りんごの街の救急医

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case 161:足がつっちゃって辛いンゴ(Am J Case Rep . 2026 May 20:27:e952088. )

非外傷性の横紋筋融解症をみたとき、

運動・薬物・長期臥床…???と

つい原因を体の「外側」に探しがちです。

 

でも今回は、筋痙攣を主訴に来院した若い男性の背後に、まさかの肺炎が潜んでいたという症例です。

横紋筋融解+AKIの裏にレジオネラというのは発想の外になりがちなので勉強になりました。

 

個人的に診断はニガテにしていますが、

ここについては当院をローテーションしてくれている優秀な救急専攻医の先生(@TansokuDounaga9)とコラボして補足してもらいました。

note.com

 

 

 

Case

病歴

  • 34歳男性、既往なし
  • 来院3日前、座ってテレビを見ているときに両下肢の有痛性の筋痙攣が出現
  • 筋痙攣は一晩持続し徐々に増悪、上肢にも波及
    • その後、進行性に増悪する全身脱力を自覚
  • 症状出現の前日に下痢あり。以後2日で発熱・悪寒・嘔吐2回・暗色尿を自覚
  • 外傷・転倒・運動・けいれん・新規薬剤・暑熱曝露はいずれも否定
  • 飲酒:ビール約40 oz/日。筋痙攣発症後の3日間は断酒
  • 嗜好:使い捨てvaping device(THC)を毎日使用。喫煙なし

外傷も運動歴もなく、薬剤歴もない。

横紋筋融解の「いつもの原因」が片っ端から否定されていく病歴です。

そして唯一のリスク因子がvapingだったというのが、この症例の伏線になっています。

THC≒大麻を吸っている世界線なんですね。

 

身体所見

  • 体温37.7℃、HR 122 bpm、BP 161/112 mmHg、SpO2 正常(room air)
  • 不安そうだが急性の苦悶はない
  • 手指伸展時に軽度の振戦
  • 四肢筋力5/5、深部腱反射正常、見当識(人・場所・時間)保たれる

呼吸状態は来院時点では落ち着いていて、SpO2もroom airで正常。

「筋痙攣の人」として入ってきたら、肺はノーマークになりそうですよね。

 

検査

  • WBC 13×10⁹/L
  • Na 126 mmol/L、K 4.5 mmol/L
  • AST 1179 U/L、ALT 184 U/L
  • 血清浸透圧 283 mOsm/kg(pseudohyponatremiaと矛盾しない)
  • ビリルビン・リパーゼ・ALP・乳酸:基準範囲内
  • CK 163,600 U/L(著明高値)
  • Cre 7.79 mg/dL、BUN 60 mg/dL
  • 尿薬物スクリーニング:エタノール陰性、THC陽性
  • 尿検査:潜血反応+、蛋白>500 mmol/L、WBC 0–5、RBC 0、少数の細菌、白血球エステラーゼ・亜硝酸塩陰性
  • アルドラーゼ 231.0 units/L(筋崩壊の非特異的マーカー、上昇)

CK 163,600というのはなかなかの数字です。

そしてここで注目したいのが尿検査の尿潜血は陽性なのにRBCは0というギャップです。これは赤血球ではなくミオグロビンを血液として拾っている所見で、横紋筋融解のときの典型的な所見ですね。

尿潜血陽性なのに沈渣でRBCが出ないというときは「ミオグロビン尿では?」と一歩立ち止まりたいところです。

画像

  • 胸腹部骨盤CT:左下葉のmixed ground-glass consolidation(中心部にsubtle clearing)
    • 付随所見として冠動脈石灰化びまん性肝脂肪化
    • 腎臓のサイズ・形態は正常

筋痙攣の主訴に引っ張られていると、CTを撮りに行く気にはならないかもしれません。

(ほかに明らかにおかしい所見があるので、まぁやるでしょうけど)

胸部CTまで撮って初めて肺炎像がはっきりした、という流れです。

 

