今回はちょっと新しい試みをしています。
HLH(hemophagocytic lymphohistiocytosis、血球貪食性リンパ組織球症)の近年発表された症例報告を5本まとめて読み、「結局のところ、ERや入院管理中のどの瞬間にHLHを疑えるのか」をcase series風に俯瞰してみることにしました。
HLHの診断はとてもニガテとしている領域なので、ニガテが払拭できるように見ていきます。
HLHは「気づけば対応できるけど、気づかなければ確実に殺される」疾患の代表格です。
診断基準を覚えていてもなお見逃されるのは、
初期像が敗血症、急性肝炎、リンパ腫精査中の発熱、Still病の経過観察、ウイルス感染後の貧血など、ありふれた病像に擬態するからです。
「何で気づいたか」を5症例で並べて見ることで、自分の臨床のレーダーの抜けを確認していきます。
長尺になります。お時間あるときにどうぞ。
case series:HLHを「どこで」疑えたか
症例1:リンパ腫精査入院中に発熱と血球減少~HScoreで踏み込む
(Cureus. 2025;17(1):e77492.)
病歴/身体所見
- 75歳男性、ADLは自立
- 既往:高血圧、脂質異常症(losartan, atorvastatin内服)
- 1か月で6kgの体重減少、腹痛、便秘、倦怠感、食欲不振でER受診
- 来院時バイタルサイン異常なし、体温36.2℃
- 腹部は心窩部〜中腹部に軽度圧痛、それ以外特記なし
検査
- 血液検査
- WBC 3.50×10³/μL、Hb 12.8g/dL、Plt 104×10³/μL
- LDH 2449 U/L、CRP 17.1mg/dL
- 末梢血塗抹で白血球100個あたり赤芽球3個
- 腹部造影CT
- 後腹膜に12×6cmのリンパ節腫大塊、肝脾腫なし

初期診断と経過
- リンパ増殖性疾患疑いで入院、リンパ節生検待機
- 入院後に39.0℃の発熱、検査値悪化
- WBC 1.70×10³/μL、Plt 68×10³/μL、AST 181 U/L、LDH 5702 U/L
- フェリチン 27,866 ng/mL、TG 312mg/dL、D-dimer 3953 ng/mL
- EBV/CMV/HIV/HAV/HBV/HCV/VZV/HSV、血液・尿培養すべて陰性
- HScore 180点(HLHの確率54〜70%)を算出 → HLHとしての治療を即座に開始
診断と治療
非ホジキンリンパ腫(濾胞性)に伴う二次性HLH
- CTガイド下リンパ節生検を12時間以内に施行
- 確定診断を待たずにdexamethasone導入(8mg×2回/日×2週間 → 漸減)
- 治療開始から48時間以内に劇的な臨床改善
- 後日、生検で濾胞性リンパ腫と確定 → R-CHOPへ移行
初診時の体温は36.2℃で、HLHらしい所見は何もありませんでした。
それでもリンパ腫精査の入院中にじわじわと発熱・血球減少・LDHとCRPの跳ね上がりが揃ってきたところで、しっかりHScoreを計算して動けたのが救命につながった症例です。
「リンパ腫を疑っている患者で発熱と血球減少が出てきたらHLHを必ず鑑別に入れる」というのは、頭ではわかっていても、実際にはリンパ腫の発熱や好中球減少として流してしまいがちなところです。気をつけたいです。
また、この症例で印象的だったのは確定診断を待たずに治療開始している点です。
リンパ腫の組織診はもちろん大事ですが、HLHを合併していたら待っている間に死ぬ可能性があります。
本症例は、組織診が出る前にデキサメサゾンで踏み込んでいます。「組織診の結果待ち」は救急医にとっても他人事ではない判断ですので、自戒を込めて覚えておきたいと思いました(わからないので必ず血液内科に相談しますけど)。
この症例のキモ:リンパ腫精査入院中の発熱+血球減少+LDH/フェリチン上昇でHScoreを計算する。組織診の結果を待たずに治療開始してよい。
症例2:敗血症のマスクをかぶった抗菌薬不応の不明熱
(Cureus. 2024;16(8):e67393.)
