NEJMからのreviewです。
最近職を失って引きこもって病状が悪化してしまう人や、
過剰に太る人や逆に過剰に痩せてしまう人の受診が増えたように思います。
神経性食思不振症についてまとめてみました。
Mitchell JE, Peterson CB. Anorexia Nervosa.
N Engl J Med. 2020;382(14):1343‐1351.
doi:10.1056/NEJMcp1803175
症例
・16歳女性、両親に連れられてクリニックを受診
・患者は無理矢理連れてこられたようで、健康だと話す
・両親によると、患者は5カ月間にわたって野菜を主食として少量の鶏肉を食べる程度の厳格な食事制限をしており、体重が明らかに減っているという
・身長170cm、体重49kg、BMI17.5
・血圧107/78mmHg(3分間起立後には78/60mmHgに低下)、安静時心拍数46bpm
・皮膚は渇き、頭髪は薄くなっていた。口腔内観察で歯のエナメル質が広範囲に侵食されていた。
・この患者をどうしようか?
診断基準
・神経性食思不振症は、以下の特徴を持つ重度の精神疾患である
◦飢餓/低栄養
◦精神疾患の合併
◦治療抵抗性
◦治療による合併症や自殺による死亡率が高い
・DSM-5による診断基準は以下
診断基準
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・需要に対する栄養摂取量の制限
・重度の低体重(標準体重下限以下)
・体重増加/太ることへの強い恐怖心、体重増加を阻止するための持続的行動
・ボディイメージの歪み/体重や体型が自己評価に過度に影響/現在の低体重の重篤さへの認識の欠如
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subtype(過去3か月に以下が認められる)
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・restricting subtype(制限型)…食事制限/過度の運動などによる減量方法をとる
・binge-eating and purging subtype(むちゃ食い/排出型)…むちゃ食いと嘔吐を繰り返す、便秘薬・利尿薬・浣腸などを誤用する
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重症度
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・軽度…BMI≧17
・中等症…BMI16-16.99
・重度…BMI15-15.99
・最重症…BMI<15
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・低BMIに関する絶対的なcutoffは設定されていない
◦年齢、性別、発症前のBMI、体重減少速度などが関係するため
◦成人ではおおむねBMI≦17.5の低体重が認められる
・体重増加に対する強い恐怖心があることが特徴的
◦患者はしばしばこれを否定するため、彼らの行動や所見から推測して対応すること
・体重や体型への極端なこだわりとともに、食事の準備を含めて食べるもの全てを完全にコントロールしようとする
・神経性食思不振症には2つのタイプがある
◦restricting subtype(制限型)…食事制限をする
◦binge-eating and purging subtype(むちゃ食い/排出型)…むちゃ食いをして嘔吐する
・一方のタイプから別のタイプに進展することがある
◦制限型はより低年齢で発症し予後は良いが、むちゃ食い/排出型になることが多い
疫学
・思春期や若年者で発症することが一般的
◦米国では生涯発症率は0.80%
◦神経性食思不振症の92%は女性
◦非ヒスパニック黒人/ヒスパニック系では白人より発症率が低い
◦世界的に有病率は多くなっており、特にアジアや中東で増加
◦大うつ病
◦不安障害
◦心的外傷
◦薬物乱用
・自殺リスクが高く、一般的な人口と比較して18倍
・長期予後は患者により異なり、20年の縦断的研究では、完全寛解30-60%/慢性症状20%程度とされる
・治療後の再発率は9-52%であり、多くの研究では最低でも25%程度と報告
・死亡率は高く、10年ごとの死亡率は約5.6%に達する
・治癒は緩徐であり、9年後には31%/22年後には60%以上が治癒する
リスク因子
・家族集積性が高く、双子ベースの遺伝率は50-60%と推定されている
・ゲノム研究により神経性食思不振症の8つのリスク遺伝子座が同定された
・心的外傷や痩せていることが重要視される社会がリスク因子になる
◦ただし、これらの集団のごく一部にしか発症しない
◦脆弱性が強い人々がダイエットを行動を起こすことがトリガーとなりうる
・周産期の要因…子宮内風疹感染、多産、早産など
・心理的な要因…完璧主義、cognitive rigidity(ルールへの依存など)、小児期の不安神経障害など
リスク因子
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・家族集積性/遺伝子タイプ
・心的外傷
・痩せていることが重要視される社会
・子宮内風疹感染、多産、早産
・完璧主義
・cognitive rigidity(ルールへの依存など)
・小児期の不安神経障害
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痩せていることが重要視される社会、日本や韓国などでしょうか。
アジアで増えているのもうなずけます。
臨床的な所見
・医学的合併症は体重減少/低栄養状態/嘔吐誘発による状態に関連して発症する
・自己嘔吐誘発により唾液腺過形成となりしばしば血清アミラーゼ値が高値となる
・嘔吐により、胃蠕動運動が低下し、食後膨満感/満腹感を感じうる
◦まれだが食道破裂を誘発することもある
・間欠的な便秘、まれにだが下痢を発症することもある
・糸球体濾過率も次第に低下しうる(特にむちゃ食い/排出型)
◦慢性的な循環血液量減少と低K血症が関連
◦21年間のfollow-upにより5.2%が末期腎不全を発症
・骨髄の低形成により貧血やWBC低下を起こす
◦リンパ球が相対的に低下する
◦血小板低下も起こりうる
・筋肉量低下が起こり、座位から立位になることさえ困難になる
・骨折の原因となる骨粗鬆症は約1/3に発症
・脳の画像検査では脳萎縮/脳室拡大などが起きるが体重増加により解決することが多い(非可逆的であることもありえる)
診断に必要な病歴聴取や検査
・身体的/精神的/栄養学的な評価を要する
患者の特徴
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低BMI≦16.5が多い
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体重に関する病歴
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進行性の体重減少/不十分な体重増加
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体重に関する問題の持続期間
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さまざまな期間
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月経歴
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不順/無月経
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食行動パターン
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摂食量減少/脂肪やカロリーの高いものを避ける
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むちゃ食い行動
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しばしば
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嘔吐誘発行動
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しばしばあり/便秘薬や利尿薬の誤用
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運動
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過度/けがをしてでも患者は運動する
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体型のチェック
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鏡で頻回にチェックする/メジャーで測定
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体重測定
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1日に何度も測定
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体型への不満
