りんごの街の救急医

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case135:33歳男性、顔面と四肢の筋痙攣(Ann Emerg Med. 2016 Oct;68(4):e71-2.)

今回は画像からの一発診断でしょうか。

 

・33歳男性、顔面と四肢の筋痙攣のため受診
・血圧測定により上肢の筋痙攣はより顕著になった
・外耳孔前部のタップにより顔面筋が収縮

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上肢の特徴的な肢位と、頸部の新鮮な傷跡が気になります。

 

 

診断

甲状腺摘出後の低カルシウム血症

 

・血液検査…Ca5.9mg/dL, iCa3.1mg/dL
・グルコン酸Ca投与により症状は改善
・3日前に甲状腺切除術を受けたが、病理標本では副甲状腺は摘出されていなかった
副甲状腺への術後血流供給低下が原因として考えられた

 

 

甲状腺手術後の低Ca血症は比較的よく目にします。

急性期というよりは慢性期で、普段処方されているカルシウム製剤などを怠薬されて症状が出現してしまう患者が多いように感じています。

 

通常は甲状腺摘出時に副甲状腺も取れちゃって発症することが多いのかと思っていましたが、本症例のように標本上摘出されていないことが確認されていても低Ca血症を発症することがあるということに新規性がありそうです。この場合には血流改善に伴い自然回復が望めるそうです。

 

 

治療方法についても振り返ります。

 

Ca100-200mgを10-20分かけて緩徐に投与
 →その後0.5-1.5mg/kg/hrで持続投与
・Ca製剤として塩化Caとグルコン酸Caがあるが、グルコン酸Caは末梢から可能でありどちらかというと組織壊死を起こしにくいグルコン酸Caの方がよい
・Ca製剤の投与速度が速すぎると、不整脈や心停止のリスクになるため注意(生食やブドウ糖液に混注する)
・投与の際にはリンや重炭酸を含まない溶液にすること
 
併存する低Mg血症についても治療をすべし
・Mg2gを10-15分で投与→1g/hrで持続投与
 ◦ただし、重篤な腎不全がある場合には注意を要する
 
高リン血症がある場合にはそちらの補正に焦点を当てること
(Sabiston Textbook of Surgery, Chapter 4, 44-94より)

 

カリウム血症のときに登場するグルコン酸カルシウムがここでも有用です。

 

当院では「カルチコール注射液8.5%5ml」が採用されています。

1AにCaが約40mg含有されているため、3-5A+生食100mlとして10-20分程度で投与

→体重に合わせて持続静注という流れになります。

持続静注ではもちろん頻回のモニタリングが必要になります。