病歴/身体所見
- 68歳男性、既往:冠動脈疾患(CABG後)、高血圧、前立腺肥大
- 2週間続く不明熱、排尿時痛、両側側腹部痛、意識障害でER受診
- 初療:尿検査陰性だが腹骨盤CTで両側水腎症を指摘 → 閉塞性腎症としてFoley留置
- vancomycin/cefepimeで治療開始したが血液・尿培養陰性、発熱持続
- 予防的抗凝固を行ったが右下肢DVTを発症
経過
- 入院7日目:意識障害悪化でstroke alert → 脳卒中は否定、TTEで大動脈弁の疣腫様病変を指摘され心内膜炎疑いで高次施設へ転院
- 転院後TEEで疣腫は否定、尿培養Morganella陽性で抗菌薬調整したが腎機能改善なし
- 入院11日目:頻呼吸、複数回の発熱、PVC出現で集中治療室へ
- 入院13日目:完全な汎血球減少(Plt 76、WBC 2.7、Hb 12.2)、azotemia進行でCRRT開始
- DIC panelは非診断的、自己免疫検索陰性、髄液・MRIで明らかな所見なし
診断のきっかけ
- HIT 4Tスコア5点でargatrobanへ変更も改善せず
- HIT抗体陰性、ADAMTS-13陰性、HIV陰性
- 骨髄生検 → aggressive T-cell lymphoproliferative disorder
- soluble CD25 182,750 pg/mL(基準値の100倍!)、フェリチン>100,000 ng/mL
- HLH-2004の8項目中7項目を満たす、HScore 96〜98%
最終診断
T細胞リンパ腫を誘因とする二次性HLH
- dexamethasone 10mg/m²/日 + etoposide 150mg/m² 隔週 + ST合剤予防投与開始
- etoposideは好中球減少で中止 → filgrastim併用
- 入院24日目に再発熱、血小板輸血後に低酸素血症 → 入院25日目に心肺停止、死亡
- 死因はcytotoxic chemotherapyまたは血小板減少によるびまん性肺胞出血と推定
「sepsisのフリをするHLH」の典型例で、抗菌薬不応の発熱と進行性汎血球減少が揃った時点で、もう少し早く骨髄に踏み込めなかったか…と読みながら何度も思いました。
報告者自身も論文中で「Sepsis is the great masquerader that may hide early signs of HLH」と表現しています。
また、報告では敗血症患者の20%がHLH-2004基準の4項目以上を満たす(Sci Rep. 2021;11:10529.)とも紹介されており、これは知っておきたい数字でした。
臨床的には「抗菌薬を尽くしても解熱しない、しかも血球減少が進行する」というパターンが出てきたら、敗血症の枠組みでだけ考え続けるのを止めるサインだと思います。
もう一つ、この症例で考えさせられたのは、診断後にすぐ治療開始しても救命できなかったという結果です。
HLHは診断したときには手遅れのことが少なくありません。
だからこそ、もう一段早く(DVT、血小板低下傾向、抗菌薬を入れても解熱しない発熱あたり)で疑えるかが勝負所だと感じます。
この症例のキモ:抗菌薬不応の遷延発熱+進行性汎血球減少が揃ったら、敗血症の枠組みから一度離れてHLHを考える。骨髄検査を早めに。
症例3:EBV陽性の若年男性、自己免疫性肝炎と誤診されて死亡
(Cureus. 2025;17(7):e89008.)
病歴/身体所見
- 27歳ヒスパニック男性、既往なし
- 2週間続く倦怠感と1か月続く黄疸でER受診
- 既に他院でciprofloxacin+metronidazole処方済み(肝感染症疑いで)
- 来院時:低血圧、頻脈、頻呼吸、発熱
- 筋肉痛、嘔気、右上腹部痛、めまいを伴う
検査
- 血液検査
- Hb 7.2g/dL、Plt 55×10³/μL、WBC 2.9×10³/μL(初診時から汎血球減少)
- 総ビリルビン26.8mg/dL、直接ビリルビン14.1mg/dL、AST 138、ALT 243
- PT 24.6秒、INR 2.2、Fibrinogen 112mg/dL、TG 257mg/dL
- フェリチン>10,000 ng/mL
- EBV DNA PCR 56,300 IU/mL
- 腹部造影CT
- 肝腫大23cm、脾腫16.4cm、腸間膜リンパ節腫大
- 胆嚢壁肥厚、胆嚢周囲液体貯留 → 胆嚢炎疑いも
初期経過
- 消化器内科と外科コンサルト:手術適応なしと判断
- HPB専門医、IR、肝臓内科コンサルト追加
- 当初「CMV肝炎」と推定診断、ただしCMVウイルス量は治療開始基準に満たず
- 肝生検:混合炎症細胞浸潤、非単クローン性大型形質細胞 → 「interface肝炎/自己免疫性肝炎」と診断
- prednisone処方で退院
診断のきっかけ
- 退院1週間後、ルーチン採血でHb 6.6 → 輸血目的で再入院
- 血液腫瘍内科コンサルト → 骨髄検査でhemophagocytosis
- EBV DNA PCR 23,900を再確認、ferritin、LDH、TG追加
- HLH-2004の6項目を満たす(脾腫、発熱、3系統血球減少、低fibrinogen、高ferritin、sCD25陽性)、HScore 233(98〜99%)
- 悪性腫瘍除外目的でPET、腸間膜リンパ節生検 → リンパ腫は否定
最終診断
EBV感染を誘因とする二次性HLH
- HLH-2004 protocol(dexamethasone、etoposide、cyclosporine A)開始
- 当初は一時的に反応したが、3日目以降に医学的・臨床的に悪化
- 約2か月の入院後、死亡
初診時にすでにHb 7.2、Plt 55、フェリチン>10,000、EBV PCR 56,300でありHLHを満たす材料が出揃っていました。
それなのに、肝臓所見が前面に出ていたために「自己免疫性肝炎」と誤診されてprednisone単剤で退院になっています。
EBV-HLHは経過が極端に速いことが知られており、本症例も2か月の入院でHLH-94 protocolにもかかわらず救命できずでした。
EBVがHLHの古典的トリガーであることは多くの教科書に書かれていますが、「若年・原因不明の肝炎+汎血球減少+脾腫」を見たら、それは肝炎ではなくHLHかもしれません。やっぱり難しい!
