片頭痛、いつもの治療方法で本当にいいのでしょうか?
米国頭痛学会より、
ERでの片頭痛マネジメントをアップデートするガイドラインが発表されました!
「結局、何を選び、何を避けるべきか」
という部分がかなりクリアに整理されています。
救急外来の現場で迷いがちな部分に、はっきり道筋がつきました。
※※※日本のガイドラインとの比較と、実臨床での落とし込みは続編(明日以降)で解説します※※※
米国頭痛学会ガイドライン
こちらからフリーで読めます。
2016年〜2025年2月10日までに発表された、成人(>18歳)の片頭痛患者で、EDでの発作に対して注射薬(IV/IM/SC)あるいは神経ブロックを用いたRCTが検索されています。
主要アウトカムは投与後6時間以内の痛み評価したものを選択しています。
全体の方向性
全体の方向性として、
NSAIDs
トリプタン
神経ブロック
がERでの第一選択となるべきであり、
オピオイドやアセトアミノフェンは避けるべきという方向性が提示されました。
アセトアミノフェンは避けるんかい!とびっくりした方も多いと思います。
…あわてずに見ていきましょう!
推奨の大枠
治療については、効果に応じて以下の3段階に分けられます。
・最も強いエビデンスを有する治療(「高い確実性で有効」)
プロクロルペラジン静注(IV prochlorperazine)
デキスケトプロフェン静注(IV dexketoprofen)
皮下注スマトリプタン(SC sumatriptan)
大後頭神経ブロック(GONB)
・「有効である可能性が高い」治療
クロルプロマジンIV(chlorpromazine)
メトクロプラミドIV(metoclopramide)
エプチネズマブIV(eptinezumab)
ケトロラクIV(ketorolac)
眼窩上神経ブロック(SONB)
・「無効である可能性が高い」治療
ヒドロモルフォンIV(hydromorphone)
プロポフォールIV(propofol)
これを基にした最終的な臨床での推奨は以下のようになりました。

・Level A – 必ず提供すべき(must offer)
プロクロルペラジンIV(10–12.5 mg)
大後頭神経ブロック(GONB)
・Level B – 提供すべき(should offer)
デキスケトプロフェンIV
ケトロラクIV
メトクロプラミドIV
スマトリプタンSC(3–6 mg)
眼窩上神経ブロック(SONB)
・Level C – 提供してもよい(may offer)
クロルプロマジンIV
デキサメタゾンIV(急性痛軽減については「possibly effective」、ただし再発予防では従来どおり level B)
・Level A – 提供してはならない(must NOT offer)
ヒドロモルフォンIV(opioid)
・Level C – 提供すべきでない(should NOT offer)
・Level U – 勧奨不能(No recommendation)
カフェインIV
グラニセトロンIV
イブプロフェンIV
ケタミンIV
リドカインIV
生理食塩水ボーラス
プロポフォールIV
SPGブロック
エプチネズマブIV は、臨床試験集団に近い患者では Level B(should offer)だが、ED全般の患者に対してはデータ不足のため Level U(推奨不能)
使用方法や有害事象も含めてまとめると以下のようになります。
| 手技/薬剤(IV/SC/ブロック) | 用量 |
有効性の 確実性 |
有害事象 | ガイドライン推奨 |
|---|---|---|---|---|
| 大後頭神経ブロック(GONB) | 0.5%ブピバカイン または 1%リドカイン 0.75–3 mL | Highly likely effective | 注射部位の疼痛 | レベルA(Must offer) |
| 上眼窩神経ブロック(SONB) | 1%リドカイン 0.25 mL | Likely effective | 注射部位の疼痛 | レベルB(May offer) |
| SPGブロック(Tx360® など) | 0.5%ブピバカイン0.3 mL または 10%リドカイン経鼻 | Insufficient evidence | 一過性の咽頭しびれ感 | レベルU(No recommendation) |
| プロクロルペラジン(IV)(±ジフェンヒドラミン) | 10–12.5 mg(±25 mg) | Highly likely effective | アカシジア、鎮静 | レベルA(Must offer) |
| ヒドロモルフォン(IV) | 1 mg | Likely ineffective | 呼吸抑制、傾眠 | レベルA(Must NOT offer) |
| メトクロプラミド(IV) | 10 mg | Likely effective | アカシジア | レベルB(Should offer) |
| デキスケトプロフェン(IV) | 50 mg | Highly likely effective | 特記すべき重篤な副作用なし | レベルB(Should offer) |
| ケトロラク(IV) | 30–60 mg | Likely effective | 重大な有害事象なし | レベルB(Should offer) |
| スマトリプタン(SC) | 3–6 mg | Highly likely effective | 胸部不快感、動悸、潮紅 | レベルB(Should offer) |