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重度/全身または一部に脂肪がついていると思い込む
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体重増加への恐怖
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重度
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体重や体型への先入観
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思い込みが強い
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自尊心
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体重や体型に強く影響される
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自殺計画
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ありうる
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ありうる
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しばしばある
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アルコールやドラッグ使用歴
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ありうる
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精神科治療歴
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ありうる
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心理社会的病歴
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広範な病歴がある
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身体所見
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血圧
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低血圧(特に起立性低血圧)
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体温
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低体温
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心拍数
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徐脈、不整脈
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皮膚
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皮膚乾燥/頭髪が薄くなる
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口腔内
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歯のエナメル質の侵食/口腔内環境不良
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唾液腺
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過形成
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体液量
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脱水所見あり
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四肢
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筋肉量低下/浮腫
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血液検査/画像検査
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血算
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全体的に低い/相対的リンパ球減少症
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血小板
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低下しうる
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Na
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低下
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K
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低下
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Cl
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低下
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HCO3-
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増加
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T3/rT3
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低下/増加
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Ca
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基準値内
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P
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低下
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Mg
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低下
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空腹時血糖
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低下
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低下
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プレアルブミン
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低下
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増加
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アミラーゼ
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増加
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骨粗鬆症検査 | |
心電図
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徐脈/QT延長/不整脈
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・患者の自己申告についての情報を固めるために、患者の保護者や他の医療従事者から情報収集をすること
◦患者からの誤った情報は、強制的な治療への恐怖/自己認識の欠如/栄養失調への認知的影響から生じうる
◦協力体制を作ることで患者の信頼を得ることができる可能性がある
・motivational interviewing techniques(動機付け面接法)は、あいまいな揺れ動きがあったり、恐怖心を抱いていたり、敵対視しているような患者に有用と報告
◦患者の嗜好/意見を引き出して枠組みを作る
‣あなたが1日1食に食事制限することに興味があります。あなたにとってそれはどういうことですか?
