3部作の最終回です。
前編で「本当に失神か(mimics)」を詰め、
中編で「死ぬ失神か」を拾って検査を選びました。
それでもなお、ERでは原因が分からないまま終わることが多くあります。
初回評価で確定診断に至るのは50〜60%程度でした。
では、原因不明の患者をどうするのか。
この記事では、「原因不明」≠「入院」という話をします。
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【①前編】STEP① 本当にsyncopeか?──失神mimicsを外す 【②中編】STEP② 死ぬ失神ではないか? / STEP③ 検査を「選ぶ」 【③この記事】STEP④ 3つに分類する / STEP⑤ 行き先を決める(帰宅・観察・入院) |
そして、前編の冒頭に置いたこの症例ですが、最後にこの患者の答え合わせもします。
【症例(再掲)】
ひとり暮らしの75歳男性。原因不明の転倒による頬骨骨折でERを受診した。
高血圧、脂質異常症、うつ病の既往があり、いずれも治療中である。
受傷は午後の早い時間で、犬の散歩中に起きた。失禁を伴っていたが、本人はその出来事をまったく覚えていない。目撃者はいない。
過去6か月をさかのぼると、同様の転倒が1回、一過性意識消失のエピソードが2回あった。いずれも食後に長く座っていたあと立ち上がったとき、あるいは夜間の排尿時に起きている。すべて目撃者はいない。
さて、この患者をどうマネジメントしますか?
(N Engl J Med. 2026;395:582-91. より)

- STEP④ 3つに分類する
- STEP⑤ 行き先を決める
- CSRSやFAINTなどのClinical Prediction Ruleは使うべき?
- ブログ管理人の意見
- 冒頭の症例をどうするか
- 3部作の総まとめ
- 参考文献
STEP④ 3つに分類する
ここまで来たら、暫定的な分類をしておきましょう。
ERでは細かい診断名を当てにいかず、ひとまず3つのどれかに置けば十分です。
初期評価でいずれにも確定できない場合は、無理に分類せずunexplained syncope(原因不明の失神)として、リスク評価と安全な行き先の決定に進みます。
| 分類 | 主な病態 |
|---|---|
| 反射性失神 |
血管迷走神経性失神(VVS) 状況失神(排尿・排便・咳嗽・嚥下など) 頸動脈洞症候群 |
| 起立性低血圧 |
循環血液量減少・出血 薬剤 自律神経不全(神経原性OH) |
| 心原性失神 |
徐脈性不整脈 頻脈性不整脈 流出路閉塞などの構造的心疾患(重症AS、HCM) 心肺疾患(肺高血圧、PE、大動脈解離) |
(N Engl J Med. 2026;395:582-91.)
年齢による偏りが大きいのがポイントです。NEJMのレビューによると、
・反射性失神は、若年成人では90%超を占めるが、高齢者では約40%
・心原性失神は若年成人ではまれ(最大5%)だが、加齢とともに増加し、高齢者では失神の30%に達する。しかも罹病率・死亡率が高い
・起立性低血圧の有病率も加齢とともに増加し、50歳未満では5%未満、70歳超では20%超、施設入所の高齢者では最大50〜68%
(N Engl J Med. 2026;395:582-91.)
さらに、高齢者では複数の機序が最大3分の1の症例で共存し得る(complex syncope)ことが重要です。
「必ずしも1つとは限らない」というのがpitfallです
中編でも「起立性低血圧が確認された」≠「この原因のみでよい」
ということを確認しましたね?
そして、ERでは「原因不明」のままでも構いません。
EUSEMのconsensusも、「失神の正確な原因は必ずしもERで検出される必要はなく、中等度・高リスク患者では病棟医の仕事として残ることも多い」としています。
(Eur J Emerg Med. 2024;31:250-259.)
ここから先はリスク評価をして、帰宅か入院かを悩むことになります。
ちなみに、再発性の失神は予後が悪いことも知っておくとよいでしょう。
24か月の追跡において、再発性でない失神と比べて、再発性失神は死亡リスク1.87倍(95%CI 1.26〜2.77)、主要心血管イベントのリスク2.69倍(95%CI 2.02〜3.59)と報告されています。
(N Engl J Med. 2026;395:582-91.)