診断

Legionella pneumophila serogroup 1関連肺炎+横紋筋融解+AKI

  • 入院2日目に尿中レジオネラ抗原陽性で確定
  • その他の鑑別は全て陰性
    • 呼吸器ウイルスパネル、Coccidioides IgG/IgM、HIV、EBV、尿中肺炎球菌抗原
    • 喀痰培養、血液培養
    • 筋炎パネル(ANA、anti-RNP、anti-Jo-1、myeloperoxidase Ab、serine protease 3 Ab、SSA/SSB、PM-Scl 100 Ab)全項目陰性

 

経過・治療

  • 来院後ただちに大量の生理食塩水によるIV補液IV azithromycinを開始
  • 3日間の輸液蘇生にもかかわらずCre上昇 → 血液透析開始
  • アルコール離脱に対しphenobarbital loading+頓用lorazepam、痙攣の発症なし
  • 高血圧(収縮期200 mmHg台)に対しlosartan・nifedipine・carvedilol
    • 二次性高血圧精査(血漿レニン・アルドステロン、TSH、腎ドプラ)で所見なし
  • CK・AST・ALTは経過とともに漸減
  • 退院時:BUN 78 mg/dL、Cre 10.19 mg/dL、CK 5996 units/L、AST/ALTは基準範囲内
  • 外来透析予定で自宅退院。その後follow-up lost
入院経過中、CKとトランスアミナーゼは漸減する一方、Creは透析を要し退院時も高値が持続しました。積極的に補液をしてもCreが下がりきらず透析に至っています。
CK著明高値+治療抵抗性のAKIというのはミオグロビン誘発性ATNを強く示唆する組み合わせでした。

横紋筋融解=とにかく大量輸液と覚えていても、ここまでの値だと腎が間に合わないこともあるのだなと改めて思わされます。
(※「ミオグロビンをwashoutするために輸液をする」という概念は好きではありません。薬物もそうですが、GFRをあげたからといって、血中のミオグロビンなり薬物なりを除去する効率があがるとは考えません。あくまで腎灌流をあげる目的です)


ちなみに、横紋筋融解症で透析を要するかどうかを判定する基準として
McMahonスコアというのもあります。
McMahonスコアが6点以上の場合、その後の透析の必要性や死亡を予測する上で、単に「CK値が5,000 U/Lを超える」という基準を用いるよりも、高い感度(86%)と特異度(68%)を持つとされています。

項目 条件 点数 備考
年齢 50歳以下 0点  
50歳超~70歳以下 1.5点  
70歳超~80歳以下 2.5点  
80歳超 3点  
性別 男性 0点  
女性 1点  
入院時クレアチニン 1.4 mg/dL未満 0点  
1.4~2.2 mg/dL 1.5点  
2.2 mg/dL超 3点  
入院時カルシウム 7.5 mg/dL以上 0点  
7.5 mg/dL未満 2点  
入院時CK 40,000 U/L以下 0点  
40,000 U/L超 2点  
発症原因 てんかん発作、失神、運動、スタチン、筋炎のいずれか 0点 低リスク原因として扱う
上記以外 3点 例:敗血症、心停止後、コンパートメント症候群、外傷、悪性症候群など
入院時リン 4.0 mg/dL未満 0点  
4.0~5.4 mg/dL 1.5点  
5.4 mg/dL超 3点  
入院時HCO3- 19 mEq/L以上 0点  
19 mEq/L未満 2点  

McMahonスコア 解釈
5点未満 RRTまたは院内死亡のリスクは低い
6点以上 RRTまたは院内死亡の高リスク群として注意する
10点以上 RRTまたは院内死亡のリスクがかなり高い

 

 

この症例から見える肺外症状の広がり

レジオネラ感染症は、肺炎以外にも多彩な肺外症状をきたすことが知られています。

本症例ではそのうち横紋筋融解・AKI・低Na血症・トランスアミナーゼ上昇・高度の高TG血症が同時に出そろいました。

  • 脂質パネル:T-chol 274、HDL 11、LDL 107、non-HDL 263、TG 1173 mg/dL
    • 高TG血症誘発性膵炎の閾値を超える値だが、膵炎は除外された
    • CTの冠動脈石灰化・肝脂肪化から、もともと慢性の高脂血症が先行していた可能性も指摘されている

横紋筋融解の機序として、論文では細菌毒素による直接的筋毒性、高熱による筋障害、低酸素、低リン血症などの電解質異常が提唱されています。

さらにアルコールや薬物使用は増悪因子とされ、本症例ではアルコール+vaping(THC・合成カンナビノイド)の組み合わせが筋障害・腎障害の感受性を高めた可能性が論じられています。

そしてvaping自体がレジオネラの感染源だった可能性も指摘されており、喫煙・COPD・糖尿病・免疫不全といった既知のリスク因子を欠く若年者では、これが最も疑わしい感染経路と考えられています。日本でも結構電子タバコって流行っているんでしょうか???

