りんごの街の救急医

青森県弘前市の救急科専門医による日々の学習のまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。Twitterでも医療系のつぶやきをしています@MasayukiToc

敗血症性ショックへのビタミンC投与 VITAMINS

敗血症性ショックに対するビタミンC投与は、救急分野でかなり注目されています。

metabolic resuscitationとかMarik cocktailとか言われている方法です。

 

個人的には結構信頼を置いており、何度か使用機会がありました。

実感としては、敗血症性ショックの際にビタミンCが入るとすっと血圧が上昇するような感覚がありました。

 

今回、JAMAからこのmetabolic resuscitationへのRCTが出ましたので紹介します。

 

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2020 Jan 17. doi: 10.1001/jama.2019.22176. [Epub ahead of print]
Effect of Vitamin C, Hydrocortisone, and Thiamine vs Hydrocortisone Alone on Time Alive and Free of Vasopressor Support Among Patients With Septic Shock: The VITAMINS Randomized Clinical Trial

 

 

敗血症性ショックに対するmetabolic resuscitationの歴史

これが初登場したのは2017年のことです。Dr.Marikが紹介しました。
(Chest. 2017 Jun;151(6):1229-1238.)
 
敗血症/敗血症性ショック+PCT>2ng/mlの患者群に対するMarik cocktail投与のretrospective studyで、97人という小規模な患者群に対する研究でした。
 
Marik cocktailは以下の通りでした。
ビタミンC 1.5g 6時間ごと 4日間またはICU退院まで
・Hydrocortisone 50mg 6時間ごと 7日間またはICU退院まで、3日間かけて漸減
ビタミンB1 200mg 12時間ごと 4日間またはICU退院まで 
 
結果として、Marik cocktail群で良好な転帰が得られました。
死亡率は、40.4% vs 8.5%(介入群)で明らかに死亡率が低下し、NNT3)という結果でした。
 
とても小規模な研究でしたが、救急領域ではこれを境にこれまで何度もビタミンCに対する研究がされることになりました。
 

VITAMINSの概要

敗血症性ショックに対するmetabolic resuscitationの効果を検証した初めてのRCTです。
 
2018年5月~2019年7月にAustralia, New Zealand, Brazilの10ICUで行われました。
 
対象は敗血症性ショックの患者です。
SOFA scoreの2点以上の増加、Lactate>2mmol/L、十分な輸液投与とMAP>65mmHgを保つために少なくとも2時間昇の圧薬持続投与を要する患者が対象です。
 
除外項目はおおむね一般的な患者群で、敗血症性ショックから24時間以上経過、死が切迫している、他の理由から本研究で使用されている薬剤がすでに使われている、妊婦、DNR指示がある患者でした。
 
intervention群では以下の介入が行われました。
・VitaminC 1.5g 6時間毎
・Thiamine 200mg 12時間毎
・Hydrocortisone 50mg 6時間毎
※いずれもICU入室中に投与。
Thiamineはショック離脱まで最大10日間、ショック離脱まで最大7日間投与。
 
control群ではHydrocortisone 50mg 6時間毎が投与されました。
 
786人が対象となり、216人がランダム化されました。
baselineはほぼ同等でしたが、
intervention群の方がAPACHEⅢが低く乳酸値が高かったです。
 
primary outcomeは、168時間後の生存かつ昇圧薬freeであることでした。
※生存しており、かつ最低4時間以上昇圧薬不使用
 
intervention群 vs control群では、122.1時間 vs 124.6時間であり、primary outcomeに有意差は認めませんでした。
 
なに~!!!???
 
しかし、この研究には重大なlimitationがあります。
それは、ランダム化からビタミンC投与までの時間の中央値12.1時間とだいぶ時間がかかっているところです。
 
最近の主流は、early metabolic resuscitationですのでちょっとこれは遅すぎます。
Dr.Marikに対する恣意的ななにかを感じます…気のせいでしょうか…。
 

私見

現時点ではこれではmetabolic resuscitationが有効性がないと決定づけることはできないと思う立場です。
 
VITAMINS trialの意義は、以下です。
「敗血症性ショックに対するmetabolic resuscitationは12時間程度で投与されても予後を改善させない」
 
さて、もう少し早めに投与したらどうなるんでしょうか。
次なるRCTを待ちましょう。