高カリウム血症は、救急の現場でよく見かける電解質異常のひとつです。
状況によっては命に関わる緊急事態にもなり得ます。
そんな高K血症ですが、その治療方針は施設や担当医によって驚くほど違います。
たとえば、アメリカの14施設で行われた研究では、高K血症の患者203人に対して、なんと43通りもの治療法が実施されていました。
研修医の皆さんも、「上級医によって言ってることがバラバラだな」と感じた経験があるのではないでしょうか。
ただ、バラバラなのは現場だけではありません。
ガイドライン同士も、けっこう割れています。
カルシウムを打つ閾値、インスリンの単位数、炭酸水素ナトリウムを混ぜるかどうか、透析をいつ開始するか。
そのどれもが、ガイドラインごとに言っていることが違うか、そもそも前向き試験が存在しない領域です。
だからこそ、大事なのは「いま何を目標に治療しているのか」を常に意識することだと考えています。
この記事では、治療のゴールを4つのMissionに分けて整理し、それぞれのMissionの中で「何が揉めているのか」と「では現時点でどうするか」を確認していきます。
👇本ブログ記事は、以下の記事のリライト記事です👇
- まず全体像~4つのMissionと使用する薬剤
- ◆Mission 1:心臓を守れ! 不整脈を回避せよ
- ◆Mission 2:カリウムを押し込めよ
- ◆Mission 3:カリウムを排出せよ
- ◆Mission 4:密なモニタリングで合併症を防げ
- ◆番外編:Missionが間に合わなかったとき:高K血症による心停止
- 参考文献
まず全体像~4つのMissionと使用する薬剤

(https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2024/3557_05)
使う薬剤と、その「効き始めと切れどき」を一覧にしておきます。
この表は、Missionを時間軸で組み立てるために適宜参照します。
| 薬剤 | 投与量 | Onset | 持続時間 | 実践上のポイント |
|---|---|---|---|---|
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グルコン酸カルシウム |
カルチコール® 20〜35 mLを10分程度かけて点滴静注 |
3分以内 | 30〜60分 |
あくまで心筋保護目的。 K自体は下げない。 効果が切れる前に、K低下治療を同時に進める。 ECG異常が持続すれば追加投与。 |
| インスリン+ブドウ糖 |
50%ブドウ糖液50 mL+ヒューマリン® R 10単位を静注 → 10%ブドウ糖液を50 mL/時で5時間点滴静注 |
約15分 | 4〜6時間 |
もっとも標準的なshift therapy。 低血糖が重大な有害事象で、少なくとも6時間の血糖監視が必要。 |
| サルブタモール | サルブタモール10 mg(ベネトリン®吸入液0.5% 2 mL)+生食2 mLを吸入 | 約30分 | 少なくとも2時間 |
単独使用では効果不十分。 GI療法の補助として使う。 頻脈、振戦に注意。 |
| SZC(sodium zirconium cyclosilicate/ロケルマ®) | ロケルマ® 10 g PO | 約1時間 | 24〜48時間持続(1日3回投与) |
Kを体外に出す役割。 単独で緊急時に使用する薬剤ではない。 リバウンド現象を予防する。 |
| フロセミド | 20〜40 mg IVから開始し、反応に応じて増量 | 約5分 | 約2時間 |
尿が出る患者でのみ有効。 volume overloadがある場合には合理的だが、高K血症に対する直接的なエビデンスは乏しい。 |
◆Mission 1:心臓を守れ! 不整脈を回避せよ
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Mission 1 目標:重篤な不整脈や心停止を防ぐ ● グルコン酸カルシウム(カルチコール®注射液8.5%)20〜35 mLを10分程度かけて点滴静注 |
高K血症で何より怖いのは、不整脈です。
だからこそ、最初に行うべきはカルシウムの静注です!