また、「若年の原因不明肝炎+脾腫を見たら、自己免疫だけでなくEBV/CMVのDNA定量を必ず出す」アクションは必要です。
PCRで桁違いに陽性であれば、それだけでHLHの誘因として大きなヒントになります。
この症例のキモ:若年成人の遷延する肝炎+脾腫+血球減少を見たらEBV-HLHを考える。フェリチンとEBV DNA定量を早めに。
症例4:CMV+EBV共感染でHLHとTMAを同時発症した生来健康な19歳女性
(Cureus. 2025;17(9):e92654.)
病歴/身体所見
- 19歳女性、既往なし、免疫不全なし、内服歴なし
- 1週間続く発熱(最高39℃)と新たに発見された貧血で血液内科入院
- 渡航歴・毒物曝露・薬物使用なし
- 入院数時間後に全般性強直間代発作 → てんかん重積へ進展
- GCS 3/15で挿管・人工呼吸器管理
- 身体所見:皮膚・粘膜黄疸、軽度脾腫、背部・両下腿に網状の丘疹性結節
検査
- 血液検査
- Hb 5.3g/dL、Plt 15×10³/μL、WBC 12.6×10³/μL
- 網状赤血球180×10⁹/L、破砕赤血球20%
- LDH 350、ハプトグロビン感度以下、間接ビリルビン優位の高値
- Coombs陰性 → 微小血管性溶血性貧血(MAHA)
- AST 203、ALT 125、Cre 26mg/L(急性腎・肝不全)
- フェリチン9421 ng/mL、TG 3.1 g/L
- 頭部MRI/MRA:右小脳虚血性病変+Willis動脈輪の分節性狭窄
- 脳血管造影:びまん性脳血管炎+多発微小血栓
診断のきっかけ
- ADAMTS13活性は正常 → TTP否定
- Shiga toxin陰性 → 典型的HUS否定
- 血液・尿・呼吸器培養陰性、HBV/HCV/HIV/梅毒陰性、自己抗体陰性
- 骨髄:trilineage造血、形態異常なし、ただしhemophagocytosis像あり
- フローサイトメトリーでCD4/CD8比逆転 → T細胞活性化示唆 → ウイルス精査へ
- CMV DNA 2.84 log IU/mL、EBV DNA 3.31 log IU/mL(共感染確認)、HHV-6/7/8陰性
- HScore 259(>99%)、HLH-2004の6項目を満たす
最終診断
CMV+EBV共感染による二次性HLHとTMAの同時発症
- prednisone 1mg/kg/日、ganciclovir、rituximab(375mg/m²毎週)、cyclophosphamide(600mg/m²毎月)
- 治療用量LMWH、新鮮凍結血漿、ピペラシリン/タゾバクタム併用
- 15日間の挿管管理後に抜管、25日間のICU滞在後に血液内科病棟へ転棟
- 完全回復
この症例はHLHとTMAが同時に存在するという、なかなか出会わない症例です。読みながら「これは見抜けないかもしれない…」と素直に思いました。
診断のきっかけが面白くて、CD4/CD8比逆転からウイルス精査に流れたのがブレイクスルーになっています。フローサイトメトリーでT細胞活性化が示唆されたから、CMV/EBVのDNA定量を依頼した。骨髄でhemophagocytosisも見えた。普段の臨床でCD4/CD8比まで見るかというと正直あまり注目していないパラメータでした。
もう一つ、若年女性でてんかん重積+汎血球減少+MAHAのとき、最初に飛びつくのはやはりTTPです。
実際の現場でADAMTS13の結果が返ってくるまでに数日かかることも多く、その間に「ADAMTS13待ち」になってしまうことがありえます。
本症例ではADAMTS13が正常で初めて立ち止まり、HLHとTMAの共存に気づいています。
「ADAMTS13正常のTMA」を見たら、感染や自己免疫による二次性TMAだけでなく、HLHも合併していないか考える必要があります。
この症例のキモ:ADAMTS13正常のTMAでは二次性TMAを考え、HLH合併の有無も確認する。フローサイトメトリーのCD4/CD8比逆転はウイルス感染のヒント。
症例5:成人Still病に併発したMAS~皮疹がきっかけ
(Clin Case Rep. 2025;13:e71650.)
