米国頭痛学会から新たにERでの片頭痛マネジメントに関するガイドラインが発表されました。
「これはやる!」「これは意味がない!」
がすごくはっきりと記載されていて、とても実践的だと感じました。
まだ読破できていない方は、以下の記事も参考にして一度目を通しておくことをオススメします!👇
一方で、日本では採用されていないまたはあまり一般的ではない対処法も多く、
結局どうすればよいのか迷うことも多いと思います。
そこで今回は、実際にERではどのようなマネジメントをしているのか紹介していきます!

まずは二次性頭痛の除外から!
日本の「頭痛の診療ガイドライン2021」を見てみると、
ERを受診した頭痛患者では二次性頭痛を除外することが推奨されています。
これはアタリマエですが、結構難しい…!
基本的には、「Red flag」を探して、
Red flagに該当する場合にはその鑑別に合わせて、
もう一歩踏み込んだ病歴聴取と身体所見をとる
+画像による精査を行うことになります。
二次性頭痛の「Red flag MAP」を持っておいて、その場に合わせた対応をできるようにしておくとよいでしょう。

表 Red flag MAP
また、以下のブログ記事も参考になると思います。
もう5年以上前の記事ですが、大事なポイントは変わっていません。
ERではどうやって片頭痛の診断をするの?
ERを受診する頭痛の多くは一次性頭痛
施設によって多少の違いはありますが、
一般的なERでは頭痛で来院する患者の多くが一次性頭痛です。
一次性頭痛とは、頭痛そのものが主役の疾患であり、明らかな基礎疾患や全身性疾患、外傷などによる原因が見つからないものを指します。
片頭痛や緊張型頭痛などが代表例です。
実際、ERを受診する頭痛患者の40%が片頭痛とされており、その他の一次性頭痛も含めると全体の60%以上が一次性頭痛と考えられています。
とはいえ、見逃してはいけない二次性頭痛も全体の25%ほど潜んでいますので、「Red flag」には要注意です。
片頭痛としてRule-inしていく
まず押さえておきたいのは、片頭痛の診断基準です。
ERでは頻繁に遭遇するため、基本の知識としてしっかり頭に入れておきましょう。

この診断基準を解釈して、特に重要なポイントに絞って解説します。
①片頭痛の特徴は、「日常生活が送れないほどの強い頭痛」が繰り返し起こること
仕事や学校生活、家事などが手につかず、寝込んでしまうくらいの頭痛が起きることが一般的です。
多くの場合には、嘔気や嘔吐も伴います。
「ツラすぎて何も手につかない」状態でERを受診することが大半です。
こうした臨床像が繰り返し出現するのが片頭痛の特徴です。
逆に言えば、初回のER受診で確定診断するのは難しいと言えます。
典型的には「片側性・拍動性」の頭痛とされますが、
痛みの表現には個人差があるのであまりアテになりません。
激痛の渦中にある患者にとっては、「どんな痛みか」と聞かれても正確に答えられないこともあるでしょう。
この点にこだわりすぎると、重度の片頭痛患者に対して「緊張型頭痛」と誤診してしまうリスクがありますので、注意が必要です。
②前兆を伴うことがある
30%ほどの症例では、「前兆」と呼ばれる神経症状を伴います。
これは、5分以上かけて徐々に広がり、複数の神経症状が出現し、
おおよそ60分以内に消えていくのが特徴です。
よくある症状は、
「視界がチカチカする」
「ギザギザした光が見える」などの視覚異常です。
ただし、なかには失語や片麻痺など、脳卒中と見まがうような前兆を呈することもあります。
私自身はめまいが先行することもあります(s-EVSの鑑別ですね)。
これがあると、片頭痛ぽさが強くなります。
③過敏症状を伴うことがある
光や音、匂いに敏感になるケースも多いです。
「まぶしくてつらいから電気を消して」
「耳元で話さないで。うるさくて無理」
「モニター音がつらい…」
などと言いながら、ぐったりと横たわっている患者は、まさに片頭痛の典型像といえるでしょう。
上記3つのポイントがある場合には、片頭痛ぽさが強まります。
片頭痛診断のPitfallは?