これには明確な推奨があります。
争点① 「膜安定化」ではなかった、という話
従来、カルシウムは心筋細胞膜を安定化させると説明されてきました。
しかし近年の研究では、静止膜電位を戻すのではなく、L型Caチャネルを介して高K血症で障害された心筋内伝導を一時的に補う働きをしている可能性が示唆されています。
イヌ心筋細胞を用いた対照実験でも、カルシウムは主として伝導速度を改善し、静止膜電位も活動電位持続時間も正常には戻りませんでした。
BMJ 2026の最新の総説では、
「カルシウムはQRS延長のような伝導遅延の徴候がある患者で有益でありうる一方、T波異常には有益でない理由を説明する」と記載があります。
つまり、QRS延長、房室ブロック、徐脈などの伝導障害には特に効果が期待できるということです。
といっても、どの段階でQRS延長が出てきて致命的な不整脈に移行するかもわからない病態が高カリウム血症なので、T波異常を含めてあらゆる心電図変化がある場合には、カルシウムを投与することにしてはいます。
争点② 心電図がきれいなら、打たなくていいのか?
ここはガイドライン間でコンセンサスがない争点です。
UKKA・ESC・KDIGOはいずれも「心電図変化がある場合」を適応とし(UKKAは1C)、BMJ総説では「K >6 mmol/Lで心電図異常がない患者については、コンセンサスが存在しない」と率直に書いています。
私は、以下の2つの状況においてカルシウム投与を行うようにしています。
・心電図変化にかかわらず、K >6.5 mmol/Lである場合
・テント状T波を含む何らかの心電図変化(P波消失、QRS延長、徐脈など)がある場合
これは、KDIGOカンファレンスサマリーが「心電図がすぐに撮れない状況では、K >6.5 mmol/L の全患者にカルシウムを投与する」としている立場に近いものです。
重症高K血症の観察研究では、有害事象の多くがカルシウム投与前に起きており、治療遅延を避ける重要性が示唆されています。
このことから、Kが6.5 mmol/Lを超えるような高度高K血症では心電図変化を待たずにカルシウムを先に打ち込む方が安全だと考えています。
致命的な不整脈が起きてから対応するのではなく、先手を打って予防しておくことにしています。
そして、心電図のわずかな変化にも敏感でいることも重要です。
特に注意すべき所見は、P波の消失、QRS延長、徐脈などです。
重症高K血症188例の解析では、6時間以内の重大有害事象(心室細動・CPR・死亡)と最も強く関連したのは徐脈(相対リスク12.3)、接合部調律(7.5)、QRS延長(4.7)でした。
(私がカルシウムを投与すると決めている)テント状T波ではありません。
それでも、臨床的に最もよく見られるテント状T波にもきちんと目を向けましょう。
テント状T波だけで致命的な不整脈に直結する可能性は高くないとされていますが、油断は禁物です。
ある報告では、なんらかの心電図異常を認めてから重篤なイベントが起きるまでの中央値は、たったの47分でした。
そのため私は、たとえテント状T波だけであっても、何らかの心電図変化がある場合には迷わずカルシウムを投与するようにしています。
こうして時間を稼いでいる間に、別のMissionをどんどんこなしていきます。
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ただし、心電図は「除外」には使えない! 305例の後ろ向き比較では、初診時K >6 mmol/Lの患者の46%が、高K血症を示唆する心電図変化を示しませんでした。 テント状T波が見られたのも、K 5.5–7.0で25%未満、K >7.0でも35%のみ(203例の前向き観察研究)。
ACEP後援のエキスパートパネルは、「心電図は高K血症の検査ではなくその心臓での表現にすぎないため、高K血症の除外に用いてはならない」としています。 |
争点③ カルチコール1アンプルで、やった気になっていませんか?
ここで注意したいのは「量」です。
日本で使われているカルチコール®は8.5%製剤で、海外の10%製剤とは規格が異なります。
一般的には10 mL程度を投与することが多いかもしれませんが、それだけでは足りないことが多いです。
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10 mLの単回投与では、足りない 高K血症患者に対して10%グルコン酸カルシウムを10 mLずつ投与した研究では、すべての症例で2回以上の追加投与が必要となり、97%では3回も投与が行われていました。 |
つまり、10%グルコン酸カルシウムみたいな濃い製剤でも10 mLの単回投与では不整脈の予防には不十分ということです。
ERでは常に患者をモニターでしっかり追えるとは限りません。
だからこそ、体格に応じて最初から20〜35 mL程度を一気に投与しておく方が、実践的で確実です。
ただし、急速静注すると血圧低下やほてり、不整脈を招く可能性もあるので、投与速度にはちょっとだけ気を配ってください。
ちなみにUKKA 2023は、10%グルコン酸カルシウム30 mLを10分かけて、または10%塩化カルシウム10 mLを5分かけて(いずれもカルシウムとして6.8 mmol、1C)としています。
塩化カルシウムを使うのは蘇生場面(心停止・peri-arrest)に限り、それ以外はグルコン酸カルシウム、でよいでしょう。
そしてもうひとつ、大事なポイントです。
カルシウムにはカリウムを下げる作用はありません!