病歴/身体所見
- 29歳女性、既往なし
- 1週間続く高熱(最高40℃)と関節痛でER受診
- 体重減少・寝汗・呼吸器・腹部・尿路症状なし
- 来院時:体温38℃、HR 101bpm、BP 117/74、SpO2 99%
- 身体所見:肝腫大のみ
検査
- 胸部・手関節レントゲン異常なし
- 血液検査
- 正球性貧血(Hb 11.5)、血小板減少(84,000)
- CRP 10、ESR 70、procalcitonin 5.3 ng/mL
- AST 132、ALT 84、フェリチン6291 ng/mL
- CT:腋窩・鎖骨上窩・気管傍・後腹膜にリンパ節腫大、肝脾腫
- 血液培養陰性、自己抗体ANAが低力価(<1:160)のみ陽性
初期経過
- quotidian fever(毎日1回ピークを示す発熱)が持続
- 入院4日目の発熱ピーク時、体幹にサーモンピンク色の斑丘疹が出現 → 解熱とともに消失
- Yamaguchi criteriaを満たし、成人発症Still病(AOSD)と診断

診断のきっかけ
- AOSD診断後もフェリチンが上昇 → 5日目に57,520 ng/mLでピーク
- 低fibrinogen血症(125mg/dL)、高TG血症(434mg/dL)が追加
- HLH-2004の4項目を満たす、HScore 250
- sCD25 4242 U/mL
- 骨髄生検でHLH所見確認
最終診断
成人発症Still病(AOSD)に併発したMAS(マクロファージ活性化症候群=二次性HLH)
- 高用量副腎皮質ステロイド + IVIG + anakinra(IL-1阻害薬)で治療
- 治療反応良好、anakinraとステロイド漸減で退院
- follow-upでフェリチン・ESR・トランスアミナーゼ正常化、肝脾腫消失
AOSDの10〜19%にMASを合併するとされ、膠原病領域では二次性HLHをマクロファージ活性化症候群(MAS)と呼びます。
本症例は皮疹をきっかけにAOSDが診断され、その流れでフェリチンの異常高値からMASが疑われています。
個人的に面白かったのはprocalcitonin 5.3という数字です。普通に見たらまず細菌感染を考えますよね。「procalcitonin高値=細菌感染」は条件反射的に正しく感じますが、AOSDの活動期では細菌感染がなくてもIL-6やTNF-αの影響でprocalcitoninが上がることがある(Rheumatology. 2023;62(4):e109-e110.)とのこと。
これはルーチンで測る項目になっていることもありますが、検査値の意味づけを一段深く考える必要があると思いました。
もう一つ、本症例ではANA陽性(低力価)でしたが、AOSDではYamaguchi基準上「ANA陰性」が小項目に入っています。しかし低力価ANA陽性はAOSDを否定しない(これは複数の症例報告で繰り返されている)というのは、覚えておきたいpitfallと考えています。
治療面では、MASにanakinra(IL-1阻害薬)が劇的に効いた症例として印象的でした。AOSD/MASでは古典的なetoposide-basedレジメンよりも、IL-1阻害が前面に出てくるケースが増えています。
「自己免疫疾患に併発したHLH(=MAS)は治療方針が違う」と知っておくだけでも価値があると思います。
この症例のキモ:高熱・関節痛・サーモンピンク疹・極端なフェリチン高値が揃ったらAOSD+MASを考える。procalcitonin高値=細菌感染とは限らない。
5症例横断 比較表:診断のきっかけを俯瞰する
ここまで5症例を見てきました。
診断のきっかけを並べて見ると、HLHが「どこでレーダーに引っかかるか」のバリエーションが見えてきます。
| 背景 | 誘因 |
初期症状 (ERでの主訴) |
初期診断・誤診 | 診断のきっかけ(決め手) |
|---|---|---|---|---|
| 75歳男性 | 非ホジキンリンパ腫 |
体重減少 腹痛 倦怠感 無熱で受診 |
リンパ増殖性疾患 | 入院中の発熱+血球減少進行→HScore計算 |
| 68歳男性 | T細胞リンパ腫 |
2週間続く不明熱 排尿時痛 意識障害 |
閉塞性腎症+腎盂腎炎/IE疑い (誤診/見逃し) |
抗菌薬不応の発熱+進行性汎血球減少→骨髄 |
| 27歳男性 | EBV |
倦怠感 黄疸 右上腹部痛 |
胆嚢炎→CMV肝炎→自己免疫性肝炎 (誤診) |
退院後Hb 6.6で再入院 →骨髄でhemophagocytosis |
| 19歳女性 | CMV+EBV共感染 |
発熱・貧血 →てんかん重積 |
TTP/HUS疑い (MAHAから) |
ADAMTS13正常+CD4/CD8比逆転 →ウイルスPCR |
| 29歳女性 | 成人Still病 |
1週間続く高熱 関節痛 |
不明熱 |
サーモンピンク疹→AOSD→ferritin 57,520 |
この表をぼんやり眺めて気がつくのは、
救命できた3症例(1,4,5)はいずれも診断のきっかけが明確だったということです。
症例1はリンパ腫精査というレールに乗っていたためHScoreを能動的に計算できた。
症例4はADAMTS13正常という予想外の結果が立ち止まるきっかけになった。
症例5はAOSDという既存の臨床像のなかでフェリチン異常高値が前面に出た。