「失神を繰り返している」は、それ自体がリスク因子です。
STEP⑤ 行き先を決める
低リスク・高リスクの特徴
低リスクか、高リスクかを見分けていきます。
| 低リスク | 高リスク | |
|---|---|---|
| 失神の特徴 | ・前駆症状(嘔吐、熱感、発汗) ・誘因(痛み、感情、咳嗽、排便、排尿) ・長時間の立位後、または暑く混雑した場所 ・臥位/座位からの起立 ・食事中または食後 |
・胸部不快感、呼吸困難、頭痛、腹痛の突然の発症 ・唯一の前駆症状が動悸や胸痛 ・臥位または労作中 |
| 既往・家族歴 | ・若年(40歳未満) ・同じ性質の失神を長年(年単位)繰り返している ・構造的心疾患の既往なし |
・突然死の家族歴(特に若年) ・重症の冠動脈疾患または構造的心疾患(心不全、心筋梗塞既往、ICD植込み、左室駆出率低下) |
| 初期評価の所見 | ・身体診察で異常なし | ・収縮期血圧 ≦ 90 mmHg ・徐脈(心拍 ≦ 40/分) ・貧血(ヘモグロビン < 9 g/dL) |
| 心電図所見 | ・新規(または既知でない)左脚ブロック ・二束ブロック ・Brugada型心電図 ・急性虚血に一致する変化 ・非洞調律(新規) ・pre-excited QRS ・右側前胸部誘導の陰性T波、不整脈原性心筋症を示唆するepsilon波 ・QTc延長(> 450 ms) |
(J Clin Med. 2024;13:3231. Table 3より)
ERでこの評価を行うと、患者は次の3群のいずれかに落としこめます。
・良性の原因が濃厚、低リスクの特徴あり、高リスクの特徴なし(→帰れる)
・重篤な原因が濃厚、高リスクの特徴あり(→さらなる精査のため入院すべき)
・それ以外すべて
・良性らしいが高リスク併存症がある患者
・気になる機序だが高リスク併存症はない患者
・低リスクでも高リスクでもない患者
この「それ以外すべて」こそが、ERで一番悩む群です。
そして、ここに「観察」という第3の選択肢があります。
※海外のERでは特別なユニットがあり、長時間の「観察」ができるのですが、
日本ではそういったユニットは通常ないのではないかと思います。
そのため、現実的には患者・家族と相談して、入院経過観察寄りに考えるような方向性になります。
Observe:何時間、モニター監視をすべき?
低リスクでも高リスクでもない患者は、観察(Observe)により、その後に高リスク/低リスクへ再分類できる可能性があります。
観察はER内、または蘇生設備のある専用の場所で行うべきとされています。
原因不明の失神患者に対するルーチンの入院に代わる適切な選択肢として考えられています。
そして、観察中は不整脈検出のためにECGモニターを装着し、まだ行っていなければ心エコーを施行すべきです。
では、何時間、経過を見ればよいのでしょうか?
モニタリングが利益をもたらす理屈は、失神エピソードと有害事象が時間的に近接しているからです。
実際、失神患者の短期有害事象の多くはER評価後の最初の3日間に生じ、主に徐脈性/頻脈性不整脈です。
より詳しい研究はこちら👇
・CSRS(※後述)でリスク層別化された5581例の前向き研究では、全不整脈イベントの最大50%が、低リスク患者ではER到着後2時間以内、中等度・高リスク患者では6時間以内に発生した
・非低リスク失神患者242例の別の前向き研究では、12時間を超える心臓モニタリングが7日間の有害事象に対して良好な感度(0.89、95%CI 0.65〜0.99)を示した
これを踏まえて専門家は、以下を提唱しています。
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「最適な心臓モニタリング時間について決定的な推奨はないが、ほとんどの患者で12時間を提案する」 「失神の機序が不明な低リスク患者では、より短い時間を考慮してもよい」 |
(J Clin Med. 2024;13:3231.)
ただし、「12時間」は確立した安全基準ではなく、観察研究を基にした実務上の1つの提案としてとらえてください。
上記のCSRSを用いた研究とSyMoNE研究とでは、対象集団もアウトカムも異なります。
これらの数字を単純に足し合わせて「中間リスクなら全員12時間」「12時間を経過すれば安全」と単純化することはできないので、注意してください。
NEJMのレビューでも、より具体的に「原因不明の中間リスク患者では、6〜12時間の心臓モニタリングを伴う構造化されたER観察プロトコルが入院を減らすのに効果的」としています。
50歳超の成人124名を対象としたランダム化試験では、入院群とER観察群とで30日および6か月の重篤な転帰(頻脈性不整脈、不安定狭心症、PE、大動脈解離、脳梗塞)の発生率は同等であり、観察群のほうが入院コストは大幅に低かった
との報告もその根拠の1つになっています。
(N Engl J Med. 2026;395:582-91.)
米国のガイドラインも、方向性は同じです。
「原因不明の中等度リスク患者において、構造化されたERでの観察プロトコルの使用は、入院を減らすうえで効果的となり得る」(COR IIa、LOE B-R)
(2017 ACC/AHA/HRS Syncope Guideline)
ここでいう「中等度リスク」の定義も明記されています。
50歳以上/心疾患の既往、機能不全の証拠のない心臓デバイス、気になる心電図所見、若年突然死の家族歴/反射性失神に一致しない症状。
ERでの「オーバーナイト」が許容されているような病院では、こういった戦略をとることも一考の余地があると考えています。
「念のため入院」は本当に安全か
「いやいや、低リスクだとしても念のため入院経過観察が良いでしょう?」
そう考える気持ちもよくわかります。
もしかしたら失神の患者は原則として全例入院、必ず循環器内科に診察を依頼するプロトコルになっている病院もあると思います。
この議論がありそうな分野についてもまじめに考えてみましょう。
低リスク患者の入院については、以下のような意見を唱える専門家がいます。
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「低リスク群における入院は、追加の診断的利益がきわめて限られており、かつ最大13%の絶対リスクで失神以外に起因する院内有害事象と関連し得る」 (J Clin Med. 2024;13:3231.) |
※これは、SFSR 0点で入院した患者72名を対象とした単施設後ろ向き研究からの引用です。
さらに、
・いくつかの研究では、近年の失神の全体的な入院率が低下しているが、再受診リスクの明らかな上昇はない
・入院が失神患者の予後に追加の利益をもたらすかは明確ではない。STePS研究は、入院が短期予後には良い影響を与え得るが1年の長期予後には影響しなかったという根拠を提供した
・一方で、入院に伴うリスクは広く記述されており、最近のsystematic reviewは入院時の予防可能な害(preventable harm)の全体リスクを6%と推定している
と報告がされています。
そして、入院とER帰宅を直接比較した2026年のsystematic review & meta-analysis(18報、510,545名)では、入院群のほうが有害事象率・死亡率とも高い傾向を示しました。
これは主として重症患者ほど入院するという交絡の影響を強く受け、異質性やバイアスも大きい結果であることから、著者らは「現時点のエビデンスでは、失神患者を入院させるべきか否かを一律に推奨できない。ただし、低リスク患者のER帰宅後の短期有害事象は少ない」という結論に至っています。
(Acad Emerg Med. 2026;33:e15111.)