Pitfall① 鎮痛薬への効果で鑑別をする
臨床の現場では、
「鎮痛薬が効いているから、あまり悪いものじゃなさそうだね~」
なんて会話が聞こえてくることがあります。
でもこれはダメな考え方です。
頭痛を感じるプロセスは、一次性であろうが二次性であろうが共通なので、
二次性頭痛であってもトリプタンやNSAIDsなどが効果を示すことはよくあります。
Favorable response to analgesics does not predict a benign etiology of headache
米国救急医学会からも、
「鎮痛薬の反応性を以て頭痛の原因を判断してはいけない」
と警告が出ています。
Pitfall② いつもと違う頭痛という訴えを無視する
片頭痛の患者は、ある意味で頭痛のプロフェッショナルです。
ERを受診するには何らかの理由があるはずです。
「いつも使っている鎮痛薬が切れちゃって」ならいいですが、
「いつもの片頭痛とはちょっと違う感じがする」といわれた場合には要注意!
実は、片頭痛であることそのものが二次性頭痛のリスクとされています。
たとえば、くも膜下出血、頸動脈解離、RCVSなんかはいずれも片頭痛の既往がある患者でリスクがあがります。
このときばかりは画像検査の閾値を下げておきましょう。
くも膜下出血の見逃しの多くは、
「SAHを疑わずCTに行かなかった」ことが原因です。
ED misdiagnosis of cerebrovascular events in the era of modern neuroimaging: A meta-analysis
Pitfall③ 閃輝暗点が片頭痛に特異的な所見だと思い込む
だからこそPitfallになります。
まずは、「Red flag MAP」の頭痛+視覚障害ではないかな?と考えるようにしましょう。
そのうえで、その閃輝暗点が片頭痛によるものかを見極めましょう。
それにはVARS(Visual Aura Rating Scale)が有用です。
VARSで3項目以上が当てはまれば、感度96%/特異度80%という高い診断精度があると報告されています。

これに当てはまらない場合には二次性頭痛かも…。
片頭痛のマネジメント
重症度に合わせたStratified Careを行う
片頭痛の急性期治療では、
重症度に合わせた薬物治療の使い分けが重要です。
これをStratified Careと言います。
片頭痛に特異的な治療法と非特異的な治療法を組み合わせて行います。
1つの薬剤が効かなかった場合に別の薬剤を使用する治療法をStep Careと言います。
最初は安全・安価なアセトアミノフェン/NSAIDsから開始→効果不十分であれば、次のステップとしてトリプタンなどの特異的薬を追加/切り替えという戦略です。
頭痛の診療ガイドラインでは、Stratified Careが推奨されています。
step careはstratified careより2時間後の頭痛改善や費用の面から劣るとされています。
特異的な治療:トリプタンを積極的に使っていこう
ERを受診するような日常生活に支障をきたすくらいの重症度であれば、
最初から片頭痛に特異的な治療を積極的に行うのがよいでしょう。
ER診療では基本的に重症として対応しておいてよいと考えています。
スマトリプタン3mg 皮下注は、ERでの片頭痛診療にマストです。
血管リスクがない場合には、全例で投与しておくべきでしょう。
すでに受診前にトリプタン内服を使って効果がなかった場合であっても、
皮下注を追加することで改善することはあります。
頭痛が軽い段階 or 発症1時間以内の早期服用で最も効果的とされ、
痛みが強くなりアロディニアが出てからでは遅いとされています。
なるべく早い段階に打ち込みましょう。
非特異的な治療として、メトクロプラミドはほぼ100%併用する
メトクロプラミドは比較的軽視されている薬剤だと感じていますが、どうですか?
現場では単なる制吐剤としか認知されていない印象がありますが、そんなことありません!