 

ここで思い出したいのが、もう少し「典型的」なレジオネラ三徴の症例です。

70歳代で心不全・冠動脈疾患・心房細動・CKDといった基礎疾患を多数抱えた男性が、錯乱・咳・発熱で来院し、同じく肺炎+横紋筋融解+AKIの三徴を呈したという近年の報告があります(Cureus. 2026;18(4):e107537.)。

この症例では経験的にceftriaxone+doxycyclineで開始され、尿中レジオネラ抗原陽性を機にazithromycinへ切り替えられています。CKは15,150 U/Lまで上昇、Kは6.2 mmol/Lまで上がり最終的に血液透析を要し、入院中の腎回復は乏しく外来透析へ移行しました。

 

レジオネラ三徴(肺炎・横紋筋融解・AKI)はまれですが、ひとたび起これば死亡率は最大40%に達し、AKIを伴う場合は伴わない場合に比べて死亡率が大きく上がる(51% vs 15%)とされています(Am J Case Rep. 2026;27:e952088. / Cureus. 2026;18(4):e107537.)。

若年・基礎疾患なしの34歳でも、高齢・多併存疾患の70歳代でも、同じ三徴を踏みうるというのは、頭の片隅に置いておきたい点です。

 

この2症例で共通して印象的なのは、診断の決め手がどちらも尿中レジオネラ抗原だったこと、そしてAKIがいずれも治療抵抗性で透析に至ったことです。

では、この「尿中抗原で拾えた/拾えないかもしれない」という話や、ERでの初動をどう組み立てるか…ここからは症例を離れて、レジオネラ肺炎の診断と治療を体系的に整理してみます。

 


レジオネラ肺炎の診断と治療 ― テスト・アンド・トリートとpitfall

「肺炎」ではなく「横紋筋融解症と腎障害」として入ってきた患者が、実はレジオネラだったという症例を入り口に、

ここからは診断と治療を現場目線のpitfallとあわせて掘り下げます。

 

重症肺炎を見たときにERでどう動くかという視点も絡めていきます。

レジオネラ肺炎とは?

レジオネラ肺炎(Legionnaires' disease:LD、いわゆる在郷軍人病)は、グラム陰性の細胞内寄生菌であるLegionellaによって引き起こされる感染症で、入院を要する市中肺炎(CAP)の頻度の高い原因の一つです(Pneumonia. 2025;17(1):21.)。

レジオネラ感染症は大きく、肺炎(レジオネラ肺炎)、ポンティアック熱(非肺炎型の良性疾患)、そして肺外レジオネラ症の3つに分類されます(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)。

  • 原因菌として最も多いのはL. pneumophila(血清群1、次いで3、6)
    • ほかにL. longbeachae、L. anisaなどがある(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)
  • 感染経路は、水環境・土壌・配水システム・スパ・冷却塔などに生息するレジオネラを含むエアロゾルの吸入または吸引(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)
  • L. longbeachaeはガーデニングや培養土・コンポストの使用と関連する(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)
  • 感染すると肺胞マクロファージや肺上皮細胞に侵入し、Type IV secretion system(T4SS)を用いて細胞内で増殖し、殺菌活性を阻害する(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)
  • 人から人への感染は過去に1例記録されているのみで、基本的に起こらない(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)

「人にうつらない」という点は、空気感染対策に追われがちな日々の中で、レジオネラはそこは過度に心配しなくてよいというのは少し安心材料です。

 

レジオネラは深い疑いを持って対応しないと痛い目に遭います。

ある総説で印象的なフレーズがあったので取り上げます👇

「LD is an evolutionary dead-end for Legionella; it is either cleared by the immune system or results in the death of the patient.」

