ERに2歳の男の子がやってきました。
「さっき、鼻になにか入れたみたいなんです」
あるいは、5歳の女の子。
「耳が痛いって言ってて、見たらビーズが入ってて…」
すごく珍しい主訴ではなく、ものすごくありふれた主訴でよく遭遇します。
そして、たいていの場合は無症状で、見た目にはまったく緊急性がありません。
だからこそ、「まあ、ちょっとつまんでみるか」と気軽に鉗子に手が伸びるかもしれません…。
ここが、この診療でいちばん危ないポイントです。
今回は小児の耳・鼻異物について、
① 何を最初に除外するか
② 各除去手技のメリット・デメリット
③ どう選び、いつ耳鼻科にバトンを渡すか
をフローチャート付きで整理していきます。
まず最初に除外する3つの「ヤバい異物」
耳・鼻異物を見たら、手技の話に入る前に必ず確認することがあります。
① ボタン電池
② 磁石のペア
③ 生きた昆虫
この3つは、その他の異物とはまったく別ゲーになります。
ボタン電池は、耳・鼻・食道のいずれにおいても最も緊急性が高い異物です。
鼻腔内のボタン電池はわずか7時間で鼻中隔穿孔を起こしうると報告されています。
外耳道でも、数分から数時間で電気的・化学的熱傷を起こし、鼓膜穿孔は最大13%とされています。
そして重要なのは「やってはいけないこと」を知っておくことです。
◆耳
・洗浄は絶対禁忌(腐食作用を強めるため)!
・出血を伴う除去試行も腐食を悪化させる。
◆鼻
・局所麻酔薬・血管収縮薬の点鼻は禁忌(後方移動と局所壊死のリスクが増すため)
磁石のペア(あるいは磁石と金属が鼻中隔を挟んで吸着している場合)も、同様に鼻中隔穿孔のリスクがあるため緊急扱いです。
ボタン電池とディスク磁石は直ちに耳鼻科へ紹介が妥当です
(除去後も数時間損傷が続くため)。
生きた昆虫は、後述するとおり「殺してから取る」が原則です。
生きたまま鉗子でつまみにいくと、暴れて外耳道や鼓膜を損傷します。
なお、鼻異物ではルーチンのX線は推奨されませんが、
ボタン電池やペア磁石の可能性があって直視できない場合にはX線(正面・側面)が必須とされています。
もうひとつ。
異物は複数あることがあるので、両耳と鼻をすべて評価しておきましょう。
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🚨 ここがPitfall! ・「よくある耳の異物」として処理する前に、ボタン電池・ペア磁石・生きた昆虫の3つを除外する。 ・ボタン電池に洗浄は絶対禁忌(耳)、局所麻酔・血管収縮薬の点鼻も禁忌(鼻)。いつもの前処置がそのまま害になる。 ・鼻異物でルーチンのX線は推奨されないが、ボタン電池・ペア磁石の可能性があって直視できないなら必須。 ・異物は1つとは限らない。両耳と鼻をすべて見る。 |
耳異物
どんな患者が来るのか?
耳異物は8歳未満に多く、発症年齢のピークは1〜4歳とされています。
右耳(自己挿入のため?)・男児にやや多いです。
ADHDの小児ではリスクが高いとされ、衝動性と不注意の増加が重要なリスク因子として挙げられています。
異物の内訳ではビーズが最多(27.6%/21.2%)で、プラスチックのおもちゃ部品も多く報告されます。
症状は「無症状」が最多です。
カナダの後ろ向き研究(n=159)では無症状が75.5%、耳痛が17.6%でした(Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2023)。
症状があるときは耳痛、充満感、難聴、そう痒、耳漏(出血)などです。
まれに迷走神経耳介枝の刺激による咳や吃逆が起こることがあります。
鑑別としては急性外耳道炎、耳垢塞栓、滲出性中耳炎(OME)が挙げられます。
ちなみに、耳異物症例の対側耳の最大50%でOMEがみられるという報告がありますので、そういった意味でも対側の耳も覗いておくことが重要です(Quality in Sport. 2026)。
解剖学的には、外耳道の骨部・軟骨部移行部の狭窄部に異物が最もよく引っかかります(Am Fam Physician. 2025)。
ここを越えて奥に押し込んでしまうと、一気に難易度が上がることになります。
介入のタイミングとしては、24時間以内の介入が推奨されており、初回成功率は77-86%と報告されています(Quality in Sport. 2026)。
丸い物体・過去の除去試行・24時間以上の経過・鼓膜に接触している場合は成功率が下がります。
5歳未満、掴めない異物、行動障害の合併も成功率を下げるリスク因子です。
そして、ここが今回のいちばん大事なところです。
複数回の除去試行こそが最大の合併症リスクです。
耳鼻科に紹介された症例の66.7〜68.1%に、過去の除去試行に関連した合併症が存在したと報告されています(外耳道擦過傷63.8%、鼓膜穿孔3%/Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2023)。
自力でとってやろう!
