りんごの街の救急医

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Real ER Round No.12:血行動態が破綻間近のAF with RVRに強くなろう!

救急外来でエンカウントしたくない病態トップ10を挙げるとすれば、

AF tachycardia(AF with Rapid Ventricular Response)はかなり上位に食い込んでくるのではないでしょうか?

ほかの不整脈と同じような「不安定ならすぐに除細動!」といった単純な対応ではうまくいきません。

そして、入れてはいけないけどよく入れられている薬剤のせいで循環を破綻に追い込んでしまうこともあるかもしれません。

「タキってるからワソラン!」は絶対ダメです。

 

やるべきこととやってはいけないことを区別して見ていきましょう。

 

 

 

いつでも血行動態の評価から!

頻脈を見たら、いつでも血行動態の評価を行いましょう。

簡単な魔法の言葉として「いしきしんぱい」があります。

www.igaku-shoin.co.jp

 

これに該当する場合には、血行動態が不安定だと判断してマネジメントしましょう。

 

 

ここからはAF with RVRに遭遇したときにやるべきことを書いていきます。

 

 

やるべきこと①:一次性 vs 二次性AFの判断をすること

AF with RVRの診療が難しい理由として、不安定だからといってすぐに除細動に走ればよいというシンプルな作戦が通用しないことにあります。

 

除細動の効果が発揮されるシーンは、

「新規発症のAF」が「不安定性の原因になっている」ときです。

 

新規発症のAFに関して、、、

 

たとえば永続性AFの患者には除細動の効果はほぼありません。

 

そして、一次性(明らかな原因のない特発性のもの)のAFの場合、

それが不安定性の原因となることはほとんどありません。

多くは安定していて、「どうやって頻脈を抑えて帰そうかな~」とのんきに構えていることがほとんどです。

もしも一次性AFで不安定な場合、これが初手:除細動になりますがERではほとんど遭遇したことはありません。

 

注意点として、AF + WPW症候群を疑うときには初手:除細動を考えます。

HR>180bpmといった高度な頻脈、拍動ごとにQRS波形が変わる、wide QRSになりやすいといった特徴があります。

 

脱線しました。

 

ERにおいては、AF with RVRがあって血行動態の不安定性があるときには、

二次性AF(何らかの原因により誘発されたもの)があると考えた方がよいでしょう。

コチラの方が圧倒的に多く遭遇します。

 

特に二次性AFを示唆するのは以下のような場合です。

・明らかな原因がありそう

(発熱、呼吸困難、疼痛などがある→敗血症、肺塞栓、ショックなどの存在)

・既知の慢性的な心房細動がある

(過去の心電図での指摘、DOAC内服中、ERに電気ショック目的の受診歴がないなど)

・心拍数が高すぎない(HR<150bpm)

 

こうしたケースでは、AFが不安定性の原因となっていることはほとんどありません。

むしろ、頻脈になっているのは心臓が必死に代償しようとしている結果です。

そのため、この頻脈を無理やり押さえつけたり(rate control)、除細動したり(rhythm control)すると死亡率を高める結果となることが知られています。

( Ann Emerg Med. 2015 May;65(5):511-522.e2. )

 

ワソランなんてもってのほか!

あいつは陰性変力作用があるため、血行動態をさらなる破綻に追い込みます。

ヘルベッサーはより陰性変力作用が弱いとはされていますが、でもだめです。

血行動態が不安定なときの初手:rate controlは基本やめておきましょう。

 

一次的に除細動が成功したとしても、どうせすぐにAFに戻りますし。

 

まとめると、、、

・ERで遭遇する不安定なAF with RVRでは、二次性 > 一次性AFを考える

・二次性AFの場合には、rate controlやrhythm controlは逆効果

 

やるべきこと②:二次性AFなら根本原因を叩け

二次性AFの場合には、rate or rhythm controlより優先すべきものがあります。

 

それが根本原因への介入です。これなしには診療が進みません。

これを最終目標(ラスボス)とすると、四天王として対応すべきこともあります。

 

ラスボス:根本原因の検索

「PIRATES」を探して叩きましょう!

P – Pulmonary embolism(肺塞栓症)

I – Ischemic heart disease(虚血), Inflammation (心筋炎),

  Idiopathic/iatrogenic(特発性/医原性)

R – Rheumatic heart disease (弁膜症…MR/MS)

A – Alcohol (holiday heart syndrome)(アルコール), Anemia(貧血),

      Atrial myxoma(粘液腫)

T – Thyroid disorder (甲状腺クリーゼ),

      Toxins(違法薬物/カフェイン/タバコ/アルコールなど)

E – Electrolyte abnormalities(電解質異常),

      exacerbation (of CHF)(慢性心不全急性増悪)

S – Sepsis(敗血症)

 

四天王①:volume statusの安定化

volume statusを確認しましょう。

多すぎても少なすぎてもAF with RVRが誘発されます。

 