| クロルプロマジン(IV) | 12.5–25 mg | Likely effective | 起立性低血圧、鎮静、アカシジア | レベルC(May offer) |
| デキサメタゾン(IV) | 8–16 mg | Possibly effective | 重大な有害事象の報告なし | 急性痛:レベルC(May offer)再発予防:レベルB(Should offer) |
| アセトアミノフェン(IV) | 1000 mg | Likely ineffective | 特記なし | レベルC(May NOT offer) |
| バルプロ酸(IV) | 400–1000 mg | Possibly effective | 特記なし | レベルC(May offer) |
| イブプロフェン(IV) | 400–800 mg | Insufficient evidence | 重大な有害事象なし | レベルU(No recommendation) |
| カフェイン(IV) | 60 mg | Possibly effective | 特記なし | レベルU(No recommendation) |
| グラニセトロン(IV) | 2 mg | Insufficient evidence | 特記なし | レベルU(No recommendation) |
| リドカイン(IV) | 1.5 mg/kgボーラス+0.5–1 mg/kg持続 | Insufficient evidence | 特記なし | レベルU(No recommendation) |
| 0.9%生理食塩水(IV) | 1 L/1時間 | Possibly ineffective | 特記なし | レベルU(No recommendation) |
| ケタミン(IV) | 0.2 mg/kg | Insufficient evidence | 一過性の泥酔感、倦怠感 | レベルU(No recommendation) |
| プロポフォール(IV) | 40 mgボーラス+追加または 0.5 mg/kg | Likely ineffective | 鎮静、徐脈、低血圧 | レベルU(No recommendation)(ルーチン使用は推奨せず) |
| エプチネズマブ(IV) | 100 mg | Likely effective | まれに過敏反応 | 試験集団に近い患者:レベルB(Should offer)一般的ED集団:レベルU(No recommendation) |
推奨の各論
ドパミン受容体拮抗薬
プロクロルペラジンIV
新規Class I試験では、ヒドロモルフォン1mg IVよりも痛み軽減・レスキュー薬使用率・再診率のいずれでも優れていた。
クロルプロマジンIVとの直接比較では有効性は同等だが、有害事象(鎮静・起立性低血圧・アカシジア)が少ない。
2016年までのエビデンスでは、スマトリプタンやオクトレオチド、バルプロ酸より優れていることも示されている。
総合して「高い確実性で有効(Highly likely effective)」と判断され、Level A – must offer。
※ノバミンと同じ成分、日本には筋注があるが適応はなさそう。
メトクロプラミドIV
placeboと比較したClass I試験では、主要アウトカム(30分時点)は統計学的有意差なしだが、50%症状改善率など副次解析ではメトクロプラミド優位であり、評価時点が早すぎる点が指摘されている。
デキスケトプロフェンIV、GONB、ケトロラックIVなど既知の有効薬と同程度の効果を示す試験が複数ある。
2016年から引き続き「有効である可能性が高い(likely effective)」とされ、Level B – should offer。
クロルプロマジンIV
プロクロルペラジンIV、メトクロプラミドIV、ケトロラクIVなどと同等の鎮痛効果を示す一方、有害事象(特に鎮静・起立性低血圧・アカシジア)の頻度が高い。
有効性は認めるが安全性の観点からワンランク下げられ、Level C – may offer にとどめられている。
その他
ドロペリドールIM・ハロペリドールIV・トリメトベンズアミドIMなどは新規データがなく、2016年のグレード(いずれも Level C または U)を維持。
コルチコステロイド
デキサメタゾンIV
バルプロ酸IVとの比較試験(Class I/II)では両者に有意差を認めず、いずれもVASスコアを大きく改善。
8mgを16mgに増量してもあまり効果の上乗せは期待できない。
モルヒネIVと比較したClass II試験ではデキサメタゾンが優れる結果であった。
2016年時点で、発作再発予防の目的では Level B – should offer が既に確立しており、今回もその結論は維持。
急性痛軽減目的に関してはエビデンスが混在しているため、「possibly effective」とし、Level C – may offer にとどめている。
NSAIDs
デキスケトプロフェンIV
Placebo より優れるClass I試験に加え、メトクロプラミドIVとの併用が単剤よりも有効という試験がある。
GONB+Metoclopramideとの比較では、GONBや併用療法と同等の痛み改善。
アセトアミノフェンIVやイブプロフェンIVよりも成績がよい。
多数の良質試験から「Highly likely effective」かつ Level B – should offer。