◦患者にとっての治療における不本意な点に共感し、検証する
‣あなたの過去の経験について語ってくれたことから考えると、あなたの疑問に思う気持ちは理解できる
すいません、このあたりの面接技法についてはあまり体験がなくわかりません。
精神科の先生と二人三脚で治療を勧めるのが有効と思います。
マネジメント
入院治療と外来治療
・緊急入院の適応は以下
・従来のrefeeding protocolでは、refeeding症候群予防のため1200kcal/日の栄養で開始していたが、最近の報告によれば、より積極的なrefeeding protocolは多くの患者にとって安全である
◦refeeding症候群についてはモニタリングしておく必要がある
・緊急入院の適応とならなかった、またはすでに入院している場合には在宅治療(residential treatment)と日帰り治療(day treatment)という治療方法もとれる
・residential treatmentはcommonになってきているが、day treatmentよりも予後を良好にするというevidenceはない
aggressive approach
より積極的なrefeeding protocolがあることを知りませんでした。
なので、このreviewで紹介されていた論文を孫引きして要点をまとめてみました。
・これまではlow-calorie approach(conservative approachesやstart low and go slow” approachesとも)が推奨されていた
ガイドライン的にはrefeeding症候群予防のため週に0.5-1.4kgの体重増加を目指すことを推奨していたようです。ただし、この方法は不十分な体重増加や治療2週目までに体重減少してしまうこと、長期入院との関連が示唆されていました。
・underfeeding syndromeへの関心が高まっており、underfeedingは神経性食思不振症にとって予後不良因子となる
このことから、初期から高カロリー摂取による積極的な栄養投与方法が考案されてきた経緯があります。
体重増加を早期に達成できないと退院後の再発率が高まることが報告されています。
より早く体重を増加させること(治療開始から3-4週間でのよりはやい体重増加)が1年後の寛解率と関連しています。
・refeeding症候群は栄養再開自体で起こりうる重篤な合併症とされているがまれな現象となっている。
特に、経口摂取±経管栄養による高カロリー/迅速なカロリーアップには、若年者であれば忍容性があると報告されており、これによるrefeeding症候群を発症した報告はありません。
・基本的には経口摂取がよい(meal-based refeeding)
経口摂取が出来なければ経鼻胃管からの経管栄養に切り替えます。もしも経口摂取が出来なければ流動食(メイバランスとか?)を使用すると経鼻胃管を避けられるかもしれないとのことです。大量カロリーを投与するための方法として経口摂取と経管栄養を併用することも提唱されていますが、これとmeal-based approachとを比較したときに併用療法が優れているかは結論が出ていない分野です。
・静脈栄養はむしろ合併症リスクが上回るため推奨されない
唯一の適応は急性肝炎や膵炎などの合併があり消化管を使用できないときだけ
・摂取カロリーを1500~2400kcal/日で開始して67-250kcal/日ずつ増やしていく
・体重増加率0.5-2kg/週を目標とする
すげー積極的です。。。電解質のモニタリングは必須です。
・栄養含有率は脂質25-35%/タンパク質15-20%/炭水化物50-60%と標準的でよい
・低Na食により、重度低栄養患者では体液の細胞内シフトを抑えられる可能性がある
今後はaggressive approachが流行ってきそうです。
心理療法
・心理療法は治療の中心的存在
・どういった心理療法を選択すべきかについては議論が残る分野
・小児や思春期の患者にはfamily-based treatmentが一般的には推奨される…6-12か月にわたって3つの段階を経て介入される
①摂食障害に対して家族の団結を強める…健康的な食生活と体重回復を促進するうえで主に両親の役割を強調
