一般的なけいれんの止め方について勉強しましょう!
いつでも最善の状態で治療できるわけではありません。
「セルシン静注!!!」と呪文を唱えたはいいものの、ルートがとれない…
そんな状況ではどんな立ち回りをすればよいでしょうか?
第一選択薬:ベンゾジアゼピン投与のポイント
けいれんを止めるための薬剤として、ベンゾジアゼピンが第一選択薬であることは揺るぎません。
ガイドラインでも唯一のClass 1a, Level A recommendationです。
使い方のポイントは、、、
いずれの薬剤も「十分量を単回投与すること」に尽きます。
少量分割して複数回投与することは推奨されていません。
呼吸が止まるのではないか…と心配になって、少量投与を選択してしまうことがあるかもしれません。でも、発作が持続する方がよっぽどリスキーです。
実際、呼吸循環系の有害事象発生率はベンゾジアゼピン使用群よりもプラセボ群で高いことが知られています。
(N Engl J Med. 2001 Aug 30;345(9):631-7.)
てんかん重積状態に移行させてしまうことこそ避けるべきです。
そのほうがよっぽど低酸素血症や気道閉塞の原因となりえます。
「十分量を単回投与」するようにしましょう。
ルートがあれば、以下の薬剤を十分に使用しましょう。
薬剤 | 投与量 |
ジアゼパム | 0.2mg/kg (max 10mg) |
ロラゼパム | 0.1mg/kg (max 4mg) |
ミダゾラム | 0.15-0.3mg/kg (max 10mg) |
ルートがとれないときにはミダゾラム筋注!
けいれんを迅速に停止させることが最重要です。
5分以上持続すると、自発的に停止することがなくなります。
30分経過してしまうと、持続する発作による長期的な影響が出てしまうと考えられています。
さらに、けいれんは持続時間が長引けば長引くほど停止させづらくなります。
・GABA受容体のダウンレギュレーションや変異が発生してしまう
→ベンゾジアゼピンが効きづらくなる
・NMDA受容体のアップレギュレーションが起きる
→特定の薬剤への治療抵抗性が生じる
・自立した発作波が出るようになるため、誘発因子が除去されても持続してしまう
・分子トランスポーターの炎症性変化により、BBBの透過性が悪化
→薬剤の親和性が低下する
てことで、はやくけいれんを止めましょう。
ルートがない場合には、
「ミダゾラム筋注」を選択します!
0.5mg/kg (max10mg)を筋注しましょう。
ちなみに、鼻腔内投与も可能で小児科領域ではよく行われています。
末梢静脈路が確保されている状況であれば、ベンゾジアゼピンを静注すればよいです。
ルートがない場合には筋注を選択することで薬剤投与までの時間を短縮することができ、結果的に治療効果が発現するまでの時間を短縮することができます。
効果や合併症については静注と変わりはありません。
(N Engl J Med. 2012 Feb 16;366(7):591-600./ Acad Emerg Med. 2017 Jul;24(7):875-883.)
なお、ジアゼパムは筋注に向きません。
水溶性ではないので吸収がいまいちなので、静注以外での使用は(発作停止においては)できません。