と思うこともありますが、特に耳は専門家に任せたほうがよいかもしれません。
除去手技のメリットとデメリット
手技は複数ありますが、それぞれ「向いている異物」と「地雷になる状況」がはっきりしています。
順番に見ていきましょう。
①洗浄(灌洗)
メリット:器具を外耳道に入れないので、直接損傷のリスクが小さい手技です。
ある研究では、ERでの手技のうち水による灌洗のみが41.5%と最も多く用いられていました。
そして多変量解析では、「水のみ」または「器具のみ」の使用は、「両方使用」に比べて除去成功のオッズが高いという結果でした(OR=3.93, 95%CI 1.43-10.83, p=.008)。
つまり手技をコロコロ変えないほうがいいということですね。
デメリット・禁忌:ここが重要です。
・ボタン電池
・植物などの吸水性物質(水を吸って膨張します)
・完全閉塞している異物
・鼓膜穿孔
・チューブ留置例
これらには禁忌とされています(Am Fam Physician. 2025)。
鼓膜穿孔がないことが確認できない場合も禁忌と考えておいたほうよいでしょう。
また、水道水による洗浄は免疫不全や糖尿病患者で悪性外耳道炎リスクを増加させる懸念が指摘されています(Am Fam Physician. 2025)。
やり方としては、体温程度にあたためた生理食塩水を20-50mLシリンジに吸って耳へ流します(Quality in Sport. 2026)。
水でやると内耳刺激によるめまい・嘔気が出うるため、体温程度に温めたものを使用します。
そして、外耳道の上部に向けて行うと成功率が高まります。
②ワニ口鉗子
メリット:ERで最も一般的なアプローチで、直視下でのワニ口鉗子が標準です。
マイクロ吸引とワニ口鉗子の組み合わせをゴールドスタンダードとして強く推奨している専門家もいます(AJGP 2024)。
非球形の異物であれば微小ワニ口鉗子が適応になります(Quality in Sport. 2026)。
デメリット:球状で滑らかな物体は器具が滑ってしまい、把持できません。
球状・滑らかな物体は除去の成功率が最も低く、合併症率が最も高いとされています(Pediatr Rep. 2024)。
そして、不適切な鉗子使用は23%で失敗を招くと報告されています(Quality in Sport. 2026)。
視野の差も無視できません。
直視下(64%)より耳用顕微鏡(83%)のほうが成功率が高いとされています。
顕微鏡が使えない環境でひたすら粘る、というのは分の悪い勝負となりますので、素直に専門家に任せる分野にしておいたほうが無難です。
③フック・キュレット
メリット:直角フックは非球形の異物に対する選択肢として挙げられています(Quality in Sport. 2026)。キュレットは粘性異物用とされています(AJGP 2024)。
デメリット:フックやキュレットは穿孔リスクを高めることがあります。
AJGP 2024では、キュレットやフックは協力的で動かない患者に限るとされています。
動く小児に対して使う道具ではありません。
④吸引
メリット:軽量・多孔性の異物(紙や乾燥豆)には吸引(5-10 Fr)が適しています(Quality in Sport. 2026)。
把持しにくい異物に対して、器具で挟まずに回収できるのが利点です。
デメリット:吸引は音が大きく、患者の協力を得にくいため経験的に困難なことが多いです。
小児では「怖がらせて動かれる」ことが最大の敵なので、これは実務上けっこう効いてきます。
⑤接着剤・過酸化水素
メリット:球状で滑らかな物体に対して、シアノアクリレート接着剤を紙の先端に付けて使用する方法があります(Quality in Sport. 2026)。
Am Fam Physician 2025でも、接着剤は協力的な患者にのみ使用可とされています。
また、接着剤や発泡スチロールの溶解には3%過酸化水素、アセトンが挙げられています。へぇ~。
デメリット:接着剤付綿棒は外耳道損傷の合併症率が高いとされています。
AJGP 2024はさらに踏み込んで、接着剤や過酸化水素は医原性損傷リスクが高いため推奨しないとしています。