一方、死亡した2症例(2,3)はどちらも別の診断名で動いている時間が長かったと感じます。
症例2はsepsis、症例3は自己免疫性肝炎というラベルで治療されている間にHLHが進行しています。
HLHは気づいてからの治療よりも気づくまでのタイムラグが予後を決めると言えるかもしれません。
もう少し抽象化すると、HLHを疑うべきトリガーは以下のように整理できそうです。
| 反応すべき場面 | 具体的サイン |
|---|---|
| 抗菌薬不応の発熱 | 2週間以上の遷延発熱+培養陰性+進行性血球減少 |
| 説明しきれない組み合わせ | 発熱+脾腫+血球減少+肝障害+極端なフェリチン高値 |
| リンパ腫の精査中 | リンパ増殖性疾患疑いの患者で発熱+LDH/CRP急上昇+血球減少 |
| 若年の急性肝炎 | EBV/CMV感染後の高ビリルビン血症+脾腫+汎血球減少 |
| リウマチ性疾患の経過 | AOSD/SLE活動期にフェリチン>10,000、新たな血球減少 |
| ADAMTS13正常のTMA | MAHAだがTTPでない場合、二次性TMA+HLHを考慮 |
HLH総説:診断と重症管理
HLHとは何か
- HLH=hemophagocytic lymphohistiocytosis、血球貪食性リンパ組織球症
- 圧倒的な炎症によって多臓器不全と死に至る、生命を脅かす症候群。
- 迅速かつ適切に治療されなければ多くは数か月以内に死亡する
- 大別して原発性と二次性
- 原発性HLH:細胞傷害性リンパ球(NK細胞・細胞傷害性T細胞)のパーフォリン・グランザイム細胞死経路の遺伝的欠陥。
- 家族性HLHを含む。主に小児・乳児
- 二次性HLH:感染症・悪性腫瘍・自己免疫疾患などをトリガーとする。
- 成人発症の大半はこちら
- 原発性HLH:細胞傷害性リンパ球(NK細胞・細胞傷害性T細胞)のパーフォリン・グランザイム細胞死経路の遺伝的欠陥。
- 共通の病態生理
- サイトカインや病原体を排除した後に炎症を終わらせるための「負のフィードバックループ」が機能不全に陥る
- マクロファージ・T細胞が自己永続的に過剰活性化
- IFN-γ、IL-1β、IL-6などの炎症性サイトカインが大量放出される「サイトカインストーム」を引き起こす
- 結果として組織破壊・多臓器不全
疫学(治療を要する患者数は世界的に増加傾向にあります)
- 原発性HLH:スウェーデンの小児で出生5万人に約1人
- 全HLH発生率:イングランドで100万人あたり4.2人(2018年)
- 成人がん関連HLH:スウェーデンで成人100万人あたり少なくとも6.2人/年(2012-2018年)
- sJIA(全身性若年性特発性関節炎)患者でのHLH発生率:約10%
- CAR-T療法を受けている患者:約5%
- 敗血症患者における過剰炎症の発生率:約4%
(N Engl J Med. 2025;392(6):584-98. / BJA Educ. 2025;25(3):107-14.)
HLHは決してそこまでレアな診断ではなく、「過小診断」されている可能性が高い疾患です。
ER/ICUに「敗血症」「不明熱」「重症肝炎」として運ばれてくる患者のうち、わずかでもHLHが混じっているなら気づける医師でありたいです。
二次性HLHの3大誘因
- 感染(infection-HLH):世界で最も一般的なトリガー
- EBV、CMV、HIV、デング、結核、リーシュマニア、COVID-19など
- EBVは古典的かつ最重症経過をたどりやすい
- CMVは内皮細胞に直接感染し血栓性微小血管症を引き起こすことも
- 悪性腫瘍(M-HLH):主にリンパ腫などの血液がん
- T/NK細胞リンパ腫35%、B細胞リンパ腫32%、白血病6%、Hodgkin 6%、その他血液腫瘍14%、固形腫瘍3%
- 非ホジキンリンパ腫の一部のsubtypeではHLH合併率20%に達する
- 自己免疫/自己炎症性疾患(MAS-HLH)
- AOSD、SLE、sJIAなど
- 膠原病領域では特にMAS(macrophage activation syndrome)と呼ばれる
- AOSDの10〜19%にMAS合併、sJIA患者では約10%
- その他
- 妊娠、重度の熱傷、薬剤、CAR-T細胞療法・免疫療法など
- CAR-T患者では約5%にHLHが発生
3つの誘因を分けて考えるのは大事です。
誘因によって治療戦略がまったく異なるからです後述)。
診断トリガー編:気づくためのツール
診断ツールに入る前に、まず「3つのF」を頭に叩き込みたいと思います。
"Suspect hyperinflammation in the presence of the three Fs: Fever, Falling cell counts, high Ferritin concentrations."
すなわち、Fever(発熱)・Falling cell counts(血球減少)・Ferritin increase(高フェリチン)。
この3つが揃った場合、過剰炎症(=HLHを含むhyperinflammatory state)を強く疑う、という臨床的triadです。
NEJM 2025のレビューが提唱する覚え方ですが、シンプルで現場で使いやすいです。
(N Engl J Med. 2025;392(6):584-98.)