その一方で、高リスク患者については明確です。
「有害事象のリスクとさらなる検査を要する可能性が高いことから、こうした患者は24時間のECGテレメトリーが利用でき、臨床的悪化に対応できる病棟に入院させるべきである」
(J Clin Med. 2024;13:3231.)
米国のガイドラインの推奨も並べておきます。
・「初期評価で同定された、失神の原因に関連し得る重篤な医学的状態を有する失神患者には、入院での評価と治療が推奨される」(COR I、LOE B-NR)
・「重篤な医学的状態がない場合、反射性失神が濃厚な患者を外来で管理することは妥当である」(COR IIa、LOE C-LD)
・「重篤な医学的状態がない場合、心原性失神が疑われる選択された患者を外来で管理することは妥当かもしれない」(COR IIb、LOE C-LD)
(2017 ACC/AHA/HRS Syncope Guideline)
高リスクだと判断することができれば方向性にあまり悩みませんね。
ちなみに、反射性失神の外来管理(COR IIa)の根拠として、
「暫定的なVVS患者の長期死亡リスクは、リスクをマッチさせた失神のない患者と同等である」ことが挙げられています。
例外として挙げられているのは、外傷リスクを伴う頻回の再発性失神、または失神に関連する原因不明の外傷です。
そして、ここまでで議論された「重篤な医学的状態」も具体化されています。
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 不整脈系 |
持続性または症候性VT 症候性の伝導系疾患またはMobitz II型・3度房室ブロック 神経調節性失神に関連しない症候性徐脈または洞停止 症候性SVT ペースメーカー・ICDの機能不全 不整脈を来しやすい遺伝性心血管疾患 |
| 心臓・血管の非不整脈系 |
心筋虚血 重症大動脈弁狭窄 心タンポナーデ HCM 重症の人工弁機能不全 肺塞栓 大動脈解離 急性心不全 中等度〜重度の左室機能不全 |
| 非心臓系 |
重症貧血・消化管出血 失神による重大外傷 持続するバイタルサイン異常 |
(2017 ACC/AHA/HRS Syncope Guideline, Table 7)
最後に、低リスクか高リスクか、重篤な医学的状況か、だけで語れない軸についても言及しておきます。
それは、
失神による外傷(骨折、頭部外傷)の治療
失神の原因となった基礎疾患(敗血症や出血起立性低血圧など)の治療
社会的要因(独居や不十分な社会的サポート)や全体的なフレイル(忘れがち)
です。
特に高齢者では、「失神そのものは良性でも、転倒によって有害事象を経験し得る」とので入院閾値は自然と低くなります。
そして一般原則として、
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「入院させると決めるときは、その患者にとって入院の目的が何なのかがER医にとって明確でなければならない」 |
「念のため」は目的ではなく、もう少し解像度を上げて申し送れるようにしておきましょう。
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🚨 ここがPitfall! ・「原因不明」=「入院」ではない。低リスク患者の入院は追加の診断的利益がきわめて限られ、最大13%の絶対リスクで院内有害事象と関連し得る ・入院させるなら「入院の目的」を言語化する。「念のため」は目的ではない ・「入院か帰宅か」の2択にしない。中間リスクにはERでの観察という第3の選択肢がある(ただし、この患者群は入院寄りに要相談) ・高齢者では、失神そのものが良性でも「転倒による有害事象」が入院理由になり得る。独居・社会的サポート・フレイルも判断材料に入れる |
CSRSやFAINTなどのClinical Prediction Ruleは使うべき?
さて、最後の論点です。
「どうせCanadian Syncope Risk Score(CSRS)を使えばいいんでしょ?」
と思っている先生、ちょっと待ってください。
スコアは臨床判断を置き換えられるのか
2025年に発表されたSAEM GRACE向けのsystematic review & meta-analysisは、この問いに正面から答えています。
・2047件から31研究・13のCPRが組み入れられた(開発研究11件17,578名、検証研究24件14,845名)
・2件を超える研究で検証されているCPRは、SFSR・CSRS・OESILの3つだけ
| CDR | 陽性尤度比(LR+) | 陰性尤度比(LR−) |
|---|---|---|
| SFSR(12研究で検証) | 1.15〜4.70 | 0.03〜0.64 |
| CSRS(5研究で検証) | 1.15〜2.58 | 0.05〜0.50 |
| OESIL(5研究で検証) | 1.16〜3.32 | 0.14〜0.46 |
(Acad Emerg Med. 2025;32:72-86.)