文献間で温度差がある領域なので、「使える手」というより「最後まで残しておく手」くらいに考えておくのがよさそうです。
⑥生きた昆虫は「まず殺虫」から
成人では耳異物の最大80%が生きた昆虫、小児では4〜20%とされています(Wilderness Environ Med. 2022)。
原則は「殺してから取る」。
Am Fam Physician 2025では、ミネラルオイル、アルコール、リドカインで殺してから除去するか、暗室で光を当てて誘い出すとされています。
ミネラルオイル・ごま油は昆虫の窒息に用いられ(Quality in Sport. 2026)、粘性リドカインでの窒息では完全除去の成功率65%と報告されています。
ここでひとつ、知っておくと差がつく話があります。
リドカインには重大なPitfallがあります。
Wilderness Environ Med. 2022では、リドカイン等の局所麻酔薬は、鼓膜穿孔がある場合や、無傷でも中耳へ浸透し数時間続く重度のめまい・歩行障害・嘔気を引き起こすリスクがあると指摘されています。
この文献は野外環境を対象としており、そこでは使用は非推奨という結論になっています。
同文献で野外において最も推奨されるのは植物油で、粘度があるため頭を動かしても耳から流れ出にくく、効果的かつ安全とされています。
エタノール、ポビドンヨードも有効で、in vitroで植物油・エタノールは約30秒で殺虫と報告されています。
なお、クロルヘキシジンは耳毒性のため禁忌です。
緊急で殺虫したい場合には、
病棟でたまに使われるオリブ油を用いるようにしています。
殺虫後は、洗浄または吸引・鉗子で摘出します。
足や羽などの破片が残りやすいので、除去後の観察は詳細に行いましょう。
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🚨 ここがPitfall! ・球状で滑らかな異物を鉗子でつまみにいかない。成功率が最も低く、合併症率が最も高い異物である。 ・手技をあれこれ変えない。「水のみ」または「器具のみ」のほうが、両方使うより成功のオッズが高かった(OR=3.93)。 ・フック・キュレットは穿孔リスクを高める。協力的で動かない患者に限る。 ・昆虫は生きたままつまみにいかない。まず殺虫(オイル類)してから。 ・リドカインは中耳へ浸透し、数時間続く重度のめまいを起こしうる(野外環境では非推奨とされている)。 |
どう選ぶ?フローチャート
ここまでの内容を、判断の順番に並べ直します。
| STEP 1|ボタン電池か? → YES:洗浄は絶対禁忌。出血を伴いうる除去の試行も腐食を悪化させる。早期に耳鼻科へ相談・紹介 → NO:STEP 2へ |
| STEP 2|生きた昆虫か? → YES:まず殺虫(ミネラルオイル/植物油など)してから洗浄・吸引・鉗子で摘出。除去後は破片残存を確認 → NO:STEP 3へ |
| STEP 3|そもそもERで試みてよい患者か? (ある総説では)0〜3歳は耳鼻科紹介、4〜18歳でERでの除去を試みると。 (実際に3歳以下は4歳以上より紹介割合が高い:44.1% vs 25.6%) + 重度の痛み、鼓膜・中耳損傷の兆候、穿通性異物、協力できない患者、完全閉塞する球状異物、鼓膜に接する異物は紹介(Am Fam Physician 2025) |
| STEP 4|洗浄が禁忌ではないか確認 ボタン電池/植物などの吸水性物質/完全閉塞異物/鼓膜穿孔/チューブ留置 → 該当すれば洗浄は選ばない(鼓膜穿孔がないことが確認できない場合も禁忌:AJGP 2024) |
| STEP 5|異物の性状で手技を選ぶ(1つに絞る) ・非球形・把持できる → 微小ワニ口鉗子(+マイクロ吸引の併用がゴールドスタンダード:AJGP 2024) ・軽量・多孔性(紙、乾燥豆) → 吸引(5-10 Fr)※乾燥豆など吸水性物質に洗浄は禁忌 ・球状・滑らか → 鉗子は滑る。バルーンカテーテル、接着剤(協力的な患者のみ)、または耳鼻科紹介 ・無機物・非閉塞・鼓膜正常 → 洗浄も可(体温程度の生理食塩水、20-50mLシリンジ) ・粘性異物にキュレット、直角フックは協力的で動かない患者に限る |
