りんごの街の救急医

青森県弘前市の救急科専門医による日々の学習のまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。Twitterでも医療系のつぶやきをしています@MasayukiToc

症例2:自傷行為で耳をぶつけた17歳男性(N Engl J Med 2020; 383:1877.)

1日1症例マラソン2日目です。

昨日、annals of emergency medicineの症例と記載しましたが早速NEJMにも浮気しました。

まぁ、なんでもありってことで…。

 

 

病歴/身体所見

・17歳男性
右耳の腫脹のためER受診
自閉症と頭を床に打ち付ける自傷行為がある
・意識は清明であり、苦痛があるようには見えなかった
・右耳は腫脹し波動を触れ、斑状出血を認める
 

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診断

耳介血腫

 

・手術室で緊急ドレナージ術が実施された

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きれいに血腫除去されました。

 

 

・耳介血腫は、スポーツ選手の鈍的外傷後に見られることが多い
 ◦レスリング、ラグビー、柔道など
受傷後24時間で凝固して固まってしまうため緊急ドレナージが必要になる
 ◦耳介神経ブロック後、メスを用いて軟骨膜損傷させないようにして切開
 →血腫除去+ドレーン留置または開放創にし、圧迫を行う
 ◦血腫<2cmであれば穿刺吸引も可能
・血腫除去が早期に適切にされないと、耳介軟骨への血流が不十分となり、壊死や繊維軟骨の過形成を来す
 ◦ギョーザ耳とかカリフラワー耳とか言われる
 ◦特に72時間以上経過するとリスクが上昇する
(Curr Sports Med Rep. Jan-Feb 2014;13(1):22-6./Facial Plast Surg. 2010 Dec;26(6):451-5.)
 
耳介神経ブロックについては以下にまとめてあります。
その他にもERで多用される神経ブロックを紹介しています。

 

まとめ

・耳介血腫を見たらなるべくはやくドレナージすること、カリフラワー耳を防げ

・血腫除去後はドレーン留置または開放創にして圧迫しておく