・一般に、LR+が5未満なら、陽性結果だけで入院や介入を決めるほど事後確率を大きく上げにくい
・LR−が0.1未満なら強いrule out効果が期待できるが、臨床的な意味は事前確率と許容できる見逃し率にも依存する
・今回のレビューでは、SFSR・CSRS・OESILはいずれもLR+が5未満だった
・一方、LR−はSFSRで0.03〜0.64、CSRSで0.05〜0.50、OESILで0.14〜0.46と幅があった。一部の検証研究では0.1未満だったものの、どのCPRも一貫して強いrule out性能を示したわけではない
つまり、rule inにもrule outにも、CPR単独では力不足と報告されました。
さらに決定的なのが、
「構造化されていない臨床判断とリスク層別化ツールを比較したランダム化比較試験は、文献検索の結果、1件も見つからなかった」
ということです。
唯一見つかった直接比較(2施設・488例の前向き観察研究)の結果に注目してみましょう。
10日以内の重篤な予後に対して、
| 感度 | 特異度 | 入院率 | |
|---|---|---|---|
| OESIL | 88% | 60% | 43% |
| SFSR | 81% | 63% | 40% |
| 臨床判断 | 77% | 69% | 34% |
(Acad Emerg Med. 2025;32:72-86.)
そして、
・臨床判断はER退院後に死亡した2名を見逃したが、OESILとSFSRは両者を正しく同定した
・しかし臨床判断と比べて、OESILは15名、SFSRは29名多く不要な入院を発生させた
という、トレードオフがはっきり報告されました。
結論は、「成人ER失神管理のCPRのほとんどは、ルーチンの臨床使用に対して低品質のエビデンスしかない」でした。
2026年の米国多施設前向き検証は違う顔を見せた
PACES試験(2020年9月〜2024年9月、米国6施設のED、40歳以上の失神・前失神患者で初期評価で重篤な診断がつかなかった1263名)の結果です。
まず、この集団の30日イベント率は、
・重篤な有害事象(SAO):74名(5.9%)
・心臓の重篤イベント(SCO):62名(4.9%)
・年齢中央値66.0歳(IQR 55.0〜74.0)、女性53.5%、42.9%がpresyncopeでの受診
そして各ツールの成績(低リスク閾値での)が、
| 低リスクと判定された割合 | 感度 | 陰性的中率 | |
|---|---|---|---|
| CSRS < 0 (全有害事象に対して) |
30.1%(380/1263) | 91.9% (85.7〜98.1) |
97.5% (96.4〜98.8) |
| FAINT = 0 (心臓イベントに対して) |
26.2%(331/1263) | 96.7% (92.4〜100.0) |
98.8% (98.0〜99.7) |
| 医師の直感(PER < 2%) (全有害事象に対して) |
28.1%(302/1076) | 87.5% (79.4〜95.6) |
97.4% (95.5〜98.9) |
| 医師の直感(PER < 2%) (心臓イベントに対して) |
39.7%(427/1076) | 79.2% (68.3〜90.2) |
97.4% (95.9〜98.9) |
(JAMA Netw Open. 2026;9:e2617362.)
そして直接比較の結果が、
・全有害事象に対するAUROC:CSRS 0.72(0.67〜0.78) vs 医師の直感 0.66(0.60〜0.73)で有意差なし(差0.05、95%CI −0.02〜0.12、p = 0.15)
・心臓イベントに対するAUROC:FAINT 0.76(0.71〜0.81) vs 医師の直感 0.67(0.60〜0.74)でFAINTが有意に優れる(差0.09、95%CI 0.00〜0.18、p = 0.04)
・さらに、心臓イベントの除外において、FAINT = 0は医師の直感より感度が18.7%高かった(95%CI 6.8〜30.6、p = 0.002)
つまり、心臓イベントの見逃しを減らすという一点においては、客観的スコアが医師のgestaltを上回ったという結果が報告されました。
ただし、
「FAINTスコアがゼロであることは、30日の重篤な心臓転帰を除外するという点で医師の見積もりより感度が高かった。ただし、低リスクに分類される患者数がより少ないという代償を伴う」
と明記されています。
やっぱりなにかを優先するとなにかを諦めなければならないというトレードオフの関係にあります。
また、閾値をいじると成績が変わることも示されています。
・CSRS < 1に緩めると、低リスクに分類される患者は52.6%(664/1263)に増えるが、感度は77.7%、NPVは97.3%に低下する
・著者らは「この閾値での感度(78%)とNPV(97%)は、ルーチンでの臨床使用には低すぎると臨床医は感じるかもしれない」としています
年齢によるサブグループ差も出ています。
・FAINTのAUROC:60歳未満で0.87(0.71〜1.00)、60歳以上で0.69(0.62〜0.75)。差0.18(95%CI 0.01〜0.36、p = 0.04)
…いちばん使いたい高齢者で、ダメやん。
結論として、著者らは「CSRSとFAINTはともに有害事象の低リスク患者を同定した。FAINTは重篤な心臓転帰の低リスク患者の同定において医師を上回った。スコア導入が患者ケアに与える影響を理解するには、さらなる研究が必要である」としています。
「失神が来たら何らかのClinical prediction ruleを使っとけばいいだろう」
というのは、まだ少し難しいのかもしれません。
高齢者に強いスコアはあるのか
ここまで読んで、こう思った先生がいるはずです。
「で、その検証、高齢者でもちゃんと成り立つの?」
もっともな疑問です。というより、ERの失神診療ではここが本丸だと思います。
なぜなら、スコアに一番助けてほしいのは高齢者だからです。
・失神の累積発生率は加齢とともに著明に上昇し、女性では20〜29歳の約5%から、80歳以上では約50%に達する
・心原性失神は若年成人では最大5%だが、高齢者では30%に達し、罹病率・死亡率が高い
・高齢者では複数の機序が最大3分の1の症例で共存し得る(complex syncope)
(N Engl J Med. 2026;395:582-91.)