| STEP 6|1回失敗したら? → 「1回の除去失敗」で紹介を推奨、無理しない!(合併症リスク増のため) → 複数回試行・合併症発生・鋭利または生きた異物・鼓膜に接する異物があれば耳鼻科紹介を検討 |
「1回で紹介なんて厳しすぎない?」と思うかもしれません。
でも、紹介例の約2/3に過去の試行に関連した合併症があったというデータを見ると、この閾値設定にも納得がいくと思います。
鼻異物
どんな患者が来るのか?
鼻異物は2〜5歳や知的障害児に多いとされています。
男児、右側にやや多く、宝飾品、ビーズ、おもちゃ、紙、豆、種などが一般的です。
大半は鼻腔底と下鼻甲介の間の前方に位置するという報告があり、
実務上ても有用です(Children's Health Queensland)。
つまり、ちゃんと見えれば取れる位置にあることが多いということです。
症状は多くが無症状ですが、
鼻閉塞、鼻血、悪臭のある化膿性または血性鼻汁(通常片側性ですが、複数異物や中隔穿孔では両側)、顔面腫脹・疼痛を呈します。
鑑別は上気道炎、鼻炎、副鼻腔炎、片側後鼻孔閉鎖、腫瘍(若年性血管線維腫など)が挙げられています。
そして朗報です!
ERでの除去成功率は92-98%と報告されています(Children's Health Queensland)。
耳より圧倒的に分がいいのですが、ここでも「初回試行が最も成功率が高い」という原則は変わりません。
準備として押さえるべきは以下です。
・ヘッドランプを使用して両手を空ける
・盲目的な除去は後方移動と誤嚥リスクのため推奨されない
・鎮静は誤嚥リスクを高めるため推奨されない
除去手技のメリットとデメリット
①陽圧法(Mother's kiss/Parent's kiss/Magic kiss)
まず試すべき手技です。
やり方:親(または信頼できる大人)が子どもの開いた口を自分の口で完全に覆い(マウス・トゥ・マウス蘇生のように)、健側の鼻孔を指で塞ぎ、子どもの声門が閉じる抵抗を感じるまで息を吹き込みます。
その後、鋭く息を吐き出し、口内に短く空気をバフっと送ります。
医療従事者の監督下で行うことが推奨されており、必要に応じて複数回繰り返せます。
メリット:異物の種類に関わらず約60%で有効とされています(AFP 2013/Am Fam Physician 2025では「最大60%」)。
器具を入れないので、後方移動や粘膜損傷のリスクを避けられます。
また、成功しなくても異物の視認性が向上し、他の技術での除去が容易になる可能性があるという点も見逃せません。
安全性:理論的には鼓膜や下気道の気圧外傷のリスクが懸念されていますが、この手法による鼓膜破裂や気胸の報告はこれまでなく、重篤な有害事象は報告されていません(NHMRC Level 1 evidence)(AFP 2013)。
Am Fam Physician 2025でも、陽圧法は安全かつ有効で複数回試行可能、気圧外傷の報告はないとしています。
適応の使い分け:3歳以上で協力的なら自己鼻かみ、小さく滑らかな球状物体にはParent's kiss法。
AJGP 2024では、挿入後12時間以内ならMother's kiss法が有用とされています。

RACGP - Mother’s kiss for nasal foreign bodies
②鉗子
メリット:柔らかく不規則な物体に適しています。
デメリット:滑らか・丸い・脆いものには非推奨です。
脆い異物は砕けますし、丸い異物は奥に押し込まれます。
③吸引・バルーンカテーテル・磁石
吸引は、滑らかで球状の可動性物体に適しています。
AJGP 2024は、前方に位置する異物や分泌物のクリアランスには吸引を強く推奨しています。
ほかにバルーンカテーテル、金属異物に対する磁石も選択肢として挙げられています。
④洗浄と接着剤
耳と違って、鼻では洗浄と接着剤のルーチン使用は推奨されていません。
AJGP 2024も、鼻異物に対する洗浄は誤嚥リスクのため推奨されないとしています(健康な小児での文献上の報告はないが理論的リスクとして…)。
耳のノリで鼻を洗いにいかない、というのは覚えておきたいところです。
