さて、Weekly#1です。
今週はARDS(PEEP設定、APRVってどうなの?)、AKIへのマネジメント、熱傷へのER/ICUマネジメントあたりをよく読みました。
BPPVのあとに残存するめまいにどうすんの?とか興味ある人は多そうです。

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循環器
利尿薬
HFの病態は、心拍出量低下 → 動脈・静脈系の「充満不足/うっ血」 → RAAS・交感神経・バソプレシンなどの神経体液性活性化 → Na・水貯留 → さらなるうっ血・心機能悪化、という悪循環で特徴づけられる。
利尿薬はこの悪循環をナトリウム利尿(natriuresis)と水利尿によって断ち切り、体液量とうっ血を減らし症状を改善するが、生命予後を直接改善するエビデンスはない。
Fig.1(p.2)はネフロンの模式図で、作用部位が整理されている。
・近位尿細管:炭酸脱水酵素阻害薬…利尿単独効果は弱い、代謝性アルカローシスの是正目的での併用。
・ヘンレ上行脚:ループ利尿薬(Na-K-2Cl共輸送体阻害)…低アルブミン血症や中〜高度CKDでは効きが落ち、用量・頻度の増加が必要。
・遠位尿細管:サイアザイド(Na-Cl共輸送体阻害)…軽症HFには有用だが、CKDが進むと効果が低下する。
・集合管:ENaC阻害薬(アミロリド等)、アルドステロン受容体拮抗薬(スピロノラクトン等)…単独では利尿力は弱いが、他の利尿薬による低K血症を是正し、特にアルドステロン拮抗薬はRAAS抑制による心保護効果が大きく、HFrEFでは生命予後改善薬として位置づけられる。
利尿薬としてフロセミドが最も頻用されるが、経口バイオアベイラビリティが不安定で、トラセミド・ブメタニドの方が吸収が安定し、力価も高い。力価換算:フロセミド40 mg ≒ トラセミド10〜20 mg ≒ ブメタニド1 mg 程度。
サイアザイド系は主に高血圧と軽度の浮腫に用いられ、CKD合併例の利尿抵抗性に有効とされる。進行したHFやGFR<30では効果が弱い。
HFではCKD合併が非常に多く(最大50%)、これが体液過剰・高血圧・利尿薬抵抗性・GDMTの制約などを通じて管理を難しくする。
外来HF管理では、ループ±サイアザイド±アルドステロン拮抗薬などを組み合わせ、
「目標体重(target weight)」を設定し、体重変動に応じて自己調整可能な利尿薬量アルゴリズムを用いることが推奨される。
入院を要するADHFでは、静注ループ利尿薬を基本とし、尿量・尿中Na・体重・中心静脈圧を見ながら段階的な利尿強化プロトコル(Fig.3)を用いる。

ループ利尿薬抵抗性の主因は、RAAS・交感神経・バソプレシン・ANPの活性化、静脈うっ血による腎静脈圧上昇、長期ループ使用後の遠位尿細管でのNa再吸収増加(サイアザイド感受性輸送体の増加)。
抵抗性に対してはループ用量増量/持続静注、ループ+メトラゾン/クロロチアジド等(サイアザイド)によるsequential nephron blockade(連続ネフロン遮断:腎臓のネフロンの「別々の部位」に作用する利尿薬を組み合わせて使い、ナトリウム再吸収を段階的・連続的にブロックすることで、利尿効果を最大化する戦略)、代謝性アルカローシス例ではアセタゾラミド追加(ADVOR試験)、低アルブミン血症・腎機能低下例でのアルブミン併用(アルブミン <2.5 g/dL かつ利尿抵抗性が顕著な症例に限った「レスキュー的使用」)、場合により高張食塩水併用、それでも不十分なら強心薬、機械補助循環、透析/UFといったステップアップ戦略を用いる(上記)。
※sequential nephron blockadeはたとえば、まずヘンレ上行脚をループ利尿薬でブロック、そこでこぼれたNaを遠位尿細管 でサイアザイドでさらにブロック、必要に応じて近位尿細管 をアセタゾラミドで、集合管をK保持性利尿薬/MRAでというように「ネフロンを上流から下流まで“連続して”ふさぐ」イメージ。
高張食塩水+高用量ループを用いた研究群では、うっ血・腎機能・BNP・入院期間などの surrogateの改善が多く報告されているが、エビデンスの質は低〜中程度であり、再入院や死亡への明確な有益性は未確立である。低Na血症・低Cl血症を伴う難治例の「最後の手段」に限定すべき。
SGLT2阻害薬は浸透圧利尿+軽度のNa利尿をもたらし、ループ利尿薬との併用で利尿薬必要量の減少と利尿増強が報告されているうえ、大規模RCTでHF予後改善効果が示されており、ADHFでも補助的利尿薬として期待される。
「利尿薬は**症状緩和とうっ血解除に不可欠だが、あくまで症状対策薬であり、生命予後改善はGDMT(RAAS阻害薬、β遮断薬、MRA、SGLT2iなど)で担うべき。
48時間で累積尿量6L程度を目標に迅速に除水することが推奨され、クレアチニンが軽度上昇しても、うっ血が解消されれば長期予後はむしろ良いとされる。
POCUS
Point-of-Care Ultrasound Use in Hemodynamic Assessment
集中治療領域のPOCUSの基本を確認するのによい。
マクロ指標(血圧・CO)を整えても、毛細血管レベルのミクロ循環障害が残れば臓器障害は改善しない。この「マクロとミクロの不一致」が近年強調されており、過剰輸液によるうっ血・臓器障害を避けることが重要とされている。
右心評価:前負荷・収縮・後負荷
・前負荷(RV preload)
IVC 径と呼吸性変化(IVCCI)で CVP/RAP を推定。ただし陽圧換気下では精度低下。
IVC のみでの fluid responsiveness 予測能は中等度で、極端な値(IVCCI ≥40%)のみ有用。
頸静脈(IJV)径の拡張性(distensibility index)も陽圧換気下では有望で、>18% が反応性を高い感度・特異度で予測(輸液により CI が ≥15% 増加するかを高い精度で予測)。陽圧換気下の患者では、IJV が吸気で拡大し呼気で縮小する。
VExUSは IVC 径+肝静脈・門脈・腎静脈の PW ドプラで静脈うっ血・臓器うっ血を定量化するツールで、心臓外科や急性心不全での AKI・死亡リスクと関連。
・収縮(RV contractility)
TAPSE(三尖弁輪収縮時移動距離)<17 mm で RV 収縮能低下。簡便だが 1D 指標で限界あり。
RVOT-VTI(右室流出路 VTI)≥12 cm が正常。RV 機能と肺血管抵抗の双方を反映し、心原性ショックや肺高血圧で予後予測能がある。
TDI S′(三尖弁輪側壁の収縮期速度)<10–11.5 cm/s で RV 収縮不全を示唆。TAPSE より軽度低下の検出に優れるが、角度依存・荷重依存。
・後負荷(RV afterload: 肺高血圧やPE など)
TR velocity >2.8 m/s で肺高血圧を示唆、>3.4 m/s で強く示唆。
McConnell sign(RV 中部壁の低運動+尖部の保たれた運動)は急性肺塞栓で高特異度だが、感度低く慢性肺高血圧・RV心筋梗塞でも出るため単独で診断に用いるべきでない。
D-sign(PSAX で左室が D 字形になる)で RV 圧/容量負荷を評価。拡張期のみ平坦化:容量負荷、収縮期も持続:圧負荷(肺高血圧・急性PE)。
60/60 sign(PAT ≤60 ms + TR 圧較差 ≤60 mmHg)は急性PEの RV strain を示すが感度は低い。
左心評価:前負荷・収縮・拡張・後負荷
・LV preload:EVLW/肺うっ血
肺エコーでの B-line 多発が心原性肺水腫の感度の高い指標。ARDS・間質性肺炎など他原因もあり、臨床文脈と組み合わせて解釈。
・LV systolic function
EPSS(PLAX M-modeでの anterior MV leaflet と中隔の最小距離)>1 cm で LVEF <40% を示唆。簡便だが弁膜症・中隔肥大・AF では不正確。
Fractional shortening(FS)は LVEDD/LVESD の径変化率で LVEF を推定するが、局所壁運動異常や同心円状肥大で誤差。
LVOT-VTI + LVOT径から SV・CO・CI を算出し、ショックのタイプや治療反応性の縦断的評価に有用。
低 VTI + 低血圧 + 乳酸高値 → 低拍出性ショックを示唆
高 VTI + 低血圧 + 乳酸高値 → 分布異常性ショック(敗血症など)を示唆
・LV diastolic function / 充満圧
E/AとE/e′ 比で左房圧・拡張障害を推定。ICU 患者でこれらの POCUS 指標は拡張能評価に約 90% の精度を示すが、解釈は非心エコ専門医にはやや上級。
・LV afterload
LVOT の連続波ドプラでLVOTOの late-peaking “dagger-shaped” 波形を同定。SAM や HCM だけでなく、低容量性ショックなど負荷依存で一過性に起きることがあり、過度のカテコラミンや利尿で悪化しうるため、輸液と後負荷増大が必要なこともある。
輸液反応性(fluid responsiveness)の評価
・POCUS による SV・CO の動的変化を重視。
LVOT-VTI 変化を用いた fluid challenge、passive leg raise(PLR)、SVV・PPV、end-expiratory occlusion test など。
PLR 前後の VTI(または SV)14%以上の増加で「反応あり」とする。超音波由来の指標は、低一回換気量や自発呼吸下でも使える点が、純粋な心肺相互作用ベースの SVV/PPVより優れている。
頸動脈 flow time(cCFT)も SV と相関し、PLR での変化が反応性評価に有望とされる。
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超音波所見 |
主に反映する項目 |
典型的な解釈(増悪/異常時) |
備考 |
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IVC径 IVCCI |
RV前負荷 / CVP・RAP |
太くて潰れない:高RAP・うっ血傾向。細くてよく潰れる:低容量。極端なIVCCI(≥40%)のみfluid responsiveness予測にやや有用。 |
RV前負荷・右心系圧の“ざっくり評価”。陽圧換気・PEEPなどで狂いやすい。 |
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IJV径 |