病歴も取りにくく、機序も混ざりやすく、しかもリスキー。
まさにスコアに整理してほしい集団です。
さて、高齢者にCPRは使えるのでしょうか…???
■ 高齢者を対象に「作られた」スコアは、2つだけ
Wakaiらのsystematic reviewが拾った13のCPRのうち、高齢者集団で導出されたものは次の2つです。
(導出研究11件の平均年齢は44.5歳〜75歳で、そのうち1件は65歳超のみを組み入れていました)
| スコア | 導出集団 | 検証の状況 |
|---|---|---|
| FAINTスコア | 60歳以上、3177例の前向き観察研究 30日の全死因死亡または重篤な心臓転帰に対して感度96.7%、特異度22.2% |
Wakaiらの検索時点(2023年6月まで)では「導出されたが未検証」の5つのうちの1つ。 その後、2026年のPACES試験で外部検証された |
| Predictors of 30-Day Serious Events in Older Patients | 65歳超のみを組み入れ(米国) | 外部検証されていない |
(Acad Emerg Med. 2025;32:72-86. / J Clin Med. 2026;15:3780.)
最も頻用されていると思われるCSRSも16歳以上の一般ER集団で導出されています。
■ 高齢者での外部検証はかなり厳しい
まず、高齢者を直接対象にした検証として重要なのがVoigtらの単施設コホートです。
60歳以上404名(平均75.5歳)のうち、追跡が完了した380名にCSRSを適用すると、299名(78.7%)が非低リスクに分類されました。
30日重篤転帰に対する感度は88.6%(95%CI 76.4〜95.7)、陰性尤度比は0.50(95%CI 0.22〜1.17)、特異度は22.6%でした。
つまり、問題は単に「8割が引っかかる、おおすぎ~」なことだけではありません。
低リスク判定でも重篤転帰を十分にはrule outできなかったことが重要です。
(J Am Coll Emerg Physicians Open. 2022;3:e12820.)
続いて、PACES試験の年齢サブグループ解析を見てみましょう。
| FAINTスコアのAUROC | 値(95%CI) |
|---|---|
| 60歳未満 | 0.87(0.71〜1.00) |
| 60歳以上 | 0.69(0.62〜0.75) |
差0.18(95%CI 0.01〜0.36)、p = 0.04でした。
(JAMA Netw Open. 2026;9:e2617362.)
高齢者では残念な結果になりました。
ただし、FAINT導出研究全体のAUROCは約0.70であり、PACESの60歳以上における0.69はほぼ同程度なので、本来の導出対象外だった60歳未満で0.87と高かったために群間差が生じたので、より高齢者で使えない感が際立って見えてしまってはいるんですけど。
それでも、60歳以上でAUROC 0.69という値は、高齢者での識別能が中等度にとどまることを示します。低スコアだけを根拠に帰宅を決めるには不十分です。
そして、SFSRも高齢者では安定しません。
SFSRを65歳超に適用した研究では、感度76.5%、特異度36.8%と報告されています。
なぜ高齢者で難しいのか。以下はもっともらしい仮説です。
・多くのCPRは患者自身の病歴に依存するが、高齢者ではエピソードを覚えていないことがある
・心疾患・心不全の既往は二分値であり、重症度や現在のコントロールを反映しない
・心電図異常が慢性・非特異的であることが多く、特異度が下がりやすい
・複数の失神機序、フレイル、薬剤、転倒リスクなど、CPRに十分組み込まれていない要素が重なる
したがって現時点でいえるのは、高齢者の帰宅可否を単独で安心して決められるCPRは確立していない、ということです。
一番スコアに助けてほしい集団で、スコア単独では判断しにくいことがわかりました。
めっちゃ残念ですが、これが現実です。
失神のrisk scoreを語るときに押さえておきたいポイントです。
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🚨 ここがPitfall! ・リスクスコアを「答え」にしない。繰り返し検証されているのはSFSR・CSRS・OESILの3つだけで、いずれもLR+ < 5、LR− > 0.1。単独ではrule inにもrule outにも力不足 ・スコアと臨床判断を比較したRCTは1件も存在しない ・閾値を緩めると感度が落ちる。CSRS < 1にすると低リスク判定は52.6%に増えるが、感度は77.7%に低下する ・CSRSとFAINTはアウトカム定義が違う。単純に優劣を比較できない ・60歳以上の単施設研究では、CSRSで78.7%が非低リスクとなり、感度88.6%、陰性尤度比0.50、特異度22.6%だった。高齢者の帰宅判断を単独で任せられる性能ではない |
ブログ管理人の意見
以下は、自分がERで実際にどうしているかを書きます。
ぶっちゃけなので、ちょっとレールから外れた恥ずかしいこともしていると思います。
観察(observe)運用
本文で見たとおり、中間リスク群を12時間ほどモニタリングすることには、それなりの根拠があります。
オーバーナイト体制や専用の経過観察ユニットがあるような病院では、主に中間リスク群を長時間モニタリングすることに一定の価値があるでしょう。
……とはいえ、です。