その上で、診断の正式なツールは大きく2つあります。
HLH-2004診断基準(2024年に改訂版HLH-2024が提唱)とHScoreです。
HLH-2004/HLH-2024診断基準(8項目中5項目、改訂版では7項目)
| 項目 | カットオフ |
|---|---|
| 発熱 | 38.5℃以上 |
| 脾腫 | 身体所見または画像 |
| 2系統以上の血球減少 | Hb<9、Plt<100k、Neut<1.0k |
| 高TG血症 and/or 低fibrinogen血症 | TG≧265 mg/dL、Fib≦150 mg/dL |
| 骨髄/脾/リンパ節のhemophagocytosis | 悪性所見を伴わない |
| NK細胞活性低下 | 各施設基準による(HLH-2024では除外) |
| 高フェリチン血症 | ≧500 μg/L |
| sCD25(可溶性IL-2受容体) | ≧2400 U/mL |
(Pediatr Blood Cancer. 2007;48(2):124-31.)
注意点:HLH-2004はもともと小児用の基準であり、成人での妥当性検証は十分でないというのが歴史的経緯です。とはいえ実臨床では成人にも適用されており、診断パフォーマンスは複数のcohortで検証されてきました。
最新のintercontinentalな多施設validationでは、HLH-2004(8項目中4項目以上)で感度86.5%/特異度86.1%、HScore≧169で同等以上の性能と報告されており、両者とも実用に耐えると評価されています(J Intern Med. 2025.)。
NK細胞活性の測定は時間も施設も限られるため、HLH-2024ではNK活性を除外した7項目版が提案されており、こちらのほうが使いやすそうです。
HScore(オンライン計算ツール)
HScoreはHLH-2004のパラメータを重み付けして点数化したものです。
9項目(基礎的な免疫抑制、体温、臓器腫大、血球減少の数、フェリチン、TG、fibrinogen、AST、骨髄のhemophagocytosis)から算出され、カットオフ169点で感度93%/特異度86%とされます(Am J Clin Pathol. 2016;145(6):862-70.)。
ICU populationでは168点で感度100%/特異度94.1%と良好な性能です(Crit Care. 2020;24(1):244.)。
とはいえHScoreはあくまで「確率的指標」であり絶対的なものではないので、結果に振り回されず、3つのFと臨床像で総合的に判断するのが基本です。
https://www.mdcalc.com/calc/10089/hscore-reactive-hemophagocytic-syndrome
個別パラメータの解釈
- フェリチン
- 成人で>10,000 ng/mL:感度90%/特異度96%(Pediatr Blood Cancer. 2008;50(6):1227-35.)
- ただしこれは小児由来データで、成人ICU populationでは特異度が落ちる(肝障害、輸血、鉄過剰、感染症でも上昇)
- ICU populationではカットオフ9083 μg/Lで感度92.5%/特異度91.9%(Crit Care. 2020;24(1):244.)
- 「フェリチン>10,000を見たらHLHを必ず鑑別」
- 絶対値だけでなく「急速に上昇するトレンド」もHLHを示唆する重要なサイン
- sCD25(可溶性IL-2受容体)
- 成人HLHで100%>2400 U/mL、44.7%が>10,000 U/mL
- ≦2400 U/mLはHLHのrule outに有用(感度100%)、>10,000 U/mLはrule in(特異度高)(Blood Adv. 2017;1(26):2529-34.)
- 外注検査で時間がかかるのが難点ですが、結果が来たときに必ず確認する
- 骨髄のhemophagocytosis
- 感度83%/特異度60%程度(Clin Case Rep. 2020;8(12):3427-31.)
- 陰性でもHLHを否定できない。骨髄検査陰性で治療開始を遅らせるのはNG
- 骨髄を見るのは原則として「HLHの確認」ではなく「悪性腫瘍を含めた原疾患の検索」のためと考えるとよい
論点:骨髄のhemophagocytosis所見は本当に診断に役立つのか?
ここは詳しくないですが、参照した文献によって見解が分かれる興味深い点でした。
NEJM 2025のreviewは「疾患の初期段階では必ずしも見られず、HLHに特異的でもないが、HLH-2024診断基準の重要な要素の一つ」と位置づけているのに対し、BJA Education 2025(critical care向け)は「多臓器不全患者の解剖例の最大65%で見られるなど特異性に欠け、出現も遅いことがあるため、診断テストとしての有用性は低い。HScoreでも予測力への寄与は小さく、診断のために骨髄穿刺を必須とすべきではない」と明確に否定的です。
(N Engl J Med. 2025;392(6):584-98. / BJA Educ. 2025;25(3):107-14.)
