SVT(Supraventricular tachycardia)をERで対応することは多いと思います。
薬剤やcardioversionで止めるのもカッコいいけど、
そんなもの使わずに徒手空拳!?で治療ができたら魔法みたいでいいですよね!
副作用もないし、何より簡単に実施できて、すぐにERを退室できます!
今回は2つのValsalva法(バルサルバ法)を紹介します。
modified Valsalva法
通常のValsalva法に比較して、洞調律復帰率が高いとされているmodified Valsalva法を紹介します。
➀半仰臥位(45度くらいの座位)で息こらえ(40mmHgほど息を吐く)を15秒間行う
②その直後に(2人がかりで)仰臥位にして下肢を45度近くまで上げる
③1分後に効果判定
➀については10mlのシリンジの細い方を咥えて、それを押し出すように息を吐きだすとよいです。やってみると結構つらいです。
さらに、シリンジを最初に動かしておかないと、息を吐きだすだけではほとんど動かず心が折れるので事前にシリンジをピストンしておくことは隠れた注意点かも。
上記方法は2015年にLancetで発表され、その後も着々とエビデンスが蓄積されてきています。
(Lancet. 2015 Oct 31;386(10005):1747-53./Am J Emerg Med. 2017 Nov;35(11):1662-1665./Am J Emerg Med. 2019 Aug 1:158371./J Emerg Med. 2019 Sep;57(3):299-305.)
おおむね40%ほどの停止率と報告されており、体感もそのくらいと思います。
現在はSVTへの第一選択の対応としてやっています。
reverse Valsalva法
reverse Valsalva法という方法も考案されていたようです。
Gaudart P et al. The reverse vagal manoeuvre: A new tool for treatment of supraventricular tachycardia?
Am J Emerg Med. 2020 Dec 26;41:66-69.
PMID: 33387931.
上記は11例のcase seriesであり、SVTに対してreverse Valsalva法を使用して洞調律に復帰するかどうか検討されています。
ちなみに1例目は55歳救急医で自らに試してみたそうです。
どんな方法かというと…とても簡単で患者さんだけで実施可能です!
➀患者は座位になり、力まずに息を吐きだす
②鼻をつまんで口を強く閉じた状態で、10秒間息を吸うように努力する
③効果があれば10-15秒後にSVTが停止する
11例の結果は以下のようになります。
上記紹介したmodified Valsalva法に反応がなかった場合にもreverse Valsalva法では効果がみられたという症例がちらほらあります。
ER受診患者にやってみてもいいと思いますし、SVTで頻回に受診する患者にはこれを教えてあげれば自分でできてER受診を回避できるかも♪
(※もちろんアブレーション治療などは勧めることは前提です)