現実的に、そのような体制をとっている病院は日本では少数派だと思います。
「ED observation unit」と言われても、そんな箱はうちにはありません。
(前任地にはそれらしきものがあったのですが、機能は異なります)
ここが、海外のガイドラインをそのまま輸入できないところですね。
なので基本的には、患者・家族と相談して入院にするかどうかを検討することになります。
その際に自分が加味しているのは、次のようなことです。
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入院閾値を探るときに考えていること ・重篤な医学的状況ではないか(これはもちろん大前提) ・失神による外傷(骨折、頭部外傷)の治療が必要ないか ・失神の原因となった基礎疾患(敗血症や出血、起立性低血圧など)の治療はいらないか ・社会的要因(独居や不十分な社会的サポート)や、全体的なフレイルへの配慮 |
原則として、
低リスクではない群を相手にしているので、どちらかといえば入院を考えてもらうようにお話しすることが多いです。
観察という第3の選択肢が物理的にない場合、中間リスクの患者に残された選択肢は「入院」か「モニターなしで帰宅」の二択になります。
本来なら12時間のモニタリングで拾えたはずのイベント(不整脈イベントの最大50%が中等度・高リスク患者で6時間以内に起きる、というあのデータ)を、まるごと見逃しのリスクにさらすことになります。
だとすれば、「観察できないから入院」というのは、消極的ですが筋の通った選択だと思っています。
逆に言えば、ER観察の体制が整えば、自分の入院閾値は今より上がるはずです。
低リスクを「念のため入院」させるか
こちらは、はっきりしています。
「念のため」入院させることはありません。
入院させると決めるときは、その患者にとって入院の目的が何なのかがER医にとって明確でなければなりません。
「念のため」は、目的の名前ではありません。
ただし、失神のdispositionはリスクの観点だけで語れるものではありません。
なので、
社会的要因(独居や不十分な社会的サポート)や、全体的なフレイルへの配慮は、大きめに考える
ことにしています。
「医学的には低リスク」と「家に帰して安全」は、別の話です。
ひとり暮らしで、次に倒れたときに誰も気づかない人を、
「(たとえば)CSRSは低リスクだったので…」
で帰すわけにはいきません。
そして、これが一番大事だと思っていることですが、
社会的な理由で入院にする場合、その旨を入院担当医の先生に申し送るようにしています。
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その入院が「失神の精査・加療」なのか、「社会調整」なのかは、重要な観点です。 |
ここを曖昧にしたまま入院させると、病棟で何が起きるでしょうか?
・社会調整が目的なのに、心エコー、ホルター、頭部MRIと精査が積み上がっていく(正直、探せば何らかの異常が見つかると思いますが…これ以上は言いません)
・逆に、失神の精査が目的なのに、「ER でたぶん低リスクと言われたから」と何もされずに翌日退院になる
という事態になりかねません。
どちらも、ER医が「入院の目的」を言語化しなかったせいで起きることです。
「独居で、次に倒れたときのリスクが高いので入院にしました。失神そのものは低リスクと考えており、精査は必須ではないと考えています。主に社会調整をお願いしたいです」
というコンサルトがあるかないかで、その入院の中身はまったく変わります。
CSRSやFAINTなどのCPRを使うか
risk scoreは計算していません。
ただ、これは「スコアが役に立たないから」だけではありません。
理由を4つに分けて書きます。
① 自分がよく診る集団で、スコアが一番役に立たないから
前述のとおり、高齢者にCSRSを当てると、8割が非低リスクに分類されます。
そして、ERの失神で自分が一番悩むのは、まさに高齢者です。
「8割を非低リスクに分類する道具」を毎回計算する動機がどうしても湧かないというのが正直なところです。
もちろんこれは、「では代わりに自分の直感なら大丈夫なのか」という問いには答えていません。
② スコアが見ている項目は、結局いつも見ている項目だから
Wakaiらのsystematic reviewによると、心電図は13すべてのCPRに変数として含まれ、心疾患の既往は2番目に多い変数でした。
(Acad Emerg Med. 2025;32:72-86.)
red flagを探して、心電図を評価して、心疾患の既往を確認して、バイタルを見る…
いつもやっていることです。スコアは計算していませんが、リスクを見積もることはしています。
③ スコアが臨床判断を上回るという、確たる根拠がないから
本文で見たとおり、
・スコアと構造化されていない臨床判断を比較したRCTは1件も存在しない(Acad Emerg Med. 2025;32:72-86.)
・繰り返し検証された3つのCPRはいずれもLR+ < 5で、LR−は研究間のばらつきが大きい(同上)
・ACC/AHA/HRSも「risk stratification scoresの使用は妥当かもしれない」(COR IIb)にとどまっている
たしかに、PACES試験の心臓イベントの除外において、FAINT = 0は医師の直感より感度が18.7%高かった(p = 0.002)
(JAMA Netw Open. 2026;9:e2617362.)