個人的にはBJAのほうが現場感覚に合うかなぁ、と思いました。
ICUで「HLHを疑って骨髄検査するか否か」で迷うことはありますが、汎血球減少が進行している中で骨髄をやって陰性だったとしても、HLHは否定できない…
結局のところ、骨髄を見るのは「悪性腫瘍を除外するため」と考えるほうが実用的でしょうか。
敗血症との鑑別ポイント
HLHとsepsisは臨床像が極めて似ており、これが診断遅延の最大要因です。
一般に敗血症患者の20%がHLH-2004の4項目以上を満たすとされ、基準だけで区別するのは難しいとされています(Sci Rep. 2021;11:10529.)。
実際、敗血症患者における過剰炎症の発生率は約4%と推定されており、その中にHLHは確実に紛れています。
「適切な抗菌薬治療に反応しない敗血症様症状の患者では常にHLHを疑うべき」とされています。
鑑別の手がかりとして以下が挙げられます。
- 抗菌薬不応の遷延発熱(数日〜2週間以上)
- 脾腫(感染ではそこまで明瞭でないことが多い)
- 極端なフェリチン高値(>10,000は敗血症単独では稀)
- 低fibrinogen血症(敗血症ではむしろ上昇傾向)
- 進行性の汎血球減少(培養陰性なのに悪化していく)
- 3つのFが揃う(Fever、Falling cell counts、Ferritin increase)
「敗血症の治療をしているのに解熱しない、しかも血球が下がっていくときに敗血症一本ではなくHLHを考えるスイッチを入れる」のがよさそうです。
重症管理編:ER/ICUでどう動くか
治療の2大原則
① 臓器障害を防ぐために直ちに過剰炎症を鎮める
② 同時に引き金(トリガー)を特定し治療する
誘因によって戦略がまったく違うので、上記2つを並列で進めるのがポイントです。
"It is vitally important not to delay treatment for a comprehensive diagnostic search."
(包括的な診断のための探索によって治療を遅らせないことが極めて重要)
組織診や全部のpanelが揃うのを待つよりも、HLHを疑った時点でステロイドを投与しつつ並走するのが正解です。
これは症例1(リンパ腫精査中のHLH)が好例でした。
1. 初期対応(ER/ICUで即座に)
- 支持療法
- 循環管理(必要なら昇圧)、呼吸管理(挿管閾値は低めに)、CRRT/HD(腎不全進行例)
- 血小板輸血、FFPによる凝固因子補充、輸血
- DIC合併では低分子ヘパリン(症例4のように凝固障害ありでも慎重に投与)
- 感染症のコントロール
- 誘因のウイルス検索:EBV/CMV/HIV/HHV-6 PCR、肝炎ウイルス
- 細菌感染重複の評価:血培、尿培、必要なら気管内培養
- 免疫抑制治療開始後はST合剤予防(Pneumocystis jirovecii)、抗真菌予防を考慮
- 原疾患の検索を並行で進める
- CT(胸腹骨盤)で悪性腫瘍検索、リンパ節腫大、脾腫の評価
- 骨髄(主に悪性腫瘍細胞の検索目的)
- 自己抗体panel(ANA、RF、抗dsDNA、抗ENA、抗ANCA)
- 組織診が出るまで治療を待つべきではない
2. 階層的な免疫抑制治療(Oxford NHS Guideline 2025に基づく)
成人HLHの治療は、Oxford University Hospitals NHS Foundation Trustが2025年に発表したガイドラインで以下のように整理されています。
| 段階 | 薬剤 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 第一選択 | コルチコステロイド(methylprednisolone or dexamethasone) | 禁忌がない限り全患者に投与 |
| 第二選択 | anakinra(IL-1受容体拮抗薬) | ステロイド不応、または禁忌の場合 |
| 第三選択 | etoposide(特に重度心血管系・CNS病変)、IVIG、cyclosporine | 血液内科医・MDTの指導下で使用 |
| 根本治療 | 同種造血幹細胞移植(HSCT) | 原発性HLHに対して治癒をもたらす |
(Management of Haemophagocytic Lymphohistiocytosis in Adults Guideline. Oxford University Hospitals NHS Foundation Trust. 2025.)
歴史的には小児プロトコル(HLH-94/HLH-2004)由来のetoposide-basedレジメンが標準的でしたが、成人ではetoposideの毒性懸念から「ステロイド+anakinra」の組み合わせを早期に選ぶ流れが強くなっています。エトポシドは第三選択のようです。
3. 誘因別の追加治療
第一〜第三選択の階層に加えて、誘因が見えてきたら個別の治療を上乗せします。
| 誘因 | 追加・特異的治療 | 備考 |
|---|---|---|
|
悪性腫瘍 (M-HLH) |
R-CHOP/CHOPなど化学療法へ移行 | 臓器障害が切迫していれば早期etoposide。腎機能で減量 |
|
感染 (infection-HLH) |
抗ウイルス薬(ganciclovir/foscarnetなど)、refractory例にrituximab | EBV-HLHはrituximab併用が報告されている |
|
自己免疫 (MAS-HLH) |
anakinraを早期に。 tocilizumab、cyclosporineも選択肢 |
etoposideは原則使わない。anakinraが救命となる例多数 |
(Blood. 2019;133(23):2465-77. / Crit Care Med. 2022;50(5):860-72.)
