意外と困ることが多い話題。
あの薬は良かったっけ?としばしば疑問に感じることがあります。
実際、あまり授乳に関しての教育は受けた覚えがありません。
そんなときには当サイトで紹介する方法で調べれば、自信をもって簡単に答えにたどりつけます。
また、母体が感染症にかかったとき、画像検査をしたときは母乳を与えてもよいのでしょうか?これについても整理します。
授乳に対する基礎知識から超有用なサイト、アプリまで紹介します!
Ann Emerg Med. 2019 Aug 19. pii: S0196-0644(19)30525-6. doi: 10.1016/j.annemergmed.2019.06.015. [Epub ahead of print]
Managing the Breastfeeding Patient in the Emergency Department.
母乳に対する基礎知識
・母乳を産生できる乳房への変化は妊娠初期から起きる
◦母乳を分泌するための準備は妊娠中期には完了している
◦妊娠中のプロゲステロン高値が母乳産生を抑制している
→出産とともにプロゲステロンが減少し母乳分泌に至る
・出産から24-48時間以内に分泌される母乳を初乳と定義する
◦ごくわずかな量ではあるが、免疫グロブリンIgAが豊富に含まれる
・出産から3-4日後にはより母乳分泌が増加する
◦その成分は食事内容や最初の方か後の方かの母乳によっても異なる
‣foremilk…乳糖が豊富、hind milk…脂肪分が豊富
・新生児は1日に10-12回の哺乳を行う
◦この哺乳動作(もしくは乳頭刺激や圧迫)によりプロラクチン放出が起きる
→これにより持続的な母乳産生が可能となる
◦ER受診などで乳児と離れ離れになる場合には、乳児の哺乳と同じ頻度で搾乳するとよい
・搾乳をすることは母乳分泌の問題以外にも重要な意味をもつ
◦搾乳されないと乳管のつまりを起こし、乳腺炎発症リスクとなる
ERにおいて授乳させてよいか悩む状況
・ERにおいて、授乳させてもよいか迷う状況は以下の3つ
◦授乳婦に投与できる薬剤なのかどうか
◦画像診断を要したとき
◦母体が感染症に罹患したとき
授乳婦に投与できる薬剤なのかどうか(薬剤の安全性)
・以下のサイトやアプリで検索できます。
・サイトであればLactMedがおすすめです!
◦多種多様な薬剤、サプリメントへのevidence basedな情報にアクセスできる
・ちょっと英語が苦手で、より簡潔なリファレンスが欲しければInfantRisk appがよいです。
◦でも有料です。1200円とお高め。
・ERでよく使う薬剤については以下の一覧表が有用です。
◦妊娠中にだめな薬剤と授乳中にだめな薬剤は分けて考えること
画像診断を要したとき
・「妊娠中」の話と「授乳中」の話は完全に分けて考えること!
・レントゲン…授乳中の乳児に悪影響を与えることはない
・造影CT…母乳育児をやめる必要はない
◦母乳中に造影剤は移行するため、歴史的に直接毒性やアレルギー反応の懸念があった
◦しかしながら実際に有害事象は発生していない
◦乳児には母体濃度の0.01%ほどしか移行しない
◦乳児への移行は母体濃度の0.0004%しかない
・核医学検査…状況による
◦基本的には搾乳して捨てる必要性はない(pump and dump)
◦放射性同位元素が完全に消失するまではpump and holdがよい
母体が感染症に罹患したとき
・基本的にごく少数の例外を除いては、母体が感染症に罹患しても授乳可能
※Ebola virusなど そりゃそうだ
直接授乳可能
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搾乳して投与
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搾乳して破棄
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・乳腺炎
・B型肝炎
・C型肝炎
・帯状疱疹
※乳房に皮疹がないとき
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・活動性結核
・水痘
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・エボラ
・マールブルグ
・ラッサ
・天然痘
・アフリカ睡眠病
・狂犬病
・HTLV-1
・ブルセラ
・乳房膿瘍
・HIV
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・空気感染を起こす疾患では直接授乳することは避ける
◦搾乳されたものを飲むこと自体は何ら問題なし
・そのほかの疾患ではマスクを着用して投与することも一つの方法
・帯状疱疹は乳房に皮疹があるときには禁忌になるが、それ以外なら問題なし
・乳腺炎では、授乳自体がその治療や予防になるため授乳させて良い
・乳房膿瘍の場合には抗菌薬投与24時間後であれば授乳させてよい
まとめ
・授乳してよいか迷ったらLactMedやInfantRisk appを使用して確認
・基本的にERでやるような画像検査後は普通に授乳させてよい
・感染症に罹患した時も例外を除いては母乳育児を継続してよい