病歴/身体所見
・67歳男性
・2日間持続する舌からの出血のためER受診
・食事の際に誤って舌の左側を噛んでから発症した
・バイタルサインは安定していた
・舌左側背側に潰瘍形成しており、同部より持続的な出血を認めた
検査
・血液検査…INR 2.98, Hb14.6
診断と処置をどうするか?
舌出血
・トラネキサム酸含有ガーゼと用手的圧迫では止血できなかった
・その後、歯科口腔外科に紹介となった
◦再度圧迫止血をしたが失敗に終わった
◦咬傷は表面的であり、縫合することは整容の問題からためらわれた
さて、どうするか?
・即興の止血器具を試してみたところ15分後に止血が確認された
・舌は血流が豊富な臓器であるため、外傷の際には出血コントロールが問題になりうる
・舌にフラップができたり、穴が開くような症例では縫合を要するが、多くの症例では保存的に加療可能
(Swiss Med Wkly. 2018 Oct 28;148:w14683.)
・止血には持続的に十分な圧力をかけることが重要である
◦抗血栓薬内服していたり、可動性の高い舌組織に適切な指圧をかけることができないことが治療失敗につながる
(Am J Med. 1984 Aug;77(2):305-12.)
・即興の止血器具を使うことで、スタッフがその場に待機することなしに持続的な圧力をかけることができ、他の仕事への時間を割くことができる
◦かつ、安価でありERでもすぐに使用可能
止血器具の作り方
止血器具の作り方を説明します。
・舌圧子を2本用意し、それぞれの先端をガーゼで巻く
・それらで舌を挟み込むように置く
・ガーゼと反対側の舌圧子をテープ(または輪ゴム)で止めて結ぶ
同じような感じで、鼻出血も止めておくことができます!
(Emerg Med J. 2001 Nov;18(6):518.)
圧迫止血のポイントは、持続的に一定の圧力をかけておくことです。
患者さんにやってもらうと持続的な圧をかけられなかったり(途中で手を離しちゃったりする)、スタッフがやると他の患者の診察が滞ります。
なので、身近にある舌圧子を使って止血しておきつつ他の患者を回していきましょう!
まとめ
・舌圧子で舌出血や鼻出血を止められる小技があることを知っておこう