といデータは自分のプラクティスを不利にさせる要因にはなります。
自分の直感がFAINTに勝っているという保証はどこにもありません。
むしろ、この土俵では負けているデータがあります、、、
まぁでも、
スコアを導入したことで臨床医の行動が変わり、患者の転帰が改善したことを示したimpact analysisは、失神領域では確認されていないんですよね。
(Acad Emerg Med. 2025;32:72-86.)
スコアで低リスクに落とせるのは、
・CSRS < 0:全体の30.1%
・FAINT = 0:全体の26.2%
しかありませんし(JAMA Netw Open. 2026;9:e2617362.)。
これって裏を返せば、7割以上の患者は「スコアを計算しても、結局そこからまた個別に考える」ことになります。
いちばん使いたい高齢者への適用はイマイチだし、
スコアに使われている因子は当然のように検討してはいるし、
スコアを使っても多くは非低リスクで二度手間になるし、
最終的にリスクスコア以外にも考えるべき因子を考慮しているしって感じで、
個人的にはあまり使っていません。
では、研修医は使うべきか
ここは、自分が使っていないこととは分けて考えたほうがいいと思っています。
初学者が使うにはいいかもしれません。
スコアを1つ計算するということは、「心電図を見たか」「心疾患の既往を聞いたか」「血圧を確認したか」を強制的に一巡するということでもあります。見落としを防ぐチェックリストとしての価値は、たしかにあると思います。
ただし、限界を理解したうえで使ってほしいというのが正直なところです。
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スコアを使うときに、知っておいてほしい限界 ・多くのCPRは、患者自身が提供する病歴・既往歴に強く依存している。患者は失神時の状況を正確に伝えられないことがある ・心疾患・心不全の既往は二分値であり、慢性疾患の進行や改善を反映しない ・「気になる心電図変化」の定義がCPR間で一貫しておらず、非特異的なことがある ・受診の多くを占める高齢者に対して検討されているCPRはほとんどない(対象集団を明らかにする) |
スコアは「考える項目を漏らさないための道具」として使うのはいいと思います。
計算して低リスクが出たあとに、もう一度自分の頭で「本当にこの人を帰していいか」を考えられるなら、使う価値はあると思います。
白状すると、NT-proBNPは採ってしまっている
最後に、あまり格好のよくない話も書いておきます。
ER失神マネジメント大全②で「トロポニン・BNPは失神だから測るものではない」「なぜその検査を出すのかを言えるかが分かれ目」と書いておきながら、実際の自分の運用は以下のようになっています。
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・病歴から低リスクと考えられる症例では、そもそも採血自体をしていない ・それ以外の症例では血液検査を出すことが多い…そのついでにNT-proBNPなども採ってしまっている |
言い訳めいた擁護をしておくと、この運用自体はそれほど外れたものではありません。
(たぶん)
ACC/AHA/HRSが否定しているのも「ルーチンかつ包括的な血液検査」であって、臨床評価で選択された患者へのtargeted blood testsはCOR IIaです。
「低リスクだと思う人には出していない」という前段があるかどうかが、ここの分かれ目だと思っています。
ちゃんと考えているのならいいかなというスタンスです(笑)
冒頭の症例をどうするか
最後に、あの75歳男性に戻りましょう。
この症例には、実は3部作で扱ったポイントがてんこ盛りです。
・原因不明の転倒で、本人がエピソードを覚えていない(=失神として管理すべき)
・失禁があるが、これは失神とてんかんを区別しない
・食後に長く座ってからの起立(=postprandial hypotension + OH?)
・夜間の排尿時(=状況失神?)
・降圧薬と抗うつ薬を内服(=起立性低血圧の増悪因子)
・目撃者がいないエピソードの反復
・骨折という重大な外傷を伴っている
NEJMレビューの著者(Kenny先生)は、この症例について自身の推奨をこう述べています。
・まず外傷を治療しつつ、同時並行で失神の緊急原因を除外する
・高齢者で、突然かつ外傷を伴う出来事だったため、中間〜高リスクとみなす
・ER観察ユニットでのモニタリングを推奨し、心電図・心エコー・起立時血圧測定を行う
→不整脈も構造的心疾患も認められなかった。
・起立時に血圧が80/55 mmHgまで低下し、ふらつき症状を伴う
→頸動脈洞症候群を評価するためCSMを行う
・立位でのCSM中に3秒以上の心停止が生じ、意識消失すれば診断が確定する
・より長期のモニタリング(植込み型ループレコーダーなど)で症状とリズムの相関を捉えられるかもしれないが、年齢と外傷を考えると、頸動脈洞症候群による失神に対してデュアルチャンバーペースメーカーの植込みに直接進むことは妥当である(ここは議論がありそう)
・同時に、起立性低血圧を来し得る薬剤(降圧薬・抗うつ薬)の修正を行う
(N Engl J Med. 2026;395:582-91.)
