われる場合には可能な限り早期に投与すべき。

・ACE阻害薬誘発性血管性浮腫:ACEI関連では病態がブラジキニン媒介であるため、アドレナリン・抗ヒスタミンステロイドは原理的に無効であり、実際の臨床研究でも有意な効果は示されていない。C1-INH、ecallantide、icatibantなどの使用例・試験があるが、小規模・バイアスの強い研究が多く、症状改善の傾向はあるものの、ICU入室や挿管率を減少させたエビデンスは乏しい。高コストであることから、著者らは「主にHAEなどでの使用に限定すべき」としている。

・トラネキサム酸と新鮮凍結血漿FFP):トラネキサム酸(TXA)はプラスミノーゲン→プラスミン変換を阻害し、カリクレイン活性化の増幅を抑えることができる。後ろ向き研究や症例シリーズで、ACEI誘発例を含むブラジキニン型血管性浮腫に対して症状改善が報告されている。用量:1 g静注(2〜10分で投与)、必要なら反復投与。重大な有害事象は報告されておらず、「安価で安全、どこでも使える」選択肢として推奨されるが、質の高いRCTは存在しない。新鮮凍結血漿FFP)は、ACEを含みブラジキニンを分解し得るほか、C1-INHも含んでいる。15 mg/kgまたは2単位の静注が推奨用量とされる。後ろ向き研究では有効性が示唆されるが、C1-INH以外のカリクレイン系基質も含まれるため、理論上は浮腫悪化の可能性もある。しかし、実際に悪化した症例報告は見当たらない。他の特異的薬剤が使用できない状況では、慎重に検討すべきレスキュー治療と位置づけられている。 

薬剤名(商品名) 作用機序 投与経路 用量 発現までの時間 主な軽微な副作用 重篤な副作用
血漿由来C1-INH(Berinert, Cinryze) C1-INHタンパクの補充 静注 Berinert 20 U/kg、Cinryze 1000 U 中央値 <50分 味覚異常、頭痛、注射部位反応、悪心、下痢、発熱 過敏反応、血栓症、輸血関連感染症 など
組換えヒトC1-INH(Ruconest) C1-INHタンパクの補充 静注 最大4200 U 中央値 90分 掻痒、発疹、副鼻腔炎、頭痛、注射部位反応、悪心、発熱 など 過敏反応、アナフィラキシー血栓症 など
Ecallantide(Kalbitor) カリクレイン阻害薬 皮下注 30 mg 中央値 67分 頭痛、注射部位反応、悪心、発熱 過敏反応、アナフィラキシー
Icatibant acetate(Firazyr) ブラジキニンB2受容体拮抗薬 皮下注 12–25 kg:10 mg、26–40 kg:15 mg、35–50 kg:20 mg、51–65 kg:25 mg、>65 kg:30 mg 中央値 2時間 肝機能検査値上昇、注射部位反応、めまい、頭痛、悪心、発疹、発熱 進行中の虚血イベントを理論的に悪化させうるため、冠動脈疾患では注意
トラネキサム酸 プラスミノーゲンからプラスミンへの変換を阻害 静注 1 gを約10分で投与 数分〜数時間 頭痛、痙攣、背部痛、悪心、嘔吐、下痢 アナフィラキシー血栓症
新鮮凍結血漿FFP C1-INHおよび種々の蛋白(ACEなど)による補充 静注 15 mg/kg 数分〜数時間 過敏反応、容量負荷、輸血関連感染、(理論的には)アンジオエデマ増悪 同左(重篤なアレルギー反応、輸血関連合併症など)

退院・入院の判断と長期管理:気道に関与する浮腫がある患者(喉頭・舌・軟口蓋など)は、挿管されていない場合でも必ずモニタリングが厳重な病棟に入院すべき。Ishoo分類では、

Stage 1:顔面・口唇・眼周囲・四肢

Stage 2:軟口蓋・後咽頭

Stage 3:舌

Stage 4:喉頭
と定義され、ステージが上がるほど気道介入率が高い(Stage 4で67%、Stage 3で16%、Stage 2で8.6%)。このスコアを用いると、Stage 1で数時間観察ののち進行がない患者は退院可能、Stage 2以上は原則入院という実務的な基準を設けることができるとされる。

これはstage1であり、気道緊急のリスクは低い。

stage3であり、気道緊急のリスクが高いと捉える。

喉頭浮腫。Aは浮腫なし、B~Dにかけて重症度があがる。

 

退院可能な患者でも、数時間のED観察で進行がないことを確認する、進行する場合は入院が推奨される。

退院時のポイント:原因薬剤・誘因の除去として、ACE阻害薬、NSAIDs、アスピリンなどは中止、ACEIはアレルギーとして記録し、Ca拮抗薬などに変更する。ARBによる血管性浮腫のリスクは0.11%と低くプラセボと同等だが、ACEI誘発歴のある患者では背景リスクがわずかに高い可能性がある。アレルギー・免疫専門医への紹介を行う。急性または反復する血管性浮腫患者は、詳細な原因検索、トリガー教育、予防的治療(特にHAE)のため専門医紹介が推奨される。