カルシウムはあくまで「心臓を一時的に保護する」役割しかなく、効果は30〜60分と限られています。
この時間のうちに、次のMissionへすぐに取りかかる必要があります。
なお、「ジギタリス中毒にカルシウムは禁忌」という古い教えは、現行の文献に支持されていません(ジゴキシン中毒161例の後ろ向きコホートで、カルシウム投与は不整脈や死亡率上昇と関連しませんでした)。
このあたりは以下のブログ記事でむか~し扱いました👇
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🚨 ここがPitfall! Mission 1 ・カルシウム製剤は重篤な不整脈の予防と治療に使える。 以下の場合には遅滞なく投与する!!! ・K >6.5 mmol/L ・何らかの心電図変化がある ・グルコン酸カルシウムは投与量にも注意。あまり少量では効果が不十分になりがち ・心電図で探すのは、テント状T波よりも「徐脈・接合部調律・QRS延長」。心電図が正常でも高K血症は否定できない ・カルシウム製剤にはカリウムを下げる効果はないため、カリウムを低下させる治療を並行させる |
◆Mission 2:カリウムを押し込めよ
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Mission 2 目標:血中(細胞外)Kを細胞内に押し込めることによる、一時的なK濃度低下 ① 50%ブドウ糖液50 mL+ヒューマリン® R 10単位を静注 → 10%ブドウ糖液を50 mL/時で5時間点滴静注 ② 同時併行で、サルブタモール10 mg(ベネトリン®吸入液0.5% 2 mL)+生食2 mLを吸入 |
高K血症の治療といえば、まず思い浮かぶのがGI(グルコース・インスリン)療法です。
争点④ インスリンは10単位か、5単位か
GI療法におけるインスリンの投与量については、大きく5単位派と10単位派の流派がありますが、現時点ではその優劣が一貫していません。
私は10単位を選択しておくことにしています。
特に、高K血症が重症なほどその効果はより大きくなる傾向があります。
ガイドラインも割れています。
UKKA 2023とERC/RCUK 2025は10単位+グルコース25 g、KDIGOは5単位+グルコース25 g。
KDIGOが5単位を推す根拠は、10件・3437例のメタ解析で、低用量は10単位と比べて低血糖のオッズが減少(OR 0.55、95%CI 0.43–0.69)し、血清K低下量に差がなかった(平均差 −0.02 mmol/L)という結果です。
ただしBMJは、こう釘を刺します。
「最近の2件の後ろ向きコホートはK低下効果について相反する結果を報告しており、最適なインスリン投与戦略を決めるには前向き研究が必要である」。
メタ解析といっても後ろ向き研究の集積で、反証もあります。
だから10単位を標準にしておいて構わない、というのが現時点の判断です。
そのうえで、体格が小さい患者や腎不全のある患者では、初回のインスリン投与量を5単位に減らすことも検討しましょう。
CKD、AKI、インスリン未使用、体重50 kg未満、初回血糖 <7 mmol/L(<126 mg/dL)では加減して5単位にしておくようにします。
注意したいのは、インスリンの作用時間とブドウ糖の持続時間にズレがあることです。
ブドウ糖の血糖上昇効果はおおよそ1時間しか持ちませんが、インスリンの作用は4〜6時間続きます。腎機能が悪ければさらに長引くこともあります。
これが低血糖の原因です。
そのため、インスリン投与後は追加でブドウ糖液を補充しておくのが現実的な戦略です。体液量が気になる場合は、20%や50%の高濃度ブドウ糖液を使うことで余分な輸液量を抑えることができます。
争点⑤ サルブタモールは「おまけ」か?