4. 重症例での治療強化(投与量の目安)
- ステロイドパルス:methylprednisolone 1g/日×3〜5日
- anakinra:2〜6mg/kg/日(最大10mg/kg/日)、皮下分割投与
- etoposide:50〜100mg/m² 毎週、腎機能で減量
- cyclosporine A:2〜7mg/kg/日
- IVIG:1.6g/kgを2〜3日かけて投与(感染性HLHで考慮、AOSD/MASでは効果に疑問)
- tocilizumab(IL-6阻害):増えてきている
- ruxolitinib(JAK阻害):refractory例で報告増加
- emapalumab(抗IFN-γ抗体):primary HLHで2018年FDA承認、salvage
(Blood. 2019;133(23):2465-77.)
非etoposide-basedレジメン(anakinra+IVIG±ステロイド)はICUの重症成人HLHで生存率50〜71%との小規模報告があります(J Intensive Care Med. 2018;33(2):105-110.)。
MAS-HLHではanakinraが第一線、感染性・悪性腫瘍関連でもrefractoryならanakinra併用を検討する流れになっています。
5. 知っておくべきこと
- HLHは「気づいた瞬間に治療を始められる疾患」。組織診の確定を待たない(もちろん血内に相談!)
- 初期はステロイド(dexamethasoneかmethylprednisolone)を投与しつつ、誘因検索を並行
- 血液内科コンサルトは即座に(成人HLHを自分で完結させようとしない)
- 誘因によって追加薬剤が変わるので、誘因の見立てを血液内科と早期に共有
- 悪性腫瘍関連が疑わしいならR-CHOPなどの開始は化学療法側のスケジュールがあるが、HLHのコントロールが先
- EBV-HLHは経過が速く、rituximab+etoposideでも救命できないことがある(症例3)
自分の経験上、ほとんどは「疑い」の段階で血液内科に放り投げて並走させてもらっています。
大事なのは放り投げるタイミングで、フェリチン>10,000、抗菌薬不応の遷延発熱、進行性血球減少、脾腫、低fibrinogen、、、このうち2〜3個が揃った時点でコンサルトすれば、十分間に合うことが多いです。
予後:知っておきたい数字
HLHの予後については、最近の英国データが特に参考になりました。
- 未治療の場合、多くが数か月以内に死亡
- 治療を行った場合でも全体の死亡率は約50%に達する
- 英国の最近のデータでは1年生存率は全体で56%。ただしトリガーで大きく異なる
- リウマチ性疾患関連:74%(比較的良好)
- がん関連HLH:21%(極めて不良)
- 原発性HLHでは治療成績が劇的に向上
- 移植前治療(etoposideなど)による生存率:73〜91%
- HSCT後の生存率:熟練施設で85〜100%
(N Engl J Med. 2025;392(6):584-98. / BJA Educ. 2025;25(3):107-14.)
つまり、誘因がリウマチ性疾患(MAS-HLH)なら3/4は救命できるが、悪性腫瘍関連は5人に1人しか1年生きられません。
この格差は、誘因によって治療戦略がまったく違うこととも一貫しています。
本case seriesでも、悪性腫瘍誘因の2例(症例2,3)はいずれも死亡、自己免疫誘因の1例(症例5)は救命という結果でした。
過小診断・解釈上の限界
最後に、診断・治療の限界として知っておきたいことをまとめます。
- 過小診断のリスク
- HLHは敗血症や他の重症炎症状態と臨床像が非常に似ており、世界的に依然として過小診断されている
- 適切な抗菌薬治療に反応しない敗血症様症状の患者では常にHLHを疑う必要がある
- 診断基準の適用範囲
- HLH-2004診断基準はもともと小児の原発性HLH向け。成人や二次性HLHへの適用には限界がある
- 成人にはHScoreが推奨されるが、確率的指標として捉えるべきで、絶対的なものではない
- フェリチン値の解釈
- フェリチン上昇は肝障害、感染症、鉄過剰症など様々な状態で見られ、単独でHLHの診断はできない
- しかし極端な高値(>10,000 μg/L)や急速な上昇トレンドはHLHを強く示唆する
- 骨髄のhemophagocytosisの限界
- 初期段階では必ずしも見られない
- 多臓器不全患者の解剖例の最大65%で見られるなど、特異性に欠ける
- 診断のために骨髄穿刺を必須とすべきではない
(N Engl J Med. 2025;392(6):584-98. / BJA Educ. 2025;25(3):107-14.)
まとめ
・「3つのF」(Fever・Falling cell counts・Ferritin increase)が揃ったらHLHを疑い、HScoreを計算する
・敗血症・自己免疫性肝炎・TTP・腎盂腎炎などの"別の診断名"がついている期間が長いほど予後は悪い。抗菌薬不応の発熱+進行性血球減少を見たら、1つの診断に固執せず立ち止まる
・成人HLHの治療階層は「ステロイド→anakinra→etoposide/IVIG/CSA」など。組織診の確定を待たずに第一選択を開始し、誘因(感染/悪性腫瘍/自己免疫)で追加薬剤を分岐させる
・1年生存率は誘因で大きく異なる(リウマチ性74%、悪性腫瘍21%)。HLHは過小診断されており、「気づけるか」が予後を決める
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