敗血症性ショックに対するビタミンC投与は、救急分野でかなり注目されています。
metabolic resuscitationとかMarik cocktailとか言われている方法です。
個人的には結構信頼を置いており、何度か使用機会がありました。
実感としては、敗血症性ショックの際にビタミンCが入るとすっと血圧が上昇するような感覚がありました。
今回、JAMAからこのmetabolic resuscitationへのRCTが出ましたので紹介します。
Effect of Vitamin C, Hydrocortisone, and Thiamine vs Hydrocortisone Alone on Time Alive and Free of Vasopressor Support Among Patients With Septic Shock: The VITAMINS Randomized Clinical Trial
敗血症性ショックに対するmetabolic resuscitationの歴史
これが初登場したのは2017年のことです。Dr.Marikが紹介しました。
(Chest. 2017 Jun;151(6):1229-1238.)
敗血症/敗血症性ショック+PCT>2ng/mlの患者群に対するMarik cocktail投与のretrospective studyで、97人という小規模な患者群に対する研究でした。
Marik cocktailは以下の通りでした。
・ビタミンC 1.5g 6時間ごと 4日間またはICU退院まで
・Hydrocortisone 50mg 6時間ごと 7日間またはICU退院まで、3日間かけて漸減
結果として、Marik cocktail群で良好な転帰が得られました。
死亡率は、40.4% vs 8.5%(介入群)で明らかに死亡率が低下し、NNT3)という結果でした。
とても小規模な研究でしたが、救急領域ではこれを境にこれまで何度もビタミンCに対する研究がされることになりました。
VITAMINSの概要
敗血症性ショックに対するmetabolic resuscitationの効果を検証した初めてのRCTです。
2018年5月~2019年7月にAustralia, New Zealand, Brazilの10ICUで行われました。
対象は敗血症性ショックの患者です。
SOFA scoreの2点以上の増加、Lactate>2mmol/L、十分な輸液投与とMAP>65mmHgを保つために少なくとも2時間昇の圧薬持続投与を要する患者が対象です。
除外項目はおおむね一般的な患者群で、敗血症性ショックから24時間以上経過、死が切迫している、他の理由から本研究で使用されている薬剤がすでに使われている、妊婦、DNR指示がある患者でした。
intervention群では以下の介入が行われました。
・VitaminC 1.5g 6時間毎
・Thiamine 200mg 12時間毎
・Hydrocortisone 50mg 6時間毎
※いずれもICU入室中に投与。
Thiamineはショック離脱まで最大10日間、ショック離脱まで最大7日間投与。
control群ではHydrocortisone 50mg 6時間毎が投与されました。
786人が対象となり、216人がランダム化されました。
baselineはほぼ同等でしたが、
intervention群の方がAPACHEⅢが低く乳酸値が高かったです。
primary outcomeは、168時間後の生存かつ昇圧薬freeであることでした。
※生存しており、かつ最低4時間以上昇圧薬不使用
intervention群 vs control群では、122.1時間 vs 124.6時間であり、primary outcomeに有意差は認めませんでした。
なに~!!!???
しかし、この研究には重大なlimitationがあります。
それは、ランダム化からビタミンC投与までの時間の中央値12.1時間とだいぶ時間がかかっているところです。
最近の主流は、early metabolic resuscitationですのでちょっとこれは遅すぎます。
Dr.Marikに対する恣意的ななにかを感じます…気のせいでしょうか…。
私見
現時点ではこれではmetabolic resuscitationが有効性がないと決定づけることはできないと思う立場です。
VITAMINS trialの意義は、以下です。
「敗血症性ショックに対するmetabolic resuscitationは12時間程度で投与されても予後を改善させない」
さて、もう少し早めに投与したらどうなるんでしょうか。
次なるRCTを待ちましょう。