最近ではサルブタモール吸入を併用する利点が注目されています。
GI療法と併用することでKの低下効果がより大きくなり、GI療法単独に比べて低血糖のリスクを減らすこともできます。
このようにサルブタモールにはK低下作用があるのですが、反応に個人差が大きく、重症例の単独治療には向かないことを覚えておきましょう。
「GI療法と一緒に使う」ことが大切です。
UKKA 2023も、「重症高K血症の治療でサルブタモールを単剤で用いないことを推奨する(1A)」としています。高K血症の推奨で1A(強い推奨・高いエビデンス)が付くものはごく少数で、そのひとつが「単剤で使うな」だというのは覚えておく価値があります。
争点⑥ 「メイロンも入れときますか?」に、どう答えるか
当直帯でよく聞く一言ですが、ここも立場が割れています。
・UKKA 2023(2C):急性高K血症の治療に、静注重炭酸ナトリウムの持続投与をルーチンには使用しないことを提案する
・KDIGO:輸液過剰のないアシドーシスでは考慮しうる
・ESC:言及なし
否定的なデータが積み上がっています。
健常ボランティア14例の研究では代謝性アシドーシスのない患者で無効、プラセボ対照試験では最初の60分間、Kを低下させませんでした。
出番があるとすれば、「高K血症を下げる薬」としてではなく「重症代謝性アシドーシス(pH <7.2)を治療する薬であり、その結果としてKが下がる」という位置づけです。
ERで反射的に投与する類の薬剤ではない、と考えておくのが現時点では妥当でしょう。
もうひとつ、地味ですが重要な一点。
重炭酸ナトリウムとカルシウムを同じラインで流すと、炭酸カルシウムが析出してラインを閉塞させます。
2本目の静脈路を確保するか、投与の間にラインを十分にフラッシュしてください。
争点⑦ 輸液は生食か、リンゲル液か?
輸液が必要な場面では、リンゲル液を選ぶのが無難です。
微量のKを気にして生理食塩水を選びたくなるかもしれません。
でも、生食を大量に使うと高Cl性の代謝性アシドーシスを引き起こし、かえってKが細胞から血中へ移動して高K血症を誘発するリスクがあります。
実際、SMART試験の二次解析では、高K血症のベースがあった患者において生食とリンゲル液で重症高K血症への移行率に有意差はなかったという報告もあります。
つまり、「リンゲル=Kが入ってるからNG」と決めつけるのは早計です。
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🚨 ここがPitfall! Mission 2 ・GI療法に用いるインスリンは10単位が標準的だが、体格が小さい・腎不全があるなどの場合には5単位に減量することを考慮する ・GI療法後には低血糖が起きえるため、10〜50%ブドウ糖液を持続点滴しておくとよい ・GI療法とサルブタモール吸入を併用することでK低下効果が大きくなり、低血糖リスクも軽減。ただし、サルブタモール単独治療は推奨されない(1A) ・重炭酸ナトリウムはルーチンには使わない(2C)。使うとすれば重症代謝性アシドーシスの治療として。カルシウムとは必ず別ラインで ・輸液は必ずしも生食を選ぶ必要はなく、リンゲル液使用によるK上昇効果はほぼ無視することができる |
◆Mission 3:カリウムを排出せよ
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Mission 3 目標:Kを体外に排出することでK濃度を低下させる ● ロケルマ® 10 g内服 ● 透析(上記治療に抵抗性の場合や末期腎不全などが存在する場合) |
Mission 1と2は、どちらも「Kを細胞内に押し込んでひとまず隠す」治療です。
体内の総K量は1ナノも減っていません。
減らすには、腸から出すか、腎から出すか、透析で抜くかしかありません。
争点⑧ SZCはERで本当に効いているのか?