RV前負荷 / fluid responsiveness |
陽圧換気下でdistensibility >18% ならCI↑≥15%を予測(感度80%、特異度95%)。 |
IVCと似た情報だが、人工呼吸器下でfluid responsivenessの予測能が比較的良好とされる。 |
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VExUS |
全身静脈うっ血 / “fluid tolerance” |
Grade2–3:静脈うっ血高度。心臓外科やHFでAKI・死亡・再入院リスク↑。 |
「どこまで水を抜く/入れていいか」の判断材料。volume overload か pressure overload かの判別はできない。 |
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TAPSE |
RV収縮能(縦方向収縮) |
TAPSE <17 mm(正常は ≥16 mm):RV収縮能低下。 |
簡便だが「1点の縦運動」だけ見る1D指標。RV後負荷↑(肺高圧)でも低下しうる。 |
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RVOT-VTI |
RV収縮能+RV stroke volume / RV afterloadの影響 |
低値:RV stroke volume低下、RV機能低下 or PVR↑を示唆。≥12 cmが目安の正常。 |
TAPSEより心原性ショックでのRV機能評価や肺高血圧の予後予測能が高いとされる。 |
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TDI S′ (三尖弁輪側壁) |
RV収縮能 |
S′ <10–11.5 cm/s:RVEF低下とよく相関。 |
TAPSEと同様に荷重・角度依存。軽度のRV機能低下検出にやや優れる。 |
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TRV |
RV後負荷(肺動脈圧 / PVR) |
>2.8 m/s:肺高血圧を示唆。 >3.4 m/s:肺高血圧を強く示唆。 |
重度TRやTR不十分だとPA圧を過小評価しうる。RVOT狭窄など他の流出路閉塞との鑑別は不可。 |
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McConnell sign |
急性RV後負荷↑(急性PEなど) / RV strain |
急性PEで高特異度だが感度低い。慢性肺高圧やRVMIでも出現しうる。 |
「PE特異的」ではなく、“急性右心負荷が強い”サインとして扱うのが安全。 |
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D-sign |
RV圧負荷 or 容量負荷(=RV後負荷 or volume overload) |
拡張期のみ扁平化:主に容量負荷。収縮期も持続:主に圧負荷(肺高圧/急性PE)。 |
RVの「パンクしそう加減」を視覚的に見る所見。 |
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60/60 sign |
急性RV後負荷↑ / 急性PEのRV strain |
PAT ≤60 ms+TR勾配 ≤60 mmHg:急性PEでRV strainを示すが感度低い。 |
McConnell signと組み合わせると特異度高いが、「高リスクPE症例」に限定して解釈すべきとされる。 |
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B-lines |
LV前負荷・EVLW(肺うっ血) |
多数のB-lineが複数肺野:心原性肺水腫を強く示唆。ただしARDS/ILD等でも増加。 |
「LVがどれくらい水浸しになっているか」を見る指標。孤立1–2本は正常でもありうる。 |
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EPSS |
LV収縮能(LVEF) |
EPSS >1 cm:LVEF <40%を示唆。 |
簡便なLVEF surrogate。ただしMS/AR・中隔肥厚・AFなどでは不正確。 |
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FS |
LV収縮能 / LVEF surrogate |
低FS:LV径変化が少なく、LVEF低下の可能性。ただし壁運動異常・同心性肥大で過小評価。 |
前負荷・後負荷に影響されやすい。 |
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LVOT-VTI |
LV stroke volume / CO、ショックのタイプ |
正常17–23 cm。低VTI+低血圧+高乳酸:低拍出性(心原性など)。高VTI+低血圧:分布異常性ショック疑い。 |
「いまどれだけ血が前に出ているか」を示す最重要指標の一つ。経時変化で治療反応を追跡。 |
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LVOT-VTIの変化 |
fluid responsiveness(前負荷感受性) |
PLRや急速負荷でVTI(またはSV)が≈14%↑以上なら「反応あり」。 |
低一回換気量・自発呼吸でも使えるのが利点。SVV/PPVより現場で使いやすい。 |
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cCFT |
SV / fluid responsiveness |
正常≈300 msが正常SVに対応。PLRによる変化(7-10%)でfluid responsivenessを高特異度(〜96%)で予測した小規模研究あり。 |
LVOTが取りにくい症例での代替指標候補。まだエビデンスは限定的。 |
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E/A比 |
LV拡張能 / 左房圧の一部 |
E/A <0.8:弛緩障害(Grade1)。E/A ≥2:restrictiveパターン(Grade3)など。 |
心拍数・AF・弁疾患で解釈困難。E/e′と合わせて総合判断。 |
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E/e′ |
LV拡張能 / 左房圧・充満圧 |
e′低値+E/e′高値:高左房圧・拡張障害。E/e′ >15なら高度上昇(Grade3)など。 |
ICU患者で拡張機能障害診断に約90%の精度と報告。前負荷過剰かどうかの判断に有用。 |
Emergency medicine updates: Point-of-care ultrasound in cardiac arrest
PE診断には要注意:低酸素・低容量・高K血症・虚血・不整脈など、さまざまな原因の心停止でも急速なRV拡大が生じる。心停止早期のRV拡大はPEに最も強く見られるが、時間経過とともに非特異的になることが示されており、RV拡大のみでPEと診断するのは危険とされる。右心系血栓についても、低流量状態自体が心腔内血栓を数分で形成しうるため、心停止早期にPEを疑う病歴(急性呼吸苦・胸痛など)やDVTがある場合に限って、PEを強く疑う手がかりとなる。
Echocardiography上でのみ確認されるVFをoccult VFと呼び、大規模多施設前向き研究で、約5%の患者にoccult VFが存在し、これらの患者は、ECG上VFの患者と同等のROSC・生存退院率を持つ一方で、除細動の実施頻度は低かったことが示された。
心活動の評価(cardiac movement):PEAと診断された症例のうち6–58%、心静止と診断された症例の4–12%で、POCUS上は何らかの心筋収縮が確認されたとの報告がある。Organized cardiac activity が見られる場合、ROSC・生存の可能性は高いがそれが“有効循環を伴うか/脳灌流が保たれているか” とは限らないので、ETCO₂上昇(>20 mmHg)・SpO₂波形・頸動脈/大腿動脈のPOCUSパルス・PSV ≧ 20 cm/s(SBP ≧ 60 mmHg相当:Doppler USは「脈があるかないか」の判定で、触診(正確度54%)に対して95%の正確度を示し、PSVとSBPの相関係数は0.89、PSV 20 cm/sがSBP≧60 mmHgの最適cutoffであったと報告)などと併せて判断する必要がある。※PSVは動脈を長軸で出してからパルスドプラを置くだけ簡単※心収縮があるが触知脈がない「pseudo-PEA」については、重度のショック状態として蘇生継続・血管作動薬などの積極的介入が妥当である可能性がある。
心停止では心拍出量低下によりETCO₂の信頼性が低下するため、ETT位置確認の補完手段が重要。POCUSによるETT確認は感度99%、特異度97%と報告。挿管直後・圧迫継続中でも評価可能で、ETT先端の深さ・片肺挿管の有無も評価しうる。
推奨される圧迫位置(胸骨下半分)でも、実際に最も押されているのは左心室ではなく左房や大動脈根部であることが多い。あるTEE研究では、最大圧迫点が左房:50.7%・上行大動脈:16.7%・LVOTを含めると、大動脈側を押している症例が多数だった。LVOT閉塞はROSC不良と関連し、TEEで大動脈弁の開閉・LVOTの開存を確認しながら圧迫位置を調整することで、前方血流を最適化できる可能性がある。
TEEの利点:経胸壁と異なり圧迫を止めずに高画質画像が得られる。リズムチェックの時間短縮。圧迫部位・深さの最適化。胃拡張・肺病変・肥満などによる描出不良の影響を受けにくい。2025年の多施設研究では、TEEにより5.3%にoccult VFが検出され、ECG上VF例と同等の転帰を示した。2021年のシステマティックレビューでは、TEEにより心停止の可逆的原因が41%で同定されたと報告。合併症として、口腔・食道損傷などがありうるが、熟練者による施行では合併症率0.2%程度とされ、安全性は高い。