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🚨 ここがPitfall! ・いきなり鉗子に手を伸ばさない。陽圧法(自己鼻かみ/Parent's kiss)は約60%で有効で、失敗しても視認性が上がる。 ・盲目的な除去は後方移動と誤嚥リスクのため推奨されない。ヘッドランプで両手を空けて、見えている状態で取りにいく。 ・鼻では洗浄・接着剤のルーチン使用は推奨されない。耳と同じつもりでやらない。 ・丸い・脆い異物に鉗子は非推奨。滑らかで球状の可動性物体は吸引を考える。 |
どう選ぶ?フローチャート
クイーンズランド州の小児病院が公開しているフローチャートが非常に明快なので、その流れに沿って整理します。
| STEP 1|ボタン電池が疑われるか? → YES:緊急除去が必要(組織壊死を防ぐため) ・視認でき除去可能なら除去を試みる ・失敗した場合は絶飲食とし、搬送・移送を手配 ・視認できない場合はX線(正面・側面)で確認。X線または直視でボタン電池が否定されれば非緊急ルートへ ・局所麻酔・血管収縮薬の点鼻は禁忌 → NO:STEP 2へ |
| STEP 2|耳鼻科紹介基準に該当するか? ・後方で視認困難 ・ペア磁石、または磁石と金属が中隔を挟んでいる ・慢性・嵌頓で著明な炎症がある ・穿通性、フック状 ・ER来院前にすでに複数回の除去失敗がある → 該当すればEDでは除去を試みず耳鼻科へ紹介 → 該当しなければSTEP 3へ |
| STEP 3|準備を整える ・ヘッドランプで両手を空ける ・鎮静は行わない(誤嚥リスクを高めるため推奨されない) ・局所麻酔:Co-Phenylcaine Forte(5%リドカイン、0.5%フェニレフリン)を除去の10分前に最大3mg/kg(リドカインとして)投与を検討(AJGP 2024では処置の5分以上前のスプレー、2歳未満は未承認) ※実際には麻酔なしで行う手技を選択するのが好ましい |
| STEP 4|1回のみ除去を試行(手技は異物の性状で選ぶ) ・3歳以上で協力的 → 自己鼻かみ ・小さく滑らかな球状 → Parent's kiss法 ・柔らかく不規則 → 鉗子(滑らか・丸い・脆いものには非推奨) ・滑らかで球状の可動性物体 → 吸引 ・そのほか → バルーンカテーテル、磁石 ・洗浄・接着剤のルーチン使用は推奨されない |
| STEP 5|結果で分岐 → 成功し、有意な外傷がなければ:合併症と予防の助言をして退院 → 失敗、または有意な外傷が生じた場合は耳鼻科へ紹介 |
鎮静と局所麻酔:耳と鼻で話が違う
ここは混同しやすいので、分けて整理しておきます。
【耳】鎮静は成功率を上げる方向
カナダの研究では、12%で鎮静を使用し、除去成功率を有意に高めました(OR=12.20, p<.001)(Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2023)。
非協力的な小児(3歳未満、全体の15-20%)には手技単独での失敗リスクが高いため、手技的鎮静(ミダゾラムやケタミン点鼻)または全身麻酔(5-15%)が必要とされています(Quality in Sport. 2026)。
【鼻】鎮静は推奨されない
一方、鼻異物では誤嚥リスクを高めるため鎮静は推奨されないとされています(Children's Health Queensland)。
【局所麻酔・血管収縮薬】
鼻では前述のとおり、除去前の局所麻酔+血管収縮薬スプレーが有用とされています。
ただしボタン電池には禁忌。
そして、耳への使用は外耳道や鼓膜の損傷リスクがあるため推奨されません(AJGP 2024)。
耳と鼻で真逆になる項目があるので、頭の中で分けておきましょう。
合併症と帰宅時の説明
耳:EDでの試行による合併症率は約6〜20%で、大半は軽度です(外耳道擦過傷・裂傷が最多で47%、鼓膜穿孔は4.2%。
ただし、非専門医の摘出により外耳道裂傷(最大17%)、鼓膜裂傷(45%)が報告されているという記載もあります(Quality in Sport. 2026)。
抗菌薬点耳薬は、外耳道に炎症、裂傷、擦過傷がある場合、または鼓膜穿孔がある場合のみ投与します。