急性期治療において、SZC(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)の存在感がどんどん大きくなっています。
SZCは消化管全体でカリウムを吸着する性質を持ち、内服からわずか1時間で血清K値を下げることができます。
ENERGIZE試験では、ERにおける高K血症の治療としてSZCとGI療法を併用することの有用性が示され、投与2時間後の時点で、GI療法単独よりも有意にK濃度を低下させられる可能性があると報告されました。
…ところが、この試験には続きがあります。
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同じ試験が、「効いた」とも「効かなかった」とも引用されている
このブログを書くときに2026年に発表された総説を2つ読みました。 2つの総説で立場が違うのが少し面白かったので触れておきます。
ER患者70例のこのRCT(ENERGIZE試験)は、2時間後には有意なK低下を示した(0.72 vs 0.36 mmol/L、低下量の差の95%CI −0.68〜−0.02)一方で、4時間後の差は有意ではありませんでした(絶対差 −0.13、95%CI −0.44〜0.17)。
2026年のEmergency Medicine Journalは2時間の結果を、BMJは4時間の結果を引用しています。同じ試験が、肯定的にも否定的にも読まれているのが現状です。 |
続くKBindER試験(SZCを含む複数の薬剤の効果を評価した無作為試験)では、登録不良による早期終了があり、少数例の解析では薬剤間に明確な差を示せませんでした。
したがって、SZCは比較的速やかに消化管からのK除去を期待する補助薬ではありますが、ER診療におけるその効果はいまだ証明されてはいません。
ただし、SZCの魅力は、単に高K血症を解消するだけにとどまりません。
「Mission 2:カリウムを押し込めよ」で使ったインスリンなどの効果が切れ始めたころに起こるリバウンド現象(Kの再上昇)を抑えてくれる働きも期待できます。
これにより追加治療の必要性を減らす効果も見込まれます(この点はMission 4で後述します)。
なおUKKA 2023は、SZC 10 gを1日3回・最大72時間まで、重症高K血症(K ≥6.5)の緊急管理に推奨(1B)、中等症(6.0–6.4)でも考慮を提案(1B)としています。
ガイドラインの推奨は積極的ですが、試験結果はまだ追いついていない、という構図です。
なんやかんや言っても、このSZCが出てからというもの、カリウムを排出する目的での緊急透析がめっきり減ったように感じるのは気のせいでしょうか?
争点⑨ まだ、ケイキサレートを溶いていませんか?
50年以上使われてきたポリスチレンスルホン酸(SPS)ですが、2023年のUKKA改訂で、急性期の治療プロトコルから削除されました。
「ポリスチレンスルホン酸は、急性高K血症の管理においてもはやルーチンに使用すべきでないことを推奨する(2B)」。EMJもACEPのパネルも同じ立場です。
理由は2つ。
①効いている証拠が薄いことと②害の報告があること。
CochraneレビューはRCTが存在しないため論評できず、後ろ向き研究ではSPS単回投与による平均低下は0.14 mmol/Lにとどまりました。一方で重篤な消化管合併症(結腸潰瘍、虚血、腸管壊死)は1000人年あたり16〜23件と報告されています。
もう使いません。
争点⑩ フロセミドは「Kを下げる薬」なのか?
フロセミドについては、「使ってはいけない」というわけではありません。
ただし、急性期における効果は限定的で、体液量過多があるときに限って使用を検討する程度にとどめておくのが無難です。
裏づけると、急性期高K血症に対するループ利尿薬の前向き臨床試験は、ひとつも存在しません。
EMJは「ERにおける役割は、前向き臨床データの欠如のため依然として不明瞭(elusive)である」、BMJは「輸液過剰があり、かつ腎機能が保たれている患者に限定すべき」とし、実臨床の観察研究で使われたのは患者の5%のみだったと報告しています。
※用量は、BMJではフロセミド20〜80 mg静注(効果発現30〜60分、持続2〜3時間、期待されるK低下0.3 mmol/L)とされています。
争点⑪ いつ透析をするか?
ここまでの治療でKが下がらない場合や、もともと維持透析をしている患者、あるいはBRASH症候群などでABC(Airway, Breathing, Circulation)が不安定な場合には、ためらわずに専門科へコンサルトしましょう。
早めに透析を視野に入れることが大切です。もちろん、透析までのつなぎとして、Mission 1〜3の治療を同時並行で迅速に進めておくことが重要です。
「では、いくつになったらやるのか」。
一般に「標準的な薬物治療にもかかわらず血清Kをおよそ6.0〜6.5 mmol/L未満まで低下させられないこと」が保存的治療の失敗と実務的には理解されています。
透析患者については、UKKA 2023が実務的に重要な推奨を置いています。
「重症高K血症(K ≥6.5)でtoxicな心電図変化を伴う場合、透析が直ちに実施可能であっても、不整脈のリスクを減らすため静注カルシウム塩で治療することを推奨する(1C)」。
「すぐ透析するから」という理由でカルシウムを省略しないのは重要ですね。透析室に運ぶまでの数十分に、不整脈は起きます。
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🚨 ここがPitfall! Mission 3 ・SZC(ロケルマ®)はER診療でも強い味方。GI療法などとの組み合わせでKを迅速に低下させることができる ・リバウンド現象を抑えることで、追加治療の必要性を減らす効果も期待できる。ただしERでの上乗せ効果は、まだ試験で証明されていない ・ポリスチレンスルホン酸(ケイキサレート)は、急性期のプロトコルから外れているので使わない。単回投与での平均低下は0.14 mmol/L、腸管壊死のリスクもある ・フロセミドの前向き試験はゼロ。体液量過多かつ尿が出る患者に限定し、単剤では使わない ・これまでの治療に反応が悪い場合や維持透析患者、BRASH症候群などで不安定な場合には透析を行う。透析がすぐできても、toxicな心電図変化があればカルシウムは打つ |
◆Mission 4:密なモニタリングで合併症を防げ
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Mission 4 目標:治療効果判定と合併症予防をせよ ● K:1時間、2時間、4〜6時間で測定 ● 血糖値:30分、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間で測定 |
治療のすべてのフェーズにおいて、患者の状態をこまめにモニタリングすることが不可欠です。
特に注目したいのは、治療効果を評価するためのカリウムと、合併症を防ぐための血糖値! この2つは必ず押さえておきましょう。
争点⑫ Kは、いつまで測るのか?