POCUSによる予後評価(prognostic applications):2017年メタ解析では、POCUSで心活動が確認できない場合のROSC予測におけるnegative likelihood ratioは0.06で、ROSCの可能性は極めて低いとされた。2019年の非外傷・非ショック可能リズム患者のメタ解析では、心静止症例での心活動存在によるROSC予測感度は26%、PEA症例では77%と高く、PEAにおけるPOCUSの予測能が高いことが示唆されている。心活動の存在は入院までの生存に対するオッズ比10.3・退院までの生存に対するオッズ比8.0と、強い関連を示す一方、心活動の定義や術者経験により判定のばらつきがある。
腎臓
AKI
Acute kidney injury in the critically ill: an updated review on pathophysiology and management
最近のバイオマーカーの整理。
AKI予防・治療は今なお「循環動態と体液管理、腎毒性回避」にほぼ限られており、特異的薬物療法は確立していない。この背景には、診断が遅い(Scrベース)、病態生理が複雑で不均一という構造的問題がある。
AKI診断の遅れを補うべく、「損傷」や「細胞ストレス」を捉えるバイオマーカーが多数検討されている。代表例として:NGAL(血中・尿中):主に尿細管障害、KIM-1, LFABP:近位尿細管障害、TIMP-2×IGFBP7:細胞周期停止(cell cycle arrest)=組織損傷前の「ストレス」を反映。これらの損傷マーカーが上昇しているがKDIGO基準を満たさない状況は「subclinical AKI」と呼ばれ、構造的損傷はすでに存在しているがGFR(Scr, 尿量)はまだ保たれている状態を意味し、ハイリスク群の早期介入ターゲットとなりうる。
AKIは原因(心拍出量低下・敗血症・外科手術・薬剤など)、病態(低灌流・炎症・毒性)、経過(短時間で回復 vs 持続)など、あらゆる面で異質な症候群である。
潜在クラス解析(latent class analysis)により、バイオマーカーや臨床指標から予後や治療反応の異なるサブタイプが同定されつつあり、AKI持続時間や回復パターンが、死亡やCKDへの移行に強く関係することが示されている。
尿中CCL14は、重症AKI患者において「持続性AKIステージ3」を高精度で予測する新規バイオマーカーとして紹介される。
ICUで注意すべき腎毒性抗菌薬として、
・バンコマイシン:高トラフ濃度(≥20 μg/mL)でAKI発生率が有意に増加し、AUC/MIC 400を目標とするモニタリングの方が腎毒性が少ない可能性がある。
・Vanco+Pip/Tazo併用:観察研究でAKIリスク増加が繰り返し報告されており、一部では「Scr分泌抑制」のみではなく真のGFR低下を伴うと考えられている。
・アミカシン:ICUでの短期(<3日)使用では顕著な腎毒性を認めなかった小規模研究があり、「感受性結果が出るまでのつなぎ」としての短期高用量投与が議論されている。
・ポリミキシン(特にコリスチン):明らかに腎毒性が強いが、MDR菌に対する最後の砦として使用されることが多く、腎障害はある程度「受け入れざるを得ない」側面がある。
臓器間クロストークとしてのAKI:AKIは心・肺・肝・脳・免疫系に有害な影響を与える「全身疾患」として捉えられ、尿毒素蓄積、体液過剰、炎症メディエーターなどを介し遠隔臓器障害と死亡増加に寄与する。
Hemodynamic management of acute kidney injury
AKIのhemodynamic managementに関する総説。
fluid bolusで尿量が増加する患者は一部にすぎず、多くは心拍出量も尿量も増えない。臨床では「乏尿 → fluid blus」が非常に多く行われるが、RCTでは500 mLボーラスで尿量増加が得られたのは介入群の約1/3にとどまり、対照群(何もせず経過観察)でも少数ながら自然に尿量が増えた患者がいた。さらに、観察研究では輸液で心拍出量が増加した患者のうち約2/3で尿量も増えたのに対し、心拍出量が増えなかった患者では尿量増加は約20%にとどまった。fluid responderの一部が“腎 responder”であり,non-responderにむやみに輸液を入れても腎には効かないのだろう。よって、事前に輸液反応性の評価を行い、可能であれば腎ドップラー(抵抗指数など)で腎灌流の変化をモニタすることが推奨される。
de-escalation期では、うっ血徴候がある輸液反応性がない患者において慎重な除水(利尿薬またはRRTによるUF)が重要となる。明らかなhypervolemia状態・体液貯留(浮腫,肺うっ血など)、静脈うっ血徴候(高CVP,右心不全,VExUS高スコアなど)かつ輸液反応性がなく組織灌流が保たれている場合がひきどき。単に「累積プラスバランスが大きい」だけでは依然として循環血液量が不足している可能性もあり、その場合は除水により腎灌流がむしろ悪化しうる。除水中は血圧・心拍出量などをモニタし、低血圧や低心拍出・乳酸上昇などが出れば止める「Stopping rules」を明確に決めておくことが重要。特にRRTによる機械的除水では高いUF率が低循環血容量・血圧低下を招き、結果として残存腎機能をさらに障害する危険がある。
心拍出量低下を伴う状態(心不全,心臓手術後など)では強心薬を使用することで腎血流・腎酸素供給を増加させるが、GFRやCrなどの腎機能指標の改善は限定的または一貫しない。心腎症候群のRCTメタ解析ではドブタミンとレボシメンダンがGFR改善・Cr低下・AKI傾向減少と関連したが、エビデンスはまだ十分ではない。
ノルアドレナリンは血管収縮薬の第一選択であり、敗血症性ショックの重度低血圧を是正すると尿量とクレアチニンクリアランスが改善する。バソプレシン誘導体は遠位(輸出)細動脈収縮により糸球体濾過を上げうるが,尿細管周囲毛細血管灌流低下のリスクもある。小規模RCTではクレアチニンクリアランス増加、大規模試験ではRRT導入率の低下が報告されている。アンジオテンシンIIはRRT中の敗血症性ショック患者において腎回復を促した可能性があるがデータはまだ限定的。
観察研究ではMAPが約65–70mmHgを下回るとAKIリスクが急激に増加することが報告されている。しかし、敗血症性ショックのRCTでは高MAP(80–85 mmHg) vs 低MAP(60–70 mmHg)で全体として腎アウトカムに大きな差はなく、高MAPに明確な優位性は示されていない。
CVPや腹腔内圧なども考慮した「有効腎灌流圧(MAP−[CVP+腹圧+平均気道内圧])」がAKIの予測に優れるというデータがあり、「一律のMAP目標」ではなく、個別化された腎灌流圧ターゲットを設定すべきである。

Fluid management of acute kidney injury
乏尿に対して安易にボーラス輸液を繰り返す戦略は腎機能を改善させる証拠に乏しく、むしろfluid overloadのリスクを高めKRT導入率を増やしうるとされる。「AKIだからとりあえず輸液」という発想は危険であり、腎生理を踏まえた慎重な判断が必要である。
健常状態では投与した晶質液の75〜90%が2時間以内に排泄されるとされるのに対し、ショックやストレス状態ではわずか5〜10%程度しか排泄されない。その理由として①低MAP、②微小循環障害、③腎機能障害、④神経内分泌ストレス応答の持続などが挙げられ、結果として投与された液体は血管内よりも間質に貯留しやすい。
一般には、循環血液量を補正しつつ心拍出量を増加させれば、腎血流量(RBF)・GFRも改善すると期待される。しかし敗血症性AKIでは、RBFとGFRの相関が乏しく、RBFがすでに高値であるにもかかわらずGFRが低下している病態もありうる。動物モデルでは、乳酸リンゲル+ノルアドレナリンによる早期蘇生によりMAPやRBF、皮質・髄質灌流は改善したが、髄質組織酸素分圧は十分には改善せず、RBF改善が必ずしも組織レベルの酸素化改善を意味しないことが示されている。ヒトのRCTではSLM(舌下微小循環)をベッドサイドで測定し、その情報を用いて輸液・昇圧薬を調整した群と、従来管理群を比較。微小循環情報に基づいて治療方針はしばしば変更されたものの30日死亡率には差がなかった。これは「MAPや乳酸といったマクロ指標を整えるだけでは不十分であり、ミクロ循環を標的とする治療戦略の確立にはさらなる研究が必要である」ことを示唆している。
初期蘇生期を過ぎてからの持続的なプラスバランスは、特にAKI患者で死亡率上昇と明確に関連している。8000人超のAKI患者(RRT不要)を対象にした観察研究では、AKI診断後3日目に輸液バランスがピークとなっており、尿量が少ない一方で利尿薬使用は約10%と少なく、総じてプラスバランスで推移していた。診断4日後の時点でプラスバランスであることが院内死亡のリスク上昇と関連していた。FINNAKIの解析では、AKI患者は非AKI患者よりも多量の輸液を受け尿量は少ない。より少ない輸液とより高い尿量がAKI回復と関連。REVERSE-AKI試験では、AKI患者を対象に「制限的輸液管理」vs「通常ケア」を比較し、72時間後の累積バランスが制限群で有意に低く、副作用も少なかった。一方で、RELIEF試験(腹部大手術患者)では術中・術後輸液を制限的に行った群でAKI発生率がむしろ高かった。重症患者全体に一律に「制限的輸液が良い」とは言えず、患者背景(敗血症か否か、術後か否かなど)や病態に応じた個別化が必要であることが示唆される。
輸液速度も気を遣えるところ。20分程度かけた比較的ゆっくりしたボーラスの方が急速投与に比べて血漿量の拡大が効率的で間質浮腫が少ないとされる。大量の晶質液を急速に投与すると血管内皮グリコカリックスが損傷し、ECMが「水圧で破砕」され、リンパ系の除水能力を超えた間質浮腫が生じやすい。BaSICS試験の事後解析では「999 mL/h(速い) vs 333 mL/h(遅い)」という投与速度による死亡率への影響をCATE(条件付き平均治療効果)解析を用いて評価。計算されたCATEed(死亡絶対リスク減少の分布)に基づき、患者背景ごとに「速い方が良い」「遅い方が良い」と推奨が変わり得ることが示された。計画手術患者、すでに昇圧薬投与中の患者、NIV使用中の患者、若年患者では遅い投与速度が死亡率低下と関連していた。各患者の特徴に応じた「推奨速度」と一致した投与を受けた患者は,一致しなかった患者よりも死亡率が低かった。