もちろん制吐薬としての役割もありますが、
スマトリプタン皮下注と比較して有効性が高いとするRCTが複数存在します。
Metoclopramide versus sumatriptan for treatment of migraine headache: A randomized clinical trial
そして投与された鎮痛薬の吸収改善にも効果があります。
使わない手はありません。
副作用として錐体外路症状(アカシジアなど)を引き起こすことがあります。
メトクロプラミドを静注することで5~10%に起こるとされますが、
メトクロプラミド10 mgを15分かけて点滴静注すれば大丈夫。
有効性はそのままに、錐体外路症状の発現率を低下させることができます。
非特異的な治療として、アセリオ®単剤だけで終わらせない
非特異的な治療としてメトクロプラミドはほぼ100%使用しますが、
これに+αで、NSAIDsをはじめとした鎮痛薬を追加することが多いです。
一般的には、アセリオ®が追加されることが多いのではないでしょうか。
しかし、海外のガイドラインでは「likely ineffective」、Level C – should NOT offerという残念な推奨になりました。
でもこれはNSAIDsを含めていろいろな薬剤の点滴製剤がある環境だから言えるのかな~と感じています。
RCTを見てみても、確かに対象となったNSAIDsなどとは60分時点でのVAS低下率は有意な差がついています。
それでもアセトアミノフェンだって大幅なVAS低下があることは明らかです。
あくまで優先順位の話で、
日本の環境においては絶対に使うなというわけではないと考えています。
ゲーゲー吐いている患者に対して内服薬は厳しいですし、
NSAIDsの点滴や筋注はあるもののレセプトで切られる可能性があります。
そういった点で、アセリオ®の投与はかなりやりやすいですよね。
アセリオ投与で思考を止めて、単剤で終わりにするなよ(Step Careにしないこと)という戒めだと理解しています。
しばらくは意識の高い医師から「アセリオはガイドラインで推奨されていないんだけどね、うんぬん」という会話が聞こえて来そうですね…(笑)
不十分な場合には大後頭神経ブロックを追加
海外のガイドラインでは特に強い推奨があるのが、大後頭神経ブロックです。
でも、日常診療でやられているところはあまり見ません。
個人的には患者から了承を得られればやることが多く、
特に忙しい場合には2-3分で処置が終わるので重宝します。
そんな難しいものではありません。
でも、医療従事者にとっても患者にとってもハードルは高いと思うので、
どうしてもコントロールがつかなければ追加くらいでもいいのかなと考えています。
スパイス的な治療も知っておこう
酸素投与
「頭痛に酸素投与なんてやったことないよ~」という声が聞こえてきそうです。
でも、安全で効果的かつ安価であることから治療選択肢として研究されています。
一次性頭痛に対して酸素投与と空気投与を行って除痛効果を判定したRCTでは、
酸素投与を受けた患者群において15~60分時点で有意な除痛効果が認められました。
特に15L/分の高流量酸素でER滞在時間が短縮したと報告されています。
High or mid-flow oxygen therapy for primary headache disorders: A randomized controlled study
マグネシウム
頭痛だけではなく、腰痛や尿管結石、術後疼痛などでも鎮痛効果があるとして研究されています。
メトクロプラミドと比較して非劣性であるとするRCTがあります。
この時の投与量は:マグネシウム2 g+5%ブドウ糖液50 mLを20分以上かけて投与です。
MAGraine: Magnesium compared to conventional therapy for treatment of migraines
デキサメタゾン
海外のガイドラインでは、
・発作再発予防の目的:Level B – should offer
・急性痛軽減目的:「possibly effective」, Level C – may offer
とされています。
急性期の疼痛を軽減するかははっきりしませんが、
少なくともERから帰宅後の頭痛の再発頻度を低下させる効果はあります。
ERから帰宅した患者の半数で、
48時間以内に機能障害を伴う重度の頭痛が再燃することが知られています。
それを抑制することができるのがデキサメタゾンです。
なので、帰宅前に投与しておくのが吉でしょう。