多くの薬剤は投与から1〜2時間で効果のピークを迎えます。
そのため、治療開始から1時間後と2時間後にKを測定し、K <6.0 mmol/Lという目標に届いているかをチェックします。
達成できていなければ、治療の追加や見直し、あるいは透析への切り替えも視野に入れて動く必要があります。
また、GI療法やサルブタモール吸入では、治療後4〜6時間ほどでKが再上昇してくるリバウンド現象が報告されています。
これを防ぐ意味でも、SZCの併用が勧められています(ここが重要なポイントです)。
※UKKA 2023は、中等症・重症の高K血症では治療開始から少なくとも1・2・4・6・24時間後にKを測定することを提案(2C)しています。ERで完結しない「24時間後」が入っているのがポイントで、入院指示や翌日の外来にどう引き継ぐかまで含めた設計が必要になります。
争点⑬ 血糖は、何時間追いかけるのか?
GI療法を選択した場合、インスリンの作用が長く残る一方で、ブドウ糖の効果は1時間ほどしか続きません。
その結果として低血糖が起きやすくなることが知られています。
これは命に関わる合併症です。
どのくらい起きるのか?
GI療法後の低血糖は17〜44%。そのうち10%が重症低血糖(<3 mmol/L)という報告もあります。
リスク因子は、非糖尿病、治療前血糖 <7 mmol/L、腎機能障害、低体重、高齢(>60歳)です。
お気づきでしょうか…?ERの高K血症患者のほとんどが、この条件に当てはまります。
ガイドラインでは、治療開始から最初の2時間は30分ごとに血糖をチェックし、その後は少なくとも6時間にわたって1時間おきに測定することが推奨されています。
この「6時間」、実は2023年の改訂で12時間から短縮されたものです。
UKKAは「6時間で十分であるというエビデンスが増えつつある。これは2014年のプロトコルに戻す変更であり、臨床現場での遵守率の改善に役立つ可能性がある」と説明しています。
「守れない12時間より、守れる6時間」という判断です。
もうひとつ、UKKAが強く推しているのが治療前血糖による層別化です。
治療前血糖が7.0 mmol/L未満の患者には、インスリン・グルコース治療に続けて10%グルコースを50 mL/時で5時間投与する(2B)。Mission 2の「10%ブドウ糖液を50 mL/時で5時間」は、まさにこれに対応しています。
このほかにも、心電図のモニターや体液量のチェックなど、全身状態の変化を定期的に評価しておくことが大切です。
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🚨 ここがPitfall! Mission 4 ・高K血症の治療では、その効果判定と合併症予防のために綿密なモニタリングが重要 ・多くの薬剤の治療効果のピークが1〜2時間なので、その際にK <6.0 mmol/Lが達成できているか効果を判定する。未達成なら治療の追加や透析への切り替えを考える。また、4〜6時間以降でのリバウンド現象にも要注意 ・GI療法をした場合には低血糖に注意。最初の2時間は30分毎、その後は少なくとも6時間は1時間ごとに血糖値をモニタリングする |
◆番外編:Missionが間に合わなかったとき:高K血症による心停止
Mission 1が間に合わず、心停止に至ってしまった場合についてもおさらいしておきます。
2025年のERC/Resuscitation Council UKガイドラインは、こう指示しています。
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高K血症による心停止(RCUK/ERC 2025) 10%塩化カルシウム10 mLを静注し、重炭酸ナトリウム50 mmolを静注する。別々のラインで、または間にフラッシュを挟んで投与する Kを体外へ:ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム10 gを経口投与。難治性の重症高K血症では透析を考慮する 初回の蘇生が奏功しない場合、地域のプロトコルに従ってECPRを考慮する |