(レジオネラ症はレジオネラにとって進化上の行き止まりである。免疫系に排除されるか、患者の死をもたらすかのいずれかである)

 

だからこそ、宿主側の免疫と、こちらの初動が勝負を分けることになります。

 

どれくらいの頻度で、どれくらい重症化するのか

メタアナリシスのデータでは、レジオネラは全CAPの4.6%を占めるとされます(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)。

 

割合だけ見ると少数派ですが、問題は重症度です。

 

レジオネラ肺炎はICU入室を要する重症CAPの原因として上位3つのうちの1つであり(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)、レジオネラ肺炎患者の20〜40%が人工呼吸器などの臓器補助を目的としたICU入室を必要とします(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)。

  • 地域差も大きい。
    • ヨーロッパおよび米国の症例の80〜90%がL. pneumophila血清群1(Lp1)による
    • オーストラリアおよびニュージーランドではL. longbeachaeが最大51%を占める(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)
  • フランスの12のICUに入室したレジオネラ肺炎患者162名(2014年1月〜2019年12月)のデータでは、年齢中央値61歳、男性74.9%、ARDS発症45.1%、ショック状態22.8%(Pneumonia. 2025;17(1):21.)

地域で主要菌種が違うというのは尿中抗原検査の解釈に直結する重要ポイントなので後述します。

 

リスク因子 ~「らしくない人」も視野に入れる

レジオネラ肺炎のリスク因子として挙げられているのは、

50歳以上、男性、喫煙、糖尿病、慢性肺疾患、血液/固形腫瘍、臓器移植、免疫抑制治療(ステロイドやTNF-α阻害薬など)です(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)。

 

ここで症例を思い出してください。

症例の34歳男性は、これらの典型的リスク因子をほぼ持っていませんでした。

 

「らしい人」のチェックリストだけで構えていると、若くて基礎疾患のない患者のレジオネラは取りこぼしかねません。

リスク因子は当てはまれば疑いを強める材料ですが、当てはまらないことは除外の根拠にならないと肝に銘じたいところです。

 

なお、電子タバコを使っていましたがこれはリスク因子かどうかはまだ判然としないところです。関連はするんでしょうけど。

 

診断 ― 何を、どの順で出すか

レジオネラの診断手段にはそれぞれ得手不得手があります。

整理すると次のとおりです。

 

検査 特徴 感度・特異度
尿中抗原検査(UAT)

Lp1のLPS(リポ多糖)を検出。

15〜30分で結果判明。

欧米の診断の70〜80%を占める第一選択

特異度ほぼ100%、感度70〜90%(重症例で高く85%以上、軽症例で低い)
PCR法 呼吸器検体を用い、すべての種・血清群(1-16)を検出可能 感度96.8〜97.7%、特異度98.6〜99.4%
培養

ゴールドスタンダード。

すべての菌種を同定可能だが結果に数日

(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)

 

ここにpitfallの本丸があります。

普段いちばん手が伸びる尿中抗原検査は、あくまでLp1のLPSを検出する検査だという点です。

 

欧米・日本ではLp1が主流なので大きな問題になりにくいのですが、オーストラリアなどL. longbeachaeが多い地域では、UAT(血清群1のみ検出)では見逃すリスクがあるという総説の記載がありました(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)。

 

日本にいてもこの「検出している的が血清群1だけ」という構造は知っておくべきで、UAT陰性=レジオネラ否定と短絡しないことが大切です。

 

もう一つのpitfallが重症度による感度の変動です。

UATは重症例では感度85%以上とある程度は頼れますが、軽症例では感度が下がります(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)。

臨床的に強く疑うなら、UAT陰性でもPCRや培養に進むという二段構えが理にかなっています。

 

前半の2症例も、いずれも重症で尿中抗原がしっかり陽性に出たという点はこの感度の話と整合的ではあります。

 

「誰に検査を出すか」も悩ましいテーマです。

検査対象の絞り込みは施設ごとに運用がばらつくのが実情です。

臨床予測スコアとして、日本呼吸器学会のレジオネラ診断予測スコア(JRS 2024)が参考になります。

  • 男性/咳なし/呼吸困難/CRP ≧ 18 mg/dL/Na < 134 mmol/L/LDH ≧ 260 U/Lの各1点
  • 合計3点以上でレジオネラ肺炎を疑う(Respir Investig. 2025;63(5):811-828.)