免疫不全や糖尿病等のハイリスク患者には、緑膿菌をカバーする予防的投与を検討します。
鼻:鼻汁、鼻出血(直接圧迫で管理)、粘膜潰瘍、鼻中隔穿孔、狭窄、感染、誤嚥(1/1500と推定)、副鼻腔炎、眼窩周囲蜂窩織炎、髄膜炎が挙げられています(Children's Health Queensland)。
フローチャートでも、成功して有意な外傷がなければ「合併症と予防の助言をして退院」となっています。
取れて終わり、ではなく、再発予防まで含めて話しておきたいですね。
耳異物の再発率は22%と報告されています。取れたその日に再発予防の話をする価値は十分にあります。
ちなみに、耳異物は稀に代理ミュンヒハウゼン症候群の現れである可能性があるという報告もあります。頭の片隅には置いておきましょう。
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🩺 ER takeaway ・手技の前に「ボタン電池・ペア磁石・生きた昆虫」を除外する。この3つは対応が変わる。 ・ボタン電池は鼻腔内で7時間、外耳道で数分〜数時間で組織損傷を起こしうる。耳の洗浄は絶対禁忌、鼻の局所麻酔・血管収縮薬点鼻も禁忌。 ・耳の洗浄禁忌:ボタン電池/吸水性物質/完全閉塞/鼓膜穿孔/チューブ留置。鼓膜穿孔がないと確認できない場合も避ける。 ・球状で滑らかな異物は成功率最低・合併症率最高。鉗子ではなく吸引・バルーン・専門医を考える。 ・手技はコロコロ変えない。「水のみ」または「器具のみ」のほうが両方使うより成功のオッズが高かった。 ・昆虫はまず殺虫(ミネラルオイル/植物油)。リドカインは中耳浸透による重度めまいのリスクが指摘されている。 ・鼻はまず陽圧法(自己鼻かみ/Parent's kiss)。約60%で有効、失敗しても視認性が上がる。 ・鼻の鎮静は誤嚥リスクで推奨されない。一方、耳では鎮静が成功率を上げる(OR=12.20)。耳と鼻で真逆。 ・エスカレーションの閾値は低く。耳は1回の失敗で紹介推奨。紹介例の約2/3に、過去の試行に関連した合併症があった。 |
参考文献
・Foreign Bodies in the Ear, Nose, and Throat. Am Fam Physician. 2025;112(1):27-33.
・Management of pediatric aural foreign bodies: Towards a universal Otolaryngology referral algorithm. Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2023;167:111493.
・Foreign Bodies in the Ear Canal in Children: A Literature Review. Quality in Sport. 2026;54:70733.
・Foreign body in the nose – Emergency management in children. Children's Health Queensland.
・foreign-body-in-nose-flowchart(上記ガイドライン付属フローチャート)
・Foreign bodies in the ear and nose of the Australian paediatric population. AJGP. 2024;53(11).
・Mother's kiss for nasal foreign bodies. Aust Fam Physician. 2013;42(5).
・Management of Live Insects in the External Auditory Canal: A Wilderness Perspective. Wilderness Environ Med. 2022;33(3):318-23.
・Foreign Bodies in Pediatric Otorhinolaryngology: A Review. Pediatr Rep. 2024;16:504-518.