ちなみに、Kenny先生は同レビューの中で「このレビューはESCガイドラインにより沿ったものである」と自身の立場を明示しています。
ESCとACC/AHA/HRSの相違点として挙げられているのは、
・ESCは専門の失神ユニットの設立を強く推奨するが、ACC/AHA/HRSは推奨しない
・ESCは原因不明の失神・原因不明の転倒に対する植込み型ループレコーダーのより早期の使用を推奨する
・ESCは反射性失神に対する患者教育と行動・生活習慣の変更により強い重点を置く
です。
ガイドラインにも「立場」があるということですね。
なお、この症例でKenny先生が推奨しているCSMについては、前編で詳しく扱いました。
ポイントだけ再掲すると、
・「pauseが3秒」だけではCSSと診断できない。いつもの症状が再現されたかまで確認する
・条件がそろえばERでも検討できる検査だが、臥位・連続心電図のみでは血管抑制型を評価できず、陰性でもCSSを否定できない
・陽性でも直ちにペースメーカーではない。防げるのは主に徐脈・心停止成分であり、血管抑制成分が強ければ植込み後も再発し得る
(Clin Auton Res. 2026;36:485-497. / Eur Heart J. 2021;42:3427-3520.)
3部作の総まとめ
長丁場におつきあいいただき、ありがとうございました。
最後に、3本分を1枚にまとめます。
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TLOCで来院 ↓ 【トリアージ】外傷とショックを先に除外する ↓ ①【前編】本当にsyncopeか? ↓ ②【中編】バイタル+血糖+12誘導心電図(10分以内に解釈・記録) ↓ ③【中編】死ぬ失神か? ↓ ④【後編】reflex / orthostatic / cardiac / unexplained のどこかに置く ↓ ⑤【後編】高リスク→モニター管理で入院/中間→入院モニタリング相談(12時間が1つの目安)/低リスク→帰宅+フォロー |
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🩺 ER takeaway(この記事) ・ERで「原因不明」のままでよい。「原因不明」=「入院」ではない ・reflex / orthostatic / cardiac の3つに置ければ十分。高齢者では最大1/3で機序が共存する ・反射性失神は若年で90%超だが高齢者では約40%。心原性は若年で最大5%、高齢者では30% ・再発性失神は24か月の死亡・MACE増加と関連する。因果関係や短期入院適応を示すものではないが、再評価すべきリスクマーカーである ・「入院か帰宅か」の2択にしない。中間リスクにはERでの観察(日本では実質入院)がある ・ERでの観察を選択するなら目安は12時間(不整脈イベントの最大50%は低リスクで2時間・中〜高リスクで6時間以内に出る) ・低リスクの「念のため入院」の追加利益は限定的。最大13%の絶対リスクで院内有害事象と関連し得るという小規模研究からのデータもある。 ・入院させるなら「入院の目的」を言語化する。「念のため」は目的ではない ・帰宅させるならフォローアップまでがセット ・繰り返し検証されたスコアはSFSR・CSRS・OESILの3つだけ。いずれもLR+ < 5、LR− > 0.1 ・スコアと臨床判断を比較したRCTは存在しない ・一方でPACES試験では、心臓イベントの除外においてFAINT = 0が医師の直感より感度18.7%高かった ・CSRSは平均53歳台の集団で導出・検証された。高齢者専用のスコアではない ・CSRSを高齢者に当てはめると78.7%が非低リスクになる。崩れているのは感度より特異度(22.6%) ・高齢者用に作られたFAINTでさえ、外部検証では60歳以上でAUROC 0.69。低スコアだけを根拠に高齢者を帰宅させない ・リスクスコアは「最後の補助輪」。危険疾患を除外した後のdisposition補助として使う |
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🩺 ER takeaway(3部作の総まとめ) 【前編:本当に失神か】 ・「てんかん」と診断されている患者の20〜30%は、実は失神だった可能性がある ・聞くべきは「けいれんしたか」ではなく「倒れた後か、倒れる前か」 ・10/20ルール:ミオクローヌス10回未満はconvulsive syncope、20回以上はけいれんを示唆 ・「硬くバタン」ならけいれん、「ぐにゃ、ずるっ」なら失神 ・舌咬傷は「どこを噛んだか」まで確認する。側方なら特異度96%・LR+ 8.17、感度33% ・尿失禁は鑑別に使えない(失神の10〜20%で起こる) ・失神なら搬入時には意識清明のはず。JCS 1-1なら意識障害として動く ・「上肢を動かしたら失神」なら鎖骨下動脈盗血症候群 ・高齢者の原因不明の転倒・drop attackは、別の原因が明らかでない限り失神として管理する ・presyncopeの30日重篤転帰は4.4〜26.8%、最多は不整脈 【中編:死ぬ失神を拾い、検査を選ぶ】 ・「失神か」を決める前に、外傷とショックを片づける ・心電図は登録から10分以内に、読める人が読んで、記録に残す ・red flagは5つ。なければD-dimer・トロポニン・心エコー・CTは自動的には出さない ・採血の絶対的最低限は血糖とヘモグロビン ・頭部CT・MRI、頸動脈画像、脳波はルーチンで出さない(診断確定率0.24〜1%) ・起立性血圧は「臥位・座位・起立直後・3分後」の4点で測る ・起立性低血圧が陽性でも思考停止しない 【後編:行き先を決める】 ・「原因不明」=「入院」ではない ・入院させるなら「入院の目的」を言語化する ・リスクスコアは最後の補助輪。単独で臨床判断を置き換えられるエビデンスはない |
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