‣保護者は不安/ストレス/うつなどを強く感じており、食事制限行動やその他の問題行動に対してやれることはないと無力感を感じることが多い
‣対応について構造と支援を両親に与えることにより、両親のストレスが軽減する
‣両親は患者の食事と過食嘔吐などを注意深く観察する
②食行動の自律性を徐々に患者に戻していく
③家族間のコミュニケーションと自立性の促進に焦点を当てる
・family-based treatmentは、臨床経験的に/RCTにて他の治療法よりも有益性が高いことが示されている
◦寛解率は30-60%
◦より治療介入早期に体重増加がみられるとより予後良好
・最近の報告では、multifamily treatmentが支持されている
◦摂食障害の子供をもつ親たちが相互に支援する方法
◦多施設研究にて、multifamily treatmentはusual family therapyに比較して、1年時点の予後はより良好であったと報告
実は、これ以外にもたくさんの方法が紹介されていましたが、これまでに経験したことのないものでよくわかりませんでした。興味のある方は本文を参照してください。
薬物療法
・多くの薬物治療は神経性食思不振症に対しては効果的ではない
◦体重増加、抑うつ症状の改善、再発予防など
・食欲を刺激して体重増加を促進する目的での第2世代抗うつ薬について、効果的だと示唆する報告もあるが、全体としてはあまり効果がないとされている
・それにも関わらず神経性食思不振症の患者に対して薬物療法がされているのが現状
骨粗鬆症
・神経性食思不振症の患者では常に考えておくべき主要な問題
・骨密度を改善するために体重を戻すことが主要な戦略となっている
・それに加えて、Ca摂取量を増やす(1200-1500mg/日)ことが全ての患者に対して推奨されている
◦血中ビタミンD濃度が低下していればこれも補うこと
・神経性食思不振症の患者110人を対象としてRCTでは、皮下estrogen+cyclic progesteroneはplaceboよりも18か月時点での脊椎および股関節のZ scoreが有意に高値であったことが示された
・神経性食思不振症に合併する骨粗鬆症においてはbisphosphonatesの使用を支持する報告は限定的であり、思春期や若年者には使わないのが一般的である
症例の対応方法
・低BMI/食事制限行動/身体所見からは神経性食思不振症の診断が示唆される
◦特に歯のエナメル質の所見からbinge-eating and purging subtypeが疑わしい
・患者は初期には問題を吐露しないが、動機付け面接法を用いて情報を得ていくとよい
・低血圧と徐脈はリスクが高いため入院適応となる
・入院中のケアは小児精神科と小児科医によりされるとよい
・神経性食思不振症に関する話し合い、輸液(必要に応じてKやPの補充)、経口摂取の再開を行う
・患者がオープンに話せるようになり、自殺リスクが低ければ退院して外来で週1回のfamily-based therapyを行うとよい
・初期には両親が監督役を務め、患者の食事摂取量増加/むちゃ食い嘔吐行動の抑制/体重増加に焦点を当てる
・長期的には患者の自立性を強調し、効果的な家族間コミュニケーションを確立することが目標になる
◦自主的に食べること、学校に通うこと、課外活動に参加すること、友人と交流すること、標準体重の90%以上を目指すことなど
・少なくとも1年ほどは家族と医療従事者による再発していないかのモニタリングを要する
・薬物治療は一般的には適応がない
まとめ
・神経性食思不振症は、飢餓や低栄養/精神疾患の合併/治療抵抗性/医療的合併症が多く死亡率が高いことが特徴的な重度の神経障害である。
・神経性食思不振症には2つのタイプがある。
◦restricting subtype(制限型)
◦binge-eating and purging subtype(むちゃ食い/排出型)
・制限型からむちゃ食い/排出型へと進展することがしばしばある
・入院適応は以下
◦低血圧、脱水症
◦重度の電解質異常
◦不整脈や重度の徐脈
◦自殺リスク
◦BMI≦15
・いくつかの心理学的アプローチがあり、特に小児や思春期ではfamily-based treatmentがよくなされる
・薬物治療は一般的に、体重増加/抑うつ症状の軽減/神経性食思不振症の再発に有効ではない