UKKA 2023も同方向で、高K血症が心停止の原因と判明または疑われる場合に、静注塩化カルシウム(1C)、インスリン10単位+グルコース25 g(1B)、重炭酸ナトリウム(2C)を投与するとしています。
「心停止にカルシウムは無益、むしろ有害」なんてガイドラインを見たような記憶がある方もいると思います。
それは未分化の院外心停止391例のRCTによるもので、結果はカルシウム投与に有益性はなく、むしろ害の方向を示唆したというものです。ただし、、、
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その試験は、高K血症が疑われる症例を除外していました 高K血症が疑われる原因であることは、除外基準であった。 サブグループ解析では、高K血症を示唆する心電図変化を有する患者においても同様の結果が示された。 総じて、高K血症が疑われる患者の心停止中の経験的カルシウム投与の有益性を評価する、質の高い臨床試験が必要である。 |
つまり、「原因不明の心停止に、とりあえずカルシウムを打つ」ことと、「高K血症が原因と分かっている/強く疑われる心停止にカルシウムを打つ」ことは、別の臨床問題です。前者を否定した試験の結果を、後者にそのまま持ち込むことはできません。
後者にも強いエビデンスがあるわけではないのがツライところです。
2025年のAHAガイドラインでは、高K血症が疑われる心停止に対してカルシウム・重炭酸・インスリングルコースはいずれも「有効性が十分に確立されていない(2b)」、吸入β刺激薬は「推奨されない(No benefit)」。欧州は打て、米国は2b。
これが2026年現在の立ち位置です。個人的には打ちます。
最後に、透析患者の心停止について。
RCUK 2025の手順はそのまま覚えて使っています。
訓練を受けた透析担当者に機械を任せる/透析を止め、輸液ボーラスで血液量を戻す/除細動対応機でない限り切り離し、濡れた床面に注意する/透析アクセスは開放したままにし、薬剤投与に使う。
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🩺 ER takeaway ・治療は4つのMissionで組み立てる。①心臓を守る ②Kを細胞内に押し込む ③Kを体外に出す ④モニタリング ・Mission 1:K >6.5、または何らかの心電図変化があれば遅滞なくカルシウム。カルチコール®8.5%を体格に応じて20〜35 mL、10分程度で。1アンプルでは足りない ・カルシウムは「膜安定化」ではなく伝導の補填。効くのはQRS延長・徐脈・房室ブロック。そしてKは下げない。効果は30〜60分 ・心電図は高K血症の除外には使えない(K >6でも46%は変化なし)。心電図異常の出現から重篤イベントまでの中央値は47分 ・Mission 2:GI療法は10単位が標準。体格が小さい・腎不全なら5単位も検討。ブドウ糖1時間・インスリン4〜6時間というズレが低血糖を生む ・サルブタモール吸入はGI療法に上乗せする。単剤使用は推奨されない(1A)。重炭酸はルーチンには使わない(2C)、カルシウムとは別ラインで。輸液はリンゲル液でよい ・Mission 3:ロケルマ®10 gは1時間で効き始め、リバウンドを抑える。ただしERでの上乗せ効果は未証明。ケイキサレートは急性期から外れた ・「保存的治療の失敗」=標準治療でKを6.0〜6.5 mmol/L未満にできないこと。透析がすぐできても、toxicな心電図変化があればカルシウムは打つ ・Mission 4:1・2時間でK <6.0を確認、4〜6時間のリバウンドに備える(UKKAは24時間後まで)。血糖は最初の2時間30分毎、その後6時間は1時間毎 ・高K血症による心停止では、塩化カルシウム+重炭酸(別ライン)+GI療法。未分化CPAへのルーチン投与を否定した試験と混同しない |
参考文献
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