Hydrodynamic isotonic fluid delivery(HIFD)は静脈系(腎静脈)から高圧で等張液を注入することで、腎に直接細胞・遺伝子・薬剤を届けたり、AKI後のCKD進展を抑制しようとする新たなコンセプトである。ラットの腎虚血再灌流モデルでは、腎静脈からHIFDを行った群で、腎血行動態の保護・炎症反応の減弱・線維化の抑制が、通常の下大静脈からの輸液に比べて優れていた。さらに5週間後まで炎症浸潤や毛細血管減少、間質線維化が減少し、腎予備能が部分的に温存されることが示された。これはまだ前臨床段階であり,ヒトでの応用には時間を要するが「どこからどのような圧で輸液するか」という観点がAKI後の長期転帰に影響しうるということが示唆され興味深い。
人工呼吸管理中かつ昇圧薬使用下の患者を対象に、約4割が輸液反応性を有していたがうっ血の有無はそれと無関係であった。つまり、輸液反応性があっても静脈うっ血を示す患者が相当数存在することになる。別研究では、KDIGOステージ2–3のAKI患者において、VExUSで高得点であるほど心血管原因入室や心臓外科術後、昇圧薬使用など重症度が高かった。これらのうっ血指標は30日腎イベントやRRT導入を予測しなかった一方、90日死亡率や「昇圧薬から離脱できない日数」と関連していた。これらは「輸液反応性があるかどうか」だけでなく「この患者は追加輸液に耐えられるのか(うっ血が悪化しないか)」を評価することの重要性を示している。
AKI患者では、fluid overload是正のための除水戦略が重要であるが「どの程度の速度で除水するのがよいか」に関するエビデンスは限られている。観察研究ではCVVHDF中のUFネット量が25 mL/kg/日超の群で20 mL/kg/日未満の群よりも1年死亡率が低かったという報告がある。しかし別解析では、UFネット速度が1.75 mL/kg/h超の速い群は、1.01 mL/kg/h未満の遅い群に比べて予後が悪かった。あまりに緩慢な除水ではfluid overloadが是正されず、一方で過度に急速な除水は循環不全・臓器灌流低下を招きうるため、中等度の除水速度を目指す「バランス」が重要である。
Acute kidney injury 2016: diagnosis and diagnostic workup
AKIの原因は大きく3つに分けられるが、ADQIは「functional AKI(hemodynamic AKI)」と「kidney damage(構造的障害)」という軸での評価を推奨している。

尿検査のみかた:

※Perazella 尿沈渣スコア
-
0点
-
顆粒円柱 0個/low power field(LPF)
-
かつ RTEC 0個/high power field(HPF)
-
-
1点(それぞれ 1点ずつ)
-
顆粒円柱:1〜5個/LPF
-
RTEC:1〜5個/HPF
-
-
2点(それぞれ 2点ずつ)
-
顆粒円柱:6個以上/LPF
-
RTEC:6個以上/HPF
-
→ 顆粒円柱と RTEC の点数を足し合わせて 合計0〜4点 となる
スコアが高いほど「急性尿細管障害(ATN/ATI)」の可能性・重症度が高い
Perazella らの元研究では、スコア ≥2 で ATN の診断に対する陽性的中率が非常に高いことが示されている。

Acute kidney injury: a guide to diagnosis and management
表とかフローチャートがまとまっていて見やすい。

RRT
RRTの適応・タイミング・方法・用量・血管アクセス・抗凝固・離脱などについて、SRLF(フランス集中治療学会)とGFRUP(小児集中治療・救急グループ)による2024年コンセンサスカンファレンスで作成されたガイドライン。
① RRT開始の適応とタイミング(Question 1)
明確な生化学的・臨床的「一律の閾値」は存在しない。ただし以下の状況では「緊急RRTを考慮」:
・最適な内科的治療にもかかわらず改善しない高カリウム血症(K⁺ > 6.5 mmol/L)。
・AKIに伴う容量過負荷で肺水腫→中等度〜重度低酸素血症が持続(成人:SpO₂ ≤ 95% on 5L O₂、PaO₂/FiO₂ < 200 mmHg を参考)。
・腎回復の兆しがないまま血中尿素窒素(BUN) > 40 mmol/L(112mg/dL)。
代謝性アシドーシス単独やクレアチニン値単独でRRTは開始すべきでない。KDIGO 3の重症AKIであっても、高K・重度アシドーシス・肺水腫などの緊急適応がなければ、少なくとも72時間はRRTを開始せず経過観察すべき。中毒ではEXTRIPグループの専門家推奨に従うこと。
③ 透析用量・頻度(Question 3)
成人CRRT:処方effluentは最大25 mL/kg/h(濾過+拡散合計)を推奨。高用量(>20–25 mL/kg/h)CRRTは、死亡や透析依存の改善を示さず。
IHDやSLEDを毎日行う「高頻度透析」は、予後改善がなくコスト・環境負荷のみ増加するため推奨されない。VA/NIH試験では、週6回IHD vs 週3回IHDを比較し、60日死亡・腎回復に差なし。IHDのみのサブ解析では、週3回群の方が「透析フリー日数が多く」腎回復が早い可能性が示唆された。よって、IHDを毎日行うことで予後は良くならず、コストと環境負荷だけが増えるため推奨されない。
IHDの固定スケジュール(隔日 vs 必要時)についてはエビデンス不足。
④ RRT処方・調整・モニタリング(Question 4)
頭蓋内圧亢進患者、極端な高BUN患者では、透析不均衡症候群を避けるため、クリアランスの低い方法(CRRTや低用量IHD)を用いるべき。臨床的に血管内容量が不足している場合、除水は開始しない/症状出現時は即停止すべき。
⑤ 血管アクセス(Question 5)
ICUでの一時的透析カテーテルは、主に内頸静脈(右>左)と大腿静脈。感染・血栓リスクは、頸静脈 vs 大腿静脈で大きな差はない。機能不全(血流不良)を避けるには:第1選択:右内頸静脈、第2:大腿静脈、第3:左内頸静脈。鎖骨下静脈は、将来のシャント・長期透析のために温存すべきであり、RRT用一時カテーテルには極力使わない。
⑥ 回路抗凝固(Question 6)
出血リスクが高くない患者のCRRTでは、全身ヘパリンよりも「区域クエン酸抗凝固(RCA)」を第一選択とすべき。RCAは回路寿命を延長し、出血合併症を減少させるが、死亡率は同等。出血リスクが高い患者でも、禁忌がなければ、「抗凝固なし」よりもRCA付きCRRTの方がフィルタ寿命が長く、出血イベントも少ないとのデータあり。肝不全・重篤な肝障害ではクエン酸代謝障害に注意し、総Ca/イオン化Ca比 < 2.5を目標にモニタリング。
⑦ RRT離脱(weaning)(Question 7)
RRT離脱に関する「強いエビデンスを持つ単一指標」は存在しない。ただし、尿量(diuresis)の回復が最も重要な臨床指標である。
IHD離脱:停止翌日の乏尿(<100 mL/8h)が離脱失敗と関連。尿中尿素排泄量(尿中尿素濃度×24時間尿量/体重)の有用性も示唆されるが、まだ検証段階。
CRRT離脱:CRRT停止時の一日尿量、停止後数時間の尿量増加が成功予測因子。フィルタ寿命終了時、緊急適応がなければ、再装着せず「尿量が自律的に増えるかどうか」を見ることが推奨される。CRRTを長く続けると腎回復が遅れる可能性があり、毎日「離脱可能性」を評価し、必要ならIHDへ切り替えて早期離脱を目指すべき。
呼吸器
人工呼吸器
Toward optimal mechanical ventilation of the injured lung: the role of expiratory duration
機械換気はARDS患者にとって生命維持に必須だが,同時にVILIの大きな原因でもある。
VILI回避の鍵は,単に圧力・換気量の振幅を抑えるだけでなく,R/Dに起因するatelectraumaを最小化することである。そのためには,VT・PEEP・PHigh・PLowなどのパラメータに加え,THigh・TLowといった呼吸サイクルの時間構造を明示的に設計する必要がある。特にrecruitableな肺では,呼気時間をR/Dの時間スケールよりも十分短く保つことで,VILIを大きく減らせる可能性がある。したがって,「ARDSにおける最適換気」とは,圧力と容量の“どれくらい”だけでなく,それを“どのような時間配分で”与えるかを含めた最適化問題である。なかなか理解しにくいけど、ARDSにおける「至適人工呼吸」とは、一回換気量やPEEPだけでなく呼気時間(特に短いTLow)を精密に制御して、再開通・虚脱(R/D)に伴う応力集中=VILIホットスポットを最小化する換気であると言えるそう。
VILIは「損傷(injury)」と「修復(repair)」の動的なバランスの結果として理解すべき。多くのARDS患者は,VILIにさらされながらも自前の修復機構によって最終的に生存する。エネルギーの観点からみると,VILIに最も重要なのは「繰り返される再開通・虚脱(recruitment/derecruitment, R/D)」による atelectrauma であり,単純な過伸展(volutrauma)よりも有害となりうる。特に,閉塞した肺単位を毎呼吸ごとにこじ開ける過程が高い局所応力とエネルギー散逸を生む。「損傷を最小化しつつ,内在する修復機構が上回るだけの時間と環境を与える」ような換気戦略が求められる。
R/Dは「圧力だけでなく時間にも依存」する現象である。圧を急に下げても肺単位の虚脱は即時ではなく時間をかけて生じ,同様に再開通にも時間がかかる。この時間依存性を利用して,呼気時間を短く保つことで虚脱を防ぎ得る。もし呼気が十分に短ければ,閉鎖が実際に起こる前に次の吸気が始まり,atelectraumaを回避できる可能性がある。
リクルートメント法についても、理論的には深い吸気で閉鎖領域を開放してコンプライアンスを改善し得るが,あまり高頻度・強度に行えば,むしろ平均組織応力を増やしVILIを助長しうることが指摘されている。
Airway Pressure Release Ventilation(APRV)と,そこから派生した Time-Controlled Adaptive Ventilation(TCAV)というコンセプトが,時間的なパラメータに基づく有望な戦略として提示されている。APRVは PHigh/PLow と THigh/TLow の4つの独立パラメータで規定されるが、特にTLowの設定が重要になる。呼気開始直後のピーク呼気流の75%の時点で呼気を終了(TLowをそこで切る)ことにより、虚脱を起こすほどには肺容量が低下せず、必要な換気量も確保できるようになる。TLowが短くなるほど呼吸周期全体におけるTHighの占める割合が増え,肺は長時間PHighにさらされることで,抵抗性の高い無気肺領域も時間をかけて徐々にrecruitされうる。これにより,開放領域と無気領域の境界部で応力が増幅されるというデメリットが打ち消される可能性がある。