頻脈というと反射的に輸液を入れたくなりますが、

体液過剰状態であれば、利尿薬が治療になります。

心房拡張が頻脈を誘発するためです。

 

逆にhypovolemiaのときにはしっかり輸液が必要です。

 

なお、低血圧があるときには血管収縮薬の投与を検討しましょう。

原則的にはノルアドレナリンが第一選択ではありますが、

β受容体刺激作用のないバソプレシンも良い適応だと思います。

 

四天王②:疼痛や苦痛、離脱への介入

疼痛や苦痛を放置すると交感神経刺激が過剰に緊張することとなり、

AF with RVRはどんどん悪化します。

そのため、疼痛や苦痛をスルーせずに介入しましょう。

 

また、アルコールやベンゾ系などの離脱を疑う場合には、そちらの治療も行います。

 

四天王③:電解質異常の治療

低カリウム血症と低マグネシウム血症は必ずチェックして治療します。

 

特にマグネシウムについては経験的投与をしてしまってよいです。

(Acad Emerg Med. 2019 Feb;26(2):183–91. )

 

マグネシウムをただの電解質と思うことなかれ。

実はrate controlやrhythm controlにまで有効な薬剤なんですよ。

 

Mg 4g(硫酸マグネシウム20mlに2.46g含有)を点滴静注しておきましょう。

 

四天王④:呼吸の補助

低酸素血症や呼吸困難(苦痛ですね)が誘発因子になっていることもあります。

特に呼吸不全がある場合には、すぐに呼吸療法を始めましょう。

 

心不全やCOPDならNPPV

肺炎が疑われるならHFNC くらいが目安です。

 

 

ERでの初期対応はおおよそここまでくらいでいいと思います。

あとはしっかりモニタリングできる環境で立て直しましょう。

 

これ以上はER診療の範疇を超えますが、

ここまでやって安定化せず、高度な頻脈がある場合には(目安HR>150bpm)

rate control または rhythm controlをおこなうこともあります。

 

ここからはやるべきことではなく、

「やってはいけないこと」をみていきましょう。

 

やってはいけないこと①:対応の初手として除細動を選択する

マニュアルに書かれている「不安定なら除細動を考慮する」は、

ER診療においてはあまりお目にかかることができないことは説明済みです。

 

理由として、

ERで遭遇する不安定なAF with RVRは圧倒的に二次性AFが多いこと

が挙げられます。

 

この場合には初手:除細動をすると、

一瞬だけ洞調律に復帰して、すぐにまたAFに戻るというムダ行動になることが多いです。

場合によっては有害事象を増やします。

 

そのため、やるとしたら、それなりの準備をしましょう。

 

その1つとして、マグネシウムを投与しておくこと。

「やっておくべきこと」のなかで説明しているとおり、すでにやっているかもしれませんが、やっていない場合にはぜひ投与しておきましょう。

 

実は、アミオダロンに匹敵あるいはそれ以上の除細動効果が示唆されており、場合によっては電気ショックが不要になることもあり得ます。

(Crit Care Med. 1995 Nov;23(11):1816–24. )

 

そうでなくとも電気ショックの効果を高める効果もあります。

 

また、アミオダロンも併用しておくと、除細動後の洞調律維持率が上がる可能性もあります。

(Crit Care Med. 2003 Feb;31(2):401–5. )

 

これらの前処置をしておきましょう。

 

やってはいけないこと②:rate controlとして初手ワソラン!

もうこれは絶対にやらないでほしいです。

これまでに不安定(または心機能低下例)な症例に対してワソランが投与されて、

ショック以上の状態になった患者を対応したことは片手には収まりません。

 

不安定なときにはやめておきましょう。

また、安定していると判断したとしても心機能を正確に判断する能力がないのであればワソランをはじめとした非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬に手を伸ばすのはやめておいた方がいいです。

(EF<40%には禁忌となっています)

 

では、どうするか。

rhythm controlと同様、まずはマグネシウムを迷わず打っておきましょう。

そのうえで、ランジオロール、ジゴキシン、アミオダロンのいずれか(あるいは併用)を用いてrate controlを狙います。

 

特に、不安定なAFの代表格である心不全を伴うAFでは、「ランジオロール±ジゴキシン」の併用が最新のガイドラインでも推奨されています。

https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Kato.pdf

 

目標心拍数としては110bpm未満がよく言われます。

ただし、超急性期ではそれが最適解とは限りません。

個人的にはHR<110bpmにこだわりすぎず、

もうちょいゆるめのHR<130bpmくらいに収まればヨシくらいの気持ちでいます。

(急性期をすぎたらその限りではありません)

 

 

今回は「不安定なAF with RVR」の初期診療について

「やるべきこと」と「やってはいけないこと」を説明しました。

 

ミスらない診療をできるといいですね。

 

 

2021年の記事ですが、こちらも参考にしてください。

appleqq.hatenablog.com


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