「咳がない肺炎」がスコアの項目に入っているのが、いかにもレジオネラらしいですよね。CPKは入っていないんですね、へぁ~。

 

前半の34歳男性も、来院時の主役は筋痙攣と暗色尿で、呼吸器症状は前面に出ていませんでした。

咳の有無や低Na血症といった一見地味な所見を拾えるかどうかが、疑いを立ち上げる入口になります。

 

 

なお、診断については以下の記事が詳しいです!

note.com

 

ERでの動き方 ― 重症肺炎を疑ったら

ここで一段引いて、重症肺炎をERでみたときの枠組みを確認します。

そもそも重症CAPは、ATS/IDSAの2007年基準(主基準1つ以上、または小基準3つ以上)によって定義されます(Am J Respir Crit Care Med. 2019 Oct 1;200(7):e45-e67.)。

この「重症かどうか」の線引きが、検査と抗菌薬の両方の判断を駆動します。

 

分類 項目
大項目 昇圧薬を要する敗血症性ショック
  人工呼吸管理を要する呼吸不全
小項目 呼吸数 ≥30回/分
  PaO₂/FiO₂比 ≤250
  多葉性浸潤影
  意識障害/見当識障害
  尿素窒素(BUN)≥20 mg/dL
  白血球減少:白血球数 <4,000/μL
  血小板減少:血小板数 <100,000/μL
  低体温:深部体温 <36℃
  積極的な輸液を要する低血圧

 

レジオネラ尿中抗原検査について、ATS/IDSA 2019ガイドラインは、ルーチン実施は推奨していません(条件付き推奨・低エビデンス)

一方で、重症CAP、あるいはアウトブレイクや旅行などの疫学的要因がある患者には検査を提案する(条件付き推奨・低エビデンス)としています(Am J Respir Crit Care Med. 2019 Oct 1;200(7):e45-e67.)。

全例にばらまくのではなく、重症度と疫学のフックがある患者に絞るという考え方です。

 

経験的抗菌薬については、重症CAPに対して以下が推奨されています(Am J Respir Crit Care Med. 2019 Oct 1;200(7):e45-e67.)。

  • βラクタム+マクロライド(強い推奨・中等度エビデンス
  • または βラクタム+呼吸器キノロン(強い推奨・低エビデンス

重症CAPの初期治療レジメンに、そもそも非定型カバー(マクロライドまたはキノロン)が組み込まれている点が要点です。

「重症肺炎で経験的に動く」時点で、結果的にレジオネラもカバーしうる骨組みになっていると理解しておくと初動に迷いません。

 

レジオネラと確定した、あるいは強く疑う場合の標的治療は、

肺胞マクロファージ内に高濃度に移行する殺菌性抗菌薬が好ましいとされます。

具体的にはレボフロキサシン等のフルオロキノロン系、またはアジスロマイシン等のマクロライド系が挙げられます(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)。

レジオネラが細胞内で増殖する菌である以上、「細胞の中まで届く薬」を選ぶという理屈はストンと腑に落ちます。

 

治療期間は、重症例で10日以上、免疫不全宿主では14日より長く(通常21日間)が推奨されています(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)。

市中肺炎の感覚で短めに切り上げると足りないことがあるという点は押さえておきたいです。

 

診断と治療を貫く考え方を提示して締めます。

「A strategy of test and treat, with early diagnosis and right-first-time therapy, is the cornerstone for optimal management.」

(早期診断と初回からの適切な治療を行うテスト・アンド・トリート戦略が、最適な管理の要である)

(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)。

 

単剤か、併用か ― 見解が分かれるところ

ICU入室を要する重症例で、抗菌薬を単剤でいくか併用でいくかは、資料間で立場が分かれます。両論を並べておきます。

 

併用を考慮すべきとする立場:

血管作動薬を要する患者、免疫不全患者、単剤療法で失敗した患者には、レボフロキサシンとマクロライドの併用を考慮すべきとされます。

ショックを伴う小規模なICUコホートで、単剤よりも併用のほうが死亡率が低かった報告があることが根拠です(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)。