ARDSに対する肺保護戦略としての Airway Pressure Release Ventilation(APRV)、特に Time-Controlled Adaptive Ventilation(TCAV)法を解説している。
APRV/TCAVは、「baby lungを守る低一回換気量戦略」や「一時的なリクルートメント手技」とは異なり、肺を安定化しつつ、徐々に虚脱肺を再開放して均質化することを主な目的としている。
低一回換気量(low VT)、適度なPEEP、腹臥位などがスタンダードだが、多くは「damage control」であり、肺不均一性や反復虚脱・再開放(RACE)の根本的な解消には至っていない。真に肺を守るには、肺を安定化させて虚脱を進行させないこと、さらに徐々に再膨張させて均質な肺に戻すことが必要になる。
高PEEP戦略、リクルートメント、超低VT+高呼吸数、HFOVなどは大規模RCTで有効性が示されず、むしろ害も報告されている。APRVはARDS治療の標準治療には含まれていないが、システマティックレビューでは人工呼吸期間の短縮や死亡率低下の可能性が示されている。ただし、研究デザインの異質性などによりエビデンスの確実性は低い。
急性肺障害ではサーファクタント障害と肺水腫により、肺単位の開閉が「時間依存かつ圧依存」となる。肺は一定の閉鎖圧に達すると0.5秒未満で素早く虚脱し、再開放には開放圧を上回る圧を一定時間維持する必要がある。従って、肺を安定化しリクルートするには、
・十分に長い吸気時間(Thigh)で遅いタイムコンスタントの肺単位を開く
・十分に短い呼気時間(Tlow <0.5秒)で「開いた肺が再虚脱する前に呼気を終える」
という設計が理にかなう。
APRVは高いCPAP(Phigh)相と、短い圧解放(release)相(Plow, Tlow)から成る時間制御型・圧制御換気である。TCAV法では、Phighを長く維持することで徐々に虚脱肺を膨張させる(inflate)+ Tlowを極めて短く設定して、呼気での虚脱を「ブレーキ」する(brake)手法をとる。これを毎呼吸繰り返すことで、肺容量を一方向(リクルート方向)に少しずつ増やし、戻さない。リクルートを積み重ねるようなイメージ。
TCAV法における特徴は、「Tlowの設定を呼気流速波形に基づいて厳密に行う」点である。初回挿管後すぐにAPRVを始める場合は25 cmH₂O程度から開始し、4–5 ml/kg PBW以上の一回換気量を得るように20–30 cmH₂Oの範囲で調整する。胸部X線で平坦化した横隔膜や、release volumeの過大さが見られれば、Phigh過大→過膨張のサインとなりうる。Plowは0 cmH₂Oに設定し、Phighとの圧勾配を最大化して高い呼気ピーク流速を得ることが推奨されている。呼気終末流速(TEF)が呼気ピーク流速(PEF)の75%になるタイミングで呼気を終了するようにTlowを調節し、これにより「時間制御PEEP(TC-PEEP)」を形成して肺を安定化させる。コンプライアンスが悪化し弾性リコイルが強くなると、呼気流はより急峻になり、同じ75%TEFに到達するまでの時間が短くなるため、Tlowも短縮が必要になる(逆に肺回復に伴うコンプライアンス改善ではTlowは延長が必要となる)。
高二酸化炭素血症への懸念が大きくなるが、肺が再開放され拡散面積が増えることで、分時換気量が減少してもPaCO₂は必ずしも悪化しない(肺効率:VCO₂/VEが改善する)。高濃度に圧縮されたCO2が吐き出されるイメージ。
離脱時は、Thighを段階的に延長しつつPhighを漸減し、release頻度を減らして純粋なCPAPへ移行する。自発呼吸が十分であれば、30秒のThighを用いた「stretch test」で離脱可能性を評価し、必要に応じてfast-trackでCPAPへ移行することも可能と述べている。具体的には、Thighを30秒に設定し5〜6分観察→その間の自発呼吸の頻度・リズム・一回換気量を評価→自発呼吸が安定し努力呼吸がなければ、fast-trackで単純CPAPへ移行する。それ以外の患者では、Thighを0.5〜1秒ずつ延長(CPAP割合を増やす)→同時にPhighを段階的に減少→release回数を減らしていき、最終的にはreleaseのないCPAPへ移行するという「時間をかけたweaning」が推奨されている。
注意点として、胸部X線や静肺コンプライアンス、血液ガスのみで「肺が治った」と判断してTlow/Thighを急激に変えないことを強調している。肺は画像・静的指標が改善してもなお、「時間依存・圧依存な挙動」が残存している可能性があるためである。以前のIntensivistでは「圧の下げすぎによる再虚脱は設定変更から数時間後に出現するため、Phigh 低下は2~3 cmH2Oずつ、6~12 時間ごとに行う」という記載も見つかる。
Assessing lung recruitability: does it help with PEEP settings?
リクルートメントの臨床効果は、「開口に必要な圧」と「開いた肺を閉じさせない圧」の関係に依存する。臨床的な「リクルートメント」の有効性は、
・開口に必要な圧(opening pressure)
・閉鎖を防ぐために必要な圧(closing pressure)
の関係に依存する。リクルートメント効果は、PEEPがclosing pressureより十分高く設定されないと時間とともに失われる。よって、PEEP設定は「どれだけリクルート可能な肺があるか(量)」ではなく、新たに開いた肺ユニットが閉じないようにするために必要な圧(closing thresholdを上回る圧)に基づくべきである。
完全に開いた肺(opening pressure 45–60 cmH₂O)を維持するには、概ね PEEP 20–25 cmH₂O が必要とされる。リクルートメントは吸気中に起こる現象であり、圧が徐々に上昇していく中で、異なる肺ユニットがそれぞれの開口閾値を超えた時点で次々に開いていく。圧‐リクルートメントの関係は、古典的な肺の圧‐容量曲線と同様にS字状で表される。多くの肺ユニットは 25–30 cmH₂O 付近の圧で開口するとされ、45cmH₂Oを超えないと開かないユニットは全体の 2–5%程度に過ぎない。
1個の無気肺ユニットを開くには、以下の3つの力に打ち勝つ必要があると説明されている。
①superimposed pressure:肺の下方に位置するユニットほど、上に積み重なった肺組織の重量(肺水腫を含む)により圧迫される。おおよそ10–15 cmH₂O 程度の圧に相当するとされる。
②表面張力(surface forces):肺胞内の液‐気界面における表面張力が、肺胞を閉じようとする力として働く。サーファクタントの変化などを反映し、15–20 cmH₂O 程度の圧が必要とされる。
③chest wall pressure:胸壁を押し広げるための力で、およそ10–15 cmH₂O を要する。
リクルートメントは個々の肺胞だけでなく、周囲の力学的環境に大きく左右される。
開口圧とPEEPは “intensive property”(集中的性質):システムの大きさ(肺ユニット数)に依存しない性質であり、1個の肺ユニットを開くのも、100個を開くのも「必要圧は同じ」である。
一方、リクルータビリティは “extensive property”(広延的性質):病変の重症度、肺サイズ、肺重量に比例し、システムの「量」に依存する。したがって、PEEPの必要水準は「リクルータブルなユニットの数」に依存せず、それぞれのユニットの物理的特性(閉鎖圧など)によって決まる。
リクルートメント評価法(Available methods)にはガス交換指標ベース:酸素化やPEEP/FiO₂テーブル、CTベース:『非含気領域の体積減少』だけをリクルートメントと定義する方法・『無気肺と低含気領域の分布変化』として評価する方法、ガスボリュームベース:圧変化に対して期待される容量変化と実測値を比較し、「期待値を超える容量増加分」をリクルートメントとみなす方法(dual PV curve, R/I ratioなど)などさまざまある。
Assessment of recruitment from CT to the bedside: challenges and future directions
リクルート評価法とその臨床的意味を整理。
opening pressureは、表面張力、胸郭変位、重力による圧が合わさり、おおよそ30〜45 cmH₂Oと推定され、これらの圧では肺ユニットはほぼ最大容量近くまで拡張している。
opening pressure・closing pressureはユニットごとに分布しており、リクルートはP/Vカーブ全体にわたって起こる現象であって「下折点付近の限られた圧域だけで起こる」という古典的イメージは誤り。一部のユニットは60 cmH₂O以上の非常に高い圧でようやく開くことがあり、これは「crowding effect」によるものである。多数の虚脱ユニットが密集していると、それらを押し広げて膨張させるために追加的な圧が必要になるという概念である。
closing pressureについて、一度開いた肺ユニットは、呼気期にそれぞれ固有のclosing pressureで再び虚脱し得る。closing pressureは表面張力を乗り越えるプロセスを必要としないため、opening pressureよりも低い圧域に分布し、多くのユニットではopnening pressureより10〜15 cmH₂Oほど低い。
ARDS肺は以下の肺状態の混合体と考えられる。
・正常に近い「baby lung」:開大圧はほぼ0 cmH₂O
・loose
・sticky:再開大に必要な圧は30〜35 cmH₂Oにも達し、気道内プラトー圧では60 cmH₂Oを超えることすらあり得る
コンソリデーション:事実上リクルート不能
このモデルから、リクルート可能性(開き得るユニットの割合)は肺重量=浮腫の程度に比例し、患者間でリクルート可能性が0〜40%まで大きくばらつくことが説明される。
HUを用いる定量解析では、肺実質を以下の四つのカテゴリーに分類する。