※日本にはない。
イブプロフェンIV
Placeboと差がない試験、バルプロ酸IVより劣る試験など成績がばらつき、デキスケトプロフェンIVと同等とする試験もある。
エビデンスが不十分として Level U – no recommendation にとどめている。
ケトロラクIV
メトクロプラミドIVやカフェインIVと同程度の有効性を示し、オピオイド(メペリジン)と同等かやや劣るが、副作用プロファイルを含めると実臨床で十分使えると判断されている。
「likely effective」かつ Level B – should offer。
※日本にはない。
一般麻酔薬
ケタミンIV
低用量ボーラスでの試験では placebo と差が出なかったり、小規模試験で優越性を示したりと結果が一定せず、全体として 推奨不能(Level U)。
プロポフォールIV
小規模試験で他薬より優れた結果もあるものの、良質なClass I placebo対照試験では差が認められず、「likely ineffective」と評価。
しかし安全性やマスクの問題から、ガイドラインとしては Level U(推奨不能) に据え置き、「標準治療とはすべきでない」というニュアンス。
トリプタン
スマトリプタンSC
2016年までに多数のtrialで placeboより有効であることが繰り返し示されており、一部ではDHEよりも速やかな効果を示す。
新たなClass I試験(3 mg SC vs placebo)でも2時間頭痛消失率で有意差(51.0% vs 30.8%)。
一方で、EDの文脈ではプロクロルペラジンIVに劣る結果もあり、「最優先」ではないが有力な選択肢と位置づけ。
Level B – should offer を維持。
CGRP抗体
エプチネズマブIV
本来は予防薬として承認されているが、急性期への早期効果に着目したClass I trial(EDではなく外来中心) があり、そこでplaceboより優れていた。
しかし、試験対象はEDとは異なる「外来予防薬導入患者」に近い集団であり、EDにおける実現可能性(コスト、点滴時間、入院の要否など)、ED特有の重症例や合併症を持つ症例に関するエビデンスが不足。
「試験集団にきわめて近い患者」には Level B – should offer だが、一般的なED片頭痛患者に対しては Level U – no recommendation。
オピオイド
ヒドロモルフォンIV
プロクロルペラジン+ジフェンヒドラミンIVとの直接比較Class I trialで、1時間時点の痛み軽減、レスキュー薬使用、ED再受診率のいずれもプロクロルペラジン群が優れていた。
さらに、別報の観察研究等を含め、オピオイド使用が片頭痛の慢性化やED再診の増加と関連することも踏まえ、オピオイドはむしろ害が大きいと判断。
「likely ineffective」かつ害の可能性が高いため、Level A – must NOT offer(提供してはならない) という強い否定的勧告になっている。
その他の薬剤・輸液
バルプロ酸IV
ケトロラクIVやドパミン拮抗薬には劣るが、イブプロフェンIVやデキサメタゾンIVとは同等〜やや良好で、「possibly effective」、Level C – may offer。
アセトアミノフェンIV
クラスIのプラセボ対象試験で有意差がなかった。
追加のクラスII/III試験でも「他のNSAIDsに劣る」あるいは「同等だが明確な優位性なし」という結果が積み重なっている。
まとめると、「安全性の問題というより 効果がはっきりしない/弱いので、EDの片頭痛治療として積極的に使う理由が乏しい」という評価になっている。
placeboより悪いか、他のNSAIDと同等どまりであり、「likely ineffective」、Level C – should NOT offer。
※新しいRCT(Örnek 2024)をみてもベースラインのVASと比較して60分後のVASは大きく低下してはいるため、実用には足ると個人的には思っている。
ただ、優先度は低いという、それだけの話。
使える薬剤が限定的な日本のEDではアリだと思う。
その他
カフェインIV・グラニセトロンIV・リドカインIV・生理食塩水ボーラス などは試験数が少なく、結果も一定せず Level U – no recommendation。
神経ブロック
大後頭神経ブロック(GONB)
複数のClass I/II試験で、placebo(shamブロック)やSONBより明らかに優れている、メトクロプラミドIVと同等の鎮痛効果を示すことが示された。
「Highly likely effective」→ Level A – must offer。
眼窩上神経ブロック(SONB)
placebo(sham)より有効で、GONBほどではないが明らかな効果あり。
「likely effective」→ Level B – should offer。
SPGブロック(経鼻リドカイン、Tx360®など)
小規模試験でプラセボに優る結果もある一方、大規模試験では差が出ないなど結果が割れている。
エビデンス不足として Level U – no recommendation。
ERが忙しいときにはやったりしていたんですが残念。
👇大後頭神経ブロックや眼科上神経ブロックは、当ブログで学べます👇
さて、こういった推奨がされていますが、日本の実臨床ではどうしましょうか。
また早いうちにブログを更新します!