 

単剤でも十分かもしれないとする立場:

フランスのICUにおける最近の多施設後ろ向き観察研究では、単剤療法と併用療法(フルオロキノロン+マクロライド等)の間で死亡率に有意差は認められませんでした。

併用療法はQT延長や神経毒性などの副作用リスクを高める可能性があるため、単剤療法(フルオロキノロン)でも十分な可能性がある、という見解です(Crit Care. 2026, doi:10.1186/s13054-026-05907-z / Pneumonia. 2025;17(1):21.)。

 

実際の28日死亡率のデータを並べると、フランス5施設・93名(2017-2022年)の研究で併用療法群12.5%、単剤療法群15.4%という数字が報告されています(Crit Care. 2026, doi:10.1186/s13054-026-05907-z)。数字としては併用がやや低いものの、有意差はつきませんでした。

 

ここで強調しておきたい限界があります。

これらの単剤vs併用の比較研究はいずれも後ろ向きの観察研究であり、ランダム化比較試験(RCT)は存在しません。そのため、重症度に偏りがあるなどの交絡バイアスを完全に排除できていないという点に注意が必要です(Crit Care. 2026, doi:10.1186/s13054-026-05907-z / Pneumonia. 2025;17(1):21.)。

「併用で死亡率が低かった」「差がなかった」のいずれも、観察研究という土俵の上での話だと割り引いて受け止めるべきでしょう。臨床現場での判断は症例ごとに異なり、最終的には専門医の判断を仰ぐべき領域です。

 

予後 ― どこで命が分かれるか

レジオネラ肺炎の全体の死亡率は4〜18%ですが、ICU入室患者や免疫不全患者では40%近くに達することがあります(Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.)。

ICUに入室したレジオネラ肺炎患者の28日死亡率としては、フランス12施設・162名(2014-2019年)で11.7%という報告があります(Pneumonia. 2025;17(1):21.)。

 

予後を悪化させる因子としては、年齢の増加(HR 1.07)と、最初の48時間の最大SOFAスコアの高さ(HR 1.47)が、28日死亡の有意なリスク因子として示されています(Pneumonia. 2025;17(1):21.)。

入室後48時間の臓器障害の進み方が転帰を左右するというのは、初動の48時間で何ができるかが大事だという話とも響き合います。

前半の2症例を思い返すと、どちらもAKIが治療抵抗性で透析に至りました。腎をいかに守るかが予後の分かれ目になりうることを、症例レベルでも実感した次第です。

 

まとめ

・非外傷性の横紋筋融解+AKIをみたら、運動・薬物だけでなく感染性の原因(レジオネラを含む)も鑑別にあげること。尿潜血陽性で沈渣にRBCが出ないときはミオグロビン尿を疑う

・UATはLp1のLPSを検出する検査であり、地域によるL. longbeachaeの見逃しや軽症例での感度低下に注意。リスク因子が揃わなくてもレジオネラは除外できない

・重症CAPの経験的治療(βラクタム+マクロライド/キノロン)は結果的にレジオネラもカバーする。標的治療は細胞内移行性の良いキノロン/マクロライド、重症例の治療期間は10日以上。単剤か併用かは見解が分かれ、根拠はいずれも後ろ向き観察研究

 

参考資料

  • Metlay JP, et al. Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. An Official Clinical Practice Guideline of the American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America. Am J Respir Crit Care Med. 2019 Oct 1;200(7):e45-e67.
  • The JRS guideline for the management of pneumonia in adults 2024(Digest Edition). Respir Investig. 2025;63(5):811-828.(The Japanese Respiratory Society)
  • Rello J, et al. Severe Legionnaires' disease. Ann Intensive Care. 2024 Apr 2;14(1):51.
  • Demographics and outcome of Legionella pneumonia in the intensive care unit: a multicenter retrospective observational study. Crit Care. 2026. doi:10.1186/s13054-026-05907-z
  • Dartevel A, et al. Clinical features and prognosis of severe legionnaires' disease requiring intensive care unit admission: a multicentric retrospective cohort study. Pneumonia. 2025;17(1):21.

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