非含気(non-aerated):+100〜−100 HU
低含気(poorly aerated):−101〜−500 HU
正常含気(normally aerated):−501〜−900 HU
過膨張(hyperinflated):−901〜−1000 HU
HU値は「空気=−1000 HU(密度0 g/mL)、水=0 HU(密度1 g/mL)」を基準に、空気と水の混合比を反映するものとして解釈される。したがって、ある領域のHU値から、その領域の空気と液体の比率=肺密度を推定できる。この定量解析の最も重要な帰結として、コンプライアンスやエラスタンスは「肺が硬い」から悪いのではなく、「開いている肺の量が小さい」ことの指標であると理解されるようになった。
ガス法(P/Vカーブ、EELV法、R/I比など)は、期待される容量変化と実測容量差からリクルートを推定するが、リクルートと過膨張を区別できず、あくまで概算に過ぎないとされる。
R/I比はリクルート容量のコンプライアンスを全体コンプライアンスで正規化した指標で、リクルート可能性の高低分類には使われるものの、CTで測った絶対リクルート組織量・ガス量とは相関が乏しいことが最近の研究で示されている。
EITはベッドサイドでの区域別換気評価に有用で、PEEPを変化させた際の区域コンプライアンス変化から虚脱と過膨張を推定し、両者が交差するPEEPを探るアプローチが紹介されるが、測定しているのは体積であり、組織量を直接反映しないという限界がある。
LUSは非含気・低含気・正常含気の割合と良好に相関する。Bouhemadらによる研究では、PEEPによるリクルートをベッドサイドで評価する手段としてLUSが有用とされているが、Chiumelloらは定量CTでの非含気・低含気・正常含気の割合とLUSスコアが相関することを示し、LUSが「肺含気の程度」の評価には有用であると報告している。肺含気の程度を評価するには有用だが、「部分的膨張の増加」と「完全虚脱部の再開大」を区別できないため、CTで定義した「非含気組織の減少としてのリクルート量」とは相関しない。
リクルート測定法同士を比較すると、CT定量が示すリクルート値とガス法が示す値は大きく異なり、ガス法はPEEP 5→15 cmH₂Oの変化でリクルートを過大評価しがち。
現時点で、定量CTによる「真のリクルート量」評価が他の方法と比べて臨床アウトカムを改善するというエビデンスはなく、リクルート評価の主な応用はPEEP設定だが、その是非はリクルート/過膨張/血行動態のバランスに依存する。
open lung戦略は理論上「すべての無気肺領域を開いた状態に保つ」ことでatelectraumaを防ぐことを目指すが、実際に完全開大・維持を行うにはPplat 45〜65 cmH₂O、PEEP約25 cmH₂Oが必要であり、血行動態的に多くの患者で許容できない。その代替として、ある程度の無気肺をあえて残す「closed lung/ permissive atelectasis」アプローチを取りつつ、PEEPと一回換気量を中等度に保ち、反復開閉を最小化することで、肺保護と血行動態のバランスを取る戦略が提案されている。
Recruitment Maneuverは新規入室や悪化時に検討されるが、高PEEPと組み合わせたRCTではアウトカムの悪化が報告され、ガイドラインでもルーチンな実施は推奨されないとされている。Sigh ventilation(一分間に1〜2回の大きな呼吸を付加)は、低一回換気量換気下での肺虚脱を抑制しつつ、PEEPを約10 cmH₂Oの「妥当な範囲」に保つことができる戦略として、著者らは血行動態・圧負荷・肺容量維持の妥協案と評価している。腹臥位はRecruitment Maneuverというより肺内圧・換気分布の再配置であり、背側開大と引き換えに腹側虚脱が増えることもあるが、全体としてエラスタンスを減少させ、同じEELV・経肺圧をより低い気道圧で達成しうるため、機械的パワーの低減と血行動態改善につながる。
どのリクルート評価法も決定的に優れているとは言えず、それぞれが圧関連変化の異なる側面を捉えているため、CT、呼吸力学、EIT、LUS、血行動態などを総合した個別化アプローチが必要であり、「すべてのリクルート可能領域を必ずしもリクルートすべきではない(not all recruiters should be recruited)」。
Respiratory Mechanics: Revisiting the Appraisement of Lung Recruitment
呼吸力学に基づく方法によるリクルータビリティの評価に関する総説。
リクルータビリティの評価方法はざっくり2グループに分類される。
(1) 形態学的な方法(「見て判断する」系)
(2) 呼吸力学に基づく方法
「肺にどれくらい空気が入り、圧と容量の関係がどうなっているか」を見て、
リクルートされた量を“推定”するやり方であり、P–Vカーブ(圧−容量曲線)を使う方法やEELV+コンプライアンスを使う方法がある。
これらの呼吸力学に基づく方法はベッドサイドで使用できて有用なのだが、注意したいポイントがある。
①呼吸力学だけでは「全体の平均」しか見えない
P-Vカーブやコンプライアンスなどは、肺全体の平均的な挙動しかわからない。しかしARDSの肺は「部分的に開いている」「部分的につぶれている」と不均一である。どこが開いて、どこが過膨張しているかまではわからない。本当はCTやEITのような「場所が見える道具」と組み合わせたい。
②計算される「recruited volume」は純粋ではない
P–VカーブやEELVを使って計算した「リクルート量」は、本当のリクルート領域・すでに開いている肺の過膨張・サーファクタント・粘弾性の変化などが全部混ざっている可能性が高い。「数字=純粋なリクルート量」ではないので、過信してはならない。
③それでも「ベッドサイドで使える実用的なツール」ではある
呼吸力学ベースの評価は完璧ではないし、理論的な限界も多い。それでも、ベッドサイドで簡便に測れるのは実用的である。「この患者はPEEPを上げたとき、ある程度はリクルートしそうか?」のヒントになる。将来は、VILIの指標(strain、mechanical powerなど)、EITやCTによる区域的情報と組み合わせて使う方向に進むべきだ、としている。
神経
鎮痛・鎮静
Sedation and Noninvasive Positive Pressure Ventilation-Where are We now? A Narrative Review
NIVの失敗率はおよそ5〜60%と幅広く、即時(開始〜1時間)、早期(1〜48時間)、後期(48時間以降)の三つのタイミングに分類され、それぞれでリスク因子が異なるが、多くは本質的には修正不可能な因子である。この中で唯一本質的に修正可能と考えられるのが「NIV不耐容」であり、マスクの不快感や高い圧負荷やリークや不眠などを背景として、痛み、焦燥、不安、せん妄、興奮、患者と人工呼吸器の非同調といった形で表出する。
NIV不耐容への第一選択は非薬物的介入。
1)患者への丁寧な説明と共感的コミュニケーション
2)マスクやヘルメットなどインターフェースの最適化
3)トリガー感度やサイクル条件や圧設定や加湿など人工呼吸器設定の調整
を通じて快適性と同期性を高めることが推奨される。
それでも不耐容が強く、挿管へ移行するかNIV継続を試みるかの瀬戸際となる場合には鎮静薬投与が選択肢となる。欧州と北米の医師に対する調査では、「NIV中に鎮静薬を用いる」と回答したのはおよそ三分の一程度にとどまったそう、意外と少ない印象。使用される薬剤としては、ベンゾジアゼピン単剤、オピオイド単剤が多く、プロポフォールやデクスメデトミジンは比較的少数であった。投与方法としてはボーラス投与が主であり、持続投与はあまり行われていなかった。
デクスメデトミジンはNIV中の鎮静薬として最もエビデンスが蓄積しており、メタ解析では挿管リスクやせん妄やICU在室日数を減少させうる可能性が示唆されている一方で、徐脈や低血圧の増加も報告されており、研究規模やバイアスの問題から結論はまだ確定的ではない。
ケタミン、プロポフォール、ベンゾジアゼピン、抗精神病薬、オピオイドなど他の鎮静薬や鎮痛薬のNIV中使用に関するエビデンスは、主として小規模観察研究や少数のランダム化比較試験にとどまり、安全性と有効性について明確な推奨を出せる段階にはない。個人的には、ケタミンは悪くないときもある。観察研究や実態調査では、一定割合のNIV患者にケタミンが使用されているが、NIV不耐容を主要アウトカムとした大規模試験は存在しない。生理学的には魅力的な選択肢であるものの、現時点では「有望だがデータ不足」という位置づけに留まっている。
現行の主要な鎮静関連ガイドラインは、NIV中の鎮静について具体的な推奨をほとんど示しておらず、インドのNIVガイドラインのみが「非薬物的介入が失敗した場合には鎮静薬を検討してもよい」と慎重なトーンで言及している程度である。
A Review of Bispectral Index Utility in Neurocritical Care Patients
BISの活用方法に関する総説。
全身麻酔は導入・維持・覚醒の3段階に分かれ、BISは各フェーズで麻酔深度評価に役立つとされる。特に維持期ではBIS 40〜60を保つことで、麻酔薬・オピオイド使用量を減少・覚醒およびPACU滞在の時間短縮が示されている。
ICUでは、過鎮静は人工呼吸期間延長・ICU滞在延長・循環抑制などを、鎮静不足は疼痛、不穏、自己抜管、循環変動などを招く。したがって、鎮静深度の適切な評価は極めて重要である。
BISは、適切な鎮静・鎮痛を維持しながら、不要な鎮静薬投与を減らし、ICUでの疼痛イベント・鎮静薬コスト・総ICUコストを削減し得ると報告する研究がある。一方で、BISとSAS/RSSとの相関が弱いとする研究もあり、特に雑多な混合ICU集団では、BIS単独での「適切鎮静レベル」を決めるのは難しいとされる。
てんかん発作・RSEについて、発作時のEEG周波数特性に応じて、BIS値は上昇・下降いずれも起こり得るが、BIS波形や値の変化が「発作の発生」を示唆するサインになり得る。NMB下では臨床的に痙攣を確認しにくいため、BISの変動が発作の手がかりとなりうる。RSEにおいて、BIS ≈30 がバーストサプレッションの検出に非常に高い感度(99%)・特異度(98%)を示したとする研究があり、バー ストサプレッション療法の指標として有用とされる。ただし、局在性のてんかん活動(regional epileptic activity)はBISでは検出困難であり、連続EEGモニタリングを代替できるわけではない。
