何日も食事摂取ができず、まるで屋内行き倒れのような状態で救急搬入される患者さんは非常に多く経験すると思います。
ERは「社会のセーフティネット」としての側面も持つため、
これらの患者さんへの対応はよく知っておきたいところです。
まぁなんていうか、
治療の順番は通常はA→B→C→D→Eですが、
彼らに対してはEの異常を最初に対応することが必然多くなります。
(察してください)
ERでABCDEを整えたら、入院後はF:Feedingへの介入が必要です。
そこで問題となってくるのがRefeeding症候群です。
病棟管理に必須知識なので確認をしておきます。
疫学
・慢性疾患は炎症による異化亢進により、食事摂取量の減少や意図しない体重減少を引き起こす
・ADL低下や高度な炎症および内分泌的なストレス反応などが関連して栄養状態がさらに悪化し、筋肉量の減少や代謝/機能状態の悪化が進行する
・このような患者群への不適切な栄養介入がされることで、臨床状態が悪化することがある
・例えば、1回の高脂肪食により血管内皮細胞の活性化と機能障害が誘発され、TNF-α活性化により心血管リスクが増大することが報告されている
・RFSは重度の栄養障害で異化が亢進している患者における、栄養投与後に生じる生命を脅かす代謝性合併症とされており、慢性疾患患者でより発生頻度が高い
・Naおよび体液の貯留と臓器障害を伴う電解質異常が特徴とされる
◦Vit.B1欠乏が臨床像に影響を与えることもある
・研究対象集団にもよるが、RFSの発生率は15-30%程度とも報告されている
※ただし、普遍的に使用可能な定義がないため真の発生率は不明
病態生理
➀ピルビン酸脱水素酵素(PDH:pyruvate dehydrogenase)
②α-ケトグルタル酸脱水素酵素(α-KGDH:α-ketoglutarate dehydrogenase)
臨床的側面(定義など)
リスク層別化
予防対策
・リスクがある患者では、栄養療法はエネルギー制限せよ
◦リスク分類に基づいて5-10日間かけて増量する
・脱水への対処、予防的な電解質やビタミン補給を考慮
・栄養療法開始から72時間は電解質を毎日モニタリングする
◦電解質の低下がある場合には1日量を調整して補充すること
‣K 1-1.5mmol/kg/day
‣Mg 0.2-0.4mmol/kg/day
‣P 0.3-0.6mmol/kg/day
・鉄剤により低K血症と低P血症が悪化する可能性があるため、顕性鉄欠乏症であっても栄養療法開始から7日間は投与を控えること
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●初期カロリー
・栄養療法開始から24時間はブドウ糖100-150gまたは10-20kcal/kgで開始
・1-2日ごとに目標値の33%ずつ増量する
・ブドウ糖含有液からのカロリーは、上記目標カロリーの範疇で考慮すること
●水分/Na/タンパク質の制限
・言及なし
●電解質
・high risk群では、最初の3日間は12時間毎にモニタリングする
◦臨床症状に基づいて1-2日ごとに目標値の33%ずつ増量を検討
・重度の電解質異常がある場合には栄養療法の中止を検討する
・経口経腸栄養を受けている患者ではマルチビタミンを1日1回10日間以上投与する
●モニタリング
・high risk群では、栄養療法開始から24時間は4時間毎にバイタル測定をすること
・不安定または重度の栄養障害がある患者には、心電図モニタリングが推奨される
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(Nutr Clin Pract . 2020 Apr;35(2):178-195.)
RFSはほとんど予防に全振り疾患です。
入院時点~24-48時間以内にできるだけ早く栄養状態をスクリーニングすることが主な国際学会より推奨されています。
マネジメント
モニタリング
まとめ
・Refeeding症候群の普遍的な定義はない
・電解質(リン/カリウム/マグネシウム)のうち1つ以上の低下またはチアミン欠乏による臨床症状があることと考えておくとよい
・マネジメントについてはその合併症発生率や死亡率の高さとは裏腹に、あまりエビデンスが存在していない
・そのため、出来る限り早期にリスク層別化を行なった上で、予防策を敷くことが重要である
・栄養療法開始後は綿密なモニタリングを怠らないこと
参考文献
➀Nutrients . 2022 Jul 12;14(14):2859. open access
②Nutr Clin Pract . 2020 Apr;35(2):178-195. ASPENガイドライン
図はここから。めっちゃきれいでわかりやすい。