ケタミン使用時のBISの解釈には少し注意が必要。①ケタミンは、BISアルゴリズムが前提としている「麻酔深度」とは異なる脳活動パターンを生じうる薬剤であり、その結果、BIS値が実際の鎮静・鎮痛の深さを反映しないことがある。②ケタミンを含む鎮静プロトコル(特に意識下鎮静)で「BIS値だけ」を見ていると、実際より浅く見えたり、逆に深く見えたりする可能性があるため、臨床所見・バイタル・患者の反応などと必ず組み合わせて判断するべきである。③ICUでケタミンを使う場面でも、BISを“過信しない”ことが重要。
アルコール使用障害
Diagnosis and management of emergency department patients with alcohol withdrawal syndrome
飲酒中止後6時間程度から離脱症状が出現し(意識は保たれた幻覚主体の「アルコール離脱幻覚症」),12〜36時間で全般強直間代痙攣,24〜72時間でせん妄と自律神経嵐を特徴とするdelirium tremensがピークになるという時間軸が重要。
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中止後6〜12時間:頭痛,不安,不眠,悪心・嘔吐,振戦,発汗,頻脈,血圧上昇など比較的軽症の自律神経症状が主体。
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12〜36時間:痙攣がピーク。多くは短時間・孤発性で,長いpostictal期を伴わない。
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36時間〜1週間:一部の患者で幻覚,見当識障害,発熱,重度の自律神経不安定を伴うDTに進展する。
AWS発症リスクとして,過去の離脱歴(特に痙攣・せん妄)が最重要であり,入院時アルコール濃度高値や代謝異常・血小板減少も関連するとされる。
DSM-5-TRでは,自律神経亢進,振戦,不眠,悪心・嘔吐,幻覚,精神運動興奮,不安,痙攣のうち2項目以上が,アルコール中止・減量後に出現することでAWSと診断される。
重症度評価にはCIWA-Arが最も一般的で,CIWA <10 軽症,10–18 中等症,≥19 重症とされ,治療のトリガーや反応評価に用いられる。ただし挿管中や強い鎮静中には不適である。
治療の柱はベンゾジアゼピンによるGABA作動薬治療であり,CIWA-Ar等に基づく「症状トリガー投与(symptom-triggered)」が,固定スケジュール投与より総投与量・在院日数を減らすとされる。
ジアゼパム/クロルジアゼポキシド(長時間作用),ロラゼパム,ミダゾラムなど薬剤ごとの特徴と投与経路を踏まえた選択が推奨され,必要なら漸増投与で「眠いが簡単な刺激で覚醒する」程度まで前向きに鎮静する。
フェノバルビタールは再評価されている選択肢で,GABAA直接活性化+グルタミン酸抑制という二重機序を持ち,単剤またはベンゾジアゼピン併用で入院率・再来率を減らす可能性があり,ガイドラインでも合理的オプションとされる。10 mg/kg IVのローディング後,130–260 mgを30分ごとに追加し最大24時間で約1 gまでというプロトコルが例示され,観察研究や小規模RCTではベンゾ単独と比較してICU入室率・再来率の減少が報告される。長時間半減期(約120時間)により自然なtaperingが得られる一方,治療域が狭く高用量では呼吸抑制のリスクがあるため,モニタリング体制の整った環境で用いるべきとされる。
ケタミン(NMDA拮抗薬),デクスメデトミジン(α2作動薬),ガバペンチン,バクロフェン,Mgなど多数の薬剤が検討されているが,いずれもエビデンスは限定的で,「難治例への補助」という位置づけにとどまる。
重症例では挿管・人工呼吸管理が必要となり,その際はプロポフォールを中心としつつ,RASS 0〜−3程度を目標に症状トリガーで鎮静を調整することが推奨される。
末期肝障害では肝性脳症との鑑別が重要であり,活性代謝物を持たないロラゼパムなどを優先すべきとされる。妊婦ではAWS自体の母児リスクが大きく,基本的に入院管理とし,短期的なベンゾ/バルビツレート使用の利益がリスクを上回るとされる。
CIWA-Ar ≥19 や頻回・大量の鎮静薬を要する患者は入院(とくにICU)適応であり,CIWA <10かつ症状コントロール良好,バイタル安定,安全なフォロー体制があれば外来・detoxification referralなんてもあるらしい。
過去に重症AWSを起こした患者や,急性内科・外科疾患で入院しアルコールを強制的に中止せざるを得ない患者では,事前のベンゾあるいはフェノバルビタール投与によるAWS予防が検討されている。しかし高品質な前向き試験は乏しく、「最も予測力の高い指標は過去のAWS歴であり,個々のリスクと鎮静薬による譫妄リスクのバランスを見て慎重に判断すべきと考えられている。
熱傷
軽度〜中等度の熱傷患者に対する救急外来(ED)での初期対応について、イタリアの専門家6名による Nominal Group Technique(NGT)を用いたエキスパートコンセンサス文書。重症熱傷やICUレベルの詳細プロトコルではなく、一般の救急外来でよく遭遇する軽〜中等度熱傷の初期診療フローを整理することが目的。
救急外来到着後の初期管理(ED phase)では、「気道管理 → 循環安定化(輸液)→ 低体温予防 → 特殊熱傷(化学熱傷:乾いた粉末の除去→長時間の流水洗浄20-30分間、電撃症、タール熱傷、凍傷)への個別対応」という順で優先度を決めて対応する。
輸液には主にRinger乳酸液または生理食塩水を用いる。Parkland式(4 mL/kg/%TBSA)が最も一般的だが、Modified Brooke(2 mL/kg/%TBSA)も使用されており、これら2つの式が「初期蘇生量の目安の上限・下限」として位置づけられている。計算式が煩雑なら成人では、Ringer乳酸液または生理食塩水を500 mL/時程度から開始しておけばよい。
なお、TBSA計算では、Ⅱ度・Ⅲ度のみをカウントし、Ⅰ度は除外すること。TBSAを過大評価すると輸液過量(fluid creep)→浮腫悪化・コンパートメント症候群を招くため注意。
四肢全周性熱傷には注意で、末梢循環(脈拍・毛細血管再充満・感覚など)を評価し、虚血兆候があればescharotomyをERでも行うべし。
熱傷創は時間とともに滲出量・感染リスク・肉芽形成の状態が変化するため、創のステージに応じてドレッシングを選択する。
初期(滲出が多い時期)の清潔で浅い熱傷では、ソフラチュールあたりで軽いガーゼ保護。中期以降(滲出が少なくなってきた段階)では、抗菌・治癒促進成分を含むクリームを使用可能。ハイドロコロイド/ポリウレタン・フィルム(デュオアクティブとかテガダームとか)は、湿潤環境保持、感染予防、疼痛軽減、自然な痂皮の剥離促進に有用で、3〜7日間の留置が可能であるため、特に小児でドレッシング回数を減らし得る。治癒・瘢痕管理では、浅い真皮熱傷であれば概ね2週間以内に瘢痕なく治癒(restitutio ad integrum)することを説明。2〜3週間で治癒しない場合は外科的処置(植皮など)を検討。6〜12か月間の光防御(サンスクリーン・衣服)が推奨される。
破傷風予防は熱傷管理の一部と位置づけられている。
疼痛管理として、
・軽〜中等度の痛み:アセトアミノフェン ± NSAIDs(イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセンなど)
・中等度の痛み:弱オピオイド(コデイン+アセトアミノフェン、トラマドール)を追加。
・強い痛み・処置時疼痛:モルヒネ・フェンタニル・オキシコドン等の強オピオイド
・救急・プレホスピタルでは、ケタミンとの相性がよく、静注ボーラス:0.1 mg/kg(必要に応じ最大0.35 mg/kg)、持続静注:0.1〜0.25 mg/kg/h、小児では0.1–0.3 mg/kg IV、または0.5 mg/kgの経鼻投与も選択肢になる。
(PDF) Management of acute-phase burn patients in emergency department
中等度〜重症熱傷では、毛細血管からの血漿漏出による著明な浮腫と循環血液量減少により、組織灌流が低下し、分布異常性ショックを来す。さらに、熱傷後24〜48時間では、IL-6やTNFなどのサイトカインや酸化ストレスにより心機能が抑制され、低心拍出・血圧低下を助長する。
皮膚バリアの破綻と壊死組織は感染の温床となり、免疫抑制と相まって重篤な感染症・敗血症の主因となる。早期(~数日)はグラム陽性菌、数日以降は緑膿菌やクレブシエラなどグラム陰性菌のリスクが高い。
体表面積(TBSA)の評価にはLund-Browderや9の法則を用い、輸液量はParkland formula(成人2 mL×体重×II–III度熱傷%、小児3 mL/kg、電撃傷4 mL/kg)を基本とし、尿量を目標として調整する。計算した輸液量の半量を最初の8時間、残り半量を続く16時間で投与する。TBSA 15〜20%を超える熱傷では、適切な輸液が行われなければ低血圧・ショックに陥り、熱傷後2時間以内に輸液が開始されないと死亡率が上昇することに留意してなるべく早めの輸液を心掛ける。
晶質液大量投与にもかかわらず乏尿が続く場合は、腹部・四肢コンパートメント症候群など過剰蘇生(fluid creep)・合併症のリスクが高く、熱傷センターとの協議やアルブミン投与などを検討する。
熱傷創の洗浄・デブリードマン・水疱の扱い・ドレッシングは、疼痛を増強し得るため、多角的鎮痛(オピオイド、NSAIDs、鎮静、非薬物療法など)による痛みのコントロールが重要。
検査では、血液ガス(CO中毒評価のためのCOHb)、電解質・アルブミン・腎機能、筋壊死(CK、ミオグロビン尿)、溶血の評価を行い、必要に応じてX線・CTを追加する。
化学熱傷では、乾いた粉末の除去→長時間の流水洗浄(30〜60分)が推奨される。
破れた水疱は基本的に除去するが、手掌・足底などの小水疱は例外的に残すこともある。破れていない水疱は、局所抗菌薬を塗布しつつ経過を見ることができる。関節周囲や3cm以上の大きな水疱は開放し、roofを可能な限り温存することが推奨されている。
早期から熱傷専門施設と直接連絡し、写真・バイタル・輸液量・尿量などを共有することが、搬送先選定と予後改善に不可欠である。

Outpatient Burn Care: Prevention and Treatment
図や表が豊富でわかりやすい総説。
熱傷は深さ(superficial / partial-thickness / full-thickness)と総体表面積(TBSA)が重症度・紹介の判断に核心であり、American Burn Association のバーンセンター紹介基準(顔・手・足・関節・会陰、>10%TBSA、III度など)を忘れないこと。
American Burn Associationの深達度分類は以下。
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Superficial(I度):表皮のみ。紅斑・乾燥・圧迫で退色し、水疱なし。3〜6日で治癒。
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Partial-thickness(II度)
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Superficial:表皮破壊+浅い真皮損傷。湿潤・滲出性で、水疱形成・強い疼痛・圧迫で退色。通常3週間以内に治癒。
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Deep:網状真皮まで達し、乾燥傾向、退色しない、疼痛はやや弱い。3週間以上の治癒期間を要し、瘢痕化しやすい。早期から外科的切除・植皮を検討。
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Full-thickness(III度):真皮全層〜皮下脂肪に及び、白色・蝋様・乾燥・革様。神経終末の障害により疼痛は減弱。原則として外科介入と植皮が必要。
初期処置のキーポイントは以下。
・衣類・装飾品を早期に除去(特に化学熱傷ではすべて汚染とみなす)
・約8〜25℃の流水で20分以上冷却すると、深達度・植皮率・治癒時間を改善し得る(できれば30分以内、最大3時間以内に開始することが有効とするエビデンス)。
・水道水洗浄で感染率は上がらない。氷は血管収縮と組織障害のため禁忌。
水疱処置は論争があるが、>6 mm、関節部、自然破裂が見込まれるものはデブリードマン(あるいは穿刺)を推奨(上のreviewとはやや異なる内容)。「水疱の屋根を除去(deroof)」と「穿刺(aspiration)」で疼痛・治癒に大差なし。
14日以上の治癒遷延が予測される熱傷は肥厚性瘢痕リスクが高いため、専門医紹介が望ましい。新しい皮膚は2年間の日光曝露を避け、SPF50以上の日焼け止め使用を推奨。
再上皮化後の痒み(pruritus)は保湿・冷罨法・オートミール入浴、薬物では抗ヒスタミン(cetirizineがdiphenhydramineより有効)、gabapentinが有用。
小児熱傷の約5.8%は虐待関連。特に足底・臀部・後面の脚・手の熱傷、現場状況と合わない説明、他の外傷の併存は虐待を疑う所見。
American Burn Association Clinical Practice Guidelines on Burn Shock Resuscitation
成人で20%以上のTBSA熱傷を有する患者の受傷後48時間までの急性期輸液(burn shock resuscitation)に関するガイドライン。
「burn shock」は≥20%TBSA熱傷後の臓器・組織低灌流状態と定義される。
アルブミン:特に広範囲熱傷患者で、総輸液量を減らし、尿量を改善する目的でヒトアルブミン製剤の使用を考慮すべきと推奨。投与の時期について、早期 vs 後期の優劣については推奨できるほどのエビデンスがない。
初期輸液量の式:4 mL/kg/%TBSAではなく、2 mL/kg/%TBSAで開始することを推奨し、輸液量の増大(fluid creep)を抑える。
圧モニタリング:腹腔内圧(IAP)と眼圧(IOP)の選択的モニタリングを推奨(ただし routine ではなくハイリスク例に限定)。実測あるいは予測24 h輸液量が 6 mL/kg/%TBSA または 250 mL/kgに近づく場合、Massive burn、深部眼周囲熱傷や明らかな眼球突出などがある場合など。
コンピュータ支援(CDSS):輸液調整にCDSSを用いることで輸液量を減らせる可能性があり、弱い推奨。
経肺熱希釈由来の指標(TPTD):TPTDによる指標をburn shock resuscitationの指標として用いることは推奨しない。
以下の介入については、エビデンス不足のため推奨を行えない:
高用量ビタミンC(66 mg/kg/h):高用量ビタミンCの有効性・安全性は決定的ではなく、AKIリスクなどの懸念もあるため、推奨はできない。
新鮮凍結血漿(FFP):利点を示唆するデータはあるものの、安全性とネットベネフィットを十分に評価できるだけのエビデンスが不足している。
早期の持続的腎代替療法(CRRT)
昇圧薬(ノルアドレナリン vs バソプレシン)
※ビタミンCは日本のガイドラインでは、「初期輸液実施時に高用量アスコルビン酸を併用して投与することを弱く推奨する(エビデンスレベルⅡ、推奨度B)」という推奨がされている。「受傷後2時間以内に入院した30%TBSA以上の重症熱傷患者に対して、最初の24時間 66 mg/kg/hr で持続投与」というのがレジメン。
輸液蘇生は Parkland式 2 mL/kg/%TBSA を基本とし、尿量0.5–1 mL/kg/hを目標に調整する。過少では急性腎障害、過剰ではARDS・腹腔内コンパートメント症候群などの「fluid creep」を招くため、アルブミン導入やIAP測定、CDSSなどで個別最適化する。ABAガイドラインでは、循環動態不安定な症例に対して 24時間以内にアルブミンを導入しうるが、最初の12時間の早期投与は肺水腫リスクから推奨されないとされている。不十分な輸液 → 1–2日で急性腎不全、過剰輸液 → 24時間以内に肺水腫・ARDS・腹腔内コンパートメント症候群とされ、過少・過多のどちらも致命的。高用量ビタミンCは利尿促進と輸液量減少に有望だが、浸透圧利尿・脱水・シュウ酸腎症の懸念がありエビデンスは不十分。
疼痛管理は アセトアミノフェン+NSAIDs+ガバペン類+オピオイド のマルチモーダルが推奨され、処置時にはIVオピオイドやケタミン・リドカイン持続、局所・区域麻酔も選択肢となる。オピオイドは必要最小量だが、熱傷患者では一般より高用量がしばしば必要。
せん妄・不穏にはまず原因検索のうえ、ハロペリドールやオランザピンなどの抗精神病薬、ICUでは デクスメデトミジン が有用であり、ベンゾジアゼピンは高齢者では慎重投与。メラトニンと睡眠衛生など非薬物療法も推奨。
栄養管理では、広範熱傷で著明な高代謝・高分解状態となるため、早期経腸栄養(4–6時間以内) と高エネルギー・高蛋白(1.5–2 g/kg/day)投与が重要。プレアルブミンとCRPを週2回程度モニターし、ビタミンC(こちらは"大量"というわけではないのだろう)・亜鉛・マルチビタミンなどを補充する。グルタミン補充は初期には有望視されたが、RCTで有効性が否定されていると指摘。
感染症は死亡原因のトップ。創部は4日目までは概ね無菌だが、5–7日目から細菌・真菌がコロナイズされる。最初の1週はグラム陽性菌(Staph aureus, group A strep など)による蜂窩織炎が多く、その後数週でPseudomonas, Acinetobacter などMDR GNR や真菌が増える。創の悪臭でPseudomonas、耐性が多くfomitesで拡がりやすい点で Acinetobacter を疑う。これらでは厳格な接触予防策が必須。真菌血症は中心静脈カテーテル、糖尿病、TPNなどでリスク増大し、遅発性で致死率が高い。
手術前評価では、25%以上のTBSAでは輸液後の循環安定化を待ちつつ、心肺疾患や高齢などのリスク評価(RCRI, METs, バイオマーカー)を行い、十分な血液製剤・動脈ライン・CVラインを準備する。
貧血は溶血・炎症性貧血・手術・採血など多因子性で、制限的輸血戦略(Hb 7–8 g/dL前後) でもアウトカムは非劣性とされる。IV鉄の有用性も示唆されている。
心理面では、急性期のせん妄・短期精神病から、回復期のうつ・不安・PTSD、退院後のボディイメージや復職問題まで、長期にわたり支援が必要であり、早期からの精神科・臨床心理士介入と家族支援、ピアサポートが重要。
外科的管理では、24–72時間以内の早期デブリードマンと、自己植皮(分層植皮)を中心とした創閉鎖が基本。近年は Integra, NovoSorb, Recell などの 組織工学的皮膚代替物 やハイドロジェル・シリコンシート・スマートドレッシングなどの先進被覆材が発展している。
めまい
残存めまい(RD)とは、耳石置換法により典型的な頭位性回転性めまいと眼振が消失した後も、ふらつき・浮遊感・不安定感などの非特異的めまいが持続する状態と定義される。
頻度は報告により31〜61%と幅があるが、高齢者ではより多いとされる。
通常は数日〜数週間で改善することが多いが、その間の生活の質低下・活動制限・転倒不安などの影響は大きい。
病態についての仮説はさまざまあるようだが、私自身は全く理解できない。
RDの治療戦略は表2にまとまっている。
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CRMができない患者:前庭リハビリ、ベタヒスチン
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高齢者:ビタミンD補充(欠乏例)、ベタヒスチン、前庭リハ、血管危険因子の管理、綿密なフォロー
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不安・抑うつの強い患者:説明とカウンセリング
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ビタミンD欠乏患者:ビタミンD補充 ± その他の管理
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メニエール病併存